戸建て購入の確定申告手続き|住宅ローン控除の計算方法と必要書類

公開日: 2025/10/17

戸建て購入時の確定申告

戸建てを購入した際、住宅ローン控除を受けるためには、購入した翌年に確定申告が必要です。会社員にとって馴染みの薄い手続きですが、初年度のみ申告すれば2年目以降は年末調整で完結します。必要書類と手続きの流れを正しく理解しておきましょう。

この記事のポイント

  • 住宅ローン控除を受けるには購入翌年の確定申告が必須(会社員も必要)
  • 2年目以降は年末調整で完結するため、確定申告は初年度のみ
  • 必要書類は登記事項証明書、売買契約書、年末残高証明書の3点が中心
  • e-Taxでの申告なら一部書類の添付を省略できる(5年間保管必要)
  • 申告期限は購入翌年の3月15日まで、期限を過ぎると控除が受けられない

確定申告が必要なケース

会社員(給与所得者)は通常、会社の年末調整で納税が完結するため、確定申告は不要です。しかし、以下のケースでは確定申告が必要になります。

確定申告が必要なケース

  1. 住宅ローン控除を受ける初年度
  2. 医療費控除を受ける場合
  3. ふるさと納税で控除を受ける場合(ワンストップ特例を利用しない場合)
  4. 年収2,000万円超の場合
  5. 副業収入が20万円超の場合

戸建て購入で住宅ローン控除を受けるには、購入した翌年に確定申告が必須です(国税庁「住宅ローン控除の確定申告手続き」)。

住宅ローン控除の申告

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンで住宅を取得した場合、年末ローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です。

控除の概要

  • 控除率:年末ローン残高の0.7%
  • 控除期間:新築住宅は最長13年、中古住宅は最長10年
  • 控除限度額:住宅の性能によって異なる(後述)
  • 所得制限:合計所得金額2,000万円以下

初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は会社の年末調整で控除を受けられます。

申告書の作成方法

確定申告書の作成方法は2つあります。

1. e-Tax(インターネット申告) 国税庁の確定申告書等作成コーナーで申告書を作成し、オンラインで提出します(国税庁「確定申告書の作成方法」)。マイナンバーカードがあれば自宅から申告できます。

2. 書面提出 申告書を印刷して、税務署に郵送または持参します。e-Taxより手間がかかりますが、マイナンバーカードがなくても申告できます。

e-Taxの方が一部書類の添付を省略でき、還付金の受取も早い(2~3週間)ためお勧めです。

住宅ローン控除の仕組み

控除額の計算方法

住宅ローン控除の控除額は、年末時点のローン残高に0.7%を乗じた金額です(国税庁「住宅ローン控除の計算方法」)。

計算式 控除額 = 年末ローン残高 × 0.7%

計算例

  • 年末ローン残高:3,500万円
  • 控除額:3,500万円 × 0.7% = 24.5万円

ただし、控除額には上限があり、住宅の性能によって異なります。

新築住宅の借入限度額(2024年入居)

住宅の性能 借入限度額 控除期間 最大控除額(年間)
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 5,000万円 13年 35万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 13年 31.5万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 13年 28万円
その他の住宅 3,000万円 13年 21万円

中古住宅の借入限度額

  • 築年数要件を満たす住宅:3,000万円、控除期間10年

適用要件

住宅ローン控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

主な要件

  1. 自己居住用の住宅であること
  2. 床面積が50㎡以上(合計所得金額1,000万円以下の場合は40㎡以上)
  3. 床面積の1/2以上が居住用であること
  4. 借入期間が10年以上
  5. 合計所得金額が2,000万円以下
  6. 居住の用に供した日から6ヶ月以内に引き続き居住していること

中古住宅の追加要件

  • 木造住宅:築20年以内
  • 鉄筋コンクリート造:築25年以内
  • または、新耐震基準に適合していること(耐震基準適合証明書等で証明)

2年目以降の手続き

住宅ローン控除の確定申告は初年度のみ必要です。2年目以降は、会社の年末調整で控除を受けられます。

2年目以降の手続き(会社員の場合)

  1. 税務署から「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」が送付される
  2. 金融機関から「住宅ローン年末残高証明書」が送付される
  3. 上記2つの書類を会社に提出(年末調整時)

確定申告は不要で、年末調整で控除が完結します。

必要書類の準備

確定申告に必要な主な書類は以下の通りです。

登記事項証明書

登記事項証明書は、不動産の権利関係を証明する公的書類です。法務局で取得できます(1通600円)。

取得方法

  1. 法務局の窓口で申請
  2. オンライン請求(登記・供託オンライン申請システム)
  3. 郵送請求

記載内容の確認事項

  • 所有者の氏名が本人と一致しているか
  • 床面積が50㎡以上か
  • 抵当権が設定されているか(住宅ローン利用の場合)

売買契約書

売買契約書は、戸建ての購入価格や取得日を証明する書類です。不動産会社から受け取った契約書の写しを準備します。

確認事項

  • 購入価格(消費税額が記載されている場合は税込・税抜を確認)
  • 契約日
  • 物件の所在地・地番

年末残高証明書

年末残高証明書は、住宅ローンの年末時点の残高を証明する書類です。住宅ローンを借り入れた金融機関が発行します。

発行時期 通常、10月~12月に金融機関から郵送されます。届かない場合は金融機関に問い合わせてください。

記載内容の確認事項

  • 年末残高の金額
  • 借入年月日
  • 借入期間
  • 住宅取得等特別控除の対象であることの記載

その他の必要書類

給与所得者(会社員)の場合

  • 源泉徴収票(会社から受け取る)
  • マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類

認定長期優良住宅等の場合

  • 認定通知書の写し
  • 住宅用家屋証明書

中古住宅で耐震基準適合証明が必要な場合

  • 耐震基準適合証明書
  • または、既存住宅性能評価書の写し
  • または、既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書

確定申告書の作成方法

e-Taxでの申告

e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用すれば、自宅から確定申告ができます。

e-Taxのメリット

  • 24時間いつでも申告可能
  • 還付金の受取が早い(2~3週間程度)
  • 一部書類の添付を省略できる
  • 税務署に行く必要がない

e-Taxの利用方法

  1. マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォン)を準備
  2. 国税庁「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
  3. マイナポータル連携で必要情報を自動入力
  4. 住宅ローン控除の入力画面で必要事項を入力
  5. 電子署名して送信

添付書類の取扱い e-Taxの場合、登記事項証明書や売買契約書等の添付を省略できます。ただし、5年間は書類を保管し、税務署から求められた場合は提示する必要があります。

書面での申告

書面で申告する場合は、申告書を印刷して税務署に提出します。

手順

  1. 国税庁「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作成
  2. 作成した申告書を印刷
  3. 必要書類を添付
  4. 税務署に郵送または持参

提出方法

  • 税務署の窓口に持参
  • 郵送(消印有効)
  • 税務署の時間外収受箱に投函

添付書類の提出方法

書面提出の場合、以下の書類を申告書に添付します。

必ず添付する書類

  1. 登記事項証明書(原本)
  2. 売買契約書の写し
  3. 年末残高証明書(原本)
  4. 源泉徴収票(原本)

該当する場合に添付する書類

  • 認定長期優良住宅等の場合:認定通知書の写し、住宅用家屋証明書
  • 中古住宅の場合:耐震基準適合証明書等

書類は申告書の裏面や別紙に貼付して提出します。

その他の税務手続き

不動産取得税の申告

不動産取得税は、不動産を取得した際に課される都道府県税です(総務省「不動産取得税の申告」)。

税率

  • 土地・建物(住宅):3%
  • 建物(非住宅):4%

軽減措置 新築住宅の場合、以下の軽減措置があります。

  • 建物:固定資産税評価額から1,200万円控除(認定長期優良住宅は1,300万円)
  • 土地:一定の要件を満たせば大幅に軽減

申告期限 取得から60日以内(都道府県により異なる)に都道府県税事務所に申告します。軽減措置を受けるには自己申告が必要です。

登録免許税

登録免許税は、不動産の所有権移転登記や抵当権設定登記の際に課される国税です(国税庁「登録免許税の計算と納付」)。

税率(標準)

  • 所有権移転登記(土地):評価額の2%
  • 所有権移転登記(建物):評価額の2%
  • 抵当権設定登記:債権額の0.4%

軽減措置 住宅用家屋の取得の場合、軽減税率が適用されます。

  • 所有権移転登記(土地):0.15%(令和8年3月31日まで)
  • 所有権移転登記(建物・新築):0.15%
  • 抵当権設定登記:0.1%

登録免許税は、登記手続きを依頼した司法書士が納付するのが一般的です。

注意点とスケジュール

申告期限

確定申告の期限は、購入した翌年の2月16日~3月15日です(国税庁「確定申告書の作成方法」)。

スケジュール例(2024年購入の場合)

  • 2024年:戸建て購入、入居
  • 2024年10月~12月:年末残高証明書が金融機関から送付される
  • 2025年1月:必要書類を準備開始
  • 2025年2月16日~3月15日:確定申告期間
  • 2025年4月~5月:還付金が振り込まれる(e-Taxなら3月中の場合も)

期限を過ぎた場合 申告期限を過ぎると、その年度の住宅ローン控除が受けられなくなります。期限内に必ず申告してください。

よくあるミス

確定申告でよくあるミスを紹介します。

1. 必要書類の不足 登記事項証明書や年末残高証明書が揃っていないと、申告が受理されません。早めに準備しましょう。

2. 床面積の記載ミス 登記事項証明書の床面積をそのまま転記します。売買契約書の面積(壁芯面積)と異なる場合があるため注意が必要です。

3. 年末残高の記載ミス 年末残高証明書に記載された金額を正確に転記します。複数の金融機関から借り入れている場合は、合算額を記載します。

4. 2年目以降も確定申告してしまう 会社員は2年目以降、年末調整で控除を受けられます。確定申告は不要です。

確認事項

申告書を提出する前に、以下を確認してください。

チェックリスト

  • 登記事項証明書の所有者氏名が本人と一致している
  • 床面積が50㎡以上である
  • 年末残高証明書の金額を正確に転記した
  • 源泉徴収票の内容を正確に転記した
  • 還付金の受取口座を記載した
  • マイナンバーを記載した
  • 必要書類をすべて添付した(書面提出の場合)

確認後、期限内に提出してください。

まとめ

戸建てを購入した際、住宅ローン控除を受けるには購入翌年の確定申告が必須です。会社員でも初年度のみ確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で完結します。

必要書類は登記事項証明書、売買契約書、年末残高証明書の3点が中心です。e-Taxでの申告なら一部書類の添付を省略でき、還付金の受取も早いためお勧めです。

申告期限は購入翌年の3月15日までです。期限を過ぎると控除が受けられなくなるため、早めに書類を準備し、余裕を持って申告しましょう。不明点があれば、税務署や税理士に相談することをお勧めします。

よくある質問

Q1. 会社員でも確定申告は必要ですか?

A. 住宅ローン控除を受ける初年度のみ確定申告が必須です。2年目以降は会社の年末調整で控除を受けられるため、確定申告は不要です。

Q2. 中古住宅でも住宅ローン控除は受けられますか?

A. 築年数要件(木造20年以内、鉄筋コンクリート造25年以内)を満たすか、新耐震基準に適合していれば適用可能です。耐震基準適合証明書等で証明する必要があります。

Q3. e-Taxと書面提出で必要書類は異なりますか?

A. e-Taxの場合、登記事項証明書や売買契約書等の添付を省略できます。ただし、5年間は書類を保管し、税務署から求められた場合は提示する必要があります。

Q4. 申告期限を過ぎた場合はどうなりますか?

A. 購入翌年の3月15日を過ぎると、その年度の住宅ローン控除が受けられなくなります。必ず期限内に申告してください。早めの準備を推奨します。

よくある質問

Q1会社員でも確定申告は必要ですか?

A1住宅ローン控除を受ける初年度のみ確定申告が必須です。2年目以降は会社の年末調整で控除を受けられるため、確定申告は不要です。

Q2中古住宅でも住宅ローン控除は受けられますか?

A2築年数要件(木造20年以内、鉄筋コンクリート造25年以内)を満たすか、新耐震基準に適合していれば適用可能です。耐震基準適合証明書等で証明する必要があります。

Q3e-Taxと書面提出で必要書類は異なりますか?

A3e-Taxの場合、登記事項証明書や売買契約書等の添付を省略できます。ただし、5年間は書類を保管し、税務署から求められた場合は提示する必要があります。

Q4申告期限を過ぎた場合はどうなりますか?

A4購入翌年の3月15日を過ぎると、その年度の住宅ローン控除が受けられなくなります。必ず期限内に申告してください。早めの準備を推奨します。

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