戸建て賃貸市場の現状と地方都市の特徴
戸建て賃貸を検討する際、「マンションやアパートと何が違うのか」「地方都市の相場はどのくらいか」と疑問を持つ方は少なくありません。
この記事では、地方都市の戸建て賃貸市場の特徴、メリット・デメリット、エリア別の相場、契約時の注意点を解説します。国土交通省の賃貸住宅市場調査等の公式データを元に、実践的な情報を提供します。
ファミリー層や移住検討者、戸建て賃貸経営を考えている方が、自分に最適な選択ができるようになります。
この記事のポイント
- 戸建て賃貸は賃貸市場全体の約2%(5.5万戸)と物件数は少ないが、ペット可物件が約48%と集合住宅より高い
- メリットは上下階への配慮不要、管理費なし、駐車場付き、間取りの自由度、ペット飼育しやすさ
- デメリットは物件数の少なさ、家賃が高め(マンションの約1.3倍)、庭の手入れ、セキュリティ面の不安
- 西尾市(愛知県)では2DK〜3LDKで5万円〜6万円が相場(2024年時点)
- 定期借家契約の場合は入居年数が限定されるため、契約形態の確認が重要
1. 戸建て賃貸市場の現状と地方都市の特徴
(1) 戸建て賃貸の市場規模(貸家全体の約2%、5.5万戸)
国土交通省の調査によると、賃貸戸建は平成24年に5.5万戸と緩やかに増加していますが、貸家全体に占める割合は約2%と市場規模は小さいです。
戸建て賃貸は、マンションやアパートに比べて物件数が少ないため、希望の条件に合う物件が見つかりにくい傾向があります。
(2) 地方都市の空き家率と賃貸市場(全国平均18.8%)
賃貸用住宅の空き家率は全国平均18.8%で、地域により11.6%〜30.8%と大きな差があります。地方都市では、空き家が多い一方で、戸建て賃貸への転用が進んでいない地域もあります。
空き家率が高い地域では、賃貸経営の空室リスクが高くなるため、賃貸需要の見極めが重要です。
(3) 最新トレンド(ペット可物件48%、価格上昇傾向)
2024年7月時点で、戸建て賃貸の約48%がペット可物件となっており、マンション・アパートのペット可率29%を大きく上回ります。
また、2024年の住宅市場は円安・建材費高騰・建設労働規制の影響で価格上昇が続いており、賃貸市場にも影響を及ぼしています。
2. 戸建て賃貸のメリット:集合住宅にはない魅力
(1) 上下階への配慮が不要(小さな子供がいる家庭に最適)
戸建て賃貸の最大のメリットは、上下階への騒音を気にする必要がないことです。小さなお子様がいる家庭では、マンション・アパートでは足音や物音が近隣トラブルになりがちですが、戸建てならその心配が大幅に軽減されます。
(2) 管理費がかからず、駐車場付きで駐車場代も節約
戸建て賃貸は、マンション・アパートのような管理費がかからない物件がほとんどです。また、駐車場付きの物件が多いため、別途駐車場代を支払う必要がなく、トータルコストを抑えられます。
(3) 間取りの自由度が高い
戸建て賃貸は、マンション・アパートに比べて間取りの自由度が高く、リビングが広い、収納が多い、庭がある等、ファミリー層に適した物件が多くあります。
(4) ペット飼育しやすい(48%がペット可物件)
2024年7月時点で、戸建て賃貸の約48%がペット可物件となっており、マンション・アパート(29%)に比べて飼育しやすい環境です。庭がある物件なら、犬の散歩や遊び場としても活用できます。
(5) プライバシーが保たれる
戸建て賃貸は、隣家との距離があり、独立した建物のため、プライバシーが保たれやすいです。集合住宅のように廊下やエレベーターで住民と顔を合わせることも少なく、生活音も気になりません。
3. 戸建て賃貸のデメリットと注意点
(1) 物件数が少なく、希望の物件が見つかりにくい
戸建て賃貸は賃貸市場全体の約2%と物件数が少ないため、賃貸サイトで検索しても希望の条件に合う物件が見つかりにくい可能性があります。複数の不動産ポータルサイトで検索することが重要です。
(2) 家賃がマンションの約1.3倍程度高い
戸建て賃貸の家賃は、マンション・アパートに比べて約1.3倍程度高い傾向があります。ただし、管理費がかからず、駐車場付きなら駐車場代も節約できるため、トータルコストで比較することが重要です。
(3) 庭の手入れが必要(雑草抜き、落ち葉処理等)
庭付き物件の場合、定期的な庭の手入れ(雑草抜き、落ち葉処理等)が必要で、メンテナンスの手間が大きくなります。庭の手入れを契約条件とする物件もあるため、契約内容を確認しましょう。
(4) セキュリティ面での不安(オートロックなし、窓が多い)
マンションのようなオートロックがなく、窓が多いため防犯面でのリスクが高くなります。戸締まりの徹底や、防犯カメラの設置等、自己防衛が必要です。
(5) 定期借家契約で入居年数が限定される場合がある
戸建て賃貸の一部は、定期借家契約(契約期間が定められており、更新がない契約)となる場合があります。長期居住を希望する場合は、普通借家契約(更新可能な契約)を選ぶことを推奨します。
(6) 退去時のクリーニング代が高め
戸建て賃貸は、ガラス窓が多い分、退去時のクリーニング代が集合住宅より高めになる傾向があります。退去時の費用負担について、契約時に確認しておきましょう。
4. 地方都市エリア別の戸建て賃貸相場
(1) 西尾市(愛知県):2DK〜3LDKで5万円〜6万円、259件
LIFULL HOME'Sによると、西尾市の戸建て賃貸物件は259件掲載されており、2DK〜3LDKの家賃相場は5万円〜6万円程度です(2024年時点)。
西尾市は愛知県の地方都市で、名古屋市へのアクセスも良く、ファミリー層に人気があります。
(2) 長野市・松本市(長野県):地方中核都市の相場
長野市・松本市は、長野県の中核都市で、戸建て賃貸の需要が一定程度あります。家賃相場は物件の築年数や立地により異なりますが、2DK〜3LDKで6万円〜8万円程度が目安です。
(3) 札幌・仙台・福岡市(政令市):都市型の相場
政令市クラスの都市では、戸建て賃貸の家賃相場は高めで、2DK〜3LDKで8万円〜12万円程度が目安です。都市部では、マンション・アパートの方が物件数が多く、戸建て賃貸は郊外エリアに多い傾向があります。
(4) 沖縄・埼玉(都市部vs郊外):地域差の比較
沖縄は観光地としての需要があり、戸建て賃貸も一定の人気があります。埼玉は東京へのアクセスが良い郊外エリアとして、ファミリー層の需要が高いです。
家賃相場は、都市部に近いほど高く、郊外エリアでは比較的手頃な価格帯で借りられます。
5. 戸建て賃貸の探し方と契約時のチェックポイント
(1) 大手ポータルサイトでの検索(SUUMO、LIFULL HOME'S等)
戸建て賃貸を探す際は、SUUMO、LIFULL HOME'S、アットホーム等の大手ポータルサイトで検索することが基本です。複数のサイトで検索し、物件情報を比較しましょう。
(2) 初期費用の計算(家賃4〜6ヶ月分+引越し代)
戸建て賃貸の初期費用は、「家賃4〜6ヶ月分+引越し代」が目安です。敷金・礼金・仲介手数料・前家賃等が含まれます。
| 項目 | 内容 | 目安額 |
|---|---|---|
| 敷金 | 原状回復費用の保証金 | 家賃1〜2ヶ月分 |
| 礼金 | 家主への謝礼金 | 家賃1〜2ヶ月分 |
| 仲介手数料 | 不動産会社への手数料 | 家賃1ヶ月分+消費税 |
| 前家賃 | 初月の家賃 | 家賃1ヶ月分 |
(3) 契約形態の確認(定期借家 vs 普通借家)
定期借家契約の場合、契約更新ができず入居年数が限定されます。長期居住を希望する場合は、普通借家契約を選ぶことを推奨します。
(4) 庭・駐車場・ペット可否の確認
庭付き物件の場合、庭の手入れが契約条件となっているか確認しましょう。また、駐車場の有無、ペット飼育可否も重要なポイントです。
(5) 高齢者の賃貸契約の注意点
高齢者の賃貸契約は、健康リスク・金銭リスクの懸念から締結が困難になるケースがあります。将来的な住まいの計画を立てる際は、早めに検討することが重要です。
6. まとめ:戸建て賃貸が向いている人・向いていない人
戸建て賃貸は、上下階への配慮不要、管理費なし、駐車場付き、間取りの自由度、ペット飼育しやすさが魅力です。一方、物件数の少なさ、家賃の高さ、庭の手入れ、セキュリティ面の不安がデメリットです。
向いている人:
- 小さなお子様がいるファミリー
- ペットを飼いたい方
- 広い間取りや庭を求める方
- プライバシーを重視する方
向いていない人:
- 初期費用を抑えたい方
- 庭の手入れが面倒な方
- セキュリティ面を重視する方
- 物件数の多い選択肢から選びたい方
信頼できる不動産会社や専門家に相談しながら、あなたに最適な住まいを見つけてください。
