相続した戸建ての売却査定方法|遺産分割と税制優遇の完全ガイド

公開日: 2025/10/14

相続により戸建てを取得した場合、相続税の納税資金確保や遺産分割のために売却を検討することがあります。相続税評価額と市場査定額の違い、遺産分割での査定の役割、税制優遇措置の活用など、相続特有の注意点を理解することが重要です。この記事では、相続した戸建ての売却における査定方法について解説します。

この記事のポイント

  • 相続税評価額は時価の約8割で、遺産分割では市場査定額(時価)を使用する
  • 取引事例比較法による査定が遺産分割で最も一般的
  • 国土交通省の取引価格情報で売却価格の妥当性を確認できる
  • 相続登記は2024年4月から義務化され、売却には必須
  • 相続空き家の3,000万円控除は相続開始から3年以内の売却が条件

1. 相続時の不動産評価と査定

(1) 相続税評価額と市場査定額の違い

国税庁による相続税評価額は、路線価方式または倍率方式で算出され、時価の約8割が目安です。一方、遺産分割では市場査定額(時価)が基準となります。

計算例:

  • 路線価: 20万円/㎡
  • 土地面積: 150㎡
  • 相続税評価額: 20万円 × 150㎡ = 3,000万円
  • 市場査定額(時価の目安): 3,000万円 ÷ 0.8 = 約3,750万円

(2) 評価額の乖離の理由

相続税評価は税務上の評価で保守的に算出されます。市場査定額は需給を反映した実勢価格で、売却時の基準となります。

2. 遺産分割で使われる査定方法

(1) 取引事例比較法による時価算定

国土交通省の不動産鑑定評価基準では、遺産分割で使われる時価査定に取引事例比較法が最も一般的です。近隣の類似物件の成約事例を基に、条件差を補正して時価を算出します。

(2) 複数社査定で公平性確保

遺産分割の公平性を保つため、複数社(3-5社)の査定を受け、平均値や中央値を基準とすることが推奨されます。

3. 相続不動産の査定を自分で確認する方法

国土交通省の「不動産取引価格情報検索」(https://www.land.mlit.go.jp/webland/)で、実際に成約した不動産の価格を無料で検索できます。自分の物件と条件が似た取引事例を確認し、査定額の妥当性を判断しましょう。

4. 遺産分割における査定の重要性

(1) 時価評価による公平な分割

裁判所の見解では、遺産分割において不動産は時価(市場査定額)で評価することが原則とされています。相続人全員が納得できる公平な評価が重要です。

(2) 代償分割での査定額の役割

代償分割とは、特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人に金銭を支払う方法です。この金銭の額は査定額を基準に決定されます。

代償分割の計算例:

  • 不動産の査定額: 4,000万円
  • 相続人: 2人(相続分2分の1ずつ)
  • 不動産を取得する相続人が支払う代償金: 2,000万円

5. 相続不動産売却時の税制優遇

(1) 相続空き家の3,000万円控除

国税庁によると、相続した空き家を売却した際、以下の要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を控除できます。

主な適用要件:

  • 相続開始直前まで被相続人が一人で居住していた
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
  • 売却価格が1億円以下

(2) 適用要件と期限

期限内に売却しないと控除が使えなくなるため、早めの査定・売却準備が重要です。

6. 相続税評価の仕組み

(1) 路線価方式と倍率方式

路線価方式: 路線価が定められている地域では、路線価×土地面積×補正率で評価します。

倍率方式: 路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額×倍率で評価します。

(2) 相続登記の必要性

2024年4月から相続登記が義務化されました。相続開始から3年以内に登記しないと過料(10万円以下)の対象となります。売却には相続登記が必須です。

まとめ

相続した戸建ての売却では、相続税評価額と市場査定額の違いを理解し、遺産分割では時価(査定額)を基準とすることが重要です。取引事例比較法による複数社の査定を受け、国土交通省の取引価格情報で妥当性を確認しましょう。相続登記は義務化されており売却には必須で、相続空き家の3,000万円控除は相続開始から3年以内の売却が条件です。早めの査定・売却準備で税制優遇を活用しましょう。

よくある質問

Q1. 相続登記前でも査定を依頼できますか?

査定依頼自体は可能です。ただし売却には相続登記が必須(2024年4月から義務化)です。査定後に登記手続きを進める流れが一般的です。

Q2. 相続人が複数いる場合、全員で査定を受けるべきですか?

遺産分割の公平性のため、相続人全員が納得できる査定が重要です。複数社査定を受け、平均値や中央値を基準にすることを推奨します。

Q3. 相続税評価額と査定額のどちらを遺産分割に使うべきですか?

遺産分割は時価(査定額)が基準です。相続税評価額は税務上の評価で時価の約8割です。売却を前提とする場合は査定額を使用します。

Q4. 相続空き家の3,000万円控除はいつまでに売却すればいいですか?

相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。期限内に売却しないと控除が使えなくなるため早めの査定・売却準備が重要です。

よくある質問

Q1相続登記前でも査定を依頼できますか?

A1査定依頼自体は可能です。ただし売却には相続登記が必須(2024年4月から義務化)で、査定後に登記手続きを進める流れが一般的です。

Q2相続人が複数いる場合、全員で査定を受けるべきですか?

A2遺産分割の公平性のため、相続人全員が納得できる査定が重要です。複数社査定を受け、平均値や中央値を基準にすることを推奨します。

Q3相続税評価額と査定額のどちらを遺産分割に使うべきですか?

A3遺産分割は時価(査定額)が基準です。相続税評価額は税務上の評価で時価の約8割で、売却を前提とする場合は査定額を使用します。

Q4相続空き家の3,000万円控除はいつまでに売却すればいいですか?

A4相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。期限内に売却しないと控除が使えないため早めの準備が重要です。

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