住み替え新築戸建て購入|契約と重要事項の完全ガイド

公開日: 2025/10/17

住み替え新築戸建て購入:契約の全体像を理解しよう

住み替えで新築戸建てを購入する際、最も重要なのが売却と購入のタイミング調整です。理想は同日決済ですが、現実には旧居の売却と新居の購入が完全に同期することは稀です。

本記事では、住み替え時の契約実務と重要事項説明のポイントを解説します。

この記事でわかること:

  • 住み替え時の契約フロー全体像と標準スケジュール
  • 新築戸建ての重要事項説明で確認すべき法的ポイント
  • 二重ローンリスクの回避策とつなぎ融資の検討方法
  • 売買契約書の重要条項と住み替え特約の設定
  • 住宅ローン契約と引渡しまでの手続き

住み替え新築戸建て購入の契約フロー全体像

契約から引渡しまでの標準スケジュール

新築戸建ての購入契約から引渡しまでは、一般的に以下の流れで進行します:

  1. 物件見学・申込(1週間程度)
  2. 重要事項説明(契約の1週間前~前日)
  3. 売買契約締結(手付金支払い:売買代金の5-10%)
  4. 住宅ローン本審査(1-2週間)
  5. 中間金支払い(契約後1-2ヶ月、物件により異なる)
  6. 内覧会(完成前検査)(引渡しの1-2週間前)
  7. 残代金決済・引渡し(契約から2-3ヶ月後)

住み替えの場合、この購入スケジュールと旧居の売却スケジュールを並行して管理する必要があります。

住み替えの場合の売却・購入タイミング調整

住み替えには大きく分けて3つのパターンがあります:

パターン メリット デメリット
売り先行 資金計画が明確、二重ローン回避 仮住まい費用、引越し2回
買い先行 新居選びに余裕、引越し1回 つなぎ融資必要、二重ローン期間発生
同時進行 最も効率的、引越し1回 タイミング調整が困難、高度な調整力必要

国土交通省の調査によると、住み替え実施者の約60%が「売り先行」を選択しています。資金リスクを最小化できるためです。

必要書類の準備リスト

契約時に必要な書類は以下の通りです:

買主側:

  • 本人確認書類(運転免許証・パスポート等)
  • 住民票(家族全員分)
  • 印鑑証明書(発行3ヶ月以内)
  • 実印
  • 手付金(現金または振込証明書)
  • 住宅ローン事前審査承認書
  • 源泉徴収票または確定申告書(直近3年分)

住み替えの場合は、これに加えて旧居の売買契約書残債証明書が必要になる場合があります。

新築戸建ての重要事項説明で確認すべきポイント

重要事項説明の法的位置づけと宅建士の役割

重要事項説明は、宅地建物取引業法第35条に基づき、契約締結前に必ず実施しなければなりません。宅地建物取引士が、宅建士証を提示した上で、重要事項説明書の内容を説明します。

重要事項説明を怠った場合や虚偽の説明があった場合、宅建業者は行政処分の対象となります。買主も、説明を受けたことを証する書面に署名・押印します。

新築戸建て特有の確認事項(建築確認・検査済証)

新築戸建ての重要事項説明では、以下の項目を特に注意して確認しましょう:

建築確認関連:

  • 建築確認済証の有無と番号
  • 検査済証の取得状況(完成済みの場合)
  • 建築基準法の適合状況
  • 用途地域と建ぺい率・容積率

住宅性能関連:

  • 住宅性能評価書の有無(任意だが重要)
  • 省エネ基準適合証明書(住宅ローン控除に必須)
  • 長期優良住宅認定の有無
  • フラット35の技術基準適合証明書

契約不適合責任:

  • 引渡し後の売主の責任範囲と期間
  • 構造耐力上主要な部分・雨水浸入防止部分の10年保証(品確法で義務化)
  • その他の部分の保証期間(通常1-2年)

住宅金融支援機構の「フラット35」を利用する場合、技術基準適合証明書が必須です。重要事項説明時に必ず確認しましょう。

IT重説・オンライン契約の活用

2021年のデジタル改革関連法施行により、不動産取引の電子化が本格化しました。国土交通省も「不動産取引に係る契約書等の電子化」を推進しています。

IT重説(インターネット等を利用した重要事項説明)のメリット:

  • 遠隔地からでも参加可能(転勤先からの契約に便利)
  • 移動時間・交通費の削減
  • 録画・録音による記録保存

ただし、IT重説でも宅建士証の提示重要事項説明書の事前交付は必須です。

住み替え時の契約上の注意点とタイミング調整

二重ローンリスクと回避策

住み替え最大のリスクは、旧居のローンと新居のローンが重複する二重ローン期間の発生です。

二重ローンが発生するケース:

  • 買い先行で新居を購入したが、旧居がなかなか売れない
  • 売買契約は成立したが、引渡し時期がずれる

回避策:

  1. 売り先行を選択し、売却代金を確定させてから購入
  2. つなぎ融資を活用(後述)
  3. 買い替え特約を売買契約に盛り込む
  4. 引渡し条件を「旧居売却完了後」と設定

つなぎ融資の検討ポイント

つなぎ融資とは、旧居の売却代金が入るまでの間、一時的に借り入れる短期融資です。

つなぎ融資の特徴:

  • 借入期間:通常3ヶ月~1年
  • 金利:年2.5-4%程度(住宅ローンより高い)
  • 融資額:旧居の想定売却価格の70-80%程度
  • 返済方法:旧居売却時に一括返済

検討すべき条件:

  • 旧居の売却見込みが明確か(買主が既に決まっている等)
  • つなぎ期間の金利負担を許容できるか
  • 万が一売却が遅れた場合の資金繰り

引渡し条件の設定(売却・購入の同期)

理想的な住み替えは「旧居の売却決済と新居の購入決済を同日に実施」することです。これにより:

  • 二重ローン期間ゼロ
  • つなぎ融資不要
  • 引越しが1回で完結

そのためには、売買契約書に引渡し期日の柔軟性を持たせる特約を盛り込むことが重要です:

「買主の現住居の売却が○月○日までに完了しない場合、
引渡し期日を最大1ヶ月延期できるものとする」

ただし、売主側が同意する必要があるため、交渉力が問われます。

売買契約書の重要条項と特約の設定

契約書の標準的な内容と記載事項

国土交通省が公表する「標準的な不動産売買契約書」には、以下の事項が含まれます:

  1. 売買の対象(土地・建物の表示)
  2. 売買代金・支払時期
  3. 所有権移転・引渡しの時期
  4. 手付金の額と性質
  5. 契約不適合責任の範囲と期間
  6. 公租公課の分担
  7. 契約解除に関する事項
  8. 特約事項

手付金・中間金の支払いタイミング

手付金:

  • 金額:売買代金の5-10%が一般的
  • 支払時期:契約締結時
  • 性質:解約手付(買主都合の解除は手付放棄、売主都合は倍返し)

中間金:

  • 金額:売買代金の10-30%程度(物件により異なる、不要な場合も)
  • 支払時期:契約から引渡しまでの間(上棟時や完成時など)
  • 目的:建築資金の確保(売主側のニーズ)

住み替えの場合、旧居の売却代金が入るまで中間金の支払いが困難なケースがあります。この場合、つなぎ融資の活用や支払時期の調整を検討しましょう。

契約不適合責任の範囲と期間

2020年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変更されました。

新築住宅の契約不適合責任:

  • 構造耐力上主要な部分雨水浸入防止部分:10年間の保証義務(品確法で義務化)
  • その他の部分:契約内容による(通常1-2年)
  • 設備(給湯器・換気扇等):1-2年程度

買主は、不適合を知った時から1年以内に売主に通知すれば、修補請求・代金減額請求・契約解除・損害賠償請求ができます。

引渡し前の**内覧会(完成検査)**で、不具合がないか入念にチェックすることが重要です。

住宅ローン契約と資金計画

フラット35の技術基準と審査ポイント

住宅金融支援機構の「フラット35」は、新築戸建て購入時の代表的な住宅ローンです。

技術基準:

  • 住宅の耐久性・耐震性に関する基準
  • 省エネルギー性能基準
  • バリアフリー性能基準(フラット35Sの場合)

審査のポイント:

  • 年収に占める年間返済額の割合(返済負担率)が基準内
  • 安定した収入があること
  • 他の借入金との合計返済負担率

住み替えの場合、旧居のローン残債も審査対象となります。旧居の売却により完済予定であることを証明する書類(売買契約書等)を提出することで、残債を考慮しない審査を受けられる場合があります。

住宅ローン特約の活用

住宅ローン特約(融資利用の特約)は、住宅ローンの審査が通らなかった場合に契約を白紙解除できる条項です。

特約の内容:

  • 融資承認期日(通常、契約から2-3週間後)
  • 融資額・金融機関名
  • 承認が得られなかった場合の処理(手付金全額返還)

住み替えの場合、住宅ローン審査が否認されるリスクは以下の理由で高まります:

  • 旧居のローン残債がある
  • 二重ローン期間が発生する
  • 返済負担率が基準を超える

必ず住宅ローン特約を盛り込み、万が一に備えましょう。

資金繰りと支払いスケジュール

住み替え時の資金繰りは以下のように整理します:

必要資金:

  1. 新居の手付金・中間金・残代金
  2. 新居の諸費用(登記費用・仲介手数料等、物件価格の5-10%)
  3. 引越し費用
  4. 仮住まい費用(売り先行の場合)
  5. つなぎ融資の金利(買い先行の場合)

調達方法:

  1. 旧居の売却代金
  2. 自己資金
  3. 新居の住宅ローン
  4. つなぎ融資
  5. 親からの贈与(住宅取得資金贈与の非課税枠活用)

契約後から引渡しまでの手続きと準備

所有権移転登記の流れ

引渡し時に、売主から買主へ所有権が移転し、法務局に登記されます。

登記の種類:

  1. 所有権保存登記(新築の建物)
  2. 所有権移転登記(土地)
  3. 抵当権設定登記(住宅ローンを利用する場合)

登記費用:

  • 登録免許税:固定資産税評価額×税率(軽減措置あり)
  • 司法書士報酬:5-10万円程度

一般的に、登記手続きは司法書士に委任します。引渡し当日に、残代金決済と同時に登記申請が行われます。

引渡し前の建物検査(内覧会)

内覧会(完成前検査)は、引渡しの1-2週間前に実施されます。

チェックポイント:

  • 床・壁・天井の傷や汚れ
  • ドア・窓の開閉動作
  • 設備(給湯器・換気扇・トイレ等)の動作確認
  • 図面との相違がないか
  • 外構・駐車場の仕上がり

不具合があれば、引渡しまでに修補を求めることができます。専門家(ホームインスペクター)に同行を依頼することも有効です。

引渡し当日の確認事項

引渡し当日は、以下の流れで進行します:

  1. 最終確認(物件の状態、設備の動作)
  2. 残代金の支払い(買主→売主)
  3. 諸費用の支払い(仲介手数料、登記費用等)
  4. 鍵の引渡し
  5. 登記申請(司法書士が法務局へ申請)
  6. 引渡し完了確認書への署名

引渡し当日は、金融機関で決済を行うのが一般的です。住宅ローンの融資実行も同時に行われます。

まとめ

住み替えでの新築戸建て購入は、売却と購入のタイミング調整が最大のポイントです。

重要なポイント:

  • 重要事項説明で建築確認・省エネ基準適合を必ず確認
  • 二重ローンリスクを回避するため、売り先行またはつなぎ融資を検討
  • 売買契約書に住み替え特有の特約(引渡し時期の柔軟性等)を盛り込む
  • 住宅ローン特約を必ず設定し、審査否認リスクに備える
  • 引渡し前の内覧会で不具合を入念にチェック

契約内容が複雑な場合は、不動産会社や司法書士、ファイナンシャルプランナーに相談しながら進めることをおすすめします。

よくある質問

Q1住み替えで売却が遅れた場合、二重ローンになるリスクはありますか?

A1売却と購入のタイミングがずれると二重ローンのリスクがあります。回避策として、つなぎ融資の活用、引渡し条件の調整(「旧居売却完了後」と設定)、買い替え特約の検討などがあります。売り先行を選択すれば、売却代金を確定させてから購入できるため、二重ローン期間を最小化できます。

Q2重要事項説明はどのタイミングで行われますか?契約前に内容を確認できますか?

A2重要事項説明は、契約締結前に宅地建物取引士が実施します(宅建業法35条)。通常、契約の1週間前~前日に行われます。事前に重要事項説明書を受け取って内容を確認することができます。不明点があれば、契約前に必ず質問しましょう。IT重説(オンライン)も可能です。

Q3新築戸建ての契約不適合責任はどのくらいの期間保証されますか?

A3構造耐力上主要な部分・雨水浸入防止部分は、品確法により10年間の瑕疵担保責任が義務化されています。その他の部分(設備等)は契約内容によりますが、通常1-2年程度です。引渡し前の内覧会で不具合を入念にチェックし、不適合を発見したら1年以内に売主に通知することが重要です。

Q4手付金はどのくらい必要ですか?返還されることはありますか?

A4手付金は売買代金の5-10%が一般的です。住宅ローン特約による解除の場合は全額返還されます。買主都合で契約を解除する場合は手付金を放棄、売主都合の場合は手付金の倍額を返還(倍返し)となります。手付金は解約手付の性質を持つため、安易に支払わないよう注意が必要です。

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