離婚購入戸建ての申告・計算・書類|財産分与と税務処理

公開日: 2025/10/12

離婚時の戸建て購入における税務手続きを正しく理解する

離婚に伴い、財産分与または慰謝料として戸建てを取得したり、新たに戸建てを購入する場合、税務処理に不安を感じる方が多くいます。特に「財産分与で取得した場合に贈与税はかかるのか」「住宅ローン控除は適用できるのか」「名義変更の費用はどうなるのか」といった疑問が生じます。

本記事では、離婚時の戸建て購入における確定申告と税務手続きを、財産分与・住宅ローン控除・不動産取得税・登録免許税・贈与税に分けて解説します。

この記事の要点

  • 財産分与で戸建てを取得した場合、原則として贈与税は非課税
  • 過大な分与(婚姻期間や資産状況と不釣り合い)は贈与税の課税対象
  • 住宅ローン控除は名義要件を満たせば適用可能(初年度は確定申告必須)
  • 不動産取得税は取得後60日以内に申告(軽減措置あり)
  • 登録免許税は所有権移転登記時に納付(住宅用家屋は軽減税率適用)

1. 離婚と不動産取得の税務基礎

(1) 財産分与で取得した場合

離婚に伴う財産分与により戸建てを取得した場合、原則として贈与税は非課税です。国税庁の「財産分与により取得した不動産の税務処理」によれば、財産分与は夫婦の共有財産を清算する手続きであり、贈与には該当しないとされています。

ただし、以下のケースでは贈与税が課税される可能性があります。

  • 財産分与額が婚姻期間や資産状況に比べて過大である
  • 贈与税や相続税を免れるために離婚した(偽装離婚)

これらの判断は複雑なため、税理士に相談することを推奨します。

(2) 離婚後に新規購入した場合

離婚後に新たに戸建てを購入した場合、通常の不動産購入と同様の税務処理が必要です。

必要な手続き

  • 住宅ローン控除の確定申告(初年度)
  • 不動産取得税の申告(取得後60日以内)
  • 登録免許税の納付(所有権移転登記時)

親からの援助を受けた場合は、住宅取得資金の贈与税非課税特例の適用を検討してください。

(3) 名義変更の税務処理

元配偶者名義の戸建てを自分名義に変更する場合、財産分与による所有権移転登記を行います。

必要な費用

  • 登録免許税(固定資産税評価額の2%、住宅用家屋は0.3%に軽減)
  • 司法書士報酬(5~10万円程度)

登録免許税は、法務省の「登録免許税の計算と納付」に基づき計算します。

2. 財産分与と税金

(1) 贈与税の非課税

財産分与により戸建てを取得した場合、原則として贈与税は課されません。これは、財産分与が夫婦共有財産の清算であり、新たな財産の移転(贈与)ではないためです。

非課税の適用要件

  • 離婚届が受理されていること(離婚前の財産分与は認められない)
  • 財産分与額が相当な範囲内であること
  • 贈与税や相続税を免れる目的でないこと

(2) 過大な分与の課税

財産分与額が婚姻期間や資産状況に比べて過大である場合、超過部分に贈与税が課される可能性があります。

過大と判断される可能性があるケース

  • 婚姻期間が短い(1~2年)にもかかわらず、高額な不動産を分与
  • 分与を受ける側の寄与度が低い(専業主婦・主夫でも通常は2分の1が目安)
  • 一方的に有利な分与内容

税務署から指摘を受けた場合は、弁護士や税理士に相談して適切に対応してください。

(3) 不動産取得税との関係

財産分与により戸建てを取得した場合でも、不動産取得税は原則として課税されます。ただし、一定の要件を満たす住宅用家屋には軽減措置が適用されます。

総務省の「不動産取得税の申告手続き」によれば、取得後60日以内に都道府県税事務所に申告する必要があります。

3. 住宅ローン控除の確定申告

(1) 必要書類と計算方法

住宅ローンを利用して戸建てを購入した場合、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けることができます。国税庁の「住宅借入金等特別控除の確定申告手続き」によれば、初年度は確定申告が必須です。

必要書類

  • 確定申告書
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住民票(取得後6ヶ月以内)
  • 登記事項証明書
  • 売買契約書または請負契約書
  • 住宅ローンの残高証明書(金融機関発行)
  • 源泉徴収票(給与所得者の場合)

控除額の計算

  • 年末ローン残高の0.7%(最大13年間)
  • 控除限度額は住宅の性能や購入時期によって異なる(新築:最大455万円、中古:最大210万円等)

(2) 名義要件の確認

住宅ローン控除を受けるには、以下の名義要件を満たす必要があります。

  • 建物の所有権が本人名義または共有名義であること
  • 住宅ローンの債務者が本人であること
  • 実際に居住していること

元配偶者名義のローンを引き継ぐ場合、金融機関で借換えまたは債務者変更の手続きを行い、自分名義にする必要があります。ただし、金融機関の審査が必要です。

(3) 確定申告書の作成

国税庁の「確定申告書の記載例(住宅ローン控除)」を参考に、以下の手順で作成します。

  1. 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
  2. 「住宅借入金等特別控除」を選択
  3. 必要項目を入力(物件情報、ローン残高等)
  4. 添付書類を準備
  5. 税務署に提出(e-Taxまたは郵送)

2年目以降は、年末調整で控除を受けられます(給与所得者の場合)。

4. 不動産取得税の申告

(1) 軽減措置の申請方法

不動産取得税は、不動産を取得した際に都道府県が課す地方税です。標準税率は4%ですが、住宅用家屋は3%に軽減されます。

さらに、以下の要件を満たす住宅は、建物価格から一定額を控除できます。

新築住宅: 最大1,200万円控除(認定長期優良住宅等は1,300万円)

中古住宅: 築年数に応じて控除額が異なる(昭和57年以降:最大1,200万円)

土地: 軽減措置の適用要件あり(詳細は都道府県税事務所に確認)

(2) 申告期限と手続き

不動産を取得した日から60日以内に、都道府県税事務所に申告する必要があります。期限を過ぎると軽減措置を受けられない場合があるため、早めに手続きしてください。

必要書類

  • 不動産取得税申告書
  • 売買契約書または贈与契約書
  • 登記事項証明書
  • 住民票(軽減措置適用時)

(3) 必要書類

財産分与により戸建てを取得した場合、離婚協議書または調停調書の写しが必要になることがあります。都道府県税事務所に事前に確認してください。

5. 登録免許税の計算

(1) 軽減税率の適用要件

所有権移転登記を行う際、登録免許税が課されます。法務省の「登録免許税の計算と納付」によれば、標準税率は固定資産税評価額の2%ですが、住宅用家屋は0.3%に軽減されます(2027年3月31日まで)。

軽減税率の適用要件

  • 床面積が50㎡以上
  • 自己居住用であること
  • 取得後1年以内の登記
  • 新築または取得後使用されたことのない住宅
  • 中古住宅の場合、昭和57年以降の建築または耐震基準適合証明あり

(2) 計算方法

登録免許税は以下の計算式で求めます。

登録免許税 = 固定資産税評価額 × 税率

計算例:

  • 固定資産税評価額: 2,000万円
  • 軽減税率適用: 0.3%
  • 登録免許税: 2,000万円 × 0.3% = 6万円

固定資産税評価額は、市区町村の固定資産税課税台帳で確認できます。

(3) 納付手続き

登録免許税は、所有権移転登記の申請時に法務局に納付します。通常は司法書士に依頼して手続きを行います。

納付方法は以下から選択できます。

  • 現金納付(法務局または金融機関)
  • 電子納付(登記・供託オンライン申請システム)

6. 贈与税の申告手続き

(1) 非課税特例の適用申請

離婚後に親や祖父母から住宅取得資金の援助を受けた場合、贈与税の非課税特例を利用できます。国税庁の「贈与税の申告(住宅取得資金の特例)」によれば、最大1,000万円まで非課税(省エネ住宅等は1,500万円)となります。

適用要件

  • 直系尊属(親・祖父母)からの贈与
  • 受贈者が18歳以上
  • 受贈者の所得が2,000万円以下
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住

(2) 住宅取得資金の特例

非課税特例を受けるには、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日に確定申告が必要です。

必要書類

  • 贈与税の申告書
  • 住宅取得資金の非課税の計算明細書
  • 売買契約書または請負契約書
  • 登記事項証明書
  • 住民票
  • 受贈者の所得証明書

(3) 添付書類の準備

離婚後に援助を受けた場合、戸籍謄本で親子関係を証明する必要があります。旧姓に戻った場合は、戸籍の附票で続柄を確認してください。

離婚時の注意点とトラブル防止策

(1) 財産分与の適正額を確認

財産分与額が過大と判断されると贈与税が課されるリスクがあります。弁護士に相談し、婚姻期間や資産状況に応じた適正額を確認してください。

一般的には、夫婦の共有財産を2分の1ずつ分けるのが目安とされていますが、個別の事情によって異なります。

(2) 住宅ローンの債務者変更

元配偶者名義のローンを引き継ぐ場合、金融機関で債務者変更または借換えの手続きが必要です。ただし、金融機関の審査があり、収入や信用情報によっては承認されない場合もあります。

早めに金融機関に相談し、必要書類や審査基準を確認してください。

(3) 共有名義の解消

離婚後も元配偶者との共有名義のままでは、将来的にトラブルが生じる可能性があります。財産分与により単独名義にするか、売却して現金化する方法を検討してください。

まとめ

離婚に伴い財産分与で戸建てを取得した場合、原則として贈与税は非課税です。ただし、財産分与額が婚姻期間や資産状況に比べて過大である場合、超過部分に贈与税が課される可能性があります。弁護士や税理士に相談して適正額を確認してください。

住宅ローン控除は、名義要件を満たせば適用可能です。初年度は確定申告が必須で、建物の所有権と住宅ローンの債務者が本人名義であることが条件です。元配偶者名義のローンを引き継ぐ場合は、金融機関で借換えまたは債務者変更の手続きを行ってください。

不動産取得税は取得後60日以内に都道府県税事務所に申告する必要があります。軽減措置を受けるため、早めに手続きしてください。登録免許税は所有権移転登記時に納付し、住宅用家屋は0.3%に軽減されます(2027年3月31日まで)。

離婚後に親からの援助を受けた場合、住宅取得資金の贈与税非課税特例を利用できます。最大1,000万円まで非課税(省エネ住宅等は1,500万円)ですが、贈与を受けた年の翌年3月15日までに確定申告が必要です。

離婚時の不動産取得は複雑な税務処理が伴うため、弁護士・税理士に相談して適切に手続きを進めてください。

よくある質問

Q1財産分与で戸建てを取得した場合、贈与税はかかりますか?

A1原則非課税です。財産分与は夫婦共有財産の清算であり、贈与には該当しないためです。ただし、財産分与額が婚姻期間や資産状況に比べて過大である場合、超過部分に贈与税が課される可能性があります。一般的には夫婦の共有財産を2分の1ずつ分けるのが目安とされています。弁護士や税理士に相談して適正額を確認してください。

Q2元配偶者名義のローンを引き継ぐ場合、住宅ローン控除は適用されますか?

A2名義変更後に自分名義のローンであれば適用可能です。金融機関で借換えまたは債務者変更の手続きを行い、自分名義にする必要があります。ただし、金融機関の審査があり、収入や信用情報によっては承認されない場合もあります。建物の所有権と住宅ローンの債務者が本人名義であることが住宅ローン控除の要件です。

Q3離婚後の住宅ローン控除は継続できますか?

A3自己居住要件等を満たせば継続可能です。建物の所有権が本人名義であり、実際に居住していることが条件です。離婚により共有名義から単独名義に変更した場合でも、自分の持分に対応するローン残高について控除を受けられます。名義と実際の居住状況の一致が必要です。税務署に確認してください。

Q4不動産取得税の申告期限はいつまでですか?

A4取得後60日以内に都道府県税事務所へ申告する必要があります。軽減措置を受けるため、早めに手続きしてください。財産分与により戸建てを取得した場合、離婚協議書または調停調書の写しが必要になることがあります。申告期限を過ぎると軽減措置を受けられない場合があるため、注意してください。

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