投資購入マンションの相続税・贈与税|評価額圧縮50%と特例

公開日: 2025/10/16

投資用マンション購入で知っておくべき相続税・贈与税のポイント

投資用マンションは、相続税対策として有効な資産形成の手段として注目されています。現金で保有するよりも相続税評価額を大幅に圧縮できるため、資産家層を中心に相続税対策の一環として購入されるケースが増えています。

投資用マンションの相続税評価額は、固定資産税評価額を基準に計算され、さらに賃貸中の場合は「貸家建付地」「貸家」としての評価減が適用されます。これにより、購入金額の50%~60%程度の評価額になることが一般的です。

本記事では、投資用マンション購入時の相続税・贈与税について、評価額の圧縮効果、小規模宅地等の特例、生前贈与の活用方法、実務上の注意点まで詳しく解説します。

この記事のポイント

  • 投資用マンションは現金の約50%~60%の相続税評価額に圧縮可能
  • 貸家建付地(土地約80%)・貸家(建物70%)の評価減が適用される
  • 小規模宅地等の特例で貸付事業用200㎡まで50%減額(居住用は330㎡で80%)
  • 住宅取得資金の贈与税非課税制度は居住用のみで投資用は適用外
  • 相続後の家賃収入は不動産所得として所得税の課税対象

1. 投資用マンション購入と相続税・贈与税の基本

(1) 投資用マンションで関係する税金

投資用マンションを購入・保有・相続する際に関係する主な税金:

税金の種類 課税タイミング 概要
不動産取得税 購入時 不動産を取得したときに一度だけ課税される都道府県税
登録免許税 購入時 所有権移転登記や抵当権設定登記の際に課税
固定資産税・都市計画税 保有中(毎年) 不動産を保有している間、毎年課税される地方税
所得税 保有中(毎年) 家賃収入に対する所得税(不動産所得)
相続税 相続時 相続により財産を取得した場合に課税される国税
贈与税 贈与時 生前に財産の贈与を受けた場合に課税される国税

本記事では主に相続税・贈与税に焦点を当てて解説します。

(2) 相続税と贈与税の違い

相続税:

  • 被相続人の死亡により財産を取得した場合に課税
  • 基礎控除額:3000万円+600万円×法定相続人数
  • 税率:10%~55%の累進課税

贈与税:

  • 生前に財産の贈与を受けた場合に課税
  • 基礎控除額:年110万円(暦年贈与)
  • 税率:10%~55%の累進課税(相続税より高率)

国税庁の公式情報によれば、投資用マンションを相続した場合も通常の相続税の計算方法が適用されます。

(3) 居住用との違い

投資用マンションと居住用マンションの税務上の主な違い:

項目 投資用 居住用
相続税評価 貸家・貸家建付地として評価減あり 自用地・自用家屋として評価
小規模宅地等の特例 貸付事業用:200㎡まで50%減額 居住用:330㎡まで80%減額
住宅ローン控除 適用なし 適用あり
贈与税非課税制度 適用なし 住宅取得資金の贈与で最大1000万円非課税

投資用マンションは居住用と比べて、相続税対策の面で有利な評価減がある一方、贈与税非課税制度は使えません。

2. 投資用マンションの相続税評価額圧縮効果

(1) 現金と不動産の評価額の違い

相続税の計算では、現金は額面通りの評価ですが、不動産は時価ではなく固定資産税評価額などを基準に評価されます。

現金1億円を保有している場合:

  • 相続税評価額:1億円(額面通り)

1億円で投資用マンションを購入した場合:

  • 相続税評価額:約5000万~6000万円(購入金額の50%~60%程度)

このように、現金を不動産に変えるだけで相続税評価額を大幅に圧縮できます。

(2) 固定資産税評価額と相続税評価額

不動産の相続税評価額は以下のように計算されます:

土地(敷地権):

  • 路線価方式または倍率方式で評価
  • 一般的に時価の約70%~80%

建物:

  • 固定資産税評価額で評価
  • 一般的に時価(購入金額)の約50%~70%

マンションの場合、建物部分の割合が大きいため、全体として購入金額の約60%~70%程度の評価額になります。

(3) 投資用マンションの評価額計算例

購入金額1億円の投資用マンションの場合:

  1. 土地(敷地権):3000万円

    • 路線価評価:約2400万円(時価の80%)
  2. 建物:7000万円

    • 固定資産税評価額:約4900万円(時価の70%)
  3. 合計評価額(自用地・自用家屋):7300万円

さらに賃貸に出している場合、次のセクションで説明する評価減が適用されます。

3. 貸家建付地と貸家の評価減

(1) 貸家建付地の評価方法

国税庁の公式情報によれば、賃貸中の不動産の土地(貸家建付地)は、自用地評価額から一定割合を減額して評価されます。

貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

  • 借地権割合:地域により30%~90%(都市部は60%~70%が多い)
  • 借家権割合:全国一律30%
  • 賃貸割合:入居率(例:100%入居なら1.0)

計算例(借地権割合60%、入居率100%の場合):

  • 自用地評価額:2400万円
  • 貸家建付地評価額 = 2400万円 × (1 - 0.6 × 0.3 × 1.0) = 2400万円 × 0.82 = 約1968万円

(2) 貸家の評価方法

国税庁の公式情報によれば、賃貸中の建物(貸家)は、固定資産税評価額から借家権割合30%を減額して評価されます。

貸家の評価額 = 固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)

計算例(入居率100%の場合):

  • 固定資産税評価額:4900万円
  • 貸家評価額 = 4900万円 × (1 - 0.3 × 1.0) = 4900万円 × 0.7 = 3430万円

(3) マンション敷地権の評価

貸家建付地と貸家の評価減を適用した場合の合計:

  • 土地(貸家建付地):1968万円
  • 建物(貸家):3430万円
  • 合計:5398万円

購入金額1億円に対して、相続税評価額は約5400万円となり、約54%に圧縮されました。

4. 生前贈与と相続時精算課税制度

(1) 生前贈与による相続税対策

相続税対策として、生前に投資用マンションを贈与することも検討できます。ただし、贈与税の基礎控除額は年110万円と少額のため、マンション1室を贈与すると高額な贈与税が発生します。

対策:

  • 持分を毎年少しずつ贈与(年110万円以内)
  • 相続時精算課税制度の活用

(2) 相続時精算課税制度の概要

国税庁の公式情報によれば、相続時精算課税制度は、60歳以上の親(祖父母)から18歳以上の子(孫)への贈与で選択できる制度です。

制度の特徴:

  • 累計2500万円までの贈与は贈与税非課税
  • 2500万円を超える部分は一律20%の贈与税
  • 相続時に贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算

この制度を使えば、高額な投資用マンションを生前に贈与でき、将来の家賃収入を子世代に移すことで相続財産の増加を抑えられます。

(3) 投資用不動産の贈与の注意点

住宅取得資金の贈与税非課税制度は投資用不動産には適用されません。

この非課税制度は、居住用の住宅を取得するための資金贈与に限られており、投資用マンションの購入資金には使えません。投資用不動産の贈与では、暦年贈与(年110万円)または相続時精算課税制度を活用することになります。

5. 小規模宅地等の特例(貸付事業用)

(1) 貸付事業用宅地の特例

国税庁の公式情報によれば、小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たす宅地について相続税評価額を減額できる制度です。

投資用マンションは「貸付事業用宅地」として、以下の特例が適用できます:

  • 減額率:50%
  • 適用面積:200㎡まで

(2) 適用要件と減額率(50%、200㎡まで)

適用要件:

  • 被相続人が貸付事業を行っていたこと
  • 相続人が相続税の申告期限まで貸付事業を継続すること
  • 相続人が相続税の申告期限までその宅地を保有していること

計算例(貸家建付地評価額1968万円、敷地権持分50㎡の場合):

  • 小規模宅地等の特例適用後:1968万円 × 0.5 = 984万円

マンションの敷地権は一般的に持分が小さいため、200㎡の上限まで適用できるケースは少ないですが、それでも50%の減額は大きな節税効果があります。

(3) 居住用との違い

小規模宅地等の特例の比較:

用途 減額率 適用面積 主な要件
居住用(特定居住用宅地等) 80% 330㎡まで 配偶者または同居親族が相続
貸付事業用宅地 50% 200㎡まで 相続人が貸付事業を継続

居住用の方が減額率が高く適用面積も広いため、相続税対策としては居住用の方が有利です。ただし、投資用マンションは賃貸収入を生むため、総合的に判断する必要があります。

6. 投資用マンションで注意すべき相続税対策のポイント

(1) 入居率と評価額への影響

貸家建付地と貸家の評価減は、賃貸割合(入居率)によって減額幅が変わります。

入居率による評価額の違い:

  • 入居率100%:上記の計算例通り約54%に圧縮
  • 入居率50%:貸家建付地・貸家の減額効果が半減し、約77%程度の評価
  • 入居率0%(空室):自用地・自用家屋として評価、約73%程度の評価

相続税対策として投資用マンションを購入する場合、入居率を高く保つことが重要です。

(2) 相続後の不動産所得と所得税

投資用マンションを相続した後、家賃収入が発生します。この家賃収入は不動産所得として所得税の課税対象となります。

国税庁の公式情報によれば、不動産所得は以下の計算式で求めます:

不動産所得 = 総収入金額(家賃収入等) - 必要経費

必要経費には、減価償却費、管理費、修繕費、固定資産税などが含まれます。相続人は毎年確定申告を行い、不動産所得に対する所得税を納付する必要があります。

(3) 複数相続人での共有リスク

投資用マンションを複数の相続人で共有相続する場合、以下のリスクがあります:

意思決定の困難:

  • 売却や大規模修繕の意思決定に全員の同意が必要
  • 賃貸条件の変更も全員の合意が必要

収益の分配:

  • 家賃収入を持分に応じて分配
  • 各相続人がそれぞれ確定申告が必要

対策:

  • 遺産分割協議で単独相続とする
  • または代償分割(一人が相続し、他の相続人に代償金を支払う)を検討

まとめ

投資用マンション購入時の相続税・贈与税について、以下のポイントを押さえておきましょう:

  1. 評価額の圧縮効果:現金を不動産に変えることで相続税評価額を約50%~60%に圧縮可能
  2. 貸家建付地・貸家の評価減:賃貸中の場合、土地約80%・建物70%の評価になる
  3. 小規模宅地等の特例:貸付事業用200㎡まで50%減額(居住用は330㎡で80%)
  4. 贈与税非課税制度は適用外:住宅取得資金の贈与税非課税制度は居住用のみ
  5. 相続後の所得税:家賃収入は不動産所得として所得税の課税対象

投資用マンションは相続税対策として有効ですが、入居率の維持、相続後の賃貸経営、複数相続人での共有リスクなど、実務上の注意点も多くあります。購入前に税理士に相談し、総合的な相続税対策を検討することをお勧めします。

よくある質問

Q1: 投資用マンションを購入すると、どのくらい相続税評価額が下がりますか?

A: 現金を投資用マンションに変えることで、相続税評価額を購入金額の約50%~60%程度に圧縮できます。具体的には、購入金額1億円の場合、固定資産税評価額ベースで約7300万円、さらに賃貸に出すことで貸家建付地・貸家の評価減が適用され約5400万円程度の評価になります。入居率が高いほど評価減の効果が大きくなるため、入居率を高く保つことが重要です。

Q2: 小規模宅地等の特例は投資用マンションにも適用できますか?

A: はい、貸付事業用宅地として200㎡まで50%減額が可能です。ただし、居住用宅地(特定居住用宅地等)は330㎡まで80%減額なので、投資用の方が減額率・適用面積ともに小さくなります。適用要件としては、被相続人が貸付事業を行っていたこと、相続人が相続税の申告期限まで貸付事業を継続すること、申告期限までその宅地を保有していることが求められます。マンションの敷地権は持分が小さいため、200㎡の上限まで適用できるケースは少ないですが、それでも50%の減額効果は大きな節税につながります。

Q3: 住宅取得資金の贈与税非課税制度は投資用マンションでも使えますか?

A: いいえ、使えません。住宅取得資金の贈与税非課税制度は、居住用の住宅を取得するための資金贈与に限られており、投資用マンションの購入資金には適用されません。投資用不動産の贈与では、暦年贈与(年110万円の基礎控除)または相続時精算課税制度(累計2500万円まで非課税、相続時に加算)を活用することになります。相続時精算課税制度を使えば、高額な投資用マンションを生前に贈与でき、将来の家賃収入を子世代に移すことで相続財産の増加を抑えられます。

Q4: 相続後の家賃収入はどうなりますか?

A: 不動産所得として所得税の課税対象になります。不動産所得は、総収入金額(家賃収入等)から必要経費(減価償却費、管理費、修繕費、固定資産税など)を差し引いた金額で計算されます。相続人は毎年確定申告を行い、不動産所得に対する所得税を納付する必要があります。複数の相続人で共有している場合は、家賃収入を持分に応じて分配し、各相続人がそれぞれ確定申告を行います。

よくある質問

Q1投資用マンションを購入すると、どのくらい相続税評価額が下がりますか?

A1現金を投資用マンションに変えることで、相続税評価額を購入金額の約50%~60%程度に圧縮できます。具体的には、購入金額1億円の場合、固定資産税評価額ベースで約7300万円、さらに賃貸に出すことで貸家建付地・貸家の評価減が適用され約5400万円程度の評価になります。入居率が高いほど評価減の効果が大きくなるため、入居率を高く保つことが重要です。

Q2小規模宅地等の特例は投資用マンションにも適用できますか?

A2はい、貸付事業用宅地として200㎡まで50%減額が可能です。ただし、居住用宅地(特定居住用宅地等)は330㎡まで80%減額なので、投資用の方が減額率・適用面積ともに小さくなります。適用要件としては、被相続人が貸付事業を行っていたこと、相続人が相続税の申告期限まで貸付事業を継続すること、申告期限までその宅地を保有していることが求められます。マンションの敷地権は持分が小さいため、200㎡の上限まで適用できるケースは少ないですが、それでも50%の減額効果は大きな節税につながります。

Q3住宅取得資金の贈与税非課税制度は投資用マンションでも使えますか?

A3いいえ、使えません。住宅取得資金の贈与税非課税制度は、居住用の住宅を取得するための資金贈与に限られており、投資用マンションの購入資金には適用されません。投資用不動産の贈与では、暦年贈与(年110万円の基礎控除)または相続時精算課税制度(累計2500万円まで非課税、相続時に加算)を活用することになります。相続時精算課税制度を使えば、高額な投資用マンションを生前に贈与でき、将来の家賃収入を子世代に移すことで相続財産の増加を抑えられます。

Q4相続後の家賃収入はどうなりますか?

A4不動産所得として所得税の課税対象になります。不動産所得は、総収入金額(家賃収入等)から必要経費(減価償却費、管理費、修繕費、固定資産税など)を差し引いた金額で計算されます。相続人は毎年確定申告を行い、不動産所得に対する所得税を納付する必要があります。複数の相続人で共有している場合は、家賃収入を持分に応じて分配し、各相続人がそれぞれ確定申告を行います。

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