土地買い替え時の譲渡所得税|計算・特例・確定申告完全ガイド

公開日: 2025/10/12

買い替えで土地売却と譲渡所得税の基本

土地の買い替えを検討する際、旧土地の売却に伴う税金は避けて通れません。本記事では、買い替え時の譲渡所得税の計算方法、特例制度の選び方、確定申告の手順まで解説します。

この記事でわかること

  • 土地売却時の譲渡所得税の計算式と税率の仕組み
  • 買換え特例と3,000万円控除の違いと選び方
  • 所有期間5年の判定基準と売却タイミングの影響
  • 土地特有の境界確定・測量費用の扱い
  • 確定申告に必要な書類と手続きの流れ

(1) 土地買い替えの全体像

土地の買い替えでは「旧土地の売却」と「新土地の購入」が発生します。売却益が出た場合、譲渡所得税の課税対象となりますが、買換え特例を利用すれば課税を将来に繰り延べることが可能です。

買い替えの典型的な流れは以下の通りです。

  1. 旧土地の売却契約締結
  2. 境界確定測量の実施(必要に応じて)
  3. 旧土地の引渡し・代金受領
  4. 新土地の購入契約締結
  5. 新土地の引渡し・代金支払い
  6. 翌年2月16日~3月15日に確定申告

(2) 旧土地売却にかかる税金

土地売却による利益(譲渡所得)には、所得税と住民税が課税されます。税率は所有期間によって以下のように異なります。

所有期間 税率(所得税+住民税+復興特別所得税)
5年超(長期譲渡所得) 20.315%
5年以下(短期譲渡所得) 39.63%

所有期間の判定は売却した年の1月1日時点で行うため、例えば2020年4月に取得した土地を2025年4月に売却した場合、実際の保有期間は5年ですが、2025年1月1日時点では4年9ヶ月となり短期譲渡所得となります。

参考: 国税庁|所有期間による税率の違い

譲渡所得税の計算方法と税率

(1) 基本的な計算式

譲渡所得税は以下の式で計算します。

譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率

計算例

  • 譲渡収入金額: 5,000万円
  • 取得費: 3,000万円
  • 譲渡費用: 200万円
  • 所有期間: 6年(長期譲渡所得)
譲渡所得 = 5,000万円 - (3,000万円 + 200万円) = 1,800万円
譲渡所得税 = 1,800万円 × 20.315% = 約366万円

参考: 国税庁|譲渡所得の計算方法

(2) 取得費と譲渡費用の内訳

取得費に含まれるもの

  • 土地の購入代金
  • 購入時の仲介手数料
  • 登録免許税、登記費用
  • 不動産取得税
  • 造成費用、整地費用

譲渡費用に含まれるもの

  • 売却時の仲介手数料
  • 測量費
  • 境界確定費用
  • 売買契約書の印紙代
  • 建物解体費(更地渡しの場合)

(3) 土地特有の費用(測量費・造成費)

土地売却では、境界確定測量費用が譲渡費用として認められます。費用は30万円~100万円程度が一般的です。また、取得時に造成や整地を行った場合、その費用も取得費に加算できます。

買換え特例と3,000万円控除の比較

(1) 買換え特例の仕組み(課税繰延)

買換え特例(特定の居住用財産の買換えの特例)は、譲渡益への課税を将来に繰り延べる制度です。新しい土地を売却するまで課税されません。

適用要件

  • 所有期間10年超、居住期間10年以上の居住用財産
  • 譲渡価額が1億円以下
  • 買換え資産も居住用であること
  • 譲渡年の前年から翌年までに取得すること

参考: 国税庁|買換え(交換)の特例

(2) 3,000万円特別控除(居住用のみ)

居住用財産を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。課税を繰り延べる買換え特例と異なり、完全に非課税となる点が特徴です。

適用要件

  • 自己の居住用財産であること
  • 居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
  • 配偶者や直系血族への売却でないこと

参考: 国税庁|3000万円特別控除

(3) どちらを選ぶべきか(併用不可)

買換え特例と3,000万円控除は併用できません。以下の基準で選択しましょう。

状況 推奨される特例
譲渡益が3,000万円以下 3,000万円控除(完全非課税)
譲渡益が3,000万円超 買換え特例(課税繰延)
事業用・投資用土地 買換え特例のみ利用可能

所有期間による税率の違い

(1) 長期譲渡(約20%)と短期譲渡(約39%)

所有期間5年を境に税率が約2倍異なります。

  • 長期譲渡所得(5年超): 所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315% = 20.315%
  • 短期譲渡所得(5年以下): 所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税0.63% = 39.63%

(2) 所有期間の数え方

所有期間は売却した年の1月1日時点で判定します。取得日から売却日までの実際の期間ではない点に注意が必要です。

判定例

取得日 売却日 実際の期間 判定日(売却年1/1) 判定結果
2019/6/1 2024/7/1 5年1ヶ月 2024/1/1 (4年7ヶ月) 短期
2019/6/1 2025/1/2 5年7ヶ月 2025/1/1 (5年7ヶ月) 長期

(3) 売却タイミングの最適化

取得から5年を超えても、売却年の1月1日時点で5年超になるまで待つことで、税率を半減できます。数ヶ月の違いで税負担が大きく変わるため、売却タイミングの検討が重要です。

土地売却の特有の注意点(境界確定・測量)

(1) 境界確定測量の必要性

土地の境界が未確定の場合、以下のリスクがあります。

  • 買主が見つかりにくい
  • 売却価格が減額される
  • 契約後のトラブル発生

境界確定測量を行うことで、隣地所有者との境界を明確にし、スムーズな取引が可能になります。

参考: 国土交通省|土地取引の基礎知識

(2) 測量費用と期間

測量の種類 費用目安 所要期間
現況測量 10~30万円 1~2週間
境界確定測量 30~100万円 1~3ヶ月

境界確定測量では隣地所有者全員の立会いと同意が必要なため、時間がかかります。売却を急ぐ場合は早めの着手が推奨されます。

(3) 地目変更が必要なケース

登記上の地目と実際の利用状況が異なる場合、地目変更登記が必要になることがあります。例えば、農地から宅地に転用した場合などです。地目変更には農業委員会の許可が必要になるケースもあります。

確定申告の手続きと必要書類

(1) 申告時期と期限

土地を売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行います。特例を利用する場合も申告は必須です。申告を怠ると無申告加算税(最大20%)が課される可能性があります。

参考: 国税庁|確定申告の手続き

(2) 必要書類一覧

基本的な書類

  • 確定申告書第一表・第二表
  • 確定申告書第三表(分離課税用)
  • 譲渡所得の内訳書
  • 売買契約書のコピー(売却時・取得時)
  • 仲介手数料等の領収書
  • 登記事項証明書

特例を利用する場合の追加書類

  • 戸籍の附票(居住用特例の場合)
  • 買換え資産の売買契約書(買換え特例の場合)
  • 登記事項証明書(買換え資産)

(3) 取得費不明時の概算取得費(5%)

購入時の契約書や領収書が見つからない場合、譲渡収入金額の5%を取得費とする概算取得費を使用します。

計算例

  • 譲渡収入: 5,000万円
  • 取得費不明 → 概算取得費: 5,000万円 × 5% = 250万円
  • 譲渡費用: 200万円
  • 譲渡所得: 5,000万円 - (250万円 + 200万円) = 4,550万円
  • 税額(長期20.315%): 約924万円

実際の取得費が3,000万円だった場合の税額は約366万円なので、約560万円も税負担が増える計算になります。契約書や領収書は必ず保管しておきましょう。

まとめ

土地の買い替えに伴う譲渡所得税は、所有期間や適用する特例によって税負担が大きく変わります。

重要ポイント

  • 所有期間は売却年の1月1日時点で判定(5年超で税率半減)
  • 買換え特例と3,000万円控除は併用不可(状況に応じて選択)
  • 境界確定測量は早めに実施(費用は譲渡費用として控除可能)
  • 取得費不明の場合は概算取得費5%(大幅な税負担増)
  • 確定申告は翌年2月16日~3月15日(特例利用時も必須)

税負担を最小化するには、売却タイミングの選定、適切な特例の選択、必要書類の準備が重要です。複雑なケースでは税理士への相談も検討しましょう。

よくある質問

Q1. 土地を買い替えると、税金はいくらかかりますか?

売却益に対して、所有期間5年超で20.315%、5年以内で39.63%の税率が適用されます。買換え特例を利用すれば、課税を将来に繰り延べることが可能です。ただし、特例を利用するには一定の要件を満たす必要があります。

Q2. 買換え特例と3,000万円控除、どちらが有利ですか?

居住用財産の場合、譲渡益が3,000万円以下なら3,000万円控除を選択することで完全に非課税となります。譲渡益が3,000万円を超える場合や、事業用土地の場合は買換え特例の利用を検討しましょう。両特例は併用できないため、売却益の大きさや将来の売却予定を考慮して選択してください。

Q3. 取得費が分からない場合はどうなりますか?

取得費が不明な場合、売却価格の5%を取得費とする概算取得費ルールが適用されます。これにより税額が大幅に増加するため、購入時の売買契約書や領収書を徹底的に探すことをお勧めします。金融機関の融資書類や登記簿謄本からも取得費の推定が可能な場合があります。

Q4. 土地を売る前に測量は必要ですか?

境界が未確定の土地は、売却価格が減額されるリスクや、買主が見つかりにくいリスクがあります。事前に境界確定測量を実施することで、スムーズな取引が可能になります。測量費用は30万円~100万円程度で、譲渡費用として控除できます。

Q5. 確定申告はいつまでに必要ですか?

土地を売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。特例を利用する場合も申告は必須です。必要書類は譲渡時・取得時の売買契約書、仲介手数料等の領収書、登記事項証明書などです。申告を怠ると無申告加算税が課される可能性があります。

よくある質問

Q1土地を買い替えると、税金はいくらかかりますか?

A1売却益に対して、所有期間5年超で20.315%、5年以内で39.63%の税率が適用されます。買換え特例を利用すれば、課税を将来に繰り延べることが可能です。ただし、特例を利用するには一定の要件を満たす必要があります。

Q2買換え特例と3,000万円控除、どちらが有利ですか?

A2居住用財産の場合、譲渡益が3,000万円以下なら3,000万円控除を選択することで完全に非課税となります。譲渡益が3,000万円を超える場合や、事業用土地の場合は買換え特例の利用を検討しましょう。両特例は併用できないため、売却益の大きさや将来の売却予定を考慮して選択してください。

Q3取得費が分からない場合はどうなりますか?

A3取得費が不明な場合、売却価格の5%を取得費とする概算取得費ルールが適用されます。これにより税額が大幅に増加するため、購入時の売買契約書や領収書を徹底的に探すことをお勧めします。金融機関の融資書類や登記簿謄本からも取得費の推定が可能な場合があります。

Q4土地を売る前に測量は必要ですか?

A4境界が未確定の土地は、売却価格が減額されるリスクや、買主が見つかりにくいリスクがあります。事前に境界確定測量を実施することで、スムーズな取引が可能になります。測量費用は30万円~100万円程度で、譲渡費用として控除できます。

Q5確定申告はいつまでに必要ですか?

A5土地を売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。特例を利用する場合も申告は必須です。必要書類は譲渡時・取得時の売買契約書、仲介手数料等の領収書、登記事項証明書などです。申告を怠ると無申告加算税が課される可能性があります。

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