投資用中古マンション購入の控除・特例|減価償却と節税

公開日: 2025/10/12

投資用の中古マンションを購入する際には、居住用とは異なる税制が適用されます。本記事では、投資用中古マンション購入時に活用できる控除や軽減措置、税務上の注意点について、実務面から詳しく解説します。

この記事のポイント

  • 投資用マンションには住宅ローン控除は適用されません(居住用のみが対象)
  • 不動産所得として、減価償却費や必要経費を計上することで節税効果が期待できます
  • 登録免許税の軽減税率(0.3%)は居住用のみで、投資用は本則税率2.0%が適用されます
  • 不動産取得税は一定の要件を満たせば軽減措置を受けられる場合があります
  • 減価償却費の計算には耐用年数(RC造は47年)と築年数の考慮が必要です

1. 投資用中古マンション購入の基礎知識

投資用中古マンションを購入する際には、税制面での特性を正しく理解しておくことが重要です。

(1) 投資用と居住用の税制の違い

投資用マンションと居住用マンションでは、適用される税制が大きく異なります。

項目 投資用マンション 居住用マンション
住宅ローン控除 適用不可 適用可能(要件あり)
登録免許税 本則2.0% 軽減0.3%(2026年3月31日まで)
不動産取得税 軽減あり(要件あり) 軽減あり(要件あり)
所得の種類 不動産所得 譲渡所得(売却時)
減価償却費 計上可能 計上不可

投資用マンションの最大の特徴は、賃貸収入から必要経費を差し引いた「不動産所得」として課税される点です。これにより、減価償却費や管理費などを経費として計上できます。

(2) 不動産取得税・登録免許税

投資用中古マンションを購入する際には、以下の税金が発生します。

登録免許税(所有権移転登記):

  • 原則:2.0%(固定資産税評価額に対して)
  • 居住用の軽減税率(0.3%)は適用されません

不動産取得税

  • 原則:4%(建物・土地とも)
  • 軽減措置:床面積50㎡以上240㎡以下の場合、建物の課税標準から1,200万円控除される可能性があります
  • 適用要件は都道府県により異なるため、事前に確認が必要です

(出典:法務局 - 登録免許税の税率の軽減措置

(3) マンション特有の税務処理

区分所有マンションの場合、以下のような特有の税務処理があります。

  • 管理費・修繕積立金:賃貸開始後は必要経費として計上可能
  • 専有部分と共用部分:減価償却費の計算では、建物全体の価格を専有部分と共用部分に按分して計算します
  • 大規模修繕:修繕積立金から支払われた大規模修繕費は、原則として経費計上できません

2. 投資用不動産の特殊性と居住用との違い

投資用マンション購入の税制を理解するうえで、居住用との違いを明確にしておくことが重要です。

(1) 住宅ローン控除は適用不可

重要なポイント:投資用(賃貸用)マンションには、住宅ローン控除は適用されません。

住宅ローン控除は「自己の居住の用に供する住宅」のみが対象となるため、賃貸に出すことを目的とした投資用マンションは対象外です。仮に、購入当初は自己居住していても、その後賃貸に転用した場合は、転用時点で住宅ローン控除は適用されなくなります。

(2) 不動産所得と経費計上

投資用マンションの税制面でのメリットは、不動産所得として経費を計上できる点です。

必要経費として計上できる主な項目

  • 減価償却費(建物部分)
  • 管理費・修繕積立金
  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険料・地震保険料
  • ローン金利(建物部分のみ)
  • 仲介手数料(取得費として資産計上)
  • 修繕費(原状回復など)
  • 広告宣伝費(入居者募集費用)

不動産所得の計算式:

不動産所得 = 総収入金額(家賃収入等) - 必要経費

(出典:国税庁 - 不動産所得

(3) 減価償却による節税効果

減価償却費は、建物の取得価額を耐用年数にわたって経費計上する仕組みです。実際に現金が出ていかない「帳簿上の経費」であるため、節税効果が期待できます。

減価償却費の特徴

  • 建物部分のみが対象(土地は対象外)
  • RC造(鉄筋コンクリート造)マンションの耐用年数は47年
  • 中古マンションの場合、残存耐用年数で計算
  • 定額法が原則(2016年4月以降取得分)

3. 購入時に使える控除・軽減措置

投資用中古マンションを購入する際に活用できる控除や軽減措置を確認しましょう。

(1) 登録免許税の軽減(居住用のみ)

前述の通り、投資用マンションは登録免許税の軽減税率(0.3%)の対象外です。本則税率2.0%が適用されます。

計算例(固定資産税評価額2,000万円の場合):

  • 居住用:2,000万円 × 0.3% = 6万円
  • 投資用:2,000万円 × 2.0% = 40万円

登録免許税の差額だけで34万円の負担増となるため、購入前に資金計画に織り込んでおく必要があります。

(2) 不動産取得税の軽減要件

不動産取得税については、投資用マンションでも一定の要件を満たせば軽減措置を受けられる場合があります。

建物の軽減措置

  • 床面積50㎡以上240㎡以下
  • 1982年1月1日以降に新築された住宅(または耐震基準適合証明のある住宅)
  • 課税標準から最大1,200万円控除

土地の軽減措置

  • 建物の軽減要件を満たす場合、土地の税額からも一定額が軽減されます

軽減措置の適用要件は都道府県により異なるため、取得する物件の所在地の都道府県税事務所に確認することをお勧めします。

(出典:総務省 - 不動産取得税

(3) 取得時諸費用の経費計上

投資用マンション購入時の諸費用は、以下のように処理します。

費用項目 処理方法
仲介手数料 取得費として資産計上(減価償却の対象)
登録免許税 取得費として資産計上
不動産取得税 取得費として資産計上
火災保険料 必要経費として計上(複数年分は按分)
ローン事務手数料 繰延資産として償却または一時の経費
司法書士報酬 取得費として資産計上

取得費として資産計上した金額は、建物の減価償却費に含めて計算されます。

4. 減価償却と確定申告

投資用マンションの税務処理で最も重要なのが、減価償却費の計算です。

(1) 減価償却費の計算(RC造は47年)

RC造(鉄筋コンクリート造)マンションの法定耐用年数は47年です。減価償却費は以下の式で計算します。

定額法の計算式

減価償却費 = 建物取得価額 × 償却率

RC造47年の償却率:0.022(1年あたり2.2%)

計算例(建物取得価額3,000万円の場合):

3,000万円 × 0.022 = 66万円(年間の減価償却費)

この66万円を不動産所得の必要経費として計上できます。

(2) 中古マンションの耐用年数

中古マンションの場合、残存耐用年数を使って償却率を計算します。

簡便法による残存耐用年数の計算

  1. 法定耐用年数を超えている場合:

    残存耐用年数 = 法定耐用年数 × 0.2
    

    RC造の場合:47年 × 0.2 = 9.4年 → 9年

  2. 法定耐用年数の一部を経過している場合:

    残存耐用年数 = (法定耐用年数 - 経過年数) + 経過年数 × 0.2
    

    例:築20年のRC造マンション

    (47年 - 20年) + 20年 × 0.2 = 27年 + 4年 = 31年
    

残存耐用年数が短いほど、年間の減価償却費が大きくなり、節税効果が高まります。

(3) 確定申告での処理方法

不動産所得がある場合、確定申告が必要です。

確定申告の手順

  1. 不動産所得の計算(収入 - 経費)
  2. 青色申告決算書または収支内訳書の作成
  3. 確定申告書の提出(翌年2月16日~3月15日)

青色申告のメリット

  • 青色申告特別控除:最大65万円(事業的規模の場合)または10万円
  • 赤字の繰越控除:3年間繰り越し可能
  • 青色事業専従者給与の経費算入

事業的規模の判定(5棟10室基準):

  • アパート:10室以上
  • 戸建て:5棟以上
  • 区分所有マンション:10室以上

(出典:国税庁 - 事業的規模の判定

事業的規模に該当しない場合(1室だけ賃貸している場合など)は、青色申告特別控除は10万円までとなります。

5. 投資用購入で失敗しないためのポイント

投資用中古マンションを購入する際には、以下のポイントに注意しましょう。

(1) 購入時の税務処理

投資用マンション購入時には、以下の費用が発生します。これらを事前に資金計画に織り込んでおきましょう。

購入時の初期費用の目安(物件価格の7~10%程度):

  • 仲介手数料:物件価格 × 3% + 6万円(+消費税)
  • 登録免許税:固定資産税評価額 × 2.0%
  • 不動産取得税:固定資産税評価額 × 3%(軽減後)
  • 司法書士報酬:5~15万円程度
  • 火災保険料:年間数万円~
  • ローン事務手数料:借入額の1~3%程度

(2) 減価償却と将来の売却益

減価償却費を計上すると、帳簿上の建物価値(簿価)が下がります。将来、マンションを売却する際には、売却価格と簿価の差が譲渡所得として課税されます。

減価償却と売却益の関係

  • 減価償却費を多く計上するほど、売却時の譲渡所得が増える
  • 短期保有(5年以内)の場合、譲渡所得税率は約39%
  • 長期保有(5年超)の場合、譲渡所得税率は約20%

減価償却による節税効果と、将来の売却時の税負担をトータルで考慮することが重要です。

(3) 税理士・会計士への相談タイミング

投資用マンション購入は、税務処理が複雑になるため、専門家への相談をお勧めします。

相談すべきタイミング

  • 購入を検討する段階(税務シミュレーション)
  • 購入時(取得費の計上方法、減価償却の計算)
  • 賃貸開始時(青色申告の申請、帳簿の付け方)
  • 確定申告前(必要経費の整理、申告書の作成)

特に、初めて不動産投資を行う場合は、購入前の段階で税理士に相談し、資金計画や税務シミュレーションを行うことで、失敗を避けることができます。

まとめ

投資用中古マンションを購入する際には、居住用とは異なる税制が適用されます。住宅ローン控除は使えませんが、不動産所得として減価償却費や必要経費を計上することで、節税効果が期待できます。

一方で、登録免許税や不動産取得税の負担が大きくなるため、購入時の初期費用を正確に見積もることが重要です。また、減価償却費の計算や確定申告の手続きには専門知識が必要なため、税理士への相談を検討しましょう。

投資用マンション購入は、税制面での理解とともに、賃貸市場の動向や物件の収益性を総合的に判断することが成功のカギとなります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 投資用中古マンションで住宅ローン控除は使えますか?

住宅ローン控除は居住用財産のみが対象です。投資用(賃貸用)マンションには適用できません。代わりに、不動産所得として賃貸収入から必要経費を控除し、減価償却費による節税効果を活用します。

Q2. 投資用マンション購入時の諸費用は経費になりますか?

仲介手数料、登録免許税、不動産取得税は取得費として資産計上し、減価償却費に含めます。火災保険料は必要経費として計上可能です。修繕費・管理費も賃貸開始後は経費計上できます。

Q3. 減価償却費とは何ですか?購入時にどう影響しますか?

減価償却費は、建物価値が経年で減少する分を経費計上する仕組みです。RC造マンションは耐用年数47年で減価償却します。中古の場合は残存耐用年数で計算し、不動産所得の経費となることで節税効果があります。

Q4. 投資用マンションの登録免許税・不動産取得税の軽減は?

登録免許税の軽減税率(0.3%)は居住用のみで、投資用は本則2.0%が適用されます。不動産取得税は床面積要件を満たせば軽減措置があります。投資用でも新築・中古の別により軽減措置が異なるため、都道府県税事務所に確認してください。

Q5. 青色申告と白色申告、どちらを選ぶべきですか?

青色申告を選択すると、青色申告特別控除(最大65万円)や赤字の繰越控除などのメリットがあります。ただし、複式簿記による帳簿作成が必要です。事業的規模(10室以上)でない場合は控除額が10万円となるため、税理士に相談して判断することをお勧めします。

よくある質問

Q1投資用中古マンションで住宅ローン控除は使えますか?

A1住宅ローン控除は居住用財産のみが対象です。投資用(賃貸用)マンションには適用できません。代わりに、不動産所得として賃貸収入から必要経費を控除し、減価償却費による節税効果を活用します。

Q2投資用マンション購入時の諸費用は経費になりますか?

A2仲介手数料、登録免許税、不動産取得税は取得費として資産計上し、減価償却費に含めます。火災保険料は必要経費として計上可能です。修繕費・管理費も賃貸開始後は経費計上できます。

Q3減価償却費とは何ですか?購入時にどう影響しますか?

A3減価償却費は、建物価値が経年で減少する分を経費計上する仕組みです。RC造マンションは耐用年数47年で減価償却します。中古の場合は残存耐用年数で計算し、不動産所得の経費となることで節税効果があります。

Q4投資用マンションの登録免許税・不動産取得税の軽減は?

A4登録免許税の軽減税率(0.3%)は居住用のみで、投資用は本則2.0%が適用されます。不動産取得税は床面積要件を満たせば軽減措置があります。投資用でも新築・中古の別により軽減措置が異なるため、都道府県税事務所に確認してください。

Q5青色申告と白色申告、どちらを選ぶべきですか?

A5青色申告を選択すると、青色申告特別控除(最大65万円)や赤字の繰越控除などのメリットがあります。ただし、複式簿記による帳簿作成が必要です。事業的規模(10室以上)でない場合は控除額が10万円となるため、税理士に相談して判断することをお勧めします。

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