戸建て売却の引き渡し・引越し|流れ・費用精算・手続きの基礎知識

公開日: 2025/10/12

戸建て売却において、引き渡しと引越しは最終段階の重要な手続きです。マンションと異なり、土地の境界確認や設備の撤去範囲など、戸建て特有の準備事項があります。引き渡し日と引越し日のタイミング調整、費用精算、行政手続きなど、スムーズに完了するための基礎知識を詳しく解説します。

この記事のポイント

  • 引越しを先に済ませ、引き渡し日には空室状態で引き渡すのが一般的
  • エアコンや照明器具の取り扱いは売買契約書の付帯設備表で事前に取り決める
  • 固定資産税は引き渡し日を基準に日割り計算で精算(起算日は地域慣習により異なる)
  • 戸建て特有の境界確認・越境物処理は法的義務ではないがトラブル防止のため推奨
  • 公共料金の解約、転出届など行政手続きは引き渡し前に計画的に進める

1. 戸建て引き渡しの流れ

(1) 引き渡し当日の流れ

国土交通省によると、引き渡し当日は以下の流れで進みます:

引き渡し当日の主な流れ:

時間 手続き内容
午前 残代金決済(銀行振込)
午前 登記書類の確認・署名
午後 現地で現況確認
午後 鍵・書類の引き渡し

引き渡しは通常、平日の午前中に銀行や不動産会社の事務所で行われます。

(2) 残代金決済

残代金決済では、売買代金の残額を買主から受け取り、同時に所有権移転登記を行います。司法書士が立ち会い、登記書類の確認と本人確認を実施します。

決済時に必要な書類:

  • 権利証(登記識別情報)
  • 実印・印鑑証明書(3ヶ月以内)
  • 固定資産税納税通知書
  • 本人確認書類(運転免許証等)

(3) 鍵・書類の引き渡し

決済完了後、現地で鍵の引き渡しを行います。戸建ての場合、玄関・勝手口・物置など複数の鍵があるため、すべての鍵を漏れなく引き渡すことが重要です。

2. 引き渡し前の準備事項

(1) 現況確認

引き渡し前に買主と共に物件の状態を確認します。売買契約時の状態が維持されているか、設備の動作確認、残置物の有無などをチェックします。

現況確認のチェックリスト:

  • 建物の状態(雨漏り・ひび割れ等)
  • 設備の動作確認(給湯器・水回り等)
  • 残置物の有無
  • 境界標の位置確認

(2) 残置物の処理

引き渡しまでにすべての残置物を撤去する必要があります。大型家具や家電は不用品回収業者に依頼するか、自治体の粗大ゴミ収集を利用します。

(3) 設備の取り扱い

エアコン、照明器具、カーテンレールなどの設備は、売買契約書の付帯設備表で取り決めます。原則として売主が撤去しますが、買主が希望すれば残すことも可能です。

3. 引き渡し時の費用精算

(1) 固定資産税の精算

固定資産税は1月1日時点の所有者に1年分が課されますが、実務では引き渡し日を基準に売主・買主間で日割り精算します。総務省によると、起算日は地域慣習により異なります。

固定資産税精算の起算日:

  • 関東地方: 1月1日起算が一般的
  • 関西地方: 4月1日起算が一般的

精算例: 年税額12万円、7月1日引き渡しの場合(1月1日起算)

  • 売主負担: 1〜6月分(6ヶ月) = 6万円
  • 買主負担: 7〜12月分(6ヶ月) = 6万円

(2) 公共料金の精算

電気・ガス・水道などの公共料金は、経済産業省の指針に基づき、引き渡し日までの使用分を売主が負担します。メーターの最終検針日と引き渡し日が異なる場合は日割り計算します。

(3) 引き渡し日までの費用負担

引き渡し日の前日までは売主の責任で物件を管理します。この期間の火災保険料、管理費(該当する場合)、修繕費なども売主負担となります。

4. 引越しに伴う手続き

(1) 行政手続き(転出届等)

総務省によると、引越し前に現住所の市区町村役場で転出届を提出する必要があります。転出届は引越し14日前から受付可能です。

引越し時の主な行政手続き:

  • 転出届(引越し前)
  • 転入届(引越し後14日以内)
  • 印鑑登録の廃止
  • マイナンバーカードの住所変更

(2) 公共料金の解約

電気・ガス・水道の解約手続きは、引き渡し日の1〜2週間前に各事業者へ連絡します。立ち会いが必要な場合があるため、早めの予約が推奨されます。

(3) 郵便物の転送

郵便局で転送サービスを申し込むと、旧住所宛の郵便物が1年間、新住所へ転送されます。インターネットまたは郵便局窓口で手続き可能です。

5. 戸建て特有の確認事項

(1) 境界確認

戸建て売却では、隣地との境界を明確にすることが重要です。法的義務ではありませんが、買主から測量・境界確認を求められることが多くあります。

境界確認の流れ:

  1. 土地家屋調査士に測量依頼
  2. 隣地所有者と立ち会い確認
  3. 境界確認書の作成・署名
  4. 測量図の作成

(2) 越境物の処理

樹木の枝や塀が隣地に越境している場合、引き渡し前に処理が必要です。越境状態を買主に説明し、将来的な処理方法を取り決めることもあります。

(3) 設備の撤去範囲

戸建てはマンションと異なり、物置・カーポート・庭木など、撤去が必要な設備が多数あります。売買契約書で撤去範囲を明確にし、残す設備は付帯設備表に記載します。

6. トラブル防止のポイント

(1) 引き渡し前の物件損傷リスク

引き渡し前に物件が損傷した場合、修復費用は原則として売主負担となります。火災保険は引き渡し日まで継続し、万一の事故に備えることが重要です。

(2) 鍵・書類の引き渡し漏れ

鍵の引き渡し漏れはトラブルの原因となります。すべての鍵(玄関・勝手口・物置・郵便受け等)をリスト化し、漏れなく引き渡しましょう。

引き渡し書類のチェックリスト:

  • 建築確認済証・検査済証
  • 設備の取扱説明書・保証書
  • リフォーム履歴の資料
  • 固定資産税納税通知書(コピー可)

(3) 公共料金の解約漏れ

公共料金の解約を忘れると、引き渡し後も料金が発生し続けます。解約手続きは引き渡し日の1〜2週間前に完了させましょう。

まとめ

戸建て売却の引き渡し・引越しは、マンションにはない土地の境界確認や設備撤去など、戸建て特有の準備事項が多数あります。引越しを先に済ませ、引き渡し日には空室状態で引き渡すのが一般的です。固定資産税は引き渡し日を基準に日割り精算し、公共料金の解約や転出届などの行政手続きも計画的に進めることが重要です。

エアコンや照明器具の取り扱いは売買契約書の付帯設備表で事前に取り決め、境界確認は法的義務ではありませんがトラブル防止のため推奨されます。すべての鍵と書類を漏れなく引き渡し、公共料金の解約漏れを防ぐことで、スムーズな引き渡しを実現できます。

よくある質問

Q1引き渡し日と引越し日はどちらを先にすべきですか?

A1引越しを先に済ませ、引き渡し日には空室状態で引き渡すのが一般的です。現況確認もスムーズに進み、買主に良い印象を与えられます。引越しは引き渡し日の数日前に完了させ、最終的な清掃や残置物の確認を行いましょう。

Q2エアコンや照明器具は残していくべきですか?

A2売買契約書の付帯設備表で取り決めます。原則として売主が撤去しますが、買主が希望すれば残すことも可能です。エアコンや照明器具、カーテンレールなどは契約時に買主と相談し、付帯設備表に明記することでトラブルを防げます。

Q3固定資産税の精算はどう計算しますか?

A3引き渡し日を基準に日割り計算します。起算日は地域慣習により異なり、関東地方は1月1日起算、関西地方は4月1日起算が一般的です。例えば年税額12万円で7月1日引き渡しの場合(1月1日起算)、売主は1〜6月分の6万円、買主は7〜12月分の6万円を負担します。

Q4境界確認は必須ですか?

A4法的義務ではありませんが、トラブル防止のため測量・境界確認が推奨されます。買主からの要求も多く、境界が不明確だと売買契約に支障が出る可能性があります。土地家屋調査士に測量を依頼し、隣地所有者と立ち会い確認を行い、境界確認書を作成するのが一般的です。

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