買い替え土地購入の確定申告|特例・損失繰越・取得費

公開日: 2025/10/19

買い替えによる土地購入の基礎知識

既存の不動産を売却して土地を購入する「買い替え」では、旧居の売却と新規の土地購入が連動するため、税務処理が複雑になります。売却益が出れば譲渡所得税が課税され、損失が出れば損益通算・繰越控除が適用できます。

土地のみの購入は住宅ローン控除の対象外ですが、2年以内に住宅を建築すれば遡って控除を受けられます。本記事では、買い替えで土地を購入したときの確定申告・税金計算・必要書類を実務視点で解説します。

この記事でわかること

  • 買い替えの定義と旧居売却とのタイミング調整
  • 土地購入時の税金(不動産取得税・登録免許税・印紙税)
  • 買い替え特例・譲渡損失の繰越控除の適用要件
  • 取得費に算入できる諸費用(仲介手数料・登記費用・造成費等)
  • 確定申告の手順と必要書類

買い替えの定義と範囲

買い替えとは、既存の不動産を売却し、その資金で新たな不動産を購入することです。

買い替えの典型的なパターン

  • 自宅マンションを売却して土地を購入(注文住宅用)
  • 自宅戸建てを売却して土地を購入(建て替え用)
  • 投資用物件を売却して土地を購入(新たな投資用)

本記事では、居住用財産(自宅)を売却して土地を購入する場合を中心に解説しますが、投資用物件の買い替えにも一部適用できます。

旧居売却とのタイミング調整

買い替えでは、旧居の売却と土地購入のタイミング調整が重要です。

売り先行(旧居売却→土地購入)

  • メリット:資金計画が明確、つなぎ融資不要
  • デメリット:仮住まいが必要、引越し2回

買い先行(土地購入→旧居売却)

  • メリット:仮住まい不要、引越し1回
  • デメリット:つなぎ融資が必要、金利負担増

同時決済

  • メリット:仮住まい・つなぎ融資不要
  • デメリット:タイミング調整が難しい

買い替え特例や譲渡損失の繰越控除には、旧居売却と新居(土地)購入の期間制限があるため、タイミング調整が税務上も重要です。

住宅建築予定の場合の注意点

土地を購入後に住宅を建築する予定の場合、以下の点に注意が必要です。

住宅ローン控除

  • 土地取得後2年以内に住宅を建築して居住開始
  • 土地取得費も住宅ローン控除の対象

買い替え特例・譲渡損失の繰越控除

  • 新居(土地+住宅)の取得が要件
  • 土地のみでは適用されない場合がある

不動産取得税の軽減措置

  • 土地取得後3年以内に住宅を建築
  • 軽減措置の適用を受けられる

土地購入後の住宅建築計画を明確にし、期限内に完成させることが税務上重要です。

土地購入時の各種税金

不動産取得税の計算と軽減措置

土地を購入したときに課税される地方税です(総務省「不動産取得税の申告と軽減措置」)。

税率

  • 土地:固定資産税評価額 × 3%(令和6年3月31日まで)
  • 原則は4%だが、特例で3%に軽減

軽減措置

  • 住宅用地:固定資産税評価額を1/2に減額
  • 適用要件:土地取得後3年以内に住宅を建築

計算例

  • 固定資産税評価額:1500万円
  • 軽減措置適用:1500万円 × 1/2 = 750万円
  • 不動産取得税:750万円 × 3% = 22.5万円

申告期限

  • 土地取得後60日以内(自治体により異なる)
  • 軽減措置の申請も同時に行う

不動産取得税は自治体から納税通知書が送付されますが、軽減措置は自己申告が必要なため、期限内に申請してください。

登録免許税の計算

土地の所有権移転登記時に課税される国税です(国税庁「登録免許税の計算と納付方法」)。

税率

  • 土地の所有権移転登記:固定資産税評価額 × 2.0%
  • 軽減措置(令和8年3月31日まで):1.5%

計算例

  • 固定資産税評価額:1500万円
  • 登録免許税:1500万円 × 1.5% = 22.5万円

登録免許税は登記申請時に現金または収入印紙で納付します。司法書士に依頼すれば代理納付してもらえます。

印紙税

土地の売買契約書に貼付する印紙税です。

契約金額 印紙税額
1000万円超〜5000万円以下 1万円
5000万円超〜1億円以下 3万円
1億円超〜5億円以下 6万円

印紙税は売買契約書に印紙を貼付して消印することで納付します。

旧居売却と連動する税制優遇

特定居住用財産の買換え特例

居住用財産を買い替えた場合、旧居の譲渡益への課税を将来に繰り延べることができる制度です(国税庁「特定居住用財産の買換え特例」)。

適用要件

  • 譲渡対価が1億円以下
  • 所有期間10年超、居住期間10年以上
  • 新居(土地+住宅)の床面積50㎡以上、土地面積500㎡以下
  • 旧居売却の前年から翌年までの3年間に新居を取得

繰延のメカニズム

  • 旧居の譲渡益への課税を将来の売却時まで繰り延べ
  • 新居(土地)の取得費は、旧居の取得費を引き継ぐ

計算例

  • 旧居の取得費:2000万円
  • 旧居の譲渡価格:5000万円(譲渡益3000万円)
  • 新居(土地)の購入価格:6000万円
  • 買換え特例適用:譲渡益3000万円への課税を繰り延べ
  • 新居(土地)の取得費:6000万円 - 3000万円 = 3000万円(将来売却時)

買換え特例は将来の売却時に課税されるため、長期保有を前提とした場合に有利です。

譲渡損失の繰越控除

旧居を売却して損失が出た場合、譲渡損失を給与所得など他の所得と損益通算でき、控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せます(国税庁「買い替え特例と譲渡損失の繰越控除」)。

適用要件

  • 旧居の住宅ローン残高が売却価格を上回る(オーバーローン)
  • 新居を購入し、年末までに居住開始
  • 新居で住宅ローンを借入(借入期間10年以上)

計算例

  • 旧居の住宅ローン残高:3000万円
  • 旧居の譲渡価格:2500万円
  • 譲渡損失:500万円
  • 給与所得:600万円
  • 損益通算後の所得:600万円 - 500万円 = 100万円

譲渡損失は給与所得から控除できるため、所得税・住民税が軽減されます。控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せます。

買い替え特例の適用要件

買い替え特例と譲渡損失の繰越控除は、適用要件が異なります。

項目 買換え特例 譲渡損失の繰越控除
譲渡価格 1億円以下 制限なし
所有期間 10年超 5年超
居住期間 10年以上 制限なし
ローン残高 制限なし オーバーローン
新居の取得 必須 必須

どちらか一方しか適用できないため、税理士と相談して有利な方を選択してください。

確定申告の手順と必要書類

確定申告が必要なケース

買い替えで土地を購入した場合、以下のケースで確定申告が必要です。

旧居を売却して譲渡所得が発生した場合

  • 譲渡益が出た場合(買換え特例を適用する場合も申告必要)
  • 譲渡損失を損益通算する場合

土地を購入し、住宅建築予定の場合

  • 住宅ローン控除の適用を受ける(土地取得後2年以内に住宅建築)

土地を賃貸に出す場合

  • 不動産所得が発生(年間20万円超)

買い替え時の添付書類

買い替えで土地を購入し、旧居の譲渡所得を申告する場合、以下の書類が必要です。

旧居の譲渡所得申告

  • 確定申告書B(第一表・第二表)
  • 確定申告書B(第三表:譲渡所得用)
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表)
  • 旧居の売買契約書のコピー
  • 旧居の登記事項証明書
  • 旧居の取得費を証明する書類(購入時の売買契約書等)

買換え特例を適用する場合の追加書類

  • 買換え特例の適用を受ける旨の申告書
  • 新居(土地)の売買契約書のコピー
  • 新居(土地)の登記事項証明書
  • 住宅建築予定を証明する書類(建築確認申請書等)

譲渡損失の繰越控除を適用する場合の追加書類

  • 譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
  • 旧居の住宅ローン残高証明書
  • 新居の住宅ローン年末残高証明書
  • 新居(土地)の売買契約書のコピー
  • 新居(土地)の登記事項証明書

申告期限と提出先

確定申告期限

  • 毎年2月16日〜3月15日
  • 旧居を売却した年の翌年に申告

提出先

  • 住所地を管轄する税務署
  • e-Tax(電子申告)なら24時間提出可能

納税期限

  • 確定申告期限と同じ(3月15日)
  • 振替納税を利用すれば4月下旬に口座引き落とし

取得費に算入できる諸費用

仲介手数料

土地購入時の仲介手数料は、取得費に算入できます。

仲介手数料の相場

  • 土地価格3000万円の場合:(3000万円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 105.6万円

取得費算入の効果

  • 将来土地を売却する際の譲渡所得計算で差し引ける
  • 譲渡益が減少し、税負担が軽減される

登記費用・測量費

以下の費用も取得費に算入できます。

費用項目 取得費算入 備考
登録免許税 所有権移転登記
司法書士報酬 登記手続き代行
測量費 境界確定測量
仲介手数料 不動産会社への支払い
不動産取得税 取得費または必要経費(選択可)
固定資産税の精算金 引き渡し日以降の按分額

領収書の保管

  • 取得費を証明するため、領収書を永久保存
  • 将来の譲渡所得計算で必要

造成費・整地費用

土地の造成費・整地費用も取得費に算入できます。

取得費算入できる造成費

  • 土地の盛土・切土
  • 擁壁工事
  • 地盤改良工事
  • 整地・雑草除去

取得費算入の時期

  • 土地購入後の造成費も取得費に算入可能
  • 住宅建築前の造成費は土地の取得費
  • 住宅建築後の造成費は建物の取得費

造成費の領収書も永久保管し、将来の譲渡所得計算に備えてください。

将来の売却を見据えた記録保存

売買契約書の保管

土地の売買契約書は、取得費を証明する最も重要な書類です。

保管すべき書類

  • 土地の売買契約書(原本またはコピー)
  • 重要事項説明書
  • 仲介手数料の領収書
  • 登記費用の領収書

保管期間

  • 土地を売却するまで永久保存
  • 紛失すると取得費を証明できない

領収書・請求書の整理

取得費に算入できる諸費用の領収書を整理・保管します。

整理方法

  • 年度別・項目別にファイリング
  • スキャンしてデジタル保存も推奨
  • クラウドストレージでバックアップ

保管すべき領収書

  • 仲介手数料
  • 登記費用(登録免許税・司法書士報酬)
  • 測量費
  • 造成費・整地費用
  • 不動産取得税(取得費に算入する場合)

取得費の計算方法

将来土地を売却する際の取得費は、以下の式で計算します。

取得費 = 購入価格 + 取得時の諸費用

計算例

  • 土地の購入価格:3000万円
  • 仲介手数料:105.6万円
  • 登記費用(登録免許税+司法書士報酬):50万円
  • 測量費:30万円
  • 造成費:100万円
  • 取得費:3000万円 + 105.6万円 + 50万円 + 30万円 + 100万円 = 3285.6万円

将来土地を5000万円で売却した場合

  • 譲渡益:5000万円 - 3285.6万円 = 1714.4万円
  • 譲渡所得税(長期譲渡所得):1714.4万円 × 20.315% = 約348万円

取得費を正しく計上することで、税負担を適正化できます。

まとめ

買い替えで土地を購入する場合、以下の点を押さえることが重要です。

土地購入時の税金

  • 不動産取得税:固定資産税評価額 × 1.5%(軽減措置適用、3年以内に住宅建築が条件)
  • 登録免許税:固定資産税評価額 × 1.5%(軽減措置適用)
  • 印紙税:契約金額に応じて

買い替え特例・譲渡損失の繰越控除

  • 買換え特例:譲渡益への課税を将来に繰り延べ(所有期間10年超、譲渡対価1億円以下が要件)
  • 譲渡損失の繰越控除:給与所得等と損益通算、3年間繰越可能(オーバーローンが条件)

確定申告

  • 旧居売却の翌年2〜3月に申告
  • 買換え特例・譲渡損失の繰越控除は申告が必須
  • 土地購入後2年以内に住宅建築で住宅ローン控除適用

取得費に算入できる諸費用

  • 仲介手数料・登記費用・測量費・造成費・整地費用
  • 領収書を永久保存し、将来の譲渡所得計算に備える

買い替えで土地を購入する場合、旧居の売却と連動する税制優遇があるため、税理士への相談を推奨します。

よくある質問

買い替えで土地を購入する場合、確定申告は必要ですか?

旧居を売却して譲渡所得が発生した場合、または譲渡損失を繰越控除する場合は確定申告が必要です。土地購入だけであれば申告不要ですが、住宅建築予定で住宅ローン控除を受ける場合は申告が必要です。買換え特例を適用する場合も確定申告が必須です。旧居売却の翌年2月16日〜3月15日に申告してください。

買い替え特例とは何ですか?

居住用財産を買い替えた場合、旧居の譲渡益への課税を将来に繰り延べることができる制度です。一定の要件(譲渡対価1億円以下、所有期間10年超、居住期間10年以上等)を満たす必要があります。課税が免除されるのではなく、新居(土地)を将来売却する際に課税されるため、長期保有を前提とした場合に有利です。

土地購入の諸費用はどこまで取得費に含められますか?

仲介手数料、登記費用、測量費、造成費、整地費用などが取得費に算入できます。これらは将来土地を売却する際の譲渡所得計算で差し引けるため、領収書を保管しておくことが重要です。不動産取得税は取得費に算入するか、購入年度の必要経費とするか選択できます。固定資産税の精算金(引き渡し日以降の按分額)も取得費に算入できます。

旧居売却で損失が出た場合、どうなりますか?

一定の要件を満たせば、譲渡損失を給与所得など他の所得と損益通算でき、控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せます。適用要件は、旧居の住宅ローン残高が売却価格を上回ること(オーバーローン)、新居を購入して年末までに居住開始すること、新居で10年以上の住宅ローンを借入することです。この制度を使うには確定申告が必須です。

よくある質問

Q1買い替えで土地を購入する場合、確定申告は必要ですか?

A1旧居を売却して譲渡所得が発生した場合、または譲渡損失を繰越控除する場合は確定申告が必要です。土地購入だけであれば申告不要ですが、住宅建築予定で住宅ローン控除を受ける場合は申告が必要です。買換え特例を適用する場合も確定申告が必須です。旧居売却の翌年2月16日〜3月15日に申告してください。

Q2買い替え特例とは何ですか?

A2居住用財産を買い替えた場合、旧居の譲渡益への課税を将来に繰り延べることができる制度です。一定の要件(譲渡対価1億円以下、所有期間10年超、居住期間10年以上等)を満たす必要があります。課税が免除されるのではなく、新居(土地)を将来売却する際に課税されるため、長期保有を前提とした場合に有利です。

Q3土地購入の諸費用はどこまで取得費に含められますか?

A3仲介手数料、登記費用、測量費、造成費、整地費用などが取得費に算入できます。これらは将来土地を売却する際の譲渡所得計算で差し引けるため、領収書を保管しておくことが重要です。不動産取得税は取得費に算入するか、購入年度の必要経費とするか選択できます。固定資産税の精算金(引き渡し日以降の按分額)も取得費に算入できます。

Q4旧居売却で損失が出た場合、どうなりますか?

A4一定の要件を満たせば、譲渡損失を給与所得など他の所得と損益通算でき、控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せます。適用要件は、旧居の住宅ローン残高が売却価格を上回ること(オーバーローン)、新居を購入して年末までに居住開始すること、新居で10年以上の住宅ローンを借入することです。この制度を使うには確定申告が必須です。

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