離婚時の戸建て売却必要書類|財産分与契約書と手続き完全ガイド

公開日: 2025/10/20

離婚時の戸建て売却に必要な書類の全体像

離婚に伴う戸建て売却では、通常の売却手続きに加えて、離婚協議書や財産分与契約書などの特有の書類が必要になります。特に共有名義の場合は、元配偶者の同意と書類が必須となります。

離婚時の戸建て売却で押さえるポイント

  • 共有名義の場合は元配偶者の同意と書類が必須
  • 財産分与契約書で売却代金の分配方法を明記
  • 住宅ローン残債がある場合は金融機関の同意が必要
  • 離婚前売却か離婚後売却かでタイミングが異なる
  • 譲渡所得税の特例を活用できる場合がある

(1) 通常の売却書類と離婚特有の追加書類

戸建て売却の基本的な必要書類は以下の通りです。

通常の売却書類

  • 登記識別情報通知・権利証
  • 印鑑証明書・実印
  • 固定資産税納税通知書
  • 建築確認済証・検査済証
  • 測量図・境界確認書

離婚特有の追加書類

  • 離婚協議書・財産分与契約書
  • 離婚届受理証明書
  • 元配偶者の同意書(共有名義の場合)
  • 元配偶者の印鑑証明書・実印(共有名義の場合)

これらの書類を事前に準備することで、スムーズな売却が可能になります。

(2) 共有名義の場合の追加要件

共有名義の戸建てを売却する場合、全共有者の同意が必須です。

共有名義売却の要件

  • 全共有者の同意書
  • 全共有者の実印・印鑑証明書
  • 全共有者が売買契約書に署名・捺印
  • 全共有者が決済に立ち会う(または委任状を作成)

一方の同意が得られない場合は、財産分与調停や訴訟で解決する必要があります。

財産分与契約書・離婚協議書の準備

離婚に伴う戸建て売却では、財産分与の内容を明確にする書類が重要です。

(1) 財産分与契約書の必須記載事項

財産分与契約書には、以下の事項を記載します。

必須記載事項

  • 売却対象物件の特定(所在地・地番・面積)
  • 売却代金の分配方法(割合または金額)
  • 売却活動の進め方(不動産会社の選定など)
  • 住宅ローン残債の清算方法
  • 売却代金の受領方法

財産分与契約書は、後日のトラブルを防ぐために、公正証書として作成することが推奨されます。

(2) 離婚届受理証明書の取得方法

離婚届受理証明書は、離婚が成立したことを証明する書類です。

取得方法

  • 離婚届を提出した市区町村役場で発行
  • 手数料350円程度
  • 即日発行可能

離婚後に売却する場合、登記手続きで離婚届受理証明書が必要になることがあります。

登記関連書類(売却・名義変更)

戸建て売却では、所有権移転登記の手続きが必要です。

(1) 登記識別情報通知・権利証

登記識別情報通知(または権利証)は、所有権を証明する重要な書類です。

注意点

  • 紛失した場合は、司法書士に「本人確認情報」の作成を依頼
  • 費用は5~10万円程度
  • 共有名義の場合は、全共有者分が必要

権利証の紛失に気づいたら、早めに司法書士に相談しましょう。

(2) 印鑑証明書・実印(共有名義の場合は全員分)

売買契約書と登記申請には、実印の押印と印鑑証明書が必要です。

印鑑証明書の有効期限

  • 通常3ヶ月以内のものを使用
  • 決済日の直前に取得するのが望ましい
  • 共有名義の場合は、全共有者分が必要

元配偶者との共有名義の場合、元配偶者の印鑑証明書も取得する必要があります。

(3) 固定資産評価証明書

固定資産評価証明書は、登録免許税の計算に使用されます。

取得方法

  • 市区町村役場で発行
  • 手数料300~400円程度
  • 最新年度のものを使用

司法書士が代理で取得することもあります。

住宅ローン残債がある場合の金融機関提出書類

住宅ローンが残っている場合、売却に伴い完済する必要があります。

(1) 抵当権抹消同意書

住宅ローンを完済すると、金融機関から抵当権抹消に必要な書類が交付されます。

必要書類

  • 抵当権設定契約証書
  • 登記識別情報通知(金融機関側)
  • 委任状(金融機関から司法書士への委任)

抵当権抹消登記は、司法書士に依頼するのが一般的です。

(2) 連帯債務・連帯保証の解除書類

元配偶者が連帯債務者または連帯保証人になっている場合、その解除手続きが必要です。

解除方法

  • 売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消
  • 一方が単独でローンを引き継ぐ場合は、金融機関の同意が必要
  • 借り換えにより、連帯債務・連帯保証を解除

金融機関と相談し、適切な解除方法を選択しましょう。

売買契約時に必要な書類

売買契約時には、以下の書類が必要です。

(1) 媒介契約書

不動産会社と媒介契約を締結します。

媒介契約の種類

  • 専属専任媒介契約: 1社のみに依頼、自己発見取引も不可
  • 専任媒介契約: 1社のみに依頼、自己発見取引は可
  • 一般媒介契約: 複数社に依頼可能

共有名義の場合、全共有者が媒介契約書に署名・捺印する必要があります。

(2) 重要事項説明書

重要事項説明書は、宅地建物取引士が買主に説明する法定書面です。売主も内容を確認します。

確認事項

  • 物件の権利関係
  • 法令上の制限
  • 設備の状況
  • 契約不適合責任の範囲

記載内容に誤りがないか確認しましょう。

(3) 売買契約書

売買契約書は、売主と買主の合意内容を記載した法的文書です。

記載事項

  • 売買物件の特定
  • 売買代金と支払方法
  • 引渡し時期
  • 契約不適合責任
  • 特約事項

共有名義の場合、全共有者が署名・捺印します。

確定申告・税務関連の必要書類

戸建て売却により譲渡所得が発生した場合、確定申告が必要です。

(1) 譲渡所得税申告に必要な書類

譲渡所得税の申告には、以下の書類が必要です。

必要書類

  • 売買契約書(売却時・取得時の両方)
  • 譲渡費用の領収書(仲介手数料・測量費など)
  • 取得費用の領収書(購入時の諸費用)
  • 登記事項証明書
  • 居住用財産の特別控除の適用を受ける場合は、住民票

居住用財産の3,000万円特別控除を活用すると、譲渡所得から3,000万円を控除できます。

(2) 財産分与による取得時の税務書類

財産分与により戸建てを譲渡した側は、譲渡所得税が課税される可能性があります。

譲渡する側の税金

  • 譲渡所得税が課税される可能性
  • 居住用財産の3,000万円特別控除の適用可能性
  • 確定申告が必要

譲り受ける側の税金

  • 原則として贈与税は非課税(財産分与として相当な範囲内)
  • 不相当に過大な場合は、贈与税が課税される可能性

税務の詳細は、税理士に相談することをおすすめします。

まとめ

離婚に伴う戸建て売却では、通常の売却手続きに加えて、離婚協議書や財産分与契約書が必要です。共有名義の場合は、元配偶者の同意と書類が必須となります。

住宅ローンが残っている場合は、売却代金で完済し、抵当権を抹消する必要があります。連帯債務・連帯保証の解除も忘れずに行いましょう。

譲渡所得が発生した場合は、確定申告が必要です。居住用財産の3,000万円特別控除を活用することで、税負担を軽減できます。不明点があれば、不動産会社や税理士に相談しましょう。

よくある質問

Q1: 離婚前に売却すべきか、離婚後に売却すべきか?

A: 離婚前売却と離婚後売却にはそれぞれメリットがあります。離婚前売却は、財産分与が明確で手続きが簡素です。共有名義のまま売却し、売却代金を分配できます。離婚後売却は、時間的余裕があり、名義整理後に落ち着いて売却できます。ただし、元配偶者との連絡調整が必要です。住宅ローン残債の有無や共有名義の状況により、最適なタイミングが異なります。弁護士や不動産会社など専門家への相談を推奨します。

Q2: 共有名義の戸建てを一方的に売却できるか?

A: できません。共有名義の不動産売却には、全共有者の同意が必須です。一方の同意が得られない場合は、財産分与調停や訴訟で解決する必要があります。売買契約には、各共有者の実印と印鑑証明書が必要です。決済にも全共有者の立会いが必要ですが、委任状により代理人に委任することも可能です。元配偶者との協議がまとまらない場合は、弁護士に相談し、法的手続きを検討しましょう。

Q3: 財産分与で戸建てを譲渡した場合、税金はかかるか?

A: 譲渡する側には譲渡所得税が課税される可能性があります。ただし、居住用財産の3,000万円特別控除を適用できる場合、譲渡所得から3,000万円を控除できるため、多くのケースで税負担を軽減できます。譲り受ける側は、原則として贈与税は非課税です(財産分与として相当な範囲内)。ただし、不相当に過大な場合は贈与税が課税される可能性があります。税務の詳細は複雑なため、税理士に相談することを強くおすすめします。

Q4: 離婚協議書と財産分与契約書は別に必要か?

A: 離婚協議書に財産分与条項を含めることも可能です。ただし、不動産の登記手続きには、財産分与の内容を明記した書類が必要です。財産分与契約書を別途作成すると、登記手続きがスムーズになります。公正証書として作成しておくと、法的効力が強く、強制執行も可能となるため安心です。公正証書の作成には、公証役場での手続きが必要で、費用は数万円程度です。弁護士に依頼すると、適切な内容で作成できます。

よくある質問

Q1離婚前に売却すべきか、離婚後に売却すべきか?

A1離婚前売却と離婚後売却にはそれぞれメリットがあります。離婚前売却は、財産分与が明確で手続きが簡素です。共有名義のまま売却し、売却代金を分配できます。離婚後売却は、時間的余裕があり、名義整理後に落ち着いて売却できます。ただし、元配偶者との連絡調整が必要です。住宅ローン残債の有無や共有名義の状況により、最適なタイミングが異なります。弁護士や不動産会社など専門家への相談を推奨します。

Q2共有名義の戸建てを一方的に売却できるか?

A2できません。共有名義の不動産売却には、全共有者の同意が必須です。一方の同意が得られない場合は、財産分与調停や訴訟で解決する必要があります。売買契約には、各共有者の実印と印鑑証明書が必要です。決済にも全共有者の立会いが必要ですが、委任状により代理人に委任することも可能です。元配偶者との協議がまとまらない場合は、弁護士に相談し、法的手続きを検討しましょう。

Q3財産分与で戸建てを譲渡した場合、税金はかかるか?

A3譲渡する側には譲渡所得税が課税される可能性があります。ただし、居住用財産の3,000万円特別控除を適用できる場合、譲渡所得から3,000万円を控除できるため、多くのケースで税負担を軽減できます。譲り受ける側は、原則として贈与税は非課税です(財産分与として相当な範囲内)。ただし、不相当に過大な場合は贈与税が課税される可能性があります。税務の詳細は複雑なため、税理士に相談することを強くおすすめします。

Q4離婚協議書と財産分与契約書は別に必要か?

A4離婚協議書に財産分与条項を含めることも可能です。ただし、不動産の登記手続きには、財産分与の内容を明記した書類が必要です。財産分与契約書を別途作成すると、登記手続きがスムーズになります。公正証書として作成しておくと、法的効力が強く、強制執行も可能となるため安心です。公正証書の作成には、公証役場での手続きが必要で、費用は数万円程度です。弁護士に依頼すると、適切な内容で作成できます。

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