新築マンション購入時の確定申告の基礎知識
新築マンションを購入し、住宅ローンを利用した場合、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けるためには、購入した年の翌年に確定申告が必要です。会社員の場合、通常は年末調整で税務手続きが完了しますが、住宅ローン控除の初年度だけは自分で確定申告を行う必要があります。
この記事で分かること:
- 新築マンション購入時の確定申告の流れとタイミング
- 住宅ローン控除の適用要件(床面積50㎡以上、所得制限2,000万円以下)
- 認定住宅(長期優良住宅・ZEH水準)による優遇措置
- 確定申告に必要な書類(登記事項証明書、年末残高証明書等)
- 税額シミュレーションと控除額の計算方法
(1) 新築マンション購入における税務手続きの全体像
新築マンション購入時の税務手続きは、以下の流れで進みます。
時期 | 手続き | 内容 |
---|---|---|
購入時 | 登録免許税の支払い | 所有権保存登記・抵当権設定登記 |
購入後3〜6ヶ月 | 不動産取得税の納付 | 都道府県税事務所から納付書が届く |
入居翌年2月16日〜3月15日 | 確定申告(初年度) | 住宅ローン控除の申請 |
2年目以降 | 年末調整 | 会社員は年末調整で控除を受ける |
(2) 確定申告のタイミングと方法
住宅ローン控除を受けるための確定申告は、入居した年の翌年2月16日から3月15日までに行います。
申告時期の例:
- 2024年12月に入居 → 2025年2月16日〜3月15日に申告
- 2024年6月に入居 → 2025年2月16日〜3月15日に申告
申告方法:
- e-Tax(電子申告):マイナンバーカードとICカードリーダーまたはスマートフォンで申告
- 書面提出:確定申告書を税務署に持参または郵送
(3) 中古マンションとの税制の違い
新築マンションと中古マンションでは、住宅ローン控除の適用条件が異なります。
項目 | 新築マンション | 中古マンション |
---|---|---|
控除期間 | 13年間 | 10年間 |
借入限度額(認定住宅) | 5,000万円 | 3,000万円 |
借入限度額(一般住宅) | 3,000万円 | 2,000万円 |
省エネ基準適合要件 | 2024年以降は必須 | 1982年以降の建築 |
新築マンションの方が控除期間が長く、借入限度額も高いため、税制上の優遇が手厚いです。
住宅ローン控除の仕組みと適用要件
(1) 住宅ローン控除の基本的な計算方法
住宅ローン控除は、年末のローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です。
計算式:
控除額 = 年末ローン残高 × 0.7%
計算例:
- 年末ローン残高: 3,500万円
- 控除額: 3,500万円 × 0.7% = 24.5万円
ただし、借入限度額を超える部分は控除の対象外となります。
(2) 控除の適用要件(床面積・所得制限・居住要件)
住宅ローン控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります(国税庁の規定)。
主な適用要件:
- 床面積: 50㎡以上(登記簿面積、内法面積で判定)
- 所得制限: 合計所得金額が2,000万円以下
- 居住要件: 取得後6ヶ月以内に居住を開始し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること
- 借入期間: 10年以上の住宅ローンであること
- 併用住宅: 床面積の1/2以上が自己の居住用であること
(3) 新築の控除期間と借入限度額
2024年以降に入居する新築マンションの場合、以下の控除期間と借入限度額が適用されます。
住宅の種類 | 控除期間 | 借入限度額 | 年間最大控除額 |
---|---|---|---|
認定住宅 | 13年 | 5,000万円 | 35万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 13年 | 4,500万円 | 31.5万円 |
省エネ基準適合住宅 | 13年 | 4,000万円 | 28万円 |
一般住宅 | 13年 | 3,000万円 | 21万円 |
2024年以降に建築確認を受けた新築住宅は、省エネ基準に適合していることが住宅ローン控除の要件となります。
新築マンション特有の税制優遇措置
(1) 認定住宅・ZEH水準による優遇
新築マンションの中でも、認定住宅やZEH水準省エネ住宅は、通常の住宅よりも優遇措置が手厚いです。
認定住宅の種類:
- 長期優良住宅: 耐震性・省エネ性等の基準を満たし、長期間良好な状態で使用できる住宅
- 低炭素住宅: CO2排出量を削減する省エネ住宅
- ZEH水準省エネ住宅: 年間の一次エネルギー消費量が概ねゼロになる住宅
認定住宅のメリット:
- 住宅ローン控除の借入限度額が一般住宅より高い(5,000万円 vs 3,000万円)
- 登録免許税の税率が軽減される
- 不動産取得税の控除額が増額される
(2) 登録免許税・不動産取得税の軽減措置
新築マンションを購入する際、以下の税金が軽減されます。
登録免許税の軽減:
登記の種類 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
所有権保存登記 | 0.4% | 0.15% |
所有権移転登記(売買) | 2.0% | 0.3% |
抵当権設定登記 | 0.4% | 0.1% |
不動産取得税の軽減:
新築住宅の場合、課税標準から1,200万円を控除できます。さらに、認定長期優良住宅の場合は1,300万円を控除できます。
(3) 固定資産税の減額措置
新築マンションの場合、一定期間固定資産税が減額されます。
減額内容:
- 新築後5年間(3階建て以上の耐火・準耐火建築物)
- 固定資産税の1/2を減額
- 床面積120㎡までの部分が対象
認定長期優良住宅の場合は、減額期間が7年間に延長されます。
確定申告の計算方法と税額シミュレーション
(1) 住宅ローン控除による税額軽減の計算
住宅ローン控除は、所得税から控除されます。控除しきれない場合は、住民税からも一部控除されます。
シミュレーション例:
- 年収: 600万円
- 年末ローン残高: 4,000万円
- 住宅の種類: 一般住宅(省エネ基準適合)
控除額 = 4,000万円 × 0.7% = 28万円
所得税額: 約30万円
控除後の所得税: 30万円 - 28万円 = 2万円
この場合、28万円の控除を全額所得税から控除できます。
(2) 源泉徴収税額との関係
会社員の場合、毎月の給与から源泉徴収された所得税が、確定申告により還付されます。
還付のイメージ:
- 源泉徴収された所得税: 30万円
- 住宅ローン控除: 28万円
- 確定申告後の還付額: 28万円
源泉徴収税額より控除額が大きい場合は、源泉徴収税額全額が還付され、残りは住民税から控除されます。
(3) 控除しきれない場合の住民税からの控除
所得税から控除しきれない場合、住民税からも一部控除できます。
住民税からの控除額:
- 前年の所得税の課税総所得金額等 × 5%(最高97,500円)
または
- 前年の所得税の課税総所得金額等 × 7%(最高136,500円)(2022年以降入居の場合)
シミュレーション例:
- 控除額: 28万円
- 所得税額: 15万円(控除しきれない額: 13万円)
- 住民税からの控除額: 13万円(上限13.65万円以内なので全額控除可能)
確定申告に必要な書類と準備タイミング
(1) 住宅ローン控除の初年度申告書類
住宅ローン控除を受けるために、確定申告時に提出する書類は以下の通りです。
必要書類一覧:
書類名 | 取得方法 | 取得タイミング |
---|---|---|
確定申告書 | 国税庁HPでダウンロード | 申告時 |
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 国税庁HPでダウンロード | 申告時 |
源泉徴収票 | 勤務先から取得 | 年末〜1月 |
住宅ローンの年末残高証明書 | 金融機関から郵送 | 12月〜1月 |
登記事項証明書(建物・土地) | 法務局で取得 | 登記完了後 |
売買契約書の写し | 購入時に受領 | 契約時 |
マイナンバー確認書類 | マイナンバーカード等 | - |
認定住宅の場合、追加で必要な書類:
- 長期優良住宅認定通知書の写し
- 低炭素建築物認定通知書の写し
- 住宅性能証明書
(2) 登記事項証明書・借入金証明書の取得
登記事項証明書の取得方法:
- 法務局の窓口で申請(手数料600円)
- オンライン申請(手数料480〜500円)
- 建物と土地の両方が必要(マンションの場合、土地は共有持分)
登記事項証明書で確認する項目:
- 床面積(登記簿面積、内法面積)
- 所有権の取得日
- 抵当権の設定(住宅ローンの借入)
年末残高証明書の取得:
- 金融機関から12月〜1月に郵送される
- 紛失した場合は再発行を金融機関に依頼
(3) 新築証明書類の準備
新築マンションの場合、売買契約書に新築の記載があれば特別な証明書は不要です。
ただし、認定住宅の優遇を受ける場合は、以下の書類が必要です。
- 長期優良住宅認定通知書
- 低炭素建築物認定通知書
- 住宅性能評価書
- ZEH水準省エネ住宅証明書
これらの書類は、販売会社やハウスメーカーから受け取ります。
新築マンション購入時の税務上の注意点
(1) 登記簿面積(内法)での床面積要件
住宅ローン控除の床面積要件は、登記簿面積(内法面積)で判定されます。
内法面積と壁芯面積の違い:
- 内法面積: 壁の内側の面積(登記簿に記載)
- 壁芯面積: 壁の中心線から測った面積(パンフレットやチラシに記載)
一般的に、壁芯面積の方が内法面積より1〜2㎡広くなります。
注意点:
- パンフレットで51㎡と記載されていても、登記簿面積が50㎡未満の場合は住宅ローン控除を受けられない
- 購入前に登記簿面積を確認することが重要
(2) 所得制限と控除額の関係
2024年以降に入居する新築マンションの場合、合計所得金額が2,000万円以下であることが要件です。
合計所得金額とは:
- 給与所得、事業所得、不動産所得等の合計
- 給与収入が2,195万円以下であれば、給与所得控除後の合計所得金額が2,000万円以下となる(概算)
所得制限を超えた年は住宅ローン控除を受けられないため、注意が必要です。
(3) 2年目以降の年末調整での手続き
初年度の確定申告後、2年目以降は年末調整で住宅ローン控除を受けることができます。
2年目以降の手続き:
- 税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」が送付される(残り12年分がまとめて送付)
- 金融機関から年末残高証明書が送付される(毎年10月〜12月頃)
- 上記2つの書類を会社の年末調整時に提出
会社員の場合、2年目以降は確定申告不要で、年末調整のみで控除を受けられます。
まとめ
新築マンションを購入し、住宅ローンを利用した場合、住宅ローン控除を受けるために初年度は確定申告が必要です。年末ローン残高の0.7%を最長13年間、所得税から控除できるため、大きな節税効果があります。
2024年以降に入居する新築マンションは、省エネ基準に適合していることが住宅ローン控除の要件となります。認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅)の場合、借入限度額が一般住宅より高く、優遇措置が手厚いです。
確定申告に必要な書類(登記事項証明書、年末残高証明書、売買契約書等)を早めに準備し、入居した年の翌年2月16日から3月15日までに申告を行いましょう。2年目以降は年末調整で控除を受けることができます。
よくある質問
新築マンションと中古マンションで住宅ローン控除に違いはありますか?
新築マンションは控除期間が13年間、中古マンションは10年間です。また、借入限度額も新築の方が高く設定されています。新築の認定住宅の場合は5,000万円、一般住宅でも3,000万円が借入限度額となります。一方、中古マンションは認定住宅でも3,000万円、一般住宅は2,000万円です。新築の方が税制上の優遇が手厚いです。
確定申告はいつまでに行う必要がありますか?
入居した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。例えば、2024年12月に入居した場合、2025年2月16日から3月15日までに申告します。期限を過ぎても5年以内であれば遡って申告できますが、早めの申告を推奨します。2年目以降は会社員の場合、年末調整で控除を受けることができ、確定申告は不要です。
認定住宅とは何ですか?どのようなメリットがありますか?
認定住宅とは、長期優良住宅、低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅などの基準を満たす住宅です。住宅ローン控除の借入限度額が一般住宅より高く(5,000万円 vs 3,000万円)、登録免許税や不動産取得税の軽減措置も手厚いです。購入時に販売会社が認定の有無を説明してくれます。認定住宅の優遇を受けるには、認定通知書や証明書を確定申告時に提出する必要があります。
住宅ローン控除で税金が戻ってくるのはいつですか?
初年度の確定申告後、約1〜2ヶ月後に指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。例えば、3月15日に申告した場合、4月〜5月頃に還付されます。2年目以降は年末調整で控除されるため、翌年1月の給与で調整されます(還付ではなく、源泉徴収税額が減額される形)。e-Taxで申告した場合は、書面提出より還付が早くなる傾向があります。