買い替え土地売却|引き渡しから資金管理までのガイド

公開日: 2025/10/14

買い替えで土地を売却する際の引き渡しと資金管理

買い替えで土地を売却する場合、売却代金を新しい土地の購入資金に充てるケースが多く、売却と購入の引き渡しタイミングの調整が重要です。建物付き土地の場合は解体判断も必要になります。売却先行・購入先行・同時決済の3パターン別に、スムーズな引き渡しと資金管理のポイントを押さえましょう。

この記事のポイント

  • 買い替えは売却先行・購入先行・同時決済の3パターンがある
  • 建物付き土地は更地渡しか古家付き売却かの判断が必要(解体費数十万~数百万円)
  • 引き渡し当日は残代金受領・所有権移転登記・境界確認を実施
  • 売却代金を新居購入に充てる場合はつなぎ融資や買い替えローンを検討
  • 譲渡所得税は翌年2-3月に確定申告が必要(居住用3000万円特別控除は建物とセット時のみ)

1. 買い替えでの土地売却における引き渡しの流れ

(1) 買い替えの全体スケジュール

買い替えで土地を売却する場合の一般的なスケジュール:

時期 手続き
売却活動開始 査定・媒介契約・購入物件探し
売買契約(売却・購入) 手付金受領・支払い
契約~引き渡し(1~2ヶ月) 境界確定、建物解体(必要に応じて)
引き渡し当日 残代金受領、所有権移転登記
引き渡し後 売却代金を購入資金に充当、仮住まい手配
翌年2-3月 譲渡所得税の確定申告

(2) 売却と購入の二重手続き

買い替えでは、土地の売却と新しい土地(または住宅)の購入を並行して進めます:

売却物件の手続き

  • 売買契約、境界確定・測量
  • 建物解体(更地渡しの場合)
  • 住宅ローン残債の完済、抵当権抹消登記

購入物件の手続き

  • 売買契約、住宅ローン審査
  • 売却代金を頭金に充当する計画の確定
  • 所有権移転登記、抵当権設定登記

(3) 引き渡しと引越しの関係

土地のみの売却の場合、「引越し」は発生しませんが、建物付き土地を売却する場合は以下のパターンがあります:

  • 更地渡し: 引き渡し前に建物を解体→引越しが必要
  • 古家付き渡し: 建物はそのまま買主に引き渡す→引越しは不要だが価格は下がる傾向

2. 買い替えパターン別の引き渡し戦略

(1) 売却先行:資金確保優先

メリット

  • 売却代金が確定してから新しい土地を購入できる
  • 資金計画が確実で、つなぎ融資が不要
  • 二重ローンのリスクがない

デメリット

  • 仮住まいコストが発生(賃貸契約・引越し費用)
  • 理想の土地が見つかるまで時間がかかる可能性

おすすめの人

  • 資金に余裕がなく、確実性を重視したい方
  • 住宅ローン残債がある方

(2) 購入先行:理想の土地探し優先

メリット

  • じっくり理想の土地を探せる
  • 売却を急がないため、売却価格交渉で有利

デメリット

  • 二重ローンのリスク(既存ローン+新規ローン)
  • つなぎ融資の金利負担が発生
  • 既存物件が売れないリスク

おすすめの人

  • 資金に余裕がある方
  • 理想の立地・条件にこだわりたい方

(3) 同時決済:資金繰りがスムーズ

メリット

  • 売却代金を新土地購入にそのまま充当できる
  • つなぎ融資や二重ローンが不要
  • 仮住まい期間を最小化できる

デメリット

  • 売却と購入のタイミング調整が困難
  • 双方の不動産会社・司法書士との綿密な連携が必須

おすすめの人

  • 売却・購入の時期が合致している方
  • 不動産会社のサポートを受けられる方

3. 引き渡し前の準備(買い替え特有のポイント)

(1) 住宅ローン残債の清算準備

土地に住宅ローンの抵当権が設定されている場合、引き渡し前に完済して抵当権を抹消する必要があります:

手続きの流れ

  1. 金融機関に売却予定を通知
  2. 残債額の確認(一括返済額の計算)
  3. 売却代金で残債を完済
  4. 抵当権抹消登記(司法書士が代行)

売却代金で残債を完済できない場合(オーバーローン)は、自己資金で補填するか、買い替えローンを検討します。

(2) 境界確定・測量図の準備

土地売却では、境界確定と測量図の準備が必須です:

必要な書類

  • 地積測量図(法務局で取得可能)
  • 境界確認書(隣地所有者との境界を確認した書類)
  • 実測図(測量士による最新の測量図)

境界が不明確な場合は、売主負担で境界確定測量を実施するのが一般的です(費用30~50万円程度、期間1~2ヶ月)。

(3) 建物付き土地の場合の解体判断

建物付き土地を売却する場合、更地渡しか古家付き渡しかを判断します:

更地渡しのメリット・デメリット

  • メリット: 高値で売れる可能性、買主がすぐに建築可能
  • デメリット: 解体費用(数十万~数百万円)、解体期間(1~2週間)

古家付き渡しのメリット・デメリット

  • メリット: 解体費用不要、買主が建物を活用できる可能性
  • デメリット: 売却価格が下がる傾向、買主が限定される

不動産会社への査定依頼で、どちらが有利か判断材料を得ることを推奨します。

(4) 売却代金の活用計画

売却代金を新しい土地購入にどう充てるかを明確にします:

  • 全額充当: 売却代金を全額新土地の購入資金に
  • 一部充当: 売却代金の一部を頭金に、残りは住宅ローンで
  • 別用途: 売却代金は貯蓄、新土地購入は別途ローン

金融機関に事前相談し、資金繰りを明確化することが重要です。

4. 引き渡し当日の手続きと確認事項

(1) 残代金の受領と所有権移転登記

引き渡し当日は、金融機関の応接室で以下の手順で進みます(所要時間1~2時間):

  1. 登記書類の確認(司法書士)
  2. 残代金の受領(買主→売主、銀行振込が一般的)
  3. 固定資産税等の精算(日割り計算)
  4. 仲介手数料の支払い(売主→不動産会社)
  5. 関連書類の引き渡し(測量図、境界確認書など)
  6. 所有権移転登記の申請(司法書士が法務局へ)

引き渡し当日の持ち物(売主)

  • 実印・印鑑証明書
  • 本人確認書類
  • 登記済権利証または登記識別情報
  • 固定資産税納税通知書
  • 地積測量図・境界確認書
  • 建物解体証明書(更地渡しの場合)

(2) 鍵・関連書類の引き渡し

土地の場合、「鍵」は存在しませんが、以下の書類を買主に引き渡します:

  • 地積測量図
  • 境界確認書
  • 土地の登記済権利証または登記識別情報のコピー
  • 固定資産税評価証明書
  • 地盤調査報告書(実施済みの場合)
  • 建物解体証明書(更地渡しの場合)

(3) 現地立会いでの境界確認

引き渡し前または当日に、売主・買主が現地で境界を確認します:

確認ポイント

  • 境界標の位置と数
  • 隣地所有者との境界の明確さ
  • 測量図との整合性
  • 越境物の有無(隣地の塀・枝など)

境界トラブルを防ぐため、事前に隣地所有者と境界を確認し、境界確認書に署名・押印をもらうことが重要です(法務省「不動産の引渡しに関する法的手続き」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00124.html)。

(4) 公共料金の清算・解約

建物付き土地を売却した場合、公共料金の清算・解約が必要です:

契約 手続き
電気 引き渡し日に解約、日割り精算
ガス 引き渡し日に閉栓(立会い必要)、日割り精算
水道 引き渡し日に解約、日割り精算

5. 引き渡し後の資金管理と購入準備

(1) 売却代金の受け取りと管理

引き渡し当日に受領した売却代金は、以下の用途で管理します:

  • 新土地購入の頭金: 売却代金を頭金に充当
  • 住宅ローン完済: 残債がある場合は一部を完済に
  • 税金・諸費用の支払い: 仲介手数料、登記費用、譲渡所得税(翌年)

(2) 新居購入資金への充当

売却代金を新しい土地購入に充てる場合の流れ:

  1. 金融機関に売却代金の入金を確認
  2. 新土地の購入契約時に頭金として支払う
  3. 残額は住宅ローンで借入

(3) つなぎ融資・買い替えローンの活用

タイムラグがある場合、つなぎ融資または買い替えローンを活用します:

つなぎ融資

  • 借入期間: 3ヶ月~1年程度
  • 金利: 通常の住宅ローンより高い(年2.5~4.0%程度)
  • 返済方法: 売却代金で一括返済

買い替えローン

  • 既存ローン残債+新土地購入資金を一本化
  • 審査は通常より厳しい

(4) 仮住まいの手配(必要な場合)

建物付き土地を更地渡しする場合、仮住まいが必要です:

  • 賃貸住宅(月10~20万円程度)
  • マンスリーマンション(月15~30万円程度)
  • 実家・親族宅に一時的に居候

6. 引き渡し後の手続きと生活整理

(1) 住所変更が伴う場合の住民票異動

建物付き土地を売却して引越しする場合、14日以内に住民票の異動が必要です(総務省「引越し時の住民票異動手続き」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/gaiyou.html):

  • 転出届(旧住所の市区町村役場)
  • 転入届(新住所の市区町村役場)

(2) 郵便転送サービス

郵便物の転送手続き:

  • 申込み方法: 郵便局窓口、Webサイト、ポストへの投函
  • 転送期間: 1年間(延長可能)

(3) 各種契約の名義変更・解約

  • 火災保険: 引き渡し日で解約(未経過分は返金)
  • 固定資産税: 1月1日時点の所有者に課税、引き渡し日以降は買主が負担(日割り精算)

(4) 譲渡所得税の確定申告

土地売却の翌年2-3月に確定申告が必要です(国税庁「不動産売却時の税金」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/jouto.htm):

譲渡所得の計算

  • 譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
  • 取得費: 購入時の価格、仲介手数料、登記費用など
  • 譲渡費用: 仲介手数料、測量費、解体費など

注意点

税理士への相談で正確な税額を算出できます。

まとめ

買い替えで土地を売却する場合、売却先行・購入先行・同時決済の3パターンがあり、資金計画と仮住まいコストを考慮して選択します。建物付き土地は更地渡しか古家付き売却かの判断が必要で、解体費は数十万~数百万円かかります。

引き渡し当日は残代金受領・所有権移転登記・境界確認を実施し、売却代金を新土地購入に充てる場合はつなぎ融資や買い替えローンを検討します。譲渡所得税は翌年2-3月に確定申告が必要で、居住用3000万円特別控除は建物とセット時のみ適用されます。不動産会社や税理士に相談し、スムーズな買い替えを実現しましょう。

よくある質問

Q1土地の買い替えで売却先行と購入先行、どちらがおすすめですか?

A1売却先行は資金計画が確実で二重ローンのリスクがありませんが、仮住まいコストが発生します。購入先行は理想の土地をじっくり探せますが、二重ローンやつなぎ融資の金利負担が発生します。資金に余裕があれば購入先行、確実性を重視するなら売却先行がおすすめです。同時決済が理想ですが、売却と購入のタイミング調整が困難なため実現は難しいケースが多いです。

Q2土地売却の引き渡し時に建物の解体は必要ですか?

A2買主の希望によります。更地渡しを求められれば引き渡し前に解体が必要で、解体費は数十万~数百万円かかります。古家付き土地として売却も可能ですが、売却価格が下がる傾向にあります。不動産会社への査定依頼で、更地渡しと古家付き渡しのどちらが有利か判断材料を得ることを推奨します。

Q3売却代金を新居の購入資金に充てる場合の注意点は?

A3引き渡し後すぐに新居購入に充てられる場合は問題ありませんが、タイムラグがある場合はつなぎ融資や買い替えローンを検討する必要があります。売却代金を頭金に充てる計画を金融機関に事前相談し、資金繰りを明確化しましょう。つなぎ融資は金利が高め(年2.5~4.0%程度)なため、利用期間を最小化することが重要です。

Q4土地売却時の譲渡所得税はどのように計算しますか?

A4売却価格から取得費(購入時の価格、仲介手数料、登記費用など)と譲渡費用(仲介手数料、測量費、解体費など)を差し引いた譲渡所得に課税されます。居住用財産の3000万円特別控除は土地のみでは適用できず、建物とセットの場合のみ適用されます。翌年2-3月に確定申告が必要で、税理士への相談で正確な税額を算出できます。

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