戸建て売却の必要書類とは
戸建てを売却する際には、売却前から確定申告までの各段階で様々な書類が必要です。本記事では、初めて戸建てを売却する方向けに、必要書類を時系列で解説します。
戸建て売却で押さえるべきポイント
- 権利証(登記識別情報)、印鑑証明書、固定資産税納税通知書が3大必須書類
- 戸建ては土地と建物の両方の書類が必要(マンションより書類が多い)
- 建築確認済証や検査済証は紛失していることが多いが、台帳記載事項証明書で代替可能
- 境界未確定の場合、売却前に確定測量が必要(費用30〜80万円程度)
- 印鑑証明書は契約・登記で計2〜3通必要(有効期限3か月)
売却の流れと書類準備のタイミング
戸建て売却の流れと、各段階で必要な書類を時系列で整理します。
段階 | 時期の目安 | 主な必要書類 |
---|---|---|
査定依頼 | 3〜6か月前 | 登記識別情報、固定資産税納税通知書、建築確認済証 |
媒介契約 | 2〜3か月前 | 本人確認書類、印鑑証明書 |
売買契約 | 1〜2か月前 | 印鑑証明書、実印、銀行口座情報、住宅ローン残高証明書 |
決済・引渡し | 契約後1〜2か月 | 登記申請委任状、抵当権抹消書類、固定資産税評価証明書 |
確定申告 | 翌年2〜3月 | 売買契約書、取得時契約書、譲渡費用領収書、登記事項証明書 |
書類の準備は査定依頼の段階から始めることができますが、印鑑証明書などは有効期限(通常3か月)があるため、取得タイミングに注意が必要です。
戸建て特有の必要書類
戸建て売却では、マンションにはない以下の書類が必要です。
土地関連書類:
- 土地の登記識別情報(権利証)
- 確定測量図
- 土地境界確定書
- 固定資産税評価証明書(土地・建物それぞれ)
建築関連書類:
- 建築確認済証
- 検査済証
- 建築設計図書
- 地盤調査報告書(あれば)
マンションの場合、土地は共有持分のため、戸建てほど土地関連書類は必要ありません。また、建物の管理は管理組合が行うため、建築関連書類も個別に準備する必要は少ないです。
売却前に準備する書類
売却活動を始める前に準備すべき書類を解説します。
登記識別情報(権利証)
法務省の登記情報によれば、登記識別情報は不動産の所有権を証明する重要書類です。
- 登記識別情報通知:平成17年以降に取得した不動産(12桁の英数字)
- 登記済証(権利証):平成17年以前に取得した不動産(紙の証書)
戸建ての場合、土地と建物でそれぞれ別の登記識別情報があります。紛失している場合は、後述の「本人確認情報」で対応可能ですが、費用がかかります。
建築確認済証と検査済証
国土交通省の建築確認制度情報によれば、建築確認済証と検査済証は建物が建築基準法に適合していることを証明する書類です。
建築確認済証:
- 建築前に確認申請が許可されたことを証明
- 買主の住宅ローン審査で必要になる場合がある
検査済証:
- 完成後の検査に合格したことを証明
- 将来の増改築時に必要
築年数が古い戸建てでは紛失しているケースが多いですが、市区町村の建築指導課で「台帳記載事項証明書」を取得すれば代替可能な場合があります。
境界確定と測量図
国土交通省の土地境界情報によれば、戸建て売却では土地の境界確定が重要です。
境界確定の流れ:
- 土地家屋調査士に測量を依頼
- 隣地所有者立会いのもと境界を確認
- 境界確定書を作成
- 確定測量図を作成
境界が不明確な場合、買主から確定測量を要求されることが多く、費用は30〜80万円程度かかります。売主・買主のどちらが負担するかは契約時に取り決めます。
固定資産税納税通知書
固定資産税納税通知書は、毎年4〜6月頃に市区町村から送付される書類です。
- 固定資産税額の確認
- 登録免許税の計算に使用
- 固定資産税の精算(引渡し日を基準に日割り計算)
紛失した場合は、市区町村の税務課で「固定資産税評価証明書」または「課税明細書」を再発行できます(1通200〜400円)。
売買契約時の必要書類
売買契約時に売主が準備する書類を解説します。
本人確認書類と印鑑証明書
国土交通省の不動産売買ガイドラインによれば、宅地建物取引業法により本人確認が義務付けられています。
本人確認書類:
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- パスポート
- 健康保険証(顔写真付きでない場合は補完書類が必要)
印鑑証明書:
- 住所地の市区町村役場で取得(1通300円程度)
- 有効期限は通常3か月以内
- 契約・登記で計2〜3通必要
印鑑証明書は複数通必要になるため、同時に取得しておくことをおすすめします。
実印と銀行口座情報
売買契約書への押印には実印が必要です。また、売却代金の振込先として、銀行口座情報を買主または仲介業者に伝えます。
- 実印(印鑑証明書と同一のもの)
- 銀行口座情報(通帳またはキャッシュカードのコピー)
住宅ローン残高証明書(残債がある場合)
住宅ローンの残債がある場合、金融機関から「残高証明書」を取得します。
金融庁の住宅ローン情報によれば、売却代金でローンを完済する場合、抵当権を抹消する必要があります。残高証明書により、完済に必要な金額を確認します。
決済・引渡し時の必要書類
売買代金の決済と同時に、所有権移転登記を行います。
登記申請の委任状
所有権移転登記は通常、司法書士に委任します。委任状には以下の記載が必要です。
- 委任する内容(所有権移転登記、抵当権抹消登記)
- 不動産の表示(所在地、地番、面積等)
- 委任者(売主)の住所・氏名・実印
委任状は司法書士が作成してくれることが多いです。
抵当権抹消関連書類
住宅ローンを完済した場合、抵当権を抹消する必要があります。金融機関から以下の書類を受け取ります。
- 抵当権抹消書類一式(金融機関が発行)
- 委任状(金融機関 → 司法書士への委任)
- 登記識別情報または登記済証(抵当権設定時のもの)
- 金融機関の印鑑証明書
抵当権抹消登記は、完済後すぐに行う必要があります。
固定資産税評価証明書
登録免許税を計算するため、対象不動産の固定資産税評価証明書が必要です。
取得先は物件所在地の市区町村役場で、手数料は1通200〜400円程度です。戸建ての場合、土地と建物それぞれの証明書が必要です。
鍵と設備の取扱説明書
引渡し時には、以下のものも買主に引き渡します。
- すべての鍵(玄関・勝手口・物置等)
- 設備の取扱説明書(給湯器・エアコン・システムキッチン等)
- 保証書(設備の保証期間内のもの)
- 建築時の図面・仕様書(あれば)
確定申告時の必要書類
戸建てを売却して利益が出た場合、譲渡所得税の確定申告が必要です。
売買契約書と譲渡費用の領収書
国税庁の譲渡所得情報によれば、譲渡所得は以下の計算式で算出します。
譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
譲渡費用として計上できるものの領収書が必要です。
- 仲介手数料
- 登記費用(抵当権抹消等)
- 測量費用
- 印紙税
- 建物解体費用(更地で売却した場合)
取得時の契約書と領収書
取得費を証明するため、購入時の契約書と領収書が必要です。
- 購入時の売買契約書
- 建築請負契約書(新築で購入した場合)
- 仲介手数料・登記費用等の領収書
- 増改築費用の領収書(あれば)
購入時の書類が残っていない場合、売却価格の5%を概算取得費として計上できますが、税負担が大きくなる可能性があります。
登記事項証明書
確定申告時には、対象不動産の登記事項証明書を添付します。
- 法務局で取得(窓口600円、オンライン500円)
- 所有期間を確認するため(5年超か5年以下かで税率が異なる)
所有期間の判定は、売却した年の1月1日時点で計算されます。
書類紛失時の対処法
戸建て売却で重要な書類を紛失した場合の対処法を解説します。
権利証紛失時の本人確認情報
登記識別情報(権利証)を紛失した場合、以下の方法で対応できます。
- 司法書士による本人確認情報の作成:司法書士が本人確認を行い、本人確認情報を作成(費用5〜10万円程度)
- 公証人による本人確認:公証役場で公証人が本人確認を行う(費用3〜5万円程度)
法務省の登記情報によれば、本人確認情報により、権利証がなくても登記手続きが可能です。
建築確認済証紛失時の台帳記載事項証明書
建築確認済証を紛失した場合、市区町村の建築指導課で「台帳記載事項証明書」を取得できます。
- 取得先:物件所在地を管轄する市区町村の建築指導課
- 手数料:1通200〜400円程度
- 記載内容:建築確認番号、確認年月日、建築主、設計者等
台帳記載事項証明書により、建築確認を受けたことを証明できます。ただし、買主の住宅ローン審査で原本を要求される場合があるため、事前に確認しましょう。
固定資産税納税通知書の再発行
固定資産税納税通知書を紛失した場合、市区町村の税務課で以下の書類を取得できます。
- 固定資産税評価証明書:固定資産税評価額を証明(1通200〜400円)
- 課税明細書:固定資産税額の詳細を記載
これらの書類により、固定資産税納税通知書と同じ情報を確認できます。
まとめ
戸建て売却には、売却前から確定申告までの各段階で様々な書類が必要です。特に権利証(登記識別情報)、印鑑証明書、固定資産税納税通知書は3大必須書類として、早めに準備しましょう。
戸建ては土地と建物の両方の書類が必要で、マンションより書類が多くなります。建築確認済証や検査済証は紛失していることが多いですが、市区町村で台帳記載事項証明書を取得すれば代替可能です。
境界が不明確な場合、買主から確定測量を要求されることが多く、費用は30〜80万円程度かかります。売却前に境界の状況を確認し、必要に応じて測量を検討しましょう。
スムーズな売却のために、必要書類を計画的に準備することをおすすめします。