戸建てとマンションで迷っている人へ
住宅購入を検討する際、「戸建てとマンション、どちらを選ぶべきか」と悩む方は多いでしょう。それぞれ異なる特徴・メリット・デメリットがあり、ライフスタイルや優先順位により最適な選択は変わります。
この記事では、戸建ての定義、種類（建売・分譲・注文住宅）、マンションとの違い、メリット・デメリットを、複数の不動産情報サイトのデータを元に解説します。
初めて住宅購入を検討する方でも、戸建てとマンションの違いを理解し、自分に合った選択ができるようになります。
この記事のポイント
- 戸建ては1棟で1戸の住宅を指し、建物と土地の両方を所有できる点がマンションとの最大の違い
- 戸建には「建売住宅」「分譲住宅」「注文住宅」の3種類があり、それぞれ価格帯と自由度が異なる
- 首都圏の新築戸建平均は約4,491万円で、新築マンション（約6,727万円）より約2,000万円安い傾向
- 戸建は月々の管理費が不要だが、メンテナンス費用を自分で計画的に積み立てる必要がある
- 戸建のメリットは広々とした空間・騒音トラブルが少ない・土地の資産性、デメリットは管理の手間・セキュリティ・光熱費
戸建てとは
戸建てとは、一般的に「1棟で1戸の住宅」を指します。法的な明確な定義はありませんが、不動産業界では以下のように理解されています。
(1) 一戸建ての定義
一戸建て（戸建）とは、1つの建物に1世帯が居住する住宅です。建物と土地の両方を所有できる点が、集合住宅（マンション・アパート）との最大の違いです。
二世帯住宅も一戸建てに含まれることがあります。親世帯と子世帯が同じ建物内で独立した生活空間を持つ場合でも、建物全体を1つの単位として扱います。
(2) 一軒家との違い
一軒家と一戸建てはほぼ同義ですが、使われ方に微妙な違いがあります。
- 一軒家: 周囲に他の家がない、独立した1軒の家を指すことが多い
- 一戸建て: 住宅街に並んで建てられている家を指すことが多い
ただし、この違いは厳密なものではなく、実務上はほぼ同じ意味で使われます。
(3) 集合住宅との違い
集合住宅とは、1棟の建物を複数の住戸に分割した住宅です。マンション・アパートなどが該当します。
| 項目 | 一戸建て | 集合住宅（マンション・アパート） |
|---|---|---|
| 建物の独立性 | 1棟が1住戸 | 1棟を複数住戸に分割 |
| 土地の所有 | 建物と土地を所有 | 専有部のみ所有、土地は共有 |
| 管理 | 自分で全て管理 | 管理組合で共同管理 |
| 月々の費用 | 管理費なし | 管理費・修繕積立金あり |
一戸建ては建物全体を自分で所有し、自由に使用できる点が集合住宅との大きな違いです。
戸建ての種類（建売・分譲・注文住宅）
戸建てには、「建売住宅」「分譲住宅」「注文住宅」の3種類があります。それぞれ価格帯・自由度・購入の流れが異なります。
(1) 建売住宅の特徴
建売住宅（たてうりじゅうたく）は、完成済みまたは建築中の住宅を、土地とセットで販売する形態です。
特徴:
- 完成済みの場合、実物を見て購入できる
- 間取り・設備は決まっており、変更できない
- 価格が抑えられている（大量発注によるコストダウン）
- 入居までの期間が短い（完成済みの場合は数ヶ月）
価格帯: 2,000万円〜4,000万円程度（地域により異なる）
(2) 分譲住宅の特徴
分譲住宅（ぶんじょうじゅうたく）は、大規模な土地を区画分けし、道路・ガス・水道などのインフラを整備して、複数の住宅を建てて販売する形態です。
特徴:
- 建売住宅とほぼ同義（同じ区画内に複数棟を建てるケースが多い）
- 街並みが統一され、景観が良い
- インフラが整備されており安心
- 価格は建売と同程度
価格帯: 2,500万円〜5,000万円程度（地域により異なる）
(3) 注文住宅の特徴
注文住宅（ちゅうもんじゅうたく）は、自分が所有または購入した土地に、設計から建てる住宅です。
特徴:
- 間取り・設備を自由に選べる（自由度が高い）
- 建築家・工務店と打ち合わせを重ねて設計
- 建築過程を確認できる
- 費用は高額（設計料・施工費が個別発注）
- 完成までの期間が長い（1年〜2年程度）
価格帯: 3,000万円〜8,000万円以上（仕様により大きく変動）
(4) 各種類のメリット・デメリット
各種類のメリット・デメリットを表で整理すると以下のようになります。
| 種類 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 建売住宅 | 価格が抑えられる、実物を確認できる、入居が早い | 間取り変更不可、建築過程を確認できない場合がある |
| 分譲住宅 | 街並みが統一、インフラ整備済み、価格が比較的安い | 間取り変更不可、周辺環境が似通う |
| 注文住宅 | 自由度が高い、こだわりを反映できる、建築過程を確認 | 費用が高額、完成まで時間がかかる、打ち合わせの手間 |
どの種類を選ぶかは、予算・こだわり・入居希望時期により判断しましょう。
戸建てとマンションの違い
戸建てとマンションには、所有権・価格・月々の費用・立地など、さまざまな違いがあります。
(1) 所有権の違い（建物と土地 vs 専有部のみ）
戸建て:
- 建物と土地の両方を所有できる
- 土地は永続的な資産となる
- 建物の増築・リフォームが自由
マンション:
- 専有部（室内空間）のみ所有
- 共用部（廊下・階段・エントランス・外壁等）は区分所有者全員で共有
- 土地は持分として所有（建物全体の敷地の一部を按分）
- リフォームは専有部のみ可能（共用部は管理組合の承認が必要）
戸建ては土地を完全に所有できる点が、資産性の面で大きなメリットとなります。
(2) 価格比較（首都圏平均）
首都圏における新築戸建てと新築マンションの平均価格を比較すると以下のようになります。
| 物件種別 | 平均価格（2024年時点） |
|---|---|
| 新築戸建て | 約4,491万円 |
| 新築マンション | 約6,727万円 |
| 価格差 | 約2,236万円（マンションが高い） |
（参考: 複数の不動産情報サイトのデータを元に作成）
戸建ての方が約2,000万円安い傾向がありますが、立地・築年数・設備により大きく変動します。
(3) 月々の費用の違い（管理費・修繕積立金）
戸建て:
- 管理費・修繕積立金は不要
- メンテナンス費用を自分で計画的に積み立てる必要がある
- 外壁塗装が約10年ごとに60〜100万円など、まとまった出費が発生
マンション:
- 管理費: 月額1万円〜3万円程度
- 修繕積立金: 月額1万円〜2万円程度（築年数により増額）
- 駐車場代: 月額1万円〜3万円程度（別途）
月々の支出は戸建ての方が少ないですが、メンテナンス費用を自分で管理する責任があります。
(4) 立地・利便性の違い
戸建て:
- 駅から遠い立地が多い（徒歩15分以上も多い）
- 駐車場が確保しやすい（敷地内に設置可能）
- 周辺環境が静かな住宅街が多い
マンション:
- 駅近の好立地が多い（徒歩5〜10分圏内）
- 商業施設・公共交通機関へのアクセスが良い
- 都心部に多く、通勤・通学に便利
通勤利便性を重視する場合はマンション、車移動が中心の場合は戸建てが適しています。
戸建てのメリットとデメリット
戸建てには多くのメリットがある一方、デメリットも存在します。
(1) メリット（広々とした空間・騒音トラブルが少ない・土地の資産性）
広々とした空間
戸建ては敷地全体を自由に使えるため、庭・駐車場・物置などを設置できます。マンションと比べて、専有面積が広く、収納スペースも豊富です。
階下への騒音トラブルが少ない
戸建ては上下階がないため、子どもが走り回っても階下への騒音を気にする必要がありません。楽器演奏やペットの鳴き声も、マンションより気を使わずに済みます。
土地が資産になる
建物は経年劣化しますが、土地は永続的な資産として残ります。将来的に建て替えや売却をする際、土地の価値が下支えとなります。
管理組合の煩わしさがない
マンションのように管理組合の総会・理事会への参加義務がなく、自分のペースで管理できます。
リフォーム・増築の自由度
建物全体を所有しているため、間取り変更・増築・外壁の色変更など、自由にリフォームできます。
(2) デメリット（管理の手間とコスト・セキュリティ・光熱費）
管理の手間とコスト
メンテナンス（外壁塗装・屋根修理・設備交換等）を自分で計画・実施する必要があります。怠ると資産価値が下がるリスクがあります。
セキュリティ面のリスク
戸建ては複数の出入口があるため、空き巣の標的になりやすい傾向があります。防犯カメラ・センサーライト・防犯ガラスなどの対策が必要です。
光熱費が高額
戸建ては外気に接する面積が広いため、夏は暑く冬は寒くなりやすく、冷暖房費がマンションより高額になる傾向があります。
交通利便性が劣る
駅から遠い立地が多く、通勤・通学に時間がかかる場合があります。車が必須となるエリアもあります。
建物の資産価値減少
建物は築20年程度でほぼ無価値になることが多く、土地のみが資産として残ります。マンションも同様ですが、戸建ては特に建物の価値減少が早い傾向があります。
まとめ：戸建てに向いている人・向いていない人
戸建てとマンションのどちらを選ぶかは、ライフスタイルや優先順位により異なります。
戸建てに向いている人:
- 広い空間が欲しい（庭・駐車場・収納）
- 階下への騒音を気にしたくない（子育て世帯・ペット飼育）
- 土地を資産として持ちたい
- リフォーム・増築の自由度を重視する
- 管理組合の煩わしさを避けたい
- 車移動が中心で、駅からの距離を気にしない
マンションに向いている人:
- 駅近の好立地を重視する（通勤・通学の利便性）
- セキュリティを重視する（オートロック・警備員常駐）
- メンテナンスの手間を省きたい（管理会社に任せる）
- 共用施設（ジム・ラウンジ等）を利用したい
- 高層階からの眺望を楽しみたい
どちらにも共通する注意点:
- 物件価格以外の諸費用（仲介手数料・住宅ローン事務手数料・保証料・登録免許税・印紙税）を把握する
- 新築は品確法により10年間の瑕疵担保責任があるが、中古は個別確認が必要
- ホームインスペクション（住宅診断）を利用し、建物の状態を確認する
- ファイナンシャルプランナーや宅地建物取引士に相談し、資金計画を立てる
戸建てとマンションの違いを理解し、自分のライフスタイル・優先順位に合った住宅を選びましょう。複数の物件を比較検討し、実際に内覧して、長期的に満足できる住まいを見つけることが大切です。