土地引き渡しの基本的な流れ
土地売却における引き渡しは、建物付き物件とは異なる特有の手続きが必要です。本記事では、土地売却時の引き渡し・引越しに関する基礎知識を解説します。
この記事のポイント
- 土地引き渡しでは境界確定測量が重要な事前準備となる
- 更地渡しの場合、建物解体のタイミング調整が必要
- 固定資産税は引き渡し日で日割り精算するのが一般的
- 農地の場合は農業委員会への届出が必要
- 引き渡し後も所有権移転登記の確認が重要
土地引き渡しの流れ
(1) 引き渡し当日の流れ
土地の引き渡しは、残代金決済と同時に行われるのが一般的です。国土交通省の資料によれば、引き渡し当日は以下の手続きを実施します。
- 残代金の支払い(買主から売主へ)
- 固定資産税等の精算
- 所有権移転登記の申請(司法書士が代行)
- 測量図・境界確認書等の引き渡し
(2) 残代金決済
売買契約時に支払った手付金を差し引いた残代金を、買主が売主に支払います。住宅ローンを利用する場合は、金融機関から買主への融資実行と同時に決済が行われます。
(3) 書類の引き渡し
土地売却では、以下の書類を買主に引き渡します。
- 権利証(登記識別情報)
- 測量図(確定測量図)
- 境界確認書
- 固定資産税納税通知書
- 印鑑証明書
土地特有の引き渡し準備
(1) 境界確定測量
土地売却では、境界確定測量が重要な準備となります。国土交通省によれば、境界確定測量は法的義務ではありませんが、隣地所有者との境界トラブルを防ぐため、売買契約の前に実施することが推奨されます。
測量には隣地所有者の立ち会いが必要で、完了まで1〜3ヶ月程度かかる場合があります。
(2) 測量図の引き継ぎ
確定測量図は、土地の境界を明確に示す重要な書類です。引き渡し時には、最新の測量図を買主に引き渡します。古い測量図しかない場合は、売却前に新たに測量を実施することが望ましいとされています。
(3) 農地の場合の特別な手続き
農地を売却する場合は、農地法により農業委員会への届出または許可が必要です。農林水産省によれば、以下のケースで手続きが必要となります。
- 農地を農地として売却:農業委員会の許可
- 農地を宅地等に転用して売却:農業委員会の転用許可
手続きには1〜2ヶ月程度かかるため、売買契約前に確認しておくことが重要です。
引き渡し時の費用精算
(1) 固定資産税の精算
引き渡し時には、固定資産税と都市計画税を日割り計算で精算します。総務省の資料によれば、納税義務者は1月1日時点の所有者ですが、実務上は引き渡し日を基準に売主・買主間で日割り精算を行います。
起算日は地域慣習により異なり、関東では1月1日、関西では4月1日とするのが一般的です。
(2) 測量費用の負担
境界確定測量の費用は、通常は売主が負担します。費用は土地の規模や形状により異なりますが、30〜100万円程度が目安とされています。売買契約書で費用負担者を明記することが重要です。
(3) 引き渡し日までの費用負担
引き渡し日までの管理費用(草刈り費用等)は売主が負担します。引き渡し日以降は買主の負担となります。
更地渡しの場合の手続き
(1) 建物解体のタイミング
建物を解体して更地で引き渡す場合、解体のタイミング調整が重要です。引き渡し日の1〜2週間前に解体を完了させることが推奨されます。解体後に埋設物が発見されるケースもあるため、余裕を持ったスケジュールが必要です。
(2) 解体完了確認
建物解体後は、以下の確認を行います。
- 解体完了の現地確認
- 建物滅失登記の申請
- 埋設物・地中障害物の有無確認
(3) 埋設物の処理
解体後に埋設物(コンクリートガラ、浄化槽等)が発見された場合、撤去費用の負担者を事前に取り決めておくことが重要です。売買契約書に「現況有姿渡し」と明記されている場合、原則として売主に撤去義務はありませんが、トラブル防止のため事前協議が望ましいとされています。
引き渡し後の手続き
(1) 所有権移転登記
引き渡し当日に司法書士が所有権移転登記を申請します。登記完了までは1〜2週間程度かかります。登記完了後、買主が登記識別情報(権利証)を受領します。
(2) 引き渡し完了確認
引き渡し後、買主が現地確認を行います。境界標の設置状況、測量図との整合性、埋設物の有無などを確認します。
(3) 税務申告の準備
土地売却により譲渡所得が発生した場合、翌年の確定申告が必要です。売却価格、取得費、譲渡費用を記録しておきましょう。
トラブル防止のポイント
(1) 境界未確定によるトラブル
境界が未確定のまま引き渡すと、後日隣地所有者との境界紛争に発展するリスクがあります。売買契約前に境界確定測量を実施し、隣地所有者の立ち会いのもと境界を確定することが重要です。
(2) 埋設物・土壌汚染の発覚
引き渡し後に埋設物や土壌汚染が発見された場合、契約不適合責任を問われる可能性があります。事前に地歴調査や土壌調査を実施することで、リスクを低減できます。
(3) 農地転用許可の取得遅れ
農地の売却では、農業委員会の許可取得に時間がかかる場合があります。売買契約前に手続きを開始し、許可取得を停止条件とする特約を設けることが推奨されます。
まとめ
土地売却の引き渡しでは、境界確定測量、測量図の引き継ぎ、固定資産税の精算など、土地特有の手続きが必要です。更地渡しの場合は建物解体のタイミング調整も重要となります。農地の場合は農業委員会への届出を忘れずに行いましょう。
引き渡しをスムーズに進めるためには、売買契約前に境界確定を完了させ、必要書類を準備しておくことが重要です。不明な点は不動産会社や司法書士に相談し、トラブルのない引き渡しを実現しましょう。