新築マンション購入の契約・重要事項説明|基礎ガイド

公開日: 2025/10/20

新築マンション購入時の契約・重要事項説明とは

新築マンション購入では、売買契約を締結する前に「重要事項説明」が行われます。宅地建物取引業法(宅建業法)35条により、宅地建物取引士が買主に対して物件の重要な情報を説明する義務が定められています。

この記事の要点

  • 重要事項説明は宅建業法35条に基づき、契約前に宅地建物取引士が実施
  • 新築マンションでは10年保証・管理規約・引渡し条件が特に重要
  • 手付金は物件価格の5~10%が一般的で、手付解除期限内なら放棄で解約可能
  • 完成前契約(青田売り)では引渡し遅延リスクと遅延時のペナルティ条項を確認
  • 住宅ローン控除の適用要件や契約不適合責任の内容も事前にチェック

(1) 宅建業法35条に基づく重要事項説明義務

宅建業法35条では、不動産の売買契約を締結する前に、宅地建物取引士が買主に対して「重要事項説明書」を交付し、その内容を説明することが義務付けられています。

重要事項説明は、買主が物件の状況や取引条件を正確に理解し、契約するかどうかを判断するための重要な手続きです。説明は通常、契約締結の当日または数日前に行われます。

(2) 新築マンション固有の説明項目

新築マンションの重要事項説明では、以下の項目が特に重要です。

  • 10年保証の内容: 品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)により、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、10年間の瑕疵担保責任が義務付けられている
  • 管理規約: マンションの共用部分の管理ルールや使用制限(ペット飼育の可否、リフォーム制限など)
  • 引渡し時期: 完成前契約(青田売り)の場合、引渡し予定時期と遅延時の対応
  • 修繕積立金・管理費: 月額の管理費・修繕積立金の金額と支払開始時期
  • 住宅性能評価書: 住宅性能表示制度に基づく評価書の有無と内容

これらの項目は、購入後の生活や資金計画に直結するため、重要事項説明で詳細に確認する必要があります。

売買契約の流れと手付金の扱い

新築マンションの売買契約は、以下の流れで進みます。

(1) 売買契約の締結手続き

売買契約の一般的な手順は以下の通りです。

ステップ 時期 主な内容
重要事項説明 契約前 宅地建物取引士が物件・取引条件を説明
売買契約締結 説明後 契約書への署名・捺印、手付金の支払い
住宅ローン本審査 契約後 金融機関による本審査(通常1~2週間)
残代金決済・引渡し 完成後 残代金の支払い、所有権移転登記、鍵の引渡し

新築マンションの場合、完成前契約(青田売り)が一般的なため、契約から引渡しまで数ヶ月~1年程度かかることがあります。

(2) 手付金の金額設定と支払い時期

手付金は、売買契約が成立したことの証拠として、買主が売主に支払う金銭です。手付金の金額は物件価格の5~10%が一般的で、契約締結時に支払います。

例えば、物件価格が5,000万円の場合、手付金は250万円~500万円程度となります。手付金は残代金決済時に売買代金の一部として充当されます。

(3) 手付解除の条件と違約金

民法では、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を買主に支払うことで、契約を解除できると定められています(手付解除)。ただし、手付解除ができる期限は契約書で定められており、通常は「売主が契約の履行に着手するまで」または「○月○日まで」のように記載されます。

手付解除期限を過ぎた後に契約を解除する場合、違約金(通常は売買代金の20%程度)が発生します。新築マンション購入では、住宅ローン審査の結果を待つ期間があるため、手付解除期限の設定に注意が必要です。

重要事項説明書の確認ポイント

重要事項説明書では、物件の基本情報、法令上の制限、インフラ・設備の状況などが説明されます。

(1) 物件の基本情報と権利関係

重要事項説明書には、以下の基本情報が記載されます。

  • 物件の所在地・面積: 登記簿に記載された正確な所在地と専有面積
  • 権利の種類: 所有権か借地権か(マンションの場合、敷地権として土地の所有権の一部を持つことが一般的)
  • 抵当権等の有無: 売主の住宅ローンが残っている場合、引渡し時に抵当権を抹消することが条件となる

新築マンションでは、売主(デベロッパー)が土地を所有しているため、抵当権が設定されていることが多いです。重要事項説明で「引渡し時に抵当権を抹消する」旨が記載されているか確認します。

(2) 法令上の制限事項

不動産には、建築基準法や都市計画法などの法令により、以下のような制限が課されている場合があります。

  • 用途地域: 第一種住居地域、商業地域など(建てられる建物の種類が制限される)
  • 建ぺい率・容積率: 敷地面積に対する建築面積・延床面積の上限
  • 高さ制限: 日影規制や高度地区による高さ制限

これらの制限は、将来的な建替えやリフォームに影響する可能性があるため、重要事項説明で確認しておくことが推奨されます。

(3) インフラ・設備の状況

重要事項説明では、以下のインフラ・設備の整備状況も説明されます。

  • 上下水道・ガス: 公営水道・都市ガスの接続状況
  • 電気: 電力会社との契約条件
  • インターネット: 光回線の整備状況、共用部への引き込み有無

新築マンションでは、インターネット設備が標準装備されている場合が多いですが、通信速度や接続方式(共用回線か専用回線か)を確認することが推奨されます。

新築マンション固有の重要事項

新築マンションには、中古物件とは異なる確認事項があります。

(1) 10年保証の内容確認

品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)により、新築住宅には以下の部分について10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています。

  • 構造耐力上主要な部分: 基礎、柱、梁、耐力壁など
  • 雨水の浸入を防止する部分: 屋根、外壁、開口部など

この10年保証は法律で義務付けられているため、売主(デベロッパー)が倒産した場合でも、住宅瑕疵担保責任保険により保証されます。重要事項説明では、保証の範囲と保険への加入状況を確認します。

なお、10年保証の対象外となる設備(エアコン、給湯器、インターホンなど)については、メーカー保証が別途適用されます。

(2) 管理規約・使用細則のチェック

国土交通省の「マンション標準管理規約」に基づき、各マンションには独自の管理規約が定められています。管理規約では、以下のような事項が規定されます。

  • ペット飼育の可否: ペット飼育が禁止、または小型犬のみ可など
  • リフォームの制限: フローリング材の変更、壁の撤去などに管理組合の承認が必要
  • 専有部分の用途制限: 住居専用、事務所利用の可否
  • 駐車場・駐輪場の利用ルール: 月額使用料、台数制限など

管理規約は購入後の生活に直結するため、重要事項説明で詳細に確認し、不明点は質問することが重要です。

(3) 住宅性能評価書の有無と内容

住宅性能表示制度は、国土交通省が定める基準に基づき、住宅の性能を客観的に評価する制度です。新築マンションでは、以下の項目が評価されます。

  • 耐震等級: 地震に対する強さ(等級1~3)
  • 省エネルギー性: 断熱性能のレベル
  • 劣化対策等級: 建物の劣化しにくさ
  • 維持管理への配慮: 配管の点検・交換のしやすさ

住宅性能評価書がある場合、地震保険料の割引や住宅ローン控除の優遇措置が受けられる可能性があるため、重要事項説明で有無を確認します。

完成前契約の注意点と引渡し条件

新築マンションでは、完成前に契約する「青田売り」が一般的です。

(1) 完成前契約(青田売り)のリスク

完成前契約には以下のリスクがあります。

  • 引渡し遅延: 建築工事の遅延により、予定通り引渡しができない
  • 完成物件のイメージ相違: モデルルームや図面と実際の仕上がりが異なる
  • 売主の倒産リスク: デベロッパーが倒産し、建物が完成しない

これらのリスクを軽減するため、重要事項説明では以下の点を確認します。

  • 引渡し時期の明記: 契約書に具体的な引渡し予定日が記載されているか
  • 遅延時のペナルティ条項: 引渡しが遅延した場合、売主が遅延損害金を支払う旨が記載されているか
  • 住宅完成保証制度: デベロッパーが倒産した場合でも、他の業者が建物を完成させる制度への加入有無

(2) 引渡し時期の遅延リスク対策

引渡し遅延が発生した場合、以下の対応が考えられます。

  • 遅延損害金の請求: 契約書に定められた遅延損害金を売主に請求
  • 仮住まいの費用請求: 現在の住居の退去日を延期できない場合、仮住まいの賃料を売主に請求
  • 契約解除: 遅延が長期化した場合、契約を解除し手付金の返還を請求

重要事項説明では、遅延時の対応が契約書にどのように記載されているかを確認し、不明点は質問することが重要です。

(3) 完成後の内覧・確認ポイント

引渡し前には、完成した物件を内覧し、以下の点を確認します。

  • 仕上げの状態: 床・壁・天井に傷や汚れがないか
  • 設備の動作: キッチン・浴室・トイレ・給湯器が正常に動作するか
  • 開口部の建付け: ドア・窓がスムーズに開閉するか
  • 専有部分の広さ: 契約書に記載された面積と相違ないか

内覧時に発見した不具合は、引渡し前に修繕してもらうことができます。内覧時のチェックリストを不動産会社に依頼し、漏れなく確認することが推奨されます。

契約後のトラブル防止策

契約後に発生しうるトラブルを防ぐため、以下の点を確認します。

(1) 契約不適合責任と10年保証の関係

民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変更されました。引渡し後に物件が契約内容に適合しない場合、買主は売主に対して修補請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除などを求めることができます。

新築マンションでは、品確法の10年保証が契約不適合責任に優先適用されます。つまり、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分については10年間、それ以外の部分については契約書で定められた期間(通常2年程度)、売主が責任を負います。

(2) 住宅ローン控除の適用要件確認

新築マンション購入時には、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用できる可能性があります。国税庁によると、住宅ローン控除の主な適用要件は以下の通りです。

  • 自己居住用: 購入後6ヶ月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住
  • 床面積: 50㎡以上(2023年までに建築確認を受けた新築住宅の場合、所得1,000万円以下なら40㎡以上)
  • 借入期間: 10年以上の住宅ローンを利用
  • 所得制限: 年間所得2,000万円以下

重要事項説明では、物件の床面積が住宅ローン控除の要件を満たしているか確認します。

(3) 引渡し後の瑕疵発見時の対応

引渡し後に不具合が発見された場合、以下の手順で対応します。

  1. 不具合の記録: 写真を撮影し、発見日時を記録
  2. 売主・管理会社への連絡: できるだけ早く不具合を報告
  3. 修繕の実施: 10年保証または契約不適合責任の範囲内であれば、売主負担で修繕
  4. 保証期間の確認: 10年保証の対象外の設備については、メーカー保証を確認

品確法の10年保証は、構造耐力と雨水侵入防止に限定されるため、設備の故障については別途メーカー保証を確認する必要があります。

まとめ

新築マンション購入時の重要事項説明では、10年保証の内容、管理規約の使用制限、引渡し時期と遅延時の対応、住宅ローン控除の適用要件を重点的に確認することが重要です。完成前契約(青田売り)では引渡し遅延リスクがあるため、契約書に遅延時のペナルティ条項が記載されているか確認します。

手付金は物件価格の5~10%が一般的で、手付解除期限内であれば手付金を放棄することで契約を解除できます。重要事項説明は宅建業法で義務付けられた重要な手続きであり、不明点は遠慮なく質問し、納得した上で契約することが推奨されます。

よくある質問

Q1: 新築マンション購入時の重要事項説明では何を確認すべきですか?

A1: 品確法の10年保証(構造耐力・雨水侵入防止)の内容、管理規約の使用制限(ペット飼育・リフォーム制限など)、引渡し時期・条件、住宅ローン控除の適用要件、インフラ整備状況を重点的に確認することが推奨されます。不明点は宅地建物取引士に質問し、納得した上で契約することが重要です。

Q2: 手付金はいつ、いくら支払うのですか?

A2: 手付金は契約締結時に物件価格の5~10%を支払うことが一般的です。手付金は契約成立の証拠金であり、手付解除期限内であれば買主は手付金を放棄することで契約を解除できます(手付解除)。手付金は残代金決済時に売買代金の一部として充当されます。

Q3: 完成前契約(青田売り)のリスクは何ですか?

A3: 引渡し遅延、完成物件のイメージ相違、売主の倒産リスクがあります。重要事項説明では、引渡し時期が契約書に明記されているか、遅延時のペナルティ条項(遅延損害金の支払いなど)が記載されているか、住宅完成保証制度への加入有無を必ず確認することが推奨されます。

Q4: 新築マンションの10年保証はどこまでカバーされますか?

A4: 品確法により、構造耐力上主要な部分(基礎・柱・梁など)と雨水の浸入を防止する部分(屋根・外壁など)について10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています。エアコンや給湯器などの設備は10年保証の対象外で、別途メーカー保証が適用されます。

よくある質問

Q1新築マンション購入時の重要事項説明では何を確認すべきですか?

A1品確法の10年保証(構造耐力・雨水侵入防止)の内容、管理規約の使用制限(ペット飼育・リフォーム制限など)、引渡し時期・条件、住宅ローン控除の適用要件、インフラ整備状況を重点的に確認することが推奨されます。不明点は宅地建物取引士に質問し、納得した上で契約することが重要です。

Q2手付金はいつ、いくら支払うのですか?

A2手付金は契約締結時に物件価格の5~10%を支払うことが一般的です。手付金は契約成立の証拠金であり、手付解除期限内であれば買主は手付金を放棄することで契約を解除できます(手付解除)。手付金は残代金決済時に売買代金の一部として充当されます。

Q3完成前契約(青田売り)のリスクは何ですか?

A3引渡し遅延、完成物件のイメージ相違、売主の倒産リスクがあります。重要事項説明では、引渡し時期が契約書に明記されているか、遅延時のペナルティ条項(遅延損害金の支払いなど)が記載されているか、住宅完成保証制度への加入有無を必ず確認することが推奨されます。

Q4新築マンションの10年保証はどこまでカバーされますか?

A4品確法により、構造耐力上主要な部分(基礎・柱・梁など)と雨水の浸入を防止する部分(屋根・外壁など)について10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています。エアコンや給湯器などの設備は10年保証の対象外で、別途メーカー保証が適用されます。

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