新築マンション購入の確定申告|住宅ローン控除の計算方法と必要書類

公開日: 2025/10/17

新築マンション購入時の確定申告の基礎知識

新築マンションを購入し、住宅ローンを利用した場合、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けるためには、購入した年の翌年に確定申告が必要です。会社員の場合、通常は年末調整で税務手続きが完了しますが、住宅ローン控除の初年度だけは自分で確定申告を行う必要があります。

この記事で分かること:

  • 新築マンション購入時の確定申告の流れとタイミング
  • 住宅ローン控除の適用要件(床面積50㎡以上、所得制限2,000万円以下)
  • 認定住宅(長期優良住宅・ZEH水準)による優遇措置
  • 確定申告に必要な書類(登記事項証明書、年末残高証明書等)
  • 税額シミュレーションと控除額の計算方法

(1) 新築マンション購入における税務手続きの全体像

新築マンション購入時の税務手続きは、以下の流れで進みます。

時期 手続き 内容
購入時 登録免許税の支払い 所有権保存登記・抵当権設定登記
購入後3〜6ヶ月 不動産取得税の納付 都道府県税事務所から納付書が届く
入居翌年2月16日〜3月15日 確定申告(初年度) 住宅ローン控除の申請
2年目以降 年末調整 会社員は年末調整で控除を受ける

(2) 確定申告のタイミングと方法

住宅ローン控除を受けるための確定申告は、入居した年の翌年2月16日から3月15日までに行います。

申告時期の例:

  • 2024年12月に入居 → 2025年2月16日〜3月15日に申告
  • 2024年6月に入居 → 2025年2月16日〜3月15日に申告

申告方法:

  • e-Tax(電子申告):マイナンバーカードとICカードリーダーまたはスマートフォンで申告
  • 書面提出:確定申告書を税務署に持参または郵送

(3) 中古マンションとの税制の違い

新築マンションと中古マンションでは、住宅ローン控除の適用条件が異なります。

項目 新築マンション 中古マンション
控除期間 13年間 10年間
借入限度額(認定住宅) 5,000万円 3,000万円
借入限度額(一般住宅) 3,000万円 2,000万円
省エネ基準適合要件 2024年以降は必須 1982年以降の建築

新築マンションの方が控除期間が長く、借入限度額も高いため、税制上の優遇が手厚いです。

住宅ローン控除の仕組みと適用要件

(1) 住宅ローン控除の基本的な計算方法

住宅ローン控除は、年末のローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です。

計算式:

控除額 = 年末ローン残高 × 0.7%

計算例:

  • 年末ローン残高: 3,500万円
  • 控除額: 3,500万円 × 0.7% = 24.5万円

ただし、借入限度額を超える部分は控除の対象外となります。

(2) 控除の適用要件(床面積・所得制限・居住要件)

住宅ローン控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります(国税庁の規定)。

主な適用要件:

  • 床面積: 50㎡以上(登記簿面積、内法面積で判定)
  • 所得制限: 合計所得金額が2,000万円以下
  • 居住要件: 取得後6ヶ月以内に居住を開始し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること
  • 借入期間: 10年以上の住宅ローンであること
  • 併用住宅: 床面積の1/2以上が自己の居住用であること

(3) 新築の控除期間と借入限度額

2024年以降に入居する新築マンションの場合、以下の控除期間と借入限度額が適用されます。

住宅の種類 控除期間 借入限度額 年間最大控除額
認定住宅 13年 5,000万円 35万円
ZEH水準省エネ住宅 13年 4,500万円 31.5万円
省エネ基準適合住宅 13年 4,000万円 28万円
一般住宅 13年 3,000万円 21万円

2024年以降に建築確認を受けた新築住宅は、省エネ基準に適合していることが住宅ローン控除の要件となります。

新築マンション特有の税制優遇措置

(1) 認定住宅・ZEH水準による優遇

新築マンションの中でも、認定住宅やZEH水準省エネ住宅は、通常の住宅よりも優遇措置が手厚いです。

認定住宅の種類:

  • 長期優良住宅: 耐震性・省エネ性等の基準を満たし、長期間良好な状態で使用できる住宅
  • 低炭素住宅: CO2排出量を削減する省エネ住宅
  • ZEH水準省エネ住宅: 年間の一次エネルギー消費量が概ねゼロになる住宅

認定住宅のメリット:

  • 住宅ローン控除の借入限度額が一般住宅より高い(5,000万円 vs 3,000万円)
  • 登録免許税の税率が軽減される
  • 不動産取得税の控除額が増額される

(2) 登録免許税・不動産取得税の軽減措置

新築マンションを購入する際、以下の税金が軽減されます。

登録免許税の軽減:

登記の種類 本則税率 軽減税率
所有権保存登記 0.4% 0.15%
所有権移転登記(売買) 2.0% 0.3%
抵当権設定登記 0.4% 0.1%

不動産取得税の軽減:

新築住宅の場合、課税標準から1,200万円を控除できます。さらに、認定長期優良住宅の場合は1,300万円を控除できます。

(3) 固定資産税の減額措置

新築マンションの場合、一定期間固定資産税が減額されます。

減額内容:

  • 新築後5年間(3階建て以上の耐火・準耐火建築物)
  • 固定資産税の1/2を減額
  • 床面積120㎡までの部分が対象

認定長期優良住宅の場合は、減額期間が7年間に延長されます。

確定申告の計算方法と税額シミュレーション

(1) 住宅ローン控除による税額軽減の計算

住宅ローン控除は、所得税から控除されます。控除しきれない場合は、住民税からも一部控除されます。

シミュレーション例:

  • 年収: 600万円
  • 年末ローン残高: 4,000万円
  • 住宅の種類: 一般住宅(省エネ基準適合)
控除額 = 4,000万円 × 0.7% = 28万円
所得税額: 約30万円
控除後の所得税: 30万円 - 28万円 = 2万円

この場合、28万円の控除を全額所得税から控除できます。

(2) 源泉徴収税額との関係

会社員の場合、毎月の給与から源泉徴収された所得税が、確定申告により還付されます。

還付のイメージ:

  • 源泉徴収された所得税: 30万円
  • 住宅ローン控除: 28万円
  • 確定申告後の還付額: 28万円

源泉徴収税額より控除額が大きい場合は、源泉徴収税額全額が還付され、残りは住民税から控除されます。

(3) 控除しきれない場合の住民税からの控除

所得税から控除しきれない場合、住民税からも一部控除できます。

住民税からの控除額:

  • 前年の所得税の課税総所得金額等 × 5%(最高97,500円)

または

  • 前年の所得税の課税総所得金額等 × 7%(最高136,500円)(2022年以降入居の場合)

シミュレーション例:

  • 控除額: 28万円
  • 所得税額: 15万円(控除しきれない額: 13万円)
  • 住民税からの控除額: 13万円(上限13.65万円以内なので全額控除可能)

確定申告に必要な書類と準備タイミング

(1) 住宅ローン控除の初年度申告書類

住宅ローン控除を受けるために、確定申告時に提出する書類は以下の通りです。

必要書類一覧:

書類名 取得方法 取得タイミング
確定申告書 国税庁HPでダウンロード 申告時
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 国税庁HPでダウンロード 申告時
源泉徴収票 勤務先から取得 年末〜1月
住宅ローンの年末残高証明書 金融機関から郵送 12月〜1月
登記事項証明書(建物・土地) 法務局で取得 登記完了後
売買契約書の写し 購入時に受領 契約時
マイナンバー確認書類 マイナンバーカード等 -

認定住宅の場合、追加で必要な書類:

  • 長期優良住宅認定通知書の写し
  • 低炭素建築物認定通知書の写し
  • 住宅性能証明書

(2) 登記事項証明書・借入金証明書の取得

登記事項証明書の取得方法:

  • 法務局の窓口で申請(手数料600円)
  • オンライン申請(手数料480〜500円)
  • 建物と土地の両方が必要(マンションの場合、土地は共有持分)

登記事項証明書で確認する項目:

  • 床面積(登記簿面積、内法面積)
  • 所有権の取得日
  • 抵当権の設定(住宅ローンの借入)

年末残高証明書の取得:

  • 金融機関から12月〜1月に郵送される
  • 紛失した場合は再発行を金融機関に依頼

(3) 新築証明書類の準備

新築マンションの場合、売買契約書に新築の記載があれば特別な証明書は不要です。

ただし、認定住宅の優遇を受ける場合は、以下の書類が必要です。

  • 長期優良住宅認定通知書
  • 低炭素建築物認定通知書
  • 住宅性能評価書
  • ZEH水準省エネ住宅証明書

これらの書類は、販売会社やハウスメーカーから受け取ります。

新築マンション購入時の税務上の注意点

(1) 登記簿面積(内法)での床面積要件

住宅ローン控除の床面積要件は、登記簿面積(内法面積)で判定されます。

内法面積と壁芯面積の違い:

  • 内法面積: 壁の内側の面積(登記簿に記載)
  • 壁芯面積: 壁の中心線から測った面積(パンフレットやチラシに記載)

一般的に、壁芯面積の方が内法面積より1〜2㎡広くなります。

注意点:

  • パンフレットで51㎡と記載されていても、登記簿面積が50㎡未満の場合は住宅ローン控除を受けられない
  • 購入前に登記簿面積を確認することが重要

(2) 所得制限と控除額の関係

2024年以降に入居する新築マンションの場合、合計所得金額が2,000万円以下であることが要件です。

合計所得金額とは:

  • 給与所得、事業所得、不動産所得等の合計
  • 給与収入が2,195万円以下であれば、給与所得控除後の合計所得金額が2,000万円以下となる(概算)

所得制限を超えた年は住宅ローン控除を受けられないため、注意が必要です。

(3) 2年目以降の年末調整での手続き

初年度の確定申告後、2年目以降は年末調整で住宅ローン控除を受けることができます。

2年目以降の手続き:

  1. 税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」が送付される(残り12年分がまとめて送付)
  2. 金融機関から年末残高証明書が送付される(毎年10月〜12月頃)
  3. 上記2つの書類を会社の年末調整時に提出

会社員の場合、2年目以降は確定申告不要で、年末調整のみで控除を受けられます。

まとめ

新築マンションを購入し、住宅ローンを利用した場合、住宅ローン控除を受けるために初年度は確定申告が必要です。年末ローン残高の0.7%を最長13年間、所得税から控除できるため、大きな節税効果があります。

2024年以降に入居する新築マンションは、省エネ基準に適合していることが住宅ローン控除の要件となります。認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅)の場合、借入限度額が一般住宅より高く、優遇措置が手厚いです。

確定申告に必要な書類(登記事項証明書、年末残高証明書、売買契約書等)を早めに準備し、入居した年の翌年2月16日から3月15日までに申告を行いましょう。2年目以降は年末調整で控除を受けることができます。

よくある質問

新築マンションと中古マンションで住宅ローン控除に違いはありますか?

新築マンションは控除期間が13年間、中古マンションは10年間です。また、借入限度額も新築の方が高く設定されています。新築の認定住宅の場合は5,000万円、一般住宅でも3,000万円が借入限度額となります。一方、中古マンションは認定住宅でも3,000万円、一般住宅は2,000万円です。新築の方が税制上の優遇が手厚いです。

確定申告はいつまでに行う必要がありますか?

入居した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。例えば、2024年12月に入居した場合、2025年2月16日から3月15日までに申告します。期限を過ぎても5年以内であれば遡って申告できますが、早めの申告を推奨します。2年目以降は会社員の場合、年末調整で控除を受けることができ、確定申告は不要です。

認定住宅とは何ですか?どのようなメリットがありますか?

認定住宅とは、長期優良住宅、低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅などの基準を満たす住宅です。住宅ローン控除の借入限度額が一般住宅より高く(5,000万円 vs 3,000万円)、登録免許税や不動産取得税の軽減措置も手厚いです。購入時に販売会社が認定の有無を説明してくれます。認定住宅の優遇を受けるには、認定通知書や証明書を確定申告時に提出する必要があります。

住宅ローン控除で税金が戻ってくるのはいつですか?

初年度の確定申告後、約1〜2ヶ月後に指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。例えば、3月15日に申告した場合、4月〜5月頃に還付されます。2年目以降は年末調整で控除されるため、翌年1月の給与で調整されます(還付ではなく、源泉徴収税額が減額される形)。e-Taxで申告した場合は、書面提出より還付が早くなる傾向があります。

よくある質問

Q1新築マンションと中古マンションで住宅ローン控除に違いはありますか?

A1新築マンションは控除期間が13年間、中古マンションは10年間です。また、借入限度額も新築の方が高く設定されています。新築の認定住宅の場合は5,000万円、一般住宅でも3,000万円が借入限度額となります。一方、中古マンションは認定住宅でも3,000万円、一般住宅は2,000万円です。新築の方が税制上の優遇が手厚いです。

Q2確定申告はいつまでに行う必要がありますか?

A2入居した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。例えば、2024年12月に入居した場合、2025年2月16日から3月15日までに申告します。期限を過ぎても5年以内であれば遡って申告できますが、早めの申告を推奨します。2年目以降は会社員の場合、年末調整で控除を受けることができ、確定申告は不要です。

Q3認定住宅とは何ですか?どのようなメリットがありますか?

A3認定住宅とは、長期優良住宅、低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅などの基準を満たす住宅です。住宅ローン控除の借入限度額が一般住宅より高く(5,000万円 vs 3,000万円)、登録免許税や不動産取得税の軽減措置も手厚いです。購入時に販売会社が認定の有無を説明してくれます。認定住宅の優遇を受けるには、認定通知書や証明書を確定申告時に提出する必要があります。

Q4住宅ローン控除で税金が戻ってくるのはいつですか?

A4初年度の確定申告後、約1〜2ヶ月後に指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。例えば、3月15日に申告した場合、4月〜5月頃に還付されます。2年目以降は年末調整で控除されるため、翌年1月の給与で調整されます(還付ではなく、源泉徴収税額が減額される形)。e-Taxで申告した場合は、書面提出より還付が早くなる傾向があります。

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