マンション購入の相続税・贈与税|非課税措置と控除特例

公開日: 2025/10/12

マンション購入で知っておくべき相続税・贈与税

マンション購入を検討する際、相続税や贈与税の基礎知識を理解しておくことは重要です。特に親からの資金援助を受ける場合や、将来の相続を見据えた資産形成を考える場合、これらの税金の仕組みを知らずに進めると、思わぬ税負担が発生することがあります。

この記事のポイント

  • 相続税は基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)を超える財産に課税される
  • 贈与税は年110万円を超える贈与に課税されるが、住宅取得資金の非課税措置で最大1000万円まで非課税に
  • マンションの相続税評価は「敷地権割合×土地評価額+建物評価額」で計算される
  • 小規模宅地等の特例により、居住用マンションの評価額を最大80%減額できる
  • 相続時精算課税制度は2500万円まで非課税だが、選択後は暦年贈与に戻れない

(1) 相続税:相続時の財産評価に課税

相続税は、被相続人(亡くなった方)から財産を相続した際に課される税金です。マンションを含む不動産は相続財産として評価され、相続税の課税対象となります。ただし、すべての相続に相続税がかかるわけではありません。国税庁の相続税のあらましによれば、基礎控除額を超える財産がある場合にのみ相続税が課税されます。

(2) 贈与税:資金援助で発生する可能性

贈与税は、個人から財産の贈与を受けた場合に課される税金です。親からマンション購入資金の援助を受ける場合、年110万円を超える金額には贈与税がかかる可能性があります。国税庁の贈与税のあらましでは、この基礎控除について詳しく解説されています。

(3) 購入時に知るべき基礎知識

マンション購入時には、住宅取得資金の贈与税非課税措置や相続時精算課税制度など、税負担を軽減できる制度があります。これらを適切に活用することで、合法的に税負担を抑えながら資金援助を受けることが可能です。ただし、各制度には適用要件や手続きが必要なため、事前に確認することが重要です。

相続税の基礎知識と計算方法

(1) 基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)

相続税には基礎控除額が設定されており、相続財産の総額がこの金額以下であれば相続税はかかりません。国税庁の相続税のあらましによれば、基礎控除額の計算式は以下の通りです。

基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば、法定相続人が配偶者と子2人の計3人の場合、基礎控除額は3000万円 + 600万円 × 3人 = 4800万円となります。相続財産の総額がこれを超えなければ、相続税の申告も納税も不要です。

(2) 相続税がかかるケースとは

相続財産の総額が基礎控除額を超える場合に相続税が課税されます。相続財産には、現金・預貯金・株式・不動産(マンション含む)・生命保険金(非課税枠を超える部分)などが含まれます。マンションを所有している場合、その評価額も相続財産に含まれるため、他の財産と合算して基礎控除額を超えるかどうかを確認する必要があります。

(3) マンション所有と相続税の関係

マンションを所有している場合、相続時にはその評価額が相続財産として計上されます。評価額の計算方法については後述しますが、一般的に不動産の相続税評価額は時価よりも低く算定されることが多いです。また、居住用マンションの場合、小規模宅地等の特例を適用することで評価額をさらに減額できる可能性があります。

贈与税の仕組みと基礎控除

(1) 基礎控除(年110万円)の活用

贈与税には年110万円の基礎控除があります。国税庁の贈与税のあらましによれば、1年間(1月1日から12月31日まで)に受けた贈与の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も不要です。

(2) 暦年贈与による節税

基礎控除を利用した「暦年贈与」は、長期的な節税対策として活用されています。例えば、親から毎年110万円以内の贈与を受ければ、贈与税がかからずに資金を受け取ることができます。マンション購入資金を計画的に準備する場合、数年間にわたって暦年贈与を受けることも一つの方法です。

ただし、定期贈与(最初からまとまった金額を分割して贈与する契約)とみなされると、贈与税が課される可能性があるため注意が必要です。

(3) 親からの資金援助と贈与税

親からマンション購入資金の援助を受ける場合、年110万円を超える金額には原則として贈与税がかかります。贈与税の税率は累進課税で、贈与額が大きいほど税率も高くなります。ただし、後述する住宅取得資金の贈与税非課税措置や相続時精算課税制度を活用することで、税負担を軽減または回避できる可能性があります。

住宅取得資金の贈与税非課税措置

(1) 最大1000万円まで非課税

国税庁の住宅取得等資金の贈与税の非課税措置によれば、直系尊属(父母・祖父母)からマンション購入資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば最大1000万円まで贈与税が非課税になります。この制度は、基礎控除(年110万円)とは別枠で利用できるため、合計で最大1110万円まで非課税で贈与を受けることが可能です。

(2) 適用要件(床面積50㎡以上・所得制限等)

この非課税措置を受けるためには、以下のような要件を満たす必要があります。

  • 贈与を受ける人が直系卑属(子・孫)であること
  • 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1000万円以下)
  • 取得する住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下(一定の場合は40㎡以上)
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住開始または居住確実であること

(3) 申告手続きと必要書類

非課税措置を受けるためには、たとえ贈与税がゼロでも必ず贈与税の申告が必要です。申告期限は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。申告時には、住宅の登記事項証明書、売買契約書の写し、源泉徴収票などの書類が必要になります。申告を忘れると非課税措置が受けられなくなるため注意が必要です。

相続時精算課税制度の活用

(1) 2500万円まで特別控除

国税庁の相続時精算課税制度によれば、この制度を選択すると、累計で2500万円まで贈与税が非課税になります。贈与時には贈与税がかからず、贈与者が亡くなった時に相続税で精算する仕組みです。まとまった金額のマンション購入資金を一度に受け取りたい場合に有効な制度です。

(2) マンション購入資金への適用

親からマンション購入資金として2000万円の援助を受ける場合、相続時精算課税制度を選択すれば、贈与時の贈与税は発生しません。住宅取得資金の非課税措置(最大1000万円)と併用することも可能です。例えば、3000万円の援助を受ける場合、非課税措置で1000万円、相続時精算課税で2000万円をカバーし、贈与税をゼロにすることができます。

(3) 選択後は暦年贈与に戻れない注意点

相続時精算課税制度には重要な注意点があります。一度この制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与について、暦年贈与(年110万円の基礎控除)に戻ることができません。また、少額の贈与でも毎回申告が必要になります。将来的に長期間にわたって暦年贈与を受ける予定がある場合、制度選択は慎重に検討する必要があります。

マンションの相続税評価方法

(1) 敷地権割合×土地評価額+建物評価額

国税庁の相続財産の評価(マンション)によれば、マンションの相続税評価額は、土地部分と建物部分を分けて計算します。

マンションの評価額 = (敷地全体の評価額 × 敷地権割合)+ 専有部分の建物評価額

敷地権割合は、登記簿に記載されている割合です。土地部分は路線価方式または倍率方式で評価し、建物部分は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。一般的に、マンションの相続税評価額は市場価格(時価)よりも低くなる傾向があります。

(2) 小規模宅地等の特例(330㎡80%減額)

国税庁の小規模宅地等の特例によれば、被相続人が居住していたマンションを相続する場合、一定の要件を満たせば敷地部分の評価額を最大80%減額できます。

適用要件には、相続人が配偶者であること、または同居していた親族が相続後も継続して居住・保有することなどが含まれます。マンションの場合、敷地権割合に応じた面積が330㎡以内であれば全額が減額対象になります。この特例を適用することで、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。

(3) 評価額と時価の乖離

マンションの相続税評価額は、一般的に市場価格(時価)よりも低く算定されます。特にタワーマンションの高層階などでは、評価額と時価の乖離が大きくなることがあり、これを利用した相続税対策も行われてきました。ただし、近年では評価方法の見直しや規制強化の動きもあるため、最新の税制動向を確認することが重要です。

まとめ

マンション購入と相続税・贈与税の関係について、基礎知識を解説しました。親からの資金援助を受ける場合、住宅取得資金の贈与税非課税措置(最大1000万円)や相続時精算課税制度(2500万円)を活用することで、税負担を軽減できる可能性があります。また、将来の相続を見据える場合、マンションの相続税評価方法や小規模宅地等の特例についても理解しておくことが重要です。

ただし、税制は改正されることがあり、個別のケースによって適用要件や有利な選択肢は異なります。実際に制度を利用する際は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1: 親からマンション購入資金を援助されたら贈与税はかかりますか?

A: 年110万円を超える贈与には贈与税がかかります。ただし、住宅取得等資金の贈与税非課税措置を活用すれば、最大1000万円まで非課税で贈与を受けることができます。適用には床面積50㎡以上、所得制限(2000万円以下)などの要件があり、必ず贈与税の申告が必要です。非課税措置と基礎控除(年110万円)は別枠で利用できるため、合計で最大1110万円まで非課税になります。

Q2: 住宅取得資金の非課税措置と相続時精算課税、どちらが有利ですか?

A: どちらが有利かは状況によって異なります。住宅取得資金の非課税措置は申告のみで完結し、非課税枠は最大1000万円です。一方、相続時精算課税制度は2500万円まで非課税ですが、相続時に精算が必要で、一度選択すると暦年贈与に戻れません。まとまった金額を一度に受け取る必要があり、将来的な暦年贈与の予定がない場合は相続時精算課税が有利なこともあります。個別の状況に応じて税理士に相談することをおすすめします。

Q3: マンションを相続した場合の相続税評価額は?

A: マンションの相続税評価額は「敷地権割合×土地評価額+専有部分の建物評価額」で計算されます。土地部分は路線価方式または倍率方式で評価し、建物部分は固定資産税評価額がそのまま使われます。小規模宅地等の特例を適用できれば、居住用マンションの敷地部分の評価額を最大80%減額できます(330㎡まで)。一般的に、相続税評価額は市場価格(時価)よりも低くなる傾向があります。

Q4: 相続税の基礎控除額を超えなければ申告不要ですか?

A: 相続財産の総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)以下であれば、相続税の申告も納税も不要です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの特例を適用する場合は、結果的に税額がゼロになったとしても申告が必須です。特例適用により基礎控除額を超える相続財産があっても税額がゼロになるケースでは、必ず期限内(相続開始後10か月以内)に申告を行う必要があります。

よくある質問

Q1親からマンション購入資金を援助されたら贈与税はかかりますか?

A1年110万円を超える贈与には贈与税がかかります。ただし、住宅取得等資金の贈与税非課税措置を活用すれば、最大1000万円まで非課税で贈与を受けることができます。適用には床面積50㎡以上、所得制限(2000万円以下)などの要件があり、必ず贈与税の申告が必要です。非課税措置と基礎控除(年110万円)は別枠で利用できるため、合計で最大1110万円まで非課税になります。

Q2住宅取得資金の非課税措置と相続時精算課税、どちらが有利ですか?

A2どちらが有利かは状況によって異なります。住宅取得資金の非課税措置は申告のみで完結し、非課税枠は最大1000万円です。一方、相続時精算課税制度は2500万円まで非課税ですが、相続時に精算が必要で、一度選択すると暦年贈与に戻れません。まとまった金額を一度に受け取る必要があり、将来的な暦年贈与の予定がない場合は相続時精算課税が有利なこともあります。個別の状況に応じて税理士に相談することをおすすめします。

Q3マンションを相続した場合の相続税評価額は?

A3マンションの相続税評価額は「敷地権割合×土地評価額+専有部分の建物評価額」で計算されます。土地部分は路線価方式または倍率方式で評価し、建物部分は固定資産税評価額がそのまま使われます。小規模宅地等の特例を適用できれば、居住用マンションの敷地部分の評価額を最大80%減額できます(330㎡まで)。一般的に、相続税評価額は市場価格(時価)よりも低くなる傾向があります。

Q4相続税の基礎控除額を超えなければ申告不要ですか?

A4相続財産の総額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)以下であれば、相続税の申告も納税も不要です。ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの特例を適用する場合は、結果的に税額がゼロになったとしても申告が必須です。特例適用により基礎控除額を超える相続財産があっても税額がゼロになるケースでは、必ず期限内(相続開始後10か月以内)に申告を行う必要があります。

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