現在の住まいを売却して新しい戸建てに買い替える際、購入物件の適正価格を見極めることと、売却物件の査定額を把握することの両方が重要です。買い替えでは、売却と購入のタイミング調整、資金計画、住宅ローンの審査など、通常の購入とは異なる注意点があります。この記事では、買い替えでの戸建て購入における査定の活用方法を解説します。
この記事のポイント
- 買い替えでは売却査定と購入査定の両方を同時進行で進める必要がある
- 国土交通省の取引価格情報で購入予算の相場を確認できる
- ダブルローンと住み替えローンでは返済負担と審査基準が異なる
- 売却年の前後2年間は住宅ローン控除を受けられない制限がある
- 自治体の住宅購入支援制度が利用できる場合がある
1. 買い替え購入における戸建て査定の基本的な考え方
(1) 売却査定と購入査定の同時進行が必要な理由
買い替えでは、現在の住まいを売却して得られる資金を新居の購入に充てるため、両方の査定を同時に進める必要があります。
資金計画の全体像:
- 現在の住まいの売却見込額(査定額)
- 売却時の諸費用(仲介手数料・登記費用等)
- 住宅ローン残債の有無と金額
- 手元に残る自己資金
- 新居の購入予算
- 新規住宅ローンの借入可能額
現在の住まいの査定額が購入予算の基礎となるため、まず売却査定を複数社に依頼し、現実的な売却見込額を把握することが重要です。
(2) 購入側の査定で確認すべき適正価格判断のポイント
購入を検討している物件についても、売主の希望価格が適正かどうかを査定で判断します。
購入側の査定ポイント:
- 売出価格と市場相場の比較
- 類似物件の成約事例
- 地域の価格動向(上昇・下降傾向)
- 価格交渉の余地
限られた予算内での買い替えでは、相場より高い物件を避け、適正価格で購入することが資金計画の成功につながります。
2. 購入予算を決めるための市場相場の調査方法
(1) 国土交通省の実取引価格データベースの活用方法
国土交通省の「不動産取引価格情報検索」(https://www.land.mlit.go.jp/webland/)では、実際に成約した不動産の価格を無料で検索できます。
検索手順:
- 購入希望エリアの都道府県・市区町村を選択
- 物件種別「宅地(土地と建物)」を選択
- 築年数・面積・最寄駅などの条件を絞り込み
- 直近1-2年の取引事例を確認
このデータを参考に、希望エリアでどの程度の予算が必要かを把握できます。
(2) 地域別の相場から購入予算を算出する手順
購入予算の算出例:
- 現在の住まいの査定額: 3,000万円
- 住宅ローン残債: 1,500万円
- 売却諸費用: 150万円
- 手元に残る資金: 3,000万円 - 1,500万円 - 150万円 = 1,350万円
- 自己貯蓄: 500万円
- 頭金として使える額: 1,850万円
- 新規借入可能額: 2,800万円(年収400万円、返済比率35%以内)
- 購入可能予算: 1,850万円 + 2,800万円 = 4,650万円
この予算内で購入できるエリアや物件条件を、公的データや不動産ポータルサイトで確認します。
3. 買い替えローンの審査ポイントと返済計画
(1) ダブルローンと住み替えローンの違いと選び方
買い替え時の住宅ローンには、主に以下の2種類があります。
ダブルローン:
- 既存住宅のローンを残したまま新居のローンを組む
- 返済負担が重い(既存ローン+新規ローン)
- 売却前に新居に入居できる
- 返済比率が35%を超えると審査が厳しい
住み替えローン:
- 既存住宅の売却損(オーバーローン分)を新居のローンに上乗せ
- 売却と購入を同時決済
- 借入額が増えるため審査が厳しい
- 担保割れのリスクがある
一般的には、先に売却を決めてから購入する「売り先行」が資金計画上安全とされています。
(2) 返済比率の計算方法と審査基準(既存ローン含む)
住宅金融支援機構のフラット35では、年収に対する年間返済額の割合(返済比率)が以下の基準内である必要があります。
- 年収400万円未満: 30%以内
- 年収400万円以上: 35%以内
ダブルローン時の計算例:
- 年収: 500万円
- 既存ローンの年間返済額: 120万円
- 新規ローンの年間返済額: 55万円
- 合計年間返済額: 175万円
- 返済比率: 175万円 ÷ 500万円 = 35%
この例では基準内ですが、余裕がないため、生活費や教育費を考慮した無理のない計画が重要です。
4. 買い替え時の税制優遇措置と注意点
(1) 住宅ローン控除の適用要件と買い替え時の制限
国税庁によると、住宅ローン控除には買い替え時の重要な制限があります。
制限内容:
- 売却年とその前後2年間(合計5年間)は新居で住宅ローン控除を受けられない
- 3,000万円特別控除など売却時の特例を使う場合も控除不可
例:
- 2024年に売却して3,000万円特別控除を適用
- 2022年-2026年の間は新居で住宅ローン控除を受けられない
(2) 売却年の前後2年は控除適用外になる理由
住宅ローン控除と譲渡所得の特例(3,000万円特別控除等)の重複適用を防ぐための税制上の措置です。
対応策:
- タイミングを調整し、売却年の前後2年を避けて購入
- 売却時の譲渡益が少ない場合、3,000万円特別控除を使わずに住宅ローン控除を優先
- 税理士に相談し、どちらが有利か試算
5. 自治体の住宅購入支援制度の活用法
(1) 国土交通省のデータベースで地域別支援制度を探す
各自治体は独自の住宅購入支援制度を実施しています。国土交通省のウェブサイトで地域別の支援制度を検索できます。
主な支援内容:
- 住宅購入資金の補助金
- 住宅ローンの利子補給
- 固定資産税の減免
- 引越し費用の補助
(2) 補助金・利子補給の申請期限と予算枠の確認
自治体支援制度には、予算枠や申請期限があるため、早めの確認が重要です。
確認事項:
- 申請期限(購入後3ヶ月以内等)
- 予算枠(先着順の場合が多い)
- 所得制限の有無
- 他の補助金との併用可否
購入計画の早い段階で自治体に問い合わせ、申請スケジュールを把握しておきましょう。
6. 買い替え失敗を防ぐための資金計画とタイミング調整
買い替えを成功させるには、売却と購入のタイミング調整が重要です。
売り先行のメリット・デメリット:
- メリット: 売却額が確定し資金計画が立てやすい、ダブルローン不要
- デメリット: 仮住まいが必要、引越し2回
買い先行のメリット・デメリット:
- メリット: 引越し1回、仮住まい不要
- デメリット: ダブルローンの返済負担、売却タイミング調整の難しさ
つなぎ融資・買い替え特約の活用:
- つなぎ融資: 売却代金が入るまでの短期借入
- 買い替え特約: 売却が成立しなければ購入契約を解除できる特約
これらを活用することで、タイミングのずれによるリスクを軽減できます。
まとめ
買い替えでの戸建て購入では、売却査定と購入査定の両方を同時進行で進め、資金計画を正確に立てることが重要です。国土交通省の取引価格情報で購入予算の相場を確認し、ダブルローンや住み替えローンの返済負担を慎重に検討しましょう。
売却年の前後2年間は住宅ローン控除を受けられない制限があるため、税制面も考慮したタイミング調整が必要です。自治体の住宅購入支援制度が利用できる場合もあるため、早めに確認することをおすすめします。
売り先行・買い先行それぞれのメリット・デメリットを理解し、つなぎ融資や買い替え特約を活用することで、買い替えを成功させましょう。
よくある質問
Q1. 買い替えで売却と購入のタイミングがずれた場合、どうすればいいですか?
先に購入する場合はダブルローンの返済負担を確認し、返済比率が35%以内に収まるか計算します。先に売却する場合は仮住まい費用と引越し回数増加(2回)を考慮する必要があります。つなぎ融資や買い替え特約の活用も検討しましょう。
Q2. 買い替えローンの審査で既存のローンはどう影響しますか?
既存ローンの残債も含めて返済比率を計算します。フラット35では年収の35%以内が基準です。既存ローンが多いと新規借入額が制限されるため、事前に金融機関に相談することをおすすめします。
Q3. 買い替え時に住宅ローン控除は受けられますか?
売却年とその前後2年間(合計5年間)は新居で住宅ローン控除を受けられません。3,000万円特別控除など売却時の特例を使う場合も控除不可となるため、タイミングの計画が重要です。
Q4. 購入予算を決める際、何を基準にすればいいですか?
国土交通省の実取引価格データベースで地域相場を確認し、現在の住まいの売却見込額と自己資金、ローン審査可能額を合計します。返済比率35%以内を目安に予算を設定しましょう。