マンション購入の引き渡し・引越し|基礎知識と手続きの流れ

公開日: 2025/10/19

マンション購入後の引き渡しと引越しの流れを理解する

初めてマンションを購入する場合、引き渡しから入居までの流れや必要な手続きがわからず不安を感じる方も多いでしょう。マンション購入では、戸建てと異なり、管理組合への加入や管理費・修繕積立金の支払い開始など、マンション特有の手続きが発生します。

本記事では、金融庁・国土交通省・総務省などの公的情報を基に、マンション購入における引き渡しから引越しまでの基礎知識を解説します。

この記事でわかること:

  • 売買契約から引き渡しまでの全体スケジュール
  • 引き渡し当日に必要な書類と手続きの流れ
  • マンション特有の管理組合加入と管理費・修繕積立金
  • 引き渡し時に発生する諸費用と税金
  • 引き渡し後の引越し手続きと住民票異動

マンション購入の引き渡しまでの流れ

売買契約から引き渡しまでの全体スケジュール

マンション購入では、売買契約締結から引き渡しまで通常1~2ヶ月程度の期間があります。この間に住宅ローンの本審査、火災保険の手配、引越し準備などを進めます。

一般的なスケジュール:

時期 買主の対応
売買契約締結日 手付金支払い(物件価格の5~10%)
契約後1~2週間 住宅ローン本審査申込
契約後2~3週間 ローン承認、火災保険加入手続き
引き渡し1週間前 内覧会参加(新築の場合)、最終確認
引き渡し前日 残金および諸費用の準備、必要書類確認
引き渡し当日 残金決済、所有権移転登記、鍵の受け渡し

新築マンションの場合、引き渡し前に「内覧会」が開催されることが一般的です。

内覧会での確認ポイント(新築の場合)

新築マンションでは、引き渡しの1~2週間前に内覧会が開催され、完成した住戸の状態を確認できます。

内覧会でチェックすべき主な項目:

  • 傷・汚れ: 壁、床、天井の傷や汚れ
  • 建具の動作: ドア、窓、収納扉の開閉がスムーズか
  • 設備の動作: 水道、電気、換気扇、インターホン等
  • 図面との相違: 間取りや設備が契約図面と一致しているか
  • 共用部分: エントランス、廊下、エレベーターの仕上がり

不具合が見つかった場合、引き渡しまでに売主が補修します。内覧会には専門家(ホームインスペクター)に同行してもらう方法もあります。

住宅ローン実行と残金決済のタイミング

引き渡し当日に住宅ローンが実行され、残金決済が行われます。金融庁によれば、住宅ローンは審査承認後、金銭消費貸借契約(金消契約)を締結し、引き渡し日に融資が実行されます。

ローン実行の流れ:

  1. 引き渡し日の1~2週間前:金消契約締結
  2. 引き渡し当日:金融機関から売主の口座へ融資金が振り込まれる
  3. 売主が残金受領を確認後、所有権移転登記手続きを開始

住宅金融支援機構のフラット35を利用する場合も同様の流れです。

引き渡し当日の手続きと必要書類

引き渡し当日の流れと立ち会い者

引き渡しは通常、不動産会社の店舗または金融機関で行われます。立ち会うのは、買主、売主、不動産会社担当者、司法書士、金融機関担当者(住宅ローン利用時)です。

引き渡し当日の流れ(所要時間1~2時間):

  1. 登記書類への署名・捺印(司法書士が確認)
  2. 残金および諸費用の支払い確認
  3. 住宅ローン実行の確認(金融機関から売主口座へ振込)
  4. 固定資産税・管理費等の精算
  5. 鍵の受け渡し
  6. 所有権移転登記の申請(司法書士が法務局へ)
  7. 物件引き渡し完了

必要書類と印鑑の準備

引き渡し当日に必要な書類は以下の通りです:

買主が準備する書類:

  • 身分証明書(運転免許証、パスポート等)
  • 実印と印鑑証明書(3ヶ月以内)
  • 住民票(登記用、3ヶ月以内)
  • 残金および諸費用の支払いに必要な通帳・キャッシュカード
  • 住宅ローン契約書類(金消契約書)
  • 火災保険証券

印鑑は実印と銀行印の両方を持参します。金融機関によっては当日に通帳への記帳を求められる場合もあります。

鍵の受け渡しと所有権移転登記

残金決済と同時に、売主から鍵を受け取ります。マンションの場合、以下の鍵が渡されます:

  • 玄関鍵(通常2本以上)
  • ポスト鍵
  • オートロック用鍵またはカードキー
  • 駐車場・専用庭の鍵(該当者のみ)

所有権移転登記は司法書士が代行し、引き渡し当日に法務局へ申請します。登記完了まで1~2週間程度かかり、完了後に登記識別情報(権利証に相当)が交付されます。

マンション特有の加入手続きと費用

管理組合への加入手続き

マンションを購入すると、自動的に管理組合の組合員になります。引き渡し当日または後日、管理会社から以下の書類を受け取ります:

  • 管理規約と使用細則
  • 管理費・修繕積立金の口座振替依頼書
  • 駐車場・専用庭等の利用申込書(該当者のみ)
  • 管理組合の総会資料(直近分)

管理規約には、ペット飼育の可否、リフォームの制限、騒音に関するルールなど、マンション生活に関わる重要事項が記載されています。

管理費・修繕積立金の開始時期と金額

国土交通省によれば、管理費と修繕積立金はマンションの共用部分を維持管理するために必要な費用です。

管理費:

  • 用途: エレベーター保守、清掃、管理人給与、共用部分の光熱費等
  • 相場: 月額1万~2万円程度(専有面積や設備により変動)
  • 開始時期: 引き渡し日から日割り計算で発生

修繕積立金:

  • 用途: 大規模修繕(外壁塗装、配管交換、屋上防水等)に備えた積立金
  • 相場: 月額5千~1万円程度(築年数により段階的に増額される場合あり)
  • 開始時期: 引き渡し日から日割り計算で発生

管理費・修繕積立金は口座振替が一般的で、引き渡し後1~2ヶ月以内に口座振替依頼書を提出します。

駐車場・専用庭の利用申込

駐車場や専用庭(1階住戸)を利用する場合、別途使用料が発生します。

駐車場:

  • 月額使用料:5千~3万円程度(地域・マンションにより大きく異なる)
  • 抽選または先着順で利用者を決定
  • 管理組合または管理会社へ利用申込書を提出

専用庭:

  • 月額使用料:数千円程度
  • 1階住戸の専用使用権として、管理費とは別に徴収
  • 使用細則で植栽や物置設置のルールが定められる

引き渡し時の諸費用と税金

登録免許税と不動産取得税

マンション購入時には以下の税金が発生します。

登録免許税:

  • 所有権移転登記にかかる税金(国税)
  • 税率:土地は固定資産税評価額の1.5%(軽減措置適用時)、建物は2%(新築は0.15%)
  • 支払時期:引き渡し当日(司法書士が代行)

不動産取得税:

  • 不動産取得時に課される地方税(都道府県税)
  • 税率:固定資産税評価額の3%(軽減措置あり)
  • 支払時期:取得後6ヶ月~1年半後に納税通知書が送付される
  • 新築マンションで床面積50㎡以上の場合、建物評価額から1,200万円控除される軽減措置あり

国税庁・総務省の情報によれば、住宅用マンションは軽減措置により税負担が大幅に軽減されます。

仲介手数料と司法書士報酬

その他の諸費用:

仲介手数料:

  • 物件価格の3%+6万円(税別)が上限
  • 例:3,000万円の物件なら最大105.6万円(税込)
  • 引き渡し時に支払うことが一般的

司法書士報酬:

  • 所有権移転登記と抵当権設定登記の手数料
  • 相場:5万~15万円程度(地域・物件により変動)

住宅ローン控除の適用要件と申請

国税庁によれば、住宅ローンを利用してマンションを購入した場合、年末ローン残高の0.7%を所得税・住民税から最長13年間控除できる「住宅ローン控除」が適用される可能性があります。

主な適用要件:

  • 自己居住用の住宅であること
  • 床面積が50㎡以上(一定の場合は40㎡以上)
  • 借入期間が10年以上
  • 年間所得が2,000万円以下
  • 引き渡しから6ヶ月以内に入居し、年末まで居住していること

申請方法:

  1. 初年度:確定申告で申請(翌年2~3月)
  2. 2年目以降:年末調整で申請(給与所得者の場合)

住宅ローン控除を受けるためには、引き渡し後速やかに入居し、住民票を異動させることが重要です。

引き渡し後の引越し手続き

住民票異動の手続きと期限

総務省によれば、引越し後14日以内に住民票の異動手続きを行うことが法律で義務付けられています。

手続きの流れ:

  1. 転出届: 旧住所の市区町村役場で転出証明書を取得
  2. 転入届: 新住所の市区町村役場で転入届を提出(転出証明書を添付)
  3. マイナンバーカードの住所変更: 転入届と同時に手続き可能

期限内に手続きしないと5万円以下の過料が科される可能性があります。また、住民票の異動は住宅ローン控除の適用要件にも関わるため、早めの手続きが推奨されます。

公共料金の開始手続きと名義変更

引き渡し後すぐに入居する場合、事前に以下の手続きを済ませておきます:

電気・ガス・水道:

  • 引き渡し日の1週間前までに各事業者へ連絡し、開始日を指定
  • ガスは開栓時に立ち会いが必要(所要時間30分程度)
  • 電気・水道は立ち会い不要の場合が多い

インターネット・固定電話:

  • 開通工事が必要な場合、2週間~1ヶ月程度かかることがある
  • 引越し繁忙期(3~4月)は早めの予約が必要

郵便転送と各種サービスの住所変更

その他の手続き:

  • 郵便局の転送サービス: 1年間有効、無料、最寄りの郵便局または郵便局のWebサイトで申込
  • 銀行・クレジットカード: 住所変更手続き(Webまたは郵送)
  • 自動車・運転免許証: 住所変更手続き(警察署または運転免許センター)
  • 各種保険: 生命保険、損害保険、自動車保険の住所変更

これらは引越し後1~2週間以内に順次対応しましょう。

マンション購入でよくある質問と注意点

よくあるトラブルと対策:

トラブル 原因 対策
引き渡し日に鍵がもらえない 売主側の準備遅れ 事前に不動産会社へ確認
管理費が想定より高額 事前確認不足 契約前に管理費・修繕積立金を確認
住宅ローン控除が適用されない 入居遅れ、住民票未異動 引き渡し後6ヶ月以内に入居・住民票異動
駐車場が利用できない 空き待ち 購入前に駐車場空き状況を確認

注意すべきポイント:

  • 引き渡し前の内覧会で不具合を漏れなくチェック
  • 管理規約を事前に確認し、生活ルールを理解
  • 引越し業者の予約は引き渡し日確定後に(繁忙期は早めに)
  • 住民票異動と住宅ローン控除申請を忘れずに

まとめ

マンション購入における引き渡しと引越しは、戸建てとは異なる手続きやマンション特有の費用が発生します。

重要なポイント:

  • 引き渡しは売買契約から1~2ヶ月後、内覧会で不具合をチェック
  • 引き渡し当日は残金決済、所有権移転登記、鍵の受け渡しを実施
  • 管理組合への加入と管理費・修繕積立金の支払いが引き渡し日から開始
  • 登録免許税、不動産取得税、仲介手数料などの諸費用が発生
  • 引越し後14日以内に住民票異動、住宅ローン控除申請を忘れずに

金融庁、国土交通省、総務省などの公的情報を参考にしながら、不動産会社や司法書士、税理士などの専門家とも連携し、計画的に手続きを進めることが大切です。

よくある質問

Q1引き渡し当日に必要な書類は何ですか?

A1身分証明書(運転免許証等)、実印と印鑑証明書(3ヶ月以内)、住民票(登記用、3ヶ月以内)、残金および諸費用の支払いに必要な通帳・キャッシュカード、住宅ローン契約書類(金消契約書)、火災保険証券が必要です。印鑑は実印と銀行印の両方を持参し、金融機関によっては当日に通帳への記帳を求められる場合もあります。事前に不動産会社や司法書士に確認リストをもらっておくと安心です。

Q2管理費と修繕積立金はいつから支払いが始まりますか?

A2引き渡し日から日割り計算で発生することが一般的です。管理費は共用部分(エレベーター保守、清掃、管理人給与等)の維持管理費用で月額1万~2万円程度、修繕積立金は大規模修繕(外壁塗装、配管交換等)に備えた積立金で月額5千~1万円程度が相場です。マンションにより金額は異なり、管理組合への加入は引き渡しと同時に必須となります。口座振替依頼書は引き渡し後1~2ヶ月以内に提出します。

Q3不動産取得税はいつ支払うのですか?

A3不動産取得後6ヶ月から1年半後に都道府県から納税通知書が送付されます。税率は固定資産税評価額の3%が基本ですが、住宅用マンションの場合は軽減措置が適用されます。新築マンションで床面積50㎡以上の場合、建物評価額から1,200万円が控除され、税負担が大幅に軽減されます。納付期限は通知書に記載されているため、忘れずに支払いましょう。

Q4引き渡し後すぐに引越しできますか?

A4引き渡し当日に鍵を受け取れば即日入居可能です。ただし、電気・ガス・水道の開始手続きを事前に済ませておく必要があります。特にガスは開栓時に立ち会いが必要なため、引き渡し日の1週間前までに事業者へ連絡し、開始日を指定しておきましょう。引越し業者の予約は引き渡し日確定後に行い、住民票異動は引越し後14日以内に行う法的義務があります。住宅ローン控除を受けるためにも、引き渡しから6ヶ月以内に入居し、住民票を異動させることが重要です。

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