相続した資金や不動産の売却金で戸建てを購入する際、適正な価格を見極めることで相続資金を有効活用できます。相続という特別な背景を持つ購入では、査定を通じた冷静な価格判断が重要です。この記事では、相続資金を活用した戸建て購入における査定の活用方法を解説します。
この記事のポイント
- 相続税評価額と市場査定額は異なり、売却時は査定額を基準とする
- 国土交通省の取引価格情報で購入予算の相場を確認できる
- 相続不動産を担保にする場合、相続登記が完了している必要がある
- 現金購入とローン併用の判断に査定が活用できる
- 自治体の住宅購入支援制度が利用できる場合がある
1. 相続時の不動産評価と査定の違い
(1) 相続税評価額と市場査定額
国税庁による相続税評価額は、路線価方式または倍率方式で算出され、時価の約8割が目安とされています。一方、市場査定額は需給を反映した実勢価格です。売却時は査定額を基準に価格を決定します。
(2) 路線価と実勢価格の関係
路線価は国税庁が毎年7月に公表する道路の価格で、公示地価の約8割です。実勢価格は路線価を0.8で割ることで大まかに推定できます(例: 路線価20万円/㎡ ÷ 0.8 = 実勢価格約25万円/㎡)。
2. 相続不動産の売却と新居購入の予算
(1) 実際の取引価格から相場を知る
国土交通省の「不動産取引価格情報検索」で、相続した不動産の売却見込額と新居の購入予算の相場を確認できます。
(2) 売却査定額をもとにした購入予算
相続不動産の査定額から売却諸費用を差し引き、手元に残る資金を算出します。これに自己貯蓄と住宅ローン借入可能額を合計して購入予算を決定します。
3. 相続不動産を活用した住宅ローン
(1) 相続物件を担保にする際の審査ポイント
相続した不動産を担保に住宅ローンを組む場合、相続登記が完了している必要があります。未登記の場合は審査不可です。
(2) 相続登記の必要性
2024年4月から相続登記が義務化されました。相続開始から3年以内に登記しないと過料の対象となります。売却や担保設定には登記が必須です。
4. 相続後の住宅ローン審査
(1) 借入可能額の計算方法
住宅金融支援機構のフラット35では、年収400万円以上の場合、年間返済額が年収の35%以内であれば借入可能です。
(2) 現金購入とローン併用の判断
相続資金が十分であれば現金購入、不足する場合はローン併用を検討します。住宅ローン控除を活用する場合、ローン併用が有利なこともあります。
5. 相続後に使える自治体支援
各自治体は独自の住宅購入支援制度を実施しています。国土交通省のウェブサイトで地域別の支援制度を検索できます。補助金・利子補給は予算枠や申請期限があるため早めの確認が重要です。
6. 査定を活用した相続資金の有効活用
(1) 複数社査定で適正価格を見極める
購入を検討している物件について、複数の不動産会社に査定を依頼し、売出価格が適正かどうかを判断します。相場より高い物件を避け、適正価格で購入することで相続資金を有効活用できます。
(2) 共有名義の場合の注意点
相続人が複数いて共有名義の場合、売却には全員の同意が必要です。事前に相続人全員で方針を決めてから査定を受けることを推奨します。
まとめ
相続資金を活用した戸建て購入では、相続税評価額と市場査定額の違いを理解し、国土交通省の取引価格情報で相場を確認することが重要です。相続不動産を担保にする場合は相続登記が必須で、自治体の支援制度が利用できる場合もあります。複数社の査定を活用し、適正価格で購入することで相続資金を有効活用しましょう。
よくある質問
Q1. 相続した不動産を売却して新居を購入する場合、査定はいつ依頼すべきですか?
相続登記完了後、できるだけ早く査定依頼しましょう。市場価格を把握してから新居購入の予算を決めることで計画的な資金活用が可能です。
Q2. 相続税評価額と実際の査定額が大きく違うのはなぜですか?
相続税評価額は時価の約8割が目安で保守的です。市場査定額は需給を反映した実勢価格です。売却時は査定額を基準にします。
Q3. 相続人が複数いる場合、全員の同意なしで査定依頼できますか?
査定依頼自体は可能ですが、売却には全員の同意が必要です。事前に相続人全員で方針を決めてから査定を受けることを推奨します。
Q4. 相続した不動産を担保に住宅ローンを組めますか?
相続登記が完了していれば可能です。未登記の場合は審査不可です。相続物件の査定額が担保評価の基準となります。