土地購入の相続税・贈与税|評価方法と特例完全ガイド

公開日: 2025/10/20

土地購入に関わる相続税と贈与税を理解する

土地を購入する際、資金を相続や贈与で得る場合があります。このとき、相続税や贈与税がどのように課税されるのか、土地の評価額はどう計算されるのか、小規模宅地等の特例や住宅取得資金贈与の非課税特例が使えるのか、疑問を持つ方も多いでしょう。

本記事では、国税庁の公的情報を基に、土地購入に関わる相続税・贈与税の基礎知識を解説します。

この記事でわかること:

  • 相続税・贈与税の基本的な仕組みと基礎控除
  • 土地の相続税評価方法(路線価方式・倍率方式)
  • 小規模宅地等の特例による評価額減額
  • 生前贈与と相続時精算課税制度の選択
  • 住宅取得資金贈与の非課税特例と土地購入の関係

土地購入と相続税・贈与税の基本

相続税とは

国税庁によれば、相続税は相続により財産を取得した場合に課される国税です。

相続税の基礎控除:

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数

例:

  • 法定相続人2人の場合:3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円
  • 相続財産総額が4,200万円以下なら相続税は非課税

土地を相続する場合、土地の相続税評価額が相続財産に含まれます。

贈与税とは

贈与税は、個人から財産をもらった場合に課される国税です。

贈与税の基礎控除:

  • 年間110万円まで非課税(暦年課税)
  • 110万円を超える部分に対して累進税率(10%~55%)が適用

例:

  • 親から500万円の贈与を受けた場合
  • 課税対象:500万円 - 110万円 = 390万円
  • 贈与税:約53万円(税率・控除額は国税庁の速算表を使用)

土地は高額なため、贈与税が多額になるケースが多く、相続時精算課税制度の活用が検討されます。

土地取得で関係する税金

土地購入時に関係する主な税金:

税金 概要 支払時期
相続税 相続により土地を取得した場合 相続開始から10ヶ月以内
贈与税 贈与により土地購入資金を取得した場合 翌年2/16~3/15
不動産取得税 土地を取得した場合(地方税) 取得後6ヶ月~1年半後
登録免許税 所有権移転登記時(国税) 登記申請時

土地の相続税評価方法

路線価方式

国税庁によれば、市街地の土地は「路線価方式」で評価されます。

路線価方式の計算:

評価額 = 路線価 × 面積 × 各種補正率

路線価:

  • 国税庁が毎年7月に公表
  • 道路に面した土地の1㎡あたりの評価額(千円単位)
  • 国税庁のWebサイト「路線価図」で確認可能

補正率の例:

  • 奥行価格補正率:土地の奥行きによる補正
  • 不整形地補正率:形状が不整形な土地の補正
  • 間口狭小補正率:間口が狭い土地の補正

計算例:

  • 路線価:300千円/㎡(300D)
  • 面積:150㎡
  • 奥行価格補正率:1.00(標準的な奥行き)
  • 評価額:300千円 × 150㎡ × 1.00 = 4,500万円

倍率方式

路線価が設定されていない郊外や地方の土地は「倍率方式」で評価されます。

倍率方式の計算:

評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

倍率:

  • 国税庁が地域ごとに設定(例:1.1倍、1.2倍など)
  • 「評価倍率表」で確認可能

計算例:

  • 固定資産税評価額:2,000万円
  • 倍率:1.1倍
  • 評価額:2,000万円 × 1.1 = 2,200万円

評価額の計算例

ケース:路線価方式で自宅の土地を相続

  • 路線価:400千円/㎡
  • 面積:200㎡
  • 補正率:1.00
  • 相続税評価額:400千円 × 200㎡ = 8,000万円
  • 小規模宅地等の特例適用後(後述):8,000万円 × 20% = 1,600万円

小規模宅地等の特例により、実際の課税対象額は大幅に減額されます。

小規模宅地等の特例

特例の概要

国税庁によれば、小規模宅地等の特例は、居住用や事業用の土地を相続した場合、一定面積まで評価額を大幅に減額できる制度です。

減額率と対象面積:

土地の用途 対象面積 減額率
居住用(特定居住用宅地等) 330㎡まで 80%減額
事業用(特定事業用宅地等) 400㎡まで 80%減額
貸付用(貸付事業用宅地等) 200㎡まで 50%減額

居住用で330㎡まで80%減額されるため、評価額を大きく圧縮できます。

居住用宅地の適用要件

特定居住用宅地等の主な要件:

  1. 配偶者が相続する場合:無条件で適用
  2. 同居親族が相続する場合
    • 相続開始前から同居していること
    • 相続税申告期限まで引き続き居住・所有していること
  3. 同居していない親族(家なき子)が相続する場合
    • 相続開始前3年以内に自己または配偶者の持ち家に住んでいないこと
    • その他細かい要件あり

配偶者または同居親族が相続するケースが最も適用しやすい形です。

事業用宅地との違い

事業用宅地の特例も80%減額ですが、対象面積が400㎡までとなります。

特定事業用宅地等の要件:

  • 被相続人が事業(不動産貸付業を除く)に使用していた土地
  • 相続人が事業を引き継ぎ、申告期限まで継続すること

居住用と事業用を併用する場合、合計で最大730㎡まで適用可能ですが、計算式が複雑になるため税理士への相談が推奨されます。

生前贈与と相続時精算課税制度

暦年贈与(年110万円控除)

暦年贈与は、毎年110万円の基礎控除を利用した贈与です。

メリット:

  • 毎年110万円まで非課税で贈与可能
  • 長期間にわたり少額ずつ贈与することで、相続財産を圧縮できる

デメリット:

  • 土地のような高額資産には不向き(年110万円では数十年かかる)
  • 110万円を超えると累進税率(最高55%)が適用

相続時精算課税制度(2500万円まで)

国税庁によれば、相続時精算課税制度は、生前に2,500万円まで贈与税を非課税とし、相続時に贈与財産を相続財産に加算して精算する制度です。

制度の概要:

  • 2,500万円まで贈与税非課税
  • 2,500万円を超える部分は一律20%の税率
  • 贈与者が死亡した際、贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算

選択要件:

  • 贈与者:60歳以上の父母または祖父母
  • 受贈者:18歳以上の子または孫
  • 一度選択すると、同じ贈与者からの暦年贈与には戻れない

土地贈与での活用例:

  • 評価額2,000万円の土地を贈与
  • 贈与税:0円(2,500万円以内)
  • 相続時に2,000万円を相続財産に加算

どちらが有利か

暦年贈与が有利なケース:

  • 贈与額が少額(年数百万円以内)
  • 長期的に財産を移転できる(10年以上)
  • 贈与者の相続までに時間的余裕がある

相続時精算課税が有利なケース:

  • 高額資産(土地等)を一括贈与したい
  • 贈与者の相続が近い将来に見込まれる
  • 贈与財産の価値上昇が予想される(贈与時の評価額で固定)

土地のような高額資産は相続時精算課税制度が選ばれやすいですが、一度選択すると取り消せないため、税理士への事前相談が重要です。

住宅取得資金贈与と土地購入

住宅取得資金贈与の非課税特例

国税庁によれば、親や祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合、一定額まで贈与税が非課税となる特例があります。

非課税枠(2024年時点の例):

  • 省エネ住宅等:最大1,000万円
  • その他の住宅:最大500万円

適用要件:

  • 贈与者:父母または祖父母
  • 受贈者:18歳以上の子または孫
  • 用途:自己居住用の住宅取得または増改築
  • 所得制限:受贈者の年間所得2,000万円以下

土地のみ購入時の適用要件

土地のみを購入する場合でも、住宅取得資金贈与の非課税特例は適用可能ですが、以下の要件を満たす必要があります。

土地先行取得の要件:

  • 土地取得後2年以内に建築着工すること
  • 建物完成後、遅滞なく居住すること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに土地取得を完了すること

これらの要件を満たせば、土地購入資金も非課税特例の対象となります。

2年以内の建築着工要件

土地先行取得の場合、2年以内の建築着工が必須です。

注意点:

  • 着工とは建築確認を取得し、工事が開始された状態を指す
  • 2年以内に着工できない場合、非課税特例は適用されず、贈与税の修正申告と追徴課税が発生
  • 設計や建築業者選定に時間がかかる場合は、土地購入前に目処をつけておくことが推奨される

土地のみ購入する場合は、この要件に注意しましょう。

土地購入時の税務手続き

相続税申告期限(10ヶ月)

相続により土地を取得した場合、相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内です。

手続きの流れ:

  1. 相続開始:被相続人の死亡日
  2. 遺産分割協議:相続人全員で遺産の分け方を決定
  3. 相続税評価:土地の評価額を算定(路線価方式または倍率方式)
  4. 相続税申告:相続開始から10ヶ月以内に税務署へ申告
  5. 相続税納付:申告期限と同日

延長不可: 相続税の申告期限は延長できません。期限を過ぎると加算税や延滞税が課されるため、早めに税理士へ相談することが重要です。

贈与税申告期限(翌年3/15)

贈与により土地購入資金を取得した場合、贈与税の申告期限は翌年2月16日~3月15日です。

手続きの流れ:

  1. 贈与を受けた年:贈与契約締結、資金受領
  2. 翌年2/16~3/15:贈与税申告書を税務署へ提出
  3. 同時に納付:申告と同時に贈与税を納付

住宅取得資金贈与の非課税特例を使う場合:

  • 非課税枠内でも申告が必要
  • 申告しないと非課税特例は適用されず、通常の贈与税が課される

登記時の評価と課税

土地を取得した際、所有権移転登記を行います。このとき登録免許税が課されます。

登録免許税(売買による所有権移転):

  • 税率:固定資産税評価額の2%(土地は軽減措置で1.5%)
  • 例:評価額3,000万円の土地なら45万円

不動産取得税(地方税):

  • 税率:固定資産税評価額の3%(軽減措置あり)
  • 支払時期:取得後6ヶ月~1年半後

相続による取得の場合、登録免許税は0.4%、不動産取得税は非課税となります。

まとめ

土地購入に関わる相続税・贈与税は、評価方法や特例により税負担が大きく変わります。

重要なポイント:

  • 相続税は基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える部分に課税
  • 土地の相続税評価は路線価方式(市街地)または倍率方式(郊外)で算定
  • 小規模宅地等の特例により、居住用土地は330㎡まで80%減額可能
  • 生前贈与は暦年贈与(年110万円)または相続時精算課税(2,500万円)を選択
  • 住宅取得資金贈与の非課税特例は土地先行取得でも適用可能(2年以内の着工要件あり)
  • 相続税申告は10ヶ月以内、贈与税申告は翌年3/15までが期限

国税庁の公式情報を参考にしながら、税理士や不動産会社などの専門家と連携し、適切な税務対策を行うことが重要です。

よくある質問

Q1土地の相続税評価額はどのように決まりますか?

A1土地の相続税評価額は、市街地では「路線価方式」、郊外では「倍率方式」で算定されます。路線価方式は、国税庁が毎年7月に公表する路線価(道路に面した土地の1㎡あたりの評価額)に面積と各種補正率を乗じて計算します。倍率方式は、固定資産税評価額に国税庁が地域ごとに設定した倍率(例:1.1倍)を乗じて算定します。路線価図や評価倍率表は国税庁のWebサイトで確認できます。

Q2小規模宅地等の特例で土地の評価額はどのくらい下がりますか?

A2小規模宅地等の特例により、居住用土地は330㎡まで80%減額、事業用土地は400㎡まで80%減額されます。例えば、相続税評価額8,000万円の居住用土地(200㎡)の場合、特例適用後は1,600万円(8,000万円×20%)となります。配偶者または同居親族が相続する場合に適用しやすく、大幅な税負担軽減が期待できます。

Q3土地のみ購入する場合、住宅取得資金贈与の非課税特例は使えますか?

A3土地のみ購入する場合でも、住宅取得資金贈与の非課税特例は適用可能ですが、土地取得後2年以内に建築着工することが要件となります。着工とは建築確認を取得し、工事が開始された状態を指します。2年以内に着工できない場合、非課税特例は適用されず、贈与税の修正申告と追徴課税が発生します。また、贈与を受けた年の翌年3月15日までに土地取得を完了し、非課税特例の申告を行う必要があります。

Q4相続時精算課税制度を選ぶと暦年贈与は使えなくなりますか?

A4相続時精算課税制度を一度選択すると、同じ贈与者からの暦年贈与(年110万円の基礎控除)は使えなくなります。ただし、別の贈与者(例:父から相続時精算課税、母から暦年贈与)であれば併用可能です。相続時精算課税は2,500万円まで贈与税非課税ですが、贈与者の相続時に贈与財産が相続財産に加算されます。一度選択すると取り消せないため、将来の相続税負担も含めて税理士に相談してから判断することが重要です。

関連記事