買い替え戸建て売却の必要書類|特例活用と確定申告完全ガイド

公開日: 2025/10/14

買い替え時の戸建て売却に必要な書類の全体像

戸建てを売却して新しい住まいに買い替える際には、通常の売却書類に加えて、買い替え特有の書類が必要です。本記事では、買い替え時の必要書類と税制優遇措置を詳しく解説します。

買い替え時に押さえるべきポイント

  • 買い替え特例と3000万円特別控除は併用不可(選択適用)
  • 売却損が出た場合、譲渡損失の損益通算で給与所得から控除可能(最大4年間繰越)
  • 買い替え特例適用には売却・購入双方の契約書と登記事項証明書が必須
  • 売却先行・購入先行によって必要書類が異なる(購入先行はつなぎ融資の書類追加)
  • 建築確認済証・検査済証は再発行不可だが、台帳記載事項証明書で代替可能

売却の基本書類と買い替え特有の書類

買い替え時に必要な書類は、以下の3つのカテゴリーに分類されます。

カテゴリー 主な書類
売却の基本書類 登記識別情報、印鑑証明書、固定資産税評価証明書、建築確認済証、境界確定測量図
買い替え特有の書類 買い替え先の売買契約書、登記事項証明書、住民票の写し、戸籍の附票
税務関連書類 売買契約書(売却・購入)、譲渡所得の内訳書、住宅ローン残高証明書

通常の売却と異なり、買い替え特例を適用する場合は、新居の購入を証明する書類が追加で必要になります。

売却損が出た場合の損益通算に必要な書類

国税庁の譲渡損失情報によれば、売却損が出た場合、「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の特例を利用できます。

この特例を使えば、売却損を給与所得等から控除でき、控除しきれない損失は翌年以降最長3年間(合計4年間)繰り越せます。

必要書類

  • 売買契約書(売却・購入双方)
  • 登記事項証明書(売却・購入双方)
  • 住宅ローン残高証明書(残債がある場合)
  • 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の計算明細書
  • 確定申告書(第一表・第三表)

売却時の必須書類チェックリスト(登記関連・物件情報)

戸建て売却時の基本書類を詳しく解説します。

登記識別情報(権利証)・登記事項証明書

法務局の登記情報によれば、登記識別情報は不動産の所有権を証明する重要書類です。

登記識別情報

  • 平成17年以降に取得した不動産:登記識別情報通知(12桁の英数字)
  • 平成17年以前に取得した不動産:登記済証(権利証)

戸建ての場合、土地と建物でそれぞれ別の登記識別情報があります。

登記事項証明書

  • 法務局で取得(窓口600円、オンライン500円)
  • 所有者・抵当権等の権利関係を証明
  • 買い替え特例の確定申告で必要

印鑑証明書・固定資産税評価証明書

印鑑証明書

  • 住所地の市区町村役場で取得(1通300円程度)
  • 有効期限は通常3か月以内
  • 売買契約・登記で計2〜3通必要

固定資産税評価証明書

  • 物件所在地の市区町村役場で取得(1通200〜400円)
  • 登録免許税の計算に使用
  • 戸建ては土地・建物それぞれ必要

法務局の所有権移転登記情報によれば、これらの書類は登記申請時に必須です。

建築確認済証・検査済証・境界確定測量図

建築確認済証・検査済証

  • 建築基準法に適合していることを証明
  • 築年数が古い戸建てでは紛失しているケースが多い
  • 再発行不可だが、市区町村で「台帳記載事項証明書」を取得して代替可能

境界確定測量図

  • 隣地との境界を確定し測量した図面
  • 戸建て売却では買主から要求されることが多い
  • 未作成の場合、測量費用30〜80万円程度が必要

物件状況報告書・建物状況調査報告書

物件状況報告書

  • 売主が物件の状況(雨漏り・シロアリ被害・設備の不具合等)を報告
  • 宅地建物取引業法で交付が義務付けられている

建物状況調査報告書(インスペクション)

買い替え特例適用のための追加書類

買い替え時の税制優遇措置と必要書類を解説します。

特定居住用財産の買換え特例と3000万円控除の選択

国税庁のマイホーム売却特例情報によれば、以下の2つの特例は併用できず、選択適用となります。

特定居住用財産の買換え特例

  • 売却益への課税を繰り延べ(将来の売却時に課税)
  • 所有期間10年超、居住期間10年以上が要件
  • 売却価格1億円以下、買換え資産の床面積50㎡以上

3000万円特別控除

  • 売却益から3000万円を控除(完全非課税)
  • 所有期間の制限なし

一般的に、売却益が3000万円以下なら3000万円控除、売却損が出た場合は譲渡損失の損益通算が有利です。個別事情により最適解が異なるため、税理士への相談を推奨します。

買い替え先の売買契約書・登記事項証明書

買い替え特例を適用するには、新居の購入を証明する書類が必要です。

  • 買い替え先の売買契約書:購入価格・購入日を証明
  • 買い替え先の登記事項証明書:所有権取得を証明
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書:住宅ローン控除を併用する場合

これらの書類を確定申告時に添付します。

住民票の写し・戸籍の附票

居住用財産であることを証明するため、以下の書類が必要です。

  • 住民票の写し:売却物件に居住していたことを証明(除票でも可)
  • 戸籍の附票:住所の変遷を証明(転居が多い場合に必要)

市区町村役場で取得でき、手数料は1通200〜400円程度です。

確定申告で必要な書類と取得タイミング

買い替え時の確定申告で必要な書類を解説します。

売買契約書・仲介手数料等の領収書

譲渡所得は以下の計算式で算出します。

譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用

譲渡費用として計上できるものの領収書が必要です。

  • 仲介手数料
  • 登記費用(抵当権抹消等)
  • 測量費用
  • 印紙税
  • 建物解体費用(更地で売却した場合)
  • 立退料(賃貸中物件の場合)

譲渡所得の内訳書・確定申告書第一表・第三表

確定申告時には以下の書類を作成します。

  • 確定申告書第一表・第三表(譲渡所得用)
  • 譲渡所得の内訳書(土地・建物用)
  • 特定居住用財産の買換え等の特例の計算明細書(特例適用時)

これらの書式は国税庁のホームページからダウンロードできます。

売却損の損益通算時の追加書類

売却損が出た場合、以下の追加書類が必要です。

  • 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の計算明細書
  • 住宅ローン残高証明書(残債がある場合)
  • 買い替え先の登記事項証明書
  • 給与所得の源泉徴収票(損益通算で還付を受ける場合)

損益通算により、給与所得等から売却損を控除でき、税金の還付が受けられる場合があります。

買い替えスケジュールと書類準備のポイント

買い替えのパターン別に、書類準備の注意点を解説します。

売却先行・購入先行による書類準備の違い

売却先行

  • 売却完了後に購入の書類を揃えればよい
  • 資金計画が立てやすい
  • 仮住まいの賃貸借契約書が追加で必要な場合がある

購入先行

  • つなぎ融資の申込書類が追加で必要
  • 売却予定物件の査定書・媒介契約書
  • 既存ローンの残高証明書
  • 資金繰りが複雑になる

国土交通省の重要事項説明情報によれば、どちらのパターンでも重要事項説明書の内容を十分確認する必要があります。

住宅ローン残債がある場合の抵当権抹消書類

住宅ローンの残債がある場合、売却代金で完済し、抵当権を抹消します。

金融機関から受け取る書類

  • 抵当権抹消書類一式
  • 委任状(金融機関 → 司法書士)
  • 登記識別情報または登記済証(抵当権設定時のもの)
  • 金融機関の印鑑証明書

抵当権抹消登記は、完済後すぐに行う必要があります。

発行後○か月以内など有効期限のある書類

書類には有効期限があるため、取得タイミングに注意が必要です。

書類 有効期限 取得先
印鑑証明書 通常3か月以内 市区町村役場
住民票 通常3か月以内 市区町村役場
固定資産税評価証明書 通常3か月以内 市区町村役場
登記事項証明書 制限なし(最新のものが望ましい) 法務局
住宅ローン残高証明書 年1回発行(確定申告時期に合わせる) 金融機関

売却から購入までの期間が長い場合、途中で再取得が必要になることがあります。

よくあるトラブルと対策(書類紛失・再発行)

買い替え時によくある書類トラブルと対処法を解説します。

建築確認済証・検査済証の紛失時の対応

建築確認済証・検査済証は再発行できません。紛失した場合、以下の方法で対応します。

  1. 建築計画概要書:市区町村の建築指導課で取得(誰でも閲覧・取得可能)
  2. 台帳記載事項証明書:建築確認を受けたことを証明(1通200〜400円)
  3. インスペクション(建物状況調査):建築士等が現況の適法性を調査(費用5〜10万円)

これらの方法により、建築確認済証がなくても売却は可能です。ただし、買主の住宅ローン審査に影響する場合があるため、事前に説明することが重要です。

登記識別情報を紛失した場合の本人確認

登記識別情報(権利証)を紛失した場合、以下の方法で対応できます。

  1. 司法書士による本人確認情報の作成:司法書士が本人確認を行い、本人確認情報を作成(費用5〜10万円程度)
  2. 公証人による本人確認:公証役場で公証人が本人確認を行う(費用3〜5万円程度)

これらの方法により、登記識別情報がなくても所有権移転登記が可能です。

境界確定測量図がない場合の対処法

境界確定測量図がない場合、買主から作成を要求されることがあります。

対処法

  1. 確定測量を実施:土地家屋調査士に依頼(費用30〜80万円、期間1〜3か月)
  2. 境界非明示として売買:売買価格を下げる代わりに測量なしで売却
  3. 現況測量で対応:隣地所有者の立会いなしで測量(費用10〜30万円、精度は劣る)

どの方法を選ぶかは、買主との交渉次第です。売主・買主のどちらが費用を負担するかも契約時に取り決めます。

まとめ

買い替え時の戸建て売却には、通常の売却書類に加えて、買い替え先の購入を証明する書類が必要です。買い替え特例と3000万円特別控除は併用できないため、個別事情に応じて税理士に相談し、最適な選択をすることが重要です。

売却損が出た場合、譲渡損失の損益通算により給与所得から控除でき、税金の還付が受けられる場合があります。最大4年間繰り越せるため、確定申告を忘れずに行いましょう。

建築確認済証・検査済証は再発行不可ですが、台帳記載事項証明書やインスペクションで代替可能です。境界確定測量図がない場合、確定測量の実施や現況測量での対応を検討しましょう。

スムーズな買い替えのために、売却と購入のスケジュールを調整し、必要書類を計画的に準備することをおすすめします。

よくある質問

Q1買い替え特例と3000万円特別控除はどちらが有利ですか?

A1買い替え特例は課税繰延で将来売却時に課税され、3000万円控除は完全非課税です。売却益が3000万円以下なら3000万円控除、売却損が出た場合は損益通算・繰越控除が有利な場合が多いです。個別事情により最適解が異なるため、税理士への相談を推奨します。

Q2売却損が出た場合、税金の還付は受けられますか?

A2譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を使えば、給与所得等から損失分を控除可能です。最大4年間繰り越せます。必要書類は売買契約書、登記事項証明書、住宅ローン残高証明書等で、確定申告が必須です。

Q3売却と購入の順番で必要書類は変わりますか?

A3売却先行は売却完了後に購入の書類を揃えればよいですが、購入先行はつなぎ融資の書類が追加で必要です。買い替え特例適用には売却・購入双方の契約書と登記事項証明書が必須となります。

Q4建築確認済証や検査済証を紛失した場合どうすればよいですか?

A4再発行はできませんが、市区町村の建築指導課で「建築計画概要書」や「台帳記載事項証明書」を取得して代替可能です。インスペクション(建物状況調査)を実施して現況の適法性を証明する方法も有効です。

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