戸建て売却の確定申告・計算方法・必要書類|基礎知識

公開日: 2025/10/19

戸建て売却の確定申告・計算・書類:6つの重要ステップ

戸建てを売却して利益が出た場合、翌年の確定申告が必要です。譲渡所得の計算方法、必要書類の準備、申告期限、利用できる特例など、初めての確定申告でも迷わないよう実務的に解説します。

本記事では、戸建て売却後の確定申告について、国税庁等の公的機関の情報を基に分かりやすく説明します。

この記事で分かること:

  • 戸建て売却時の譲渡所得の計算方法
  • 長期譲渡所得と短期譲渡所得の違い
  • 3,000万円特別控除などの税制優遇
  • 確定申告に必要な書類と準備方法
  • 申告期限と納付スケジュール
  • よくある間違いと注意点

1. 戸建て売却時の税金計算の基本

(1) 譲渡所得の計算式

戸建て売却による利益は「譲渡所得」として課税されます。譲渡所得の計算式は以下の通りです:

譲渡所得 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除

収入金額:売却価格

取得費:購入時の価格 + 購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用、不動産取得税等) - 減価償却費(建物部分)

譲渡費用:売却時にかかった費用(仲介手数料、測量費、建物解体費、印紙税等)

特別控除:居住用財産の3,000万円特別控除など

計算例(マイホームの戸建て売却):

  • 売却価格:5,000万円
  • 取得費:3,000万円(購入価格2,800万円 + 購入時諸費用200万円)
  • 譲渡費用:200万円(仲介手数料等)
  • 特別控除:3,000万円(居住用財産の特例)

譲渡所得 = 5,000万円 - 3,000万円 - 200万円 - 3,000万円 = -1,200万円(譲渡損失)

この場合、譲渡所得はマイナスとなり、課税されません。

(2) 長期譲渡所得と短期譲渡所得の違い

譲渡所得の税率は、所有期間により異なります:

長期譲渡所得(所有期間5年超):

  • 所得税15% + 住民税5% = 合計20%
  • 復興特別所得税を含めると20.315%

短期譲渡所得(所有期間5年以下):

  • 所得税30% + 住民税9% = 合計39%
  • 復興特別所得税を含めると39.63%

重要:所有期間は、売却した年の1月1日時点で判定します。例えば、2019年4月に購入し、2024年5月に売却した場合、2024年1月1日時点では所有期間が5年に満たないため、短期譲渡所得となります。

長期保有の方が税率が約半分になるため、売却時期の検討が重要です。

2. 確定申告の手続きと流れ

(1) 確定申告が必要なケース

戸建て売却後、以下の場合は確定申告が必要です:

確定申告が必要

  • 譲渡所得(利益)が発生した場合
  • 居住用財産の3,000万円特別控除を適用する場合(利益がゼロでも申告必要)

確定申告は任意(ただし申告した方が有利)

  • 譲渡損失が発生し、損益通算や繰越控除を利用する場合

譲渡損失が出た場合でも、給与所得等と損益通算することで税金の還付を受けられる可能性があります。確定申告をした方が有利なケースが多いです。

(2) 申告書の記載方法

確定申告では、以下の書類を作成します:

  • 確定申告書B(第一表・第二表):基本的な所得と税額を記載
  • 確定申告書第三表(分離課税用):譲渡所得を記載
  • 譲渡所得の内訳書:売却物件の詳細、取得費、譲渡費用を記載

国税庁のホームページで「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の指示に従って入力するだけで申告書を作成できます。e-Taxを利用すれば、自宅からオンラインで申告が可能です。

3. 戸建て売却で利用できる特例・控除

(1) 3,000万円特別控除の適用要件

居住用財産(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(国税庁タックスアンサーNo.3302)。

適用要件

  • 自己居住用の住宅であること(別荘や投資用は対象外)
  • 売却前2年間に同特例を利用していないこと
  • 親族や同族会社への売却でないこと
  • 住まなくなってから3年を経過する年の12月31日までに売却すること

この特例を利用すれば、譲渡所得が3,000万円以下であれば税金がかかりません。

注意:特例を適用する場合、譲渡所得がゼロまたはマイナスでも確定申告が必要です。

(2) その他の節税制度

軽減税率の特例(所有期間10年超のマイホーム):

3,000万円特別控除を適用した後の譲渡所得に対し、以下の軽減税率が適用されます:

  • 6,000万円以下の部分:所得税10% + 住民税4% = 合計14%
  • 6,000万円超の部分:通常の長期譲渡所得税率(20.315%)

特定居住用財産の買換え特例

一定の条件を満たすマイホームの買い替えで、譲渡益への課税を将来に繰り延べられます。ただし、3,000万円特別控除との併用はできません。どちらが有利かは、個別の状況により異なるため、税理士に相談することが推奨されます。

居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

マイホームを売却して譲渡損失が出た場合、その損失を給与所得等と損益通算し、控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せます。

4. 必要書類の準備と提出方法

(1) 売買契約書と印紙税

確定申告には、以下の書類が必要です:

必須書類

  • 売却時の売買契約書のコピー
  • 購入時の売買契約書のコピー(取得費を証明)
  • 譲渡費用の領収書(仲介手数料、測量費等)
  • 購入時の諸費用の領収書(取得費に算入)

特例適用時に必要な書類

  • 戸籍の附票(居住用財産の特例)
  • 登記事項証明書(売却した不動産の登記簿謄本)
  • 住民票(3,000万円特別控除の適用時)

これらの書類は、確定申告書に添付して提出します。e-Taxで申告する場合、一部の書類は添付省略が可能ですが、保管しておく必要があります。

(2) その他の必要書類

取得費が不明な場合

購入時の契約書が見つからない場合、以下の方法で取得費を算出します:

  • 概算取得費:売却価格の5%
  • 法務局で登記情報を確認し、取得時期を特定
  • 不動産会社に過去の取引価格を照会

概算取得費(5%)を使うと、実際の取得費より低くなり、税額が高くなる可能性があります。できるだけ実額を証明する資料を探すことが推奨されます。

建物の減価償却費の計算

建物部分の取得費は、減価償却費を差し引く必要があります。

減価償却費 = 建物取得価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率は建物の構造により異なります:

  • 木造住宅:0.031(非事業用)
  • 鉄筋コンクリート造:0.015(非事業用)

5. 申告期限と納付スケジュール

(1) 確定申告の期限(2月16日~3月15日)

戸建てを売却した翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をします。

スケジュール例(2024年に売却した場合):

  • 2024年中:戸建て売却、必要書類の保管
  • 2025年1月:必要書類の準備、譲渡所得の計算
  • 2025年2月16日~3月15日:確定申告書の提出
  • 2025年3月15日まで:所得税の納付
  • 2025年6月頃:住民税の納付通知書が届く

注意:3月15日が土日祝日の場合、翌平日が期限となります。

(2) 納付方法と延納制度

所得税の納付方法は、以下から選択できます:

  • 税務署または金融機関の窓口で現金納付
  • 振替納税(口座引き落とし)
  • e-Taxによる電子納税
  • クレジットカード納付(手数料がかかる)
  • コンビニ納付(納付額30万円以下)

延納制度

所得税額が10万円を超え、納期限までに金銭で納付することが困難な場合、納税額の2分の1以上を納期限までに納付すれば、残りを5月31日まで延納できます。延納期間中は利子税がかかります。

6. よくある間違いと注意点

(1) 取得費と譲渡費用の計上漏れ

取得費と譲渡費用を正確に計上することで、譲渡所得を減らし、税額を抑えられます。

取得費に算入できる費用

  • 購入時の不動産会社への仲介手数料
  • 購入時の登記費用(登録免許税、司法書士報酬)
  • 不動産取得税
  • 印紙税
  • 測量費
  • 建物の増改築費用

譲渡費用に算入できる費用

  • 売却時の不動産会社への仲介手数料
  • 売却時の印紙税
  • 測量費
  • 建物の解体費用
  • 売却のために行った修繕費用(ハウスクリーニング、リフォーム等)

算入できない費用

  • 固定資産税・都市計画税(所有期間中の費用)
  • 住宅ローンの利息
  • 引越し費用

これらの区別を理解し、領収書を保管しておくことが重要です。

(2) 特例適用要件の確認不足

3,000万円特別控除等の特例は、適用要件を満たさない場合、利用できません。

よくある確認不足

  • 住まなくなってから3年を経過する年の12月31日を過ぎて売却した
  • 前回の特例利用から2年以内に再度売却した
  • 親族への売却だった
  • 別荘として使用していた(自己居住用でない)

特例の適用要件は複雑なため、不安な場合は税務署や税理士に事前相談することが推奨されます。

まとめ:戸建て売却の確定申告で押さえるべきポイント

戸建て売却後の確定申告は、譲渡所得の計算、必要書類の準備、期限内の申告が重要です。

重要ポイント:

  • 譲渡所得は「収入金額 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除」で計算
  • 所有期間5年超は長期譲渡所得(税率20.315%)、5年以下は短期譲渡所得(税率39.63%)
  • 居住用財産の3,000万円特別控除を適用すれば、利益3,000万円まで非課税
  • 確定申告期限は翌年2月16日~3月15日
  • 取得費・譲渡費用の領収書を保管し、計上漏れを防ぐ
  • 特例の適用要件を事前確認(住まなくなってから3年以内の売却等)

確定申告は複雑に感じるかもしれませんが、国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用すれば、画面の指示に従って入力するだけで申告書を作成できます。不安な場合は、税理士に相談することも検討しましょう。

FAQ:戸建て売却の確定申告に関するよくある質問

Q1. 戸建て売却で利益が出なかった場合も確定申告は必要ですか?

譲渡損失が出た場合、確定申告は義務ではありません。ただし、譲渡損失を給与所得等と損益通算することで、税金の還付を受けられる可能性があります。また、損益通算しきれない損失は、翌年以降3年間繰り越すこともできます。確定申告をした方が有利なケースが多いため、損失が出た場合も申告を検討することが推奨されます。

Q2. 3,000万円特別控除を受けるための条件は何ですか?

自己居住用の住宅であること、売却前2年間に同特例を利用していないこと、親族や同族会社への売却でないこと、住まなくなってから3年を経過する年の12月31日までに売却することなどが主要条件です。別荘や投資用物件は対象外です。適用要件は複雑なため、事前に税務署や税理士に確認することが推奨されます。

Q3. 取得費が分からない場合はどうすればいいですか?

購入時の契約書等がない場合、売却価格の5%を概算取得費として計上できます。ただし、概算取得費を使うと実際の取得費より低くなり、税額が高くなる可能性があります。不動産会社に過去の取引価格を照会する、法務局で登記情報を確認し取得時期を特定するなど、できるだけ実額を証明する資料を探すことが推奨されます。

Q4. 確定申告の期限に遅れた場合、どうなりますか?

期限後申告となり、無申告加算税(納税額の5~20%)や延滞税が課されます。また、3,000万円特別控除などの特例の適用を受けられなくなる場合もあります。期限を過ぎた場合でも、できるだけ早く申告することで、無申告加算税が軽減される場合があります。必ず期限内に申告することが重要です。

よくある質問

Q1戸建て売却で利益が出なかった場合も確定申告は必要ですか?

A1譲渡損失が出た場合、確定申告は義務ではありません。ただし、譲渡損失を給与所得等と損益通算することで、税金の還付を受けられる可能性があります。また、損益通算しきれない損失は、翌年以降3年間繰り越すこともできます。確定申告をした方が有利なケースが多いため、損失が出た場合も申告を検討することが推奨されます。

Q23,000万円特別控除を受けるための条件は何ですか?

A2自己居住用の住宅であること、売却前2年間に同特例を利用していないこと、親族や同族会社への売却でないこと、住まなくなってから3年を経過する年の12月31日までに売却することなどが主要条件です。別荘や投資用物件は対象外です。適用要件は複雑なため、事前に税務署や税理士に確認することが推奨されます。

Q3取得費が分からない場合はどうすればいいですか?

A3購入時の契約書等がない場合、売却価格の5%を概算取得費として計上できます。ただし、概算取得費を使うと実際の取得費より低くなり、税額が高くなる可能性があります。不動産会社に過去の取引価格を照会する、法務局で登記情報を確認し取得時期を特定するなど、できるだけ実額を証明する資料を探すことが推奨されます。

Q4確定申告の期限に遅れた場合、どうなりますか?

A4期限後申告となり、無申告加算税(納税額の5~20%)や延滞税が課されます。また、3,000万円特別控除などの特例の適用を受けられなくなる場合もあります。期限を過ぎた場合でも、できるだけ早く申告することで、無申告加算税が軽減される場合があります。必ず期限内に申告することが重要です。

関連記事