住み替え中古マンション購入の確定申告・計算・必要書類

公開日: 2025/10/14

住み替えで中古マンションを購入したら確定申告が必要?

住み替えで中古マンションを購入した場合、売却と購入の両方で確定申告が必要になる可能性があります。特に住宅ローン控除を受けたい方や、旧住宅の売却で損失が出た方は、確定申告によって大きな税制優遇を受けられます。

この記事のポイント

  • 住宅ローン控除は初年度の確定申告で年末ローン残高の0.7%を最長13年間控除可能
  • 譲渡損失が出た場合は繰越控除により翌年以降3年間所得税から控除できる
  • 買換え特例は譲渡益の課税を繰り延べできるが住宅ローン控除と併用不可
  • 中古マンションは築年数要件(昭和57年以降または耐震基準適合証明書)が必須
  • 確定申告期限は売却・購入した年の翌年2月16日~3月15日

1. 住み替えで中古マンション購入時の確定申告の基本

(1) 住み替えにおける確定申告の対象者

住み替えで確定申告が必要になるのは以下のケースです:

状況 申告の必要性
住宅ローン控除を受けたい 必須(初年度のみ)
旧住宅の売却で譲渡益が出た 必須
旧住宅の売却で損失が出た 任意(控除を受ける場合は必須)
現金一括購入で特例を使わない 不要

会社員の方でも、住宅ローン控除の初年度や不動産売却がある年は年末調整では完結せず、確定申告が必要です(国税庁「住宅借入金等特別控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1213.htm)。

(2) 売却と購入の両方を申告する必要性

住み替えの場合、旧住宅の売却による譲渡所得と、新住宅購入による住宅ローン控除の両方を同じ確定申告書で申告します。売却益が出た場合は譲渡所得として課税され、損失が出た場合は繰越控除の特例が利用できる可能性があります。

(3) 確定申告のタイミングと期限

  • 申告期間: 売却・購入した年の翌年2月16日~3月15日
  • 納税期限: 3月15日(振替納税の場合は4月中旬)
  • 還付申告: 1月1日から5年間可能

期限を過ぎると特例が受けられなくなる場合があるため、余裕を持った準備が重要です(国税庁「確定申告の手続」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/index.htm)。

2. 住宅ローン控除の適用要件と計算方法

(1) 控除額の計算方法と控除期間

2024年以降の住宅ローン控除は以下の通りです:

  • 控除率: 年末ローン残高の0.7%
  • 控除期間: 最長13年間(中古住宅は10年間)
  • 借入限度額: 中古住宅は2,000万円(認定住宅は3,000万円)

計算例

  • 年末ローン残高: 3,500万円
  • 控除対象額: 2,000万円(限度額)
  • 年間控除額: 2,000万円 × 0.7% = 14万円

(2) 所得制限とローン残高の上限

住宅ローン控除には以下の制限があります:

  • 所得制限: 合計所得金額2,000万円以下
  • 床面積: 50㎡以上(登記簿面積)
  • 居住要件: 取得から6ヶ月以内に居住し、年末まで継続居住

所得制限を超えると控除が受けられないため、給与所得以外の収入がある方は注意が必要です。

(3) 初年度と2年目以降の手続き

初年度

  • 確定申告が必須
  • 売買契約書、登記事項証明書、住宅ローン残高証明書などを添付

2年目以降(会社員の場合)

  • 年末調整で控除可能
  • 税務署から送られる「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」と金融機関の残高証明書を勤務先に提出

3. 住み替え時の譲渡損失繰越控除と買換え特例

(1) 譲渡損失の繰越控除の適用要件

旧住宅の売却で損失が出た場合、以下の要件で繰越控除が受けられます:

主な要件

  • 所有期間5年超のマイホームの売却
  • 売却価格がローン残高を下回る
  • 新住宅を取得し住宅ローンを組む
  • 売却した年の前年から翌年までの3年間に買換え

控除可能額は「ローン残高 - 売却価格」または実際の譲渡損失のいずれか少ない方で、翌年以降3年間繰り越して所得税から控除できます(国税庁「マイホームを買い換えた場合の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)。

(2) 買換え特例の適用要件と課税繰り延べ

譲渡益が出た場合の買換え特例は、一定の要件のもと譲渡益への課税を将来に繰り延べできる制度です:

主な要件

  • 所有期間10年超、居住期間10年以上
  • 譲渡価格1億円以下
  • 売却した年の前年から翌年までの3年間に買換え
  • 新住宅の床面積50㎡以上、敷地面積500㎡以下

ただし、課税が免除されるわけではなく、将来の売却時に繰り延べた譲渡益が課税されます。

(3) 住宅ローン控除との併用可否

重要な制限

  • 買換え特例(譲渡益の繰り延べ)と住宅ローン控除は併用不可
  • 譲渡損失の繰越控除と住宅ローン控除は併用可能

譲渡益が出る場合は、買換え特例を使わずに譲渡所得税を支払って住宅ローン控除を受けた方が有利なケースが多いため、事前の試算が重要です(国税庁「住宅ローン控除と買換え特例の併用」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1215.htm)。

4. 中古マンション特有の適用要件

(1) 築年数要件と耐震基準適合証明書

中古マンションで住宅ローン控除を受けるには、以下のいずれかが必要です:

築年数要件

  • 昭和57年(1982年)1月1日以降に建築された住宅
  • または耐震基準適合証明書を取得
  • または既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得
  • または既存住宅売買瑕疵保険に加入

昭和56年以前の物件でも、耐震基準適合証明書を取得すれば控除対象になります(国税庁「中古住宅を取得した場合の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1214.htm)。

(2) 登記簿面積と購入価格の要件

  • 床面積: 登記簿面積50㎡以上(パンフレットの専有面積ではなく登記簿の内法面積)
  • 購入価格: 特に上限なし(ただし住宅ローン控除の借入限度額は2,000万円)

登記簿面積が50㎡未満の物件は控除対象外となるため、購入前に登記簿で確認が必要です。

(3) 住宅性能証明書の取得方法

耐震基準適合証明書は以下の専門家に依頼できます:

  • 建築士事務所登録をしている建築士
  • 指定確認検査機関
  • 登録住宅性能評価機関

費用は5~15万円程度で、取得には2~4週間かかるため、物件引き渡し前に手続きを開始する必要があります。

5. 購入時にかかる税金と軽減措置

(1) 登録免許税の計算と軽減税率

不動産取得時にかかる登録免許税の軽減措置:

登記の種類 本則税率 軽減税率 軽減の適用要件
所有権移転(中古) 2.0% 0.3% 床面積50㎡以上、築年数要件
抵当権設定 0.4% 0.1% 住宅ローン利用

計算例

  • 固定資産税評価額: 2,000万円
  • 所有権移転: 2,000万円 × 0.3% = 6万円
  • 抵当権設定(ローン3,000万円): 3,000万円 × 0.1% = 3万円

軽減措置の適用には住宅用家屋証明書の取得が必要です(国税庁「登録免許税・不動産取得税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)。

(2) 不動産取得税の計算と軽減措置

不動産取得税の軽減措置(2027年3月31日まで):

建物

  • (固定資産税評価額 - 1,200万円) × 3%
  • 1,200万円控除の要件:床面積50㎡以上240㎡以下、昭和57年以降築または耐震基準適合

土地

  • 固定資産税評価額 × 1/2 × 3% - 控除額
  • 控除額:(固定資産税評価額 × 1/2 × 3%) または 45,000円のいずれか多い額

都道府県から納税通知書が届くまで6ヶ月~1年半かかる場合があります。

(3) 固定資産税の日割り精算

売買時には固定資産税・都市計画税を日割り計算で精算するのが一般的です:

  • 起算日: 1月1日または4月1日(地域慣習による)
  • 精算方法: 引き渡し日以降の日数分を買主が負担

固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されるため、精算金は売買代金の一部として扱われます。

6. 確定申告に必要な書類と提出方法

(1) 購入に関する必要書類一覧

住宅ローン控除の申告に必要な書類:

必須書類

  • 確定申告書(第一表・第二表)
  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関発行)
  • 売買契約書のコピー
  • 登記事項証明書(法務局で取得)
  • 源泉徴収票(会社員の場合)

築年数要件を満たさない場合

  • 耐震基準適合証明書または住宅性能評価書のコピー

(2) 売却に関する必要書類一覧

旧住宅の売却申告に必要な書類:

譲渡所得の申告

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
  • 売買契約書のコピー(売却時・購入時の両方)
  • 仲介手数料などの領収書
  • 登記事項証明書

特例適用の場合

  • 譲渡損失の繰越控除:住民票の写し、売却した住宅のローン残高証明書
  • 買換え特例:買換え資産の明細書、新住宅の登記事項証明書

(3) e-Taxによる電子申告の方法

e-Tax(電子申告)を利用すると自宅から申告できます:

必要なもの

  • マイナンバーカード
  • ICカードリーダライタまたはマイナンバーカード読取対応スマートフォン
  • 確定申告書等作成コーナー(国税庁ウェブサイト)

メリット

  • 24時間提出可能
  • 源泉徴収票などの添付書類の提出省略が可能
  • 還付金が早い(3週間程度)

初めての方は、税務署の相談窓�や確定申告会場で質問しながら作成することも可能です(要予約)。

まとめ

住み替えで中古マンションを購入した場合の確定申告は、売却と購入の両方を申告する必要があります。住宅ローン控除は初年度に確定申告すれば最長13年間の控除が受けられ、譲渡損失が出た場合は繰越控除により翌年以降3年間所得税から控除できます。

中古マンションは築年数要件(昭和57年以降または耐震基準適合証明書)が必須で、登録免許税・不動産取得税の軽減措置を受けるには住宅用家屋証明書が必要です。確定申告期限は売却・購入した年の翌年2月16日~3月15日で、e-Taxを利用すれば自宅から申告できます。

特例の適用判断や計算が複雑な場合は、税理士や税務署に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1住み替えで譲渡損失が出た場合、どのような控除を受けられますか?

A1譲渡損失の繰越控除を適用できます。所有期間5年超のマイホームを売却して損失が出た場合、その損失を翌年以降3年間繰り越して所得税から控除できます。住宅ローンが残っている場合は「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が適用され、控除額は「ローン残高 - 売却価格」または実際の譲渡損失のいずれか少ない方となります。この特例は住宅ローン控除と併用可能です。

Q2住宅ローン控除と買換え特例は併用できますか?

A2買換え特例(譲渡益の課税繰り延べ)と住宅ローン控除は併用できません。一方、譲渡損失の繰越控除と住宅ローン控除は併用可能です。譲渡益が出る場合は、買換え特例を使わずに譲渡所得税を支払って住宅ローン控除を受けた方が有利なケースが多いため、どちらが有利か事前に試算することが重要です。

Q3旧住宅の売却と新住宅の購入のタイミングで注意点はありますか?

A3買換え特例を受けるには、売却した年の前年から翌年までの3年間に新住宅を購入する必要があります。譲渡損失の繰越控除も同様に売却と購入のタイミング要件があります。また、住宅ローン控除は取得から6ヶ月以内に居住し、年末まで継続居住することが要件となっているため、引き渡し時期と入居時期の調整が重要です。

Q4住み替え時の確定申告はいつまでに行えばよいですか?

A4売却・購入した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。購入時の住宅ローン控除も同じ期間に申告します。期限を過ぎると特例が受けられなくなる場合があるため期限厳守が重要です。なお、還付申告の場合は1月1日から5年間提出可能ですが、早めに申告すると還付金も早く受け取れます。

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