離婚土地売却の確定申告・税金計算・必要書類完全ガイド

公開日: 2025/10/20

離婚時の土地売却で確定申告が必要になる理由

離婚に伴い土地を売却したり財産分与として譲渡した場合、確定申告が必要になるケースがあります。土地売却は譲渡所得として扱われ、売却益が発生すれば所得税・住民税が課税されます。また、財産分与として土地を渡す場合でも、分与する側には譲渡所得税が発生する可能性があります。

この記事でわかること

  • 財産分与と譲渡所得税の関係(分与する側・受ける側の課税ルール)
  • 土地の譲渡所得計算方法(取得費・譲渡費用の扱い)
  • 短期・長期譲渡所得による税率の違い(5年が分岐点)
  • 確定申告の手続きと必要書類(離婚関連の添付書類含む)
  • 取得費が不明な場合の概算取得費(5%)のリスク

1. 離婚時土地売却の税務基礎知識

(1) 土地と建物の税務上の違い

不動産の譲渡所得計算では、土地と建物は異なる扱いを受けます。建物は減価償却により取得費が年々減少しますが、土地は減価しないため購入時の価格がそのまま取得費となります。ただし、造成費用や土地改良費は取得費に加算できます。

(2) 土地は居住用特例が適用されない

建物を含む居住用不動産を売却する場合、3,000万円特別控除や軽減税率などの特例が適用できますが、土地のみの売却では原則としてこれらの特例は適用されません。建物付き土地として居住していた場合のみ、土地にも居住用特例が適用可能です。

(3) 財産分与による譲渡の扱い

国税庁によれば、財産分与として土地を譲渡する場合も、通常の売買と同様に譲渡所得の対象となります。財産分与する側は譲渡の時点で時価により譲渡したものとみなされ、取得時から分与時までの値上がり益に対して課税されます。

2. 財産分与と譲渡所得の関係

(1) 財産分与する側の譲渡所得税

離婚協議により土地を配偶者に譲る場合、分与する側には譲渡所得税が発生します。分与時の時価が取得時の価格を上回っていれば、その差額が譲渡所得として課税対象になります。売却代金を受け取らなくても、時価で譲渡したとみなされる点に注意が必要です。

(2) 財産分与を受ける側の税務

国税庁によれば、財産分与により土地を受け取る側は、原則として贈与税や所得税は課税されません。ただし、分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮しても過大と認められる場合には、その過大部分に贈与税が課される可能性があります。

(3) 共有持分がある場合の按分計算

夫婦で土地を共有している場合、各自の持分割合に応じて譲渡所得を計算します。例えば夫60%・妻40%の共有であれば、売却益もそれぞれの持分割合で按分し、各自が確定申告を行います。短期・長期の判定も各自の取得時期で個別に判定されます。

3. 譲渡所得の計算方法

(1) 土地の取得費(減価償却なし)

土地の取得費は、購入時の代金に購入時の仲介手数料、登記費用、測量費などを加えた金額です。建物と異なり土地は減価償却しないため、何年経過しても取得費は減りません。相続や贈与で取得した土地の場合は、前所有者の取得費を引き継ぎます。

(2) 譲渡費用に含められる費用

譲渡費用として差し引けるのは、売却時の仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、建物の取り壊し費用(土地のみで売却する場合)などです。ただし、修繕費や固定資産税などの維持管理費用は譲渡費用に含められません。

(3) 造成費用等の取得費算入

土地の造成費用、土盛費用、地ならし費用、埋立費用などは取得費に加算できます。また、土地利用のために行った擁壁工事費用なども取得費として認められます。これらの費用の領収書は必ず保管しておきましょう。

(4) 譲渡所得の計算式

譲渡所得は以下の式で計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)

例:3,000万円で購入した土地を4,500万円で売却、譲渡費用150万円の場合

譲渡所得 = 4,500万円 - (3,000万円 + 150万円) = 1,350万円

4. 税率と所有期間の判定

(1) 短期譲渡所得(5年以下):税率39.63%

譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得となり、税率は39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)です。所得税には復興特別所得税2.1%が含まれています。

(2) 長期譲渡所得(5年超):税率20.315%

譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得となり、税率は20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)です。短期に比べて約半分の税率となるため、所有期間の判定は非常に重要です。

(3) 所有期間の判定方法(譲渡年の1月1日時点)

重要なのは、売却した日ではなく、売却した年の1月1日時点での所有期間で判定されることです。例えば2019年4月1日に購入した土地を2024年12月に売却した場合、2024年1月1日時点では所有期間は4年9ヶ月となり、短期譲渡所得となります。

(4) 税率の違いによる影響

譲渡所得1,350万円の場合の税額比較:

所有期間 税率 税額
短期(5年以下) 39.63% 約535万円
長期(5年超) 20.315% 約274万円

同じ譲渡所得でも税額に約260万円の差が生じます。

5. 確定申告の手続きと必要書類

(1) 申告期限と申告先

土地を売却した年の翌年2月16日から3月15日までに、住所地の税務署に確定申告書を提出します。この期間は毎年固定されており、土曜日や日曜日の場合は翌平日が期限となります。

(2) 確定申告書第三表の記入方法

譲渡所得がある場合は、確定申告書第一表・第二表に加えて、分離課税用の第三表(分離課税用)を提出します。第三表には譲渡価額、取得費、譲渡費用、特別控除額(該当する場合)を記入します。

(3) 必要書類一覧

確定申告には以下の書類が必要です(国税庁):

  • 確定申告書(第一表・第二表・第三表)
  • 譲渡所得の内訳書(土地・建物用)
  • 売買契約書のコピー(購入時・売却時両方)
  • 仲介手数料の領収書
  • 登記事項証明書
  • 測量費用等の領収書

(4) 離婚関連の添付書類

財産分与として土地を譲渡した場合、以下の書類の添付が推奨されます:

  • 離婚届の受理証明書または戸籍謄本
  • 財産分与協議書(作成している場合)
  • 離婚調停調書または判決書(調停・裁判離婚の場合)

これらの書類により、財産分与としての譲渡であることを証明します。

6. 取得費の証明と注意点

(1) 購入時の契約書等の重要性

土地の取得費を正確に証明するためには、購入時の売買契約書が最も重要です。契約書がない場合、通帳の記録、領収書、登記申請書の控えなどでも代用できる場合があります。親族間取引など契約書を作成していないケースでは、取得費の証明が困難になります。

(2) 概算取得費(売却額の5%)のリスク

国税庁によれば、取得費が不明な場合、売却額の5%を概算取得費として計算できます。しかしこの場合、譲渡所得が極めて大きくなり、税負担が著しく増加します。

例:4,500万円で売却、譲渡費用150万円の場合

概算取得費 = 4,500万円 × 5% = 225万円
譲渡所得 = 4,500万円 - (225万円 + 150万円) = 4,125万円
長期税率20.315%で税額 約838万円

実際の取得費3,000万円の場合と比べて、税額が約560万円も増加します。

(3) 取得費が不明な場合の対処法

契約書が見つからない場合の対処法:

  1. 不動産会社や司法書士に契約書の控えがないか確認
  2. 金融機関に当時の融資関連書類の開示請求
  3. 法務局で登記申請書の閲覧(保存期間内の場合)
  4. 市場価格資料による推定(路線価、公示地価等)

市場価格資料による推定は税務署との協議が必要ですが、概算5%よりも合理的な取得費を認めてもらえる可能性があります。

まとめ

離婚に伴う土地売却では、財産分与として譲渡する場合でも譲渡所得税の対象となります。土地は居住用特例が適用されないため、所有期間による税率の違い(短期39.63%、長期20.315%)が大きな影響を与えます。

確定申告では購入時の契約書が必須であり、不明な場合の概算取得費5%では税負担が極めて大きくなります。共有名義の場合は各自が持分割合に応じて申告する必要があります。財産分与を受ける側は原則非課税ですが、過大な分与には贈与税が課される可能性があるため、適正な分与額の設定が重要です。

よくある質問

Q1. 離婚で財産分与として土地を渡す場合、税金はかかりますか?

A. 財産分与する側には譲渡所得税が発生する可能性があります。分与時の時価が取得時の価格を上回っていれば、その差額に対して課税されます。一方、分与を受ける側は原則非課税ですが、分与額が過大と認められる場合は贈与税が課される可能性があります。

Q2. 土地を売却する場合、居住用の3,000万円特別控除は使えますか?

A. 土地のみの売却では、3,000万円特別控除は原則として適用されません。この特例は居住用家屋とその敷地に適用されるものです。建物付き土地として実際に居住していた場合のみ、土地にも特例が適用できます。

Q3. 購入時の契約書がない古い土地を売却する場合、取得費はどうなりますか?

A. 取得費が不明な場合、国税庁の規定により売却額の5%を概算取得費として計算できます。ただしこの場合、譲渡所得が極めて大きくなり税負担が著しく増加します。契約書がない場合は、金融機関の融資記録や法務局の登記申請書など、取得費を証明できる資料を探すことが重要です。

Q4. 共有名義の土地を離婚で売却する場合、税金の計算はどうなりますか?

A. 各自の持分割合に応じて譲渡所得を計算し、それぞれが確定申告を行います。短期・長期の判定も各自の取得時期で個別に判定されるため、夫婦で異なる税率が適用される可能性があります。売却代金の分配割合と持分割合が異なる場合は、贈与税の問題が生じることがあるため注意が必要です。

Q5. 土地売却の確定申告はいつまでに行う必要がありますか?

A. 土地を売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行います。例えば2024年中に売却した場合、2025年2月16日から3月15日が申告期間です。この期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が課されるため、必ず期限内に申告しましょう。

よくある質問

Q1離婚で財産分与として土地を渡す場合、税金はかかりますか?

A1財産分与する側には譲渡所得税が発生する可能性があります。分与時の時価が取得時の価格を上回っていれば、その差額に対して課税されます。一方、分与を受ける側は原則非課税ですが、分与額が過大と認められる場合は贈与税が課される可能性があります。

Q2土地を売却する場合、居住用の3,000万円特別控除は使えますか?

A2土地のみの売却では、3,000万円特別控除は原則として適用されません。この特例は居住用家屋とその敷地に適用されるものです。建物付き土地として実際に居住していた場合のみ、土地にも特例が適用できます。

Q3購入時の契約書がない古い土地を売却する場合、取得費はどうなりますか?

A3取得費が不明な場合、国税庁の規定により売却額の5%を概算取得費として計算できます。ただしこの場合、譲渡所得が極めて大きくなり税負担が著しく増加します。契約書がない場合は、金融機関の融資記録や法務局の登記申請書など、取得費を証明できる資料を探すことが重要です。

Q4共有名義の土地を離婚で売却する場合、税金の計算はどうなりますか?

A4各自の持分割合に応じて譲渡所得を計算し、それぞれが確定申告を行います。短期・長期の判定も各自の取得時期で個別に判定されるため、夫婦で異なる税率が適用される可能性があります。売却代金の分配割合と持分割合が異なる場合は、贈与税の問題が生じることがあるため注意が必要です。

Q5土地売却の確定申告はいつまでに行う必要がありますか?

A5土地を売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行います。例えば2024年中に売却した場合、2025年2月16日から3月15日が申告期間です。この期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が課されるため、必ず期限内に申告しましょう。

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