マンション上階騒音の実態と対処法
マンションに住んでいて、上の階から聞こえる足音や生活音に悩んでいる方は少なくありません。
この記事では、マンション上階からの騒音に対する段階的な解決ステップ、自衛策、そして購入・入居前の予防策を、信頼できる調査データや専門家の見解を元に解説します。
騒音トラブルを冷静に解決し、快適な住環境を取り戻すための実践的なガイドです。
この記事のポイント
- マンショントラブルの約40%が生活音に関するもので、夜間(19:00-0:00)の苦情が最多
- まず日時・音量・音の種類を記録し、管理会社・大家に相談する(直接苦情は避ける)
- 防音マット・カーペット・カーテンで自衛策を講じることも有効
- 騒音には明確な法的基準がなく、受忍限度を超えるかは個別判断
- RC造物件やL値(床衝撃音遮断性能)L-45以下の物件を選ぶことで予防できる
マンション上階騒音の実態
(1) マンショントラブルの約40%が生活音
2024年の調査によると、マンショントラブルの約40%が生活音に関するものです。上階からの足音や物音は、マンション居住者にとって最も身近な悩みの一つといえます。
長谷工コーポレーションの弁護士インタビューでも、騒音問題は「解決できない可能性がある」と指摘されており、慎重な対応が求められます。
(2) 夜間(19:00-0:00)の苦情が最多
SUUMOのアンケート調査では、夜間(19:00-0:00)に上階の足音・物音に関する苦情が最も多いことが分かっています。
この時間帯は、仕事や学校から帰宅し、リラックスしたい時間であるため、騒音が特に気になりやすい傾向にあります。
(3) 高層新築マンションやRC造でも騒音トラブルは発生
RC造(鉄筋コンクリート造)は防音性能が高いとされていますが、完全防音ではありません。高層新築マンションでも、上下階の騒音トラブルは発生します。
構造に関わらず、生活音は一定程度伝わるため、対策や予防が重要です。
騒音の種類と原因
(1) 固体伝搬音(足音、物を落とす音、家具を引きずる音)
固体伝搬音は、床・壁・天井を伝わる音です。以下のような音が該当します。
- 足音(子どもが走る音、大人の歩く音)
- 物を落とす音(スマホ、リモコン等)
- 家具を引きずる音(椅子、テーブル等)
固体伝搬音は、音の振動が構造体を伝わるため、防ぎにくい特徴があります。
(2) 空気伝搬音(話し声、テレビ・音楽、掃除機の音)
空気伝搬音は、空気を伝わる音です。以下のような音が該当します。
- 話し声・笑い声
- テレビ・音楽
- 掃除機の音
空気伝搬音は、窓やドアの隙間から漏れやすく、防音カーテンや二重窓で軽減できる場合があります。
(3) L値(床衝撃音遮断性能)とRC造の防音性能
L値(床衝撃音遮断性能)は、床の防音性能を示す指標です。L-45以下が望ましいとされています。
| 構造 | 防音性能 | 特徴 |
|---|---|---|
| RC造(鉄筋コンクリート造) | 高 | 床・壁が厚く、騒音が伝わりにくい |
| 鉄骨造 | 中 | RC造より薄く、騒音が伝わりやすい |
| 木造 | 低 | 最も騒音が伝わりやすい |
(出典: DAIKEN)
RC造でも完全防音ではないため、L値の確認や上階の生活音を内覧時にチェックすることが重要です。
上の階がうるさいときの対処法・解決ステップ
(1) ステップ1: 日時・音量・音の種類を記録
まず、感情的に行動せず、以下の情報を記録してください。
- 日時: 〇月〇日 19:30
- 音量: 体感(うるさい、非常にうるさい等)または騒音計で測定
- 音の種類: 足音、物を落とす音、話し声等
記録は、管理会社への相談時に具体的な証拠となります。
(2) ステップ2: 管理会社・大家に相談(第三者経由が有効)
記録を元に、管理会社や大家に相談してください。
講談社コクリコの2024年の記事では、騒音専門家の橋本典久氏が「記録してもムダ」と指摘しています。これは、騒音の原因となっている本人は気づいていないことが多く、第三者(管理会社)経由での注意が最も有効だからです。
(3) ステップ3: 警告チラシ配布や掲示板での注意喚起を依頼
管理会社に、警告チラシの全戸配布や掲示板での注意喚起を依頼してください。
特定の部屋を名指しせず、全戸に配布することで、上階の住人が気づくきっかけになる場合があります。
(4) 避けるべき行動(天井を叩く、直接苦情を言う)
以下の行動は避けてください。
- 天井を叩く: 効果がなく、むしろ他の部屋への騒音になる
- 直接上階の住人に苦情を言う: 本人は気づいていないことが多く、トラブルに発展しやすい
感情的な対応は、人間関係の悪化につながるリスクがあります。
(5) 管理組合の対応範囲と限界
Yahoo!ニュースによると、管理組合は区分所有法により専有部分内の問題には原則不介入です。
警告チラシ配布や掲示板での注意喚起は可能ですが、強制力のある対応には限界があります。
自衛策(防音対策)
(1) 防音マット・防音カーペット
固体伝搬音を軽減するために、厚手の防音マット・カーペットを天井側(自室の床)に敷くことが有効です。
URくらしのカレッジでは、防音マットの選び方や設置方法が解説されています。
(2) 防音カーテン
窓からの空気伝搬音を軽減するために、防音カーテンを設置することが有効です。
厚手の生地や遮音性の高い素材を選ぶことで、外部からの音の侵入や、室内からの音漏れを防げます。
(3) 吸音材の設置
天井や壁に吸音材を設置することで、音の反響を軽減できる場合があります。
ただし、賃貸物件の場合は、管理会社や大家の許可が必要です。
(4) 騒音測定の方法(スマホアプリ、騒音計)
騒音の程度を客観的に把握するために、スマホアプリや騒音計で測定することも有効です。
ニフティ不動産では、測定方法や測定位置の詳細が解説されています。
予防策(物件選びのポイント)
(1) RC造(鉄筋コンクリート造)物件の選択
RC造物件は、木造や鉄骨造よりも防音性能が高いため、騒音トラブルを予防できる可能性があります。
ただし、RC造でも完全防音ではないため、他の条件も確認することが重要です。
(2) L値(床衝撃音遮断性能)の確認(L-45以下が望ましい)
物件選びの際は、L値(床衝撃音遮断性能)を確認してください。L-45以下が望ましいとされています。
ソーチョーでは、L値の測定方法や判断基準が解説されています。
(3) 最上階・角部屋の検討
最上階の部屋は上階がないため、上からの騒音を避けられます。角部屋は隣接する部屋が少ないため、隣からの騒音を軽減できます。
ただし、最上階は夏場の暑さや、エレベーター待ち時間等のデメリットもあるため、総合的に検討してください。
(4) 内覧時の防音性チェック
内覧時に、以下の点をチェックしてください。
- 廊下や隣の部屋からの音が聞こえるか
- 窓を閉めた状態で外部の音がどの程度聞こえるか
- 上階や隣の部屋の生活音が聞こえるか(可能であれば時間帯を変えて複数回訪問)
法的対応とまとめ
(1) 受忍限度の考え方(明確な法的基準はない)
マンション上下階の騒音には、明確な法的基準がありません。受忍限度(社会生活上、我慢すべき限度)を超えるかは、個別の事情や裁判例によって判断されます。
弁護士保険の教科書では、受忍限度の考え方や法的対応が詳しく解説されています。
(2) 相談先(管理会社、警察、弁護士、騒音調査会社)
騒音問題が長期化する場合、以下の相談先を検討してください。
| 相談先 | 対応内容 |
|---|---|
| 管理会社 | 警告チラシ配布、掲示板での注意喚起 |
| 警察 | 深夜の騒音(受忍限度を超える場合) |
| 弁護士 | 法的対応(損害賠償請求、差し止め請求等) |
| 騒音調査会社 | 騒音測定、報告書作成 |
(3) 問題の長期化リスク
騒音問題は、解決までに時間がかかる場合があります。2024年の弁護士インタビューでも、「解決できない可能性がある」と指摘されており、早期の対応と、場合によっては引っ越しも選択肢の一つです。
(4) 専門家への相談推奨
騒音問題は、法的判断や測定が難しいため、専門家(弁護士、騒音調査会社等)への相談を推奨します。
まとめ
マンション上階からの騒音は、多くの居住者が抱える悩みです。まず日時・音量・音の種類を記録し、管理会社や大家に相談することが重要です。
防音マット・カーペット・カーテンで自衛策を講じることも有効ですが、問題が長期化する場合は、弁護士や騒音調査会社等の専門家への相談を検討してください。
購入・入居前には、RC造物件やL値の確認、最上階・角部屋の検討、内覧時の防音性チェックを行うことで、騒音トラブルを予防できる可能性があります。
