不動産事務とは|業界における役割と重要性
不動産業界への転職・就職を検討する際、「不動産事務」という職種を目にする機会があります。しかし、具体的にどのような業務を担当するのか、未経験でも応募できるのか、資格は必要なのかといった疑問を持つ方は少なくありません。
この記事では、不動産事務の仕事内容、必要なスキル、役立つ資格、キャリアパスを、業界の求人情報や統計データを元に解説します。
不動産事務の全体像を理解することで、自分に合った職種かどうかを判断できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産事務とは、顧客対応・契約書類作成・物件情報管理・営業サポート等を行う事務職
- 賃貸と売買で業務内容が異なり、応募前に確認が重要
- 未経験歓迎の求人が多く、30代未経験でも転職可能(人材ニーズが高い)
- 宅地建物取引士(宅建士)の資格は必須ではないが、月1~5万円の資格手当が付与される企業が多い
- 平均年収は384~428万円(地域差あり)で、資格取得・業務範囲の拡大でキャリアアップが可能
不動産事務の仕事内容|賃貸・売買での業務の違い
(1) 顧客対応・来客対応
不動産事務の主な業務の一つが、顧客対応です。
具体的な業務:
- 来店されたお客様の受付・案内
- 電話・メール対応
- 問い合わせへの回答
- 契約手続きの説明
不動産は高額な取引を扱うため、正確で丁寧な対応が求められます。
(2) 契約書類作成・書類管理
契約書類の作成と管理も、不動産事務の重要な業務です。
具体的な業務:
- 賃貸借契約書、売買契約書の作成
- 重要事項説明書の準備
- 契約書類のファイリング・管理
- 関係書類の整理・保管
契約書類は法的な効力を持つため、ミスが許されず、正確性とスピードが求められます。
(3) 物件情報管理・データ入力
物件情報の管理とデータ入力も日常業務に含まれます。
具体的な業務:
- REINS(レインズ)への物件情報登録
- 社内システムへのデータ入力
- 物件情報の更新・削除
- 顧客データの管理
**REINS(レインズ)**とは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)のことで、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営する物件情報データベースです。
(4) 営業スタッフのサポート
不動産事務は、営業スタッフのサポート業務も担当します。
具体的な業務:
- 営業資料の作成
- 物件案内の予約調整
- 顧客情報の共有
- スケジュール管理
営業スタッフが円滑に業務を進められるよう、事務面からサポートします。
(5) 賃貸と売買での業務内容の違い
不動産事務は、賃貸と売買で業務内容が異なります。
| 項目 | 賃貸 | 売買 |
|---|---|---|
| 契約書類 | 賃貸借契約書、更新契約書 | 売買契約書、重要事項説明書 |
| 取引頻度 | 比較的短期間で成約 | 長期的な商談が多い |
| 取引金額 | 家賃数万~数十万円 | 数百万~数千万円 |
| 専門知識 | 賃貸借に関する法令 | 売買・税金・登記に関する法令 |
賃貸と売買では扱う書類や専門知識が異なるため、応募前に業務内容を確認することが重要です。
(出典: 宅建Jobマガジン「不動産事務で働くのはやめたほうがいい? 仕事内容や向いてる人の特徴を解説!」)
不動産事務に必要なスキル|求められる能力とコミュニケーション力
(1) コミュニケーション能力
不動産事務では、顧客や営業スタッフとのコミュニケーションが日常的に発生します。
求められる能力:
- お客様への丁寧な対応
- 営業スタッフとの円滑な情報共有
- 電話・メールでの適切な言葉遣い
未経験でも応募できる企業が多く、大切なのは仕事に対する姿勢やコミュニケーション能力です。
(出典: 不動産人材.com「未経験OK!不動産業界の事務職について解説します」)
(2) 正確性とスピード|高額取引を扱うためミスが許されない
不動産は高額な取引を扱うため、正確性とスピードが求められます。
求められる能力:
- 契約書類の正確な作成
- データ入力のミス防止
- 期限を守った業務遂行
一つのミスが大きなトラブルにつながる可能性があるため、細心の注意が必要です。
(3) 基本的なPC操作スキル
不動産事務では、Word、Excel、PowerPointなどの基本的なPC操作スキルが求められます。
求められるスキル:
- Word: 契約書類の作成
- Excel: 顧客データの管理、物件情報の整理
- PowerPoint: 営業資料の作成
高度なスキルは不要ですが、基本操作ができることが前提です。
(4) 専門知識の習得意欲
不動産事務は、一般事務と比べて専門知識の習得が必要です。
学習が必要な知識:
- 賃貸借契約・売買契約に関する法令
- 仲介手数料の計算方法
- 宅地建物取引業法の基礎
- 2024年施行の法改正(相続登記の義務化、働き方改革関連法等)
(出典: 東洋経済オンライン「2024年、不動産関連"知っておきたい"法改正5つ」)
専門知識の習得が必要なため、一般事務より学習負担が大きいですが、未経験からでも学べる環境がある企業が多いです。
不動産事務で役立つ資格|宅建士・その他の資格
(1) 宅地建物取引士(宅建士)|設置義務と資格手当
**宅地建物取引士(宅建士)**とは、不動産取引の専門家資格です。
宅建士の設置義務: 宅地建物取引業法により、不動産会社は従業員5人につき1人以上の宅建士を配置する義務があります。
(出典: スタディングキャリア「不動産業界で役立つ資格7選!事務職にも資格は必要?」)
資格手当の相場:
- 月1~5万円が一般的
- 企業によっては3万円程度
(出典: LEC東京リーガルマインド「不動産業界で役立つ資格は?<10選>宅建や国家資格の難易度・メリット」)
資格取得は必須ではありませんが、月1~5万円程度の資格手当が付与される企業が多いです。
(2) その他の役立つ資格|簿記・ビジネス実務法務等
宅建士以外にも、以下の資格が役立ちます。
| 資格名 | 内容 | メリット |
|---|---|---|
| 日商簿記検定 | 会計・経理の知識 | 財務関連業務に役立つ |
| ビジネス実務法務検定 | 法律の基礎知識 | 契約書類の理解に役立つ |
| ファイナンシャルプランナー(FP) | 住宅ローン・税金の知識 | 顧客相談に役立つ |
これらの資格は必須ではありませんが、業務の幅を広げることができます。
(3) 資格がないと携われない業務の範囲
宅建士の資格がないと、以下の業務には携われません。
宅建士の独占業務:
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書への記名・押印
- 契約書への記名・押印
(出典: スタディングキャリア「不動産業界で役立つ資格7選!事務職にも資格は必要?」)
資格がないと一部の業務に携われないため、業務範囲が制限される可能性があります。
(4) 資格取得のメリット|昇進・給与面での優遇
長期的なキャリアを考えるなら資格取得は推奨されます。
メリット:
- 資格手当(月1~5万円)が支給される
- 昇進や給与面で優遇されやすい
- 業務範囲が広がる
- 転職時に有利
(出典: LEC東京リーガルマインド「不動産業界で役立つ資格は?<10選>宅建や国家資格の難易度・メリット」)
不動産事務のキャリアパス|年収・未経験からのステップアップ
(1) 平均年収|384~428万円(地域差あり)
不動産事務の平均年収は、調査により差がありますが、以下のデータが報告されています。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 平均年収 | 384~428万円 |
| 月給換算 | 約36万円 |
| 初任給 | 約22万円 |
| 平均時給(派遣) | 1,494円 |
(出典: 給料ナビ「不動産事務の仕事の平均年収は428万円/平均時給は1,178円!」)
地域差:
- 関西地方(滋賀県): 418万円(高め)
- 宮崎県: 298万円(低め)
(出典: 住宅・不動産お仕事ナビ「不動産事務の年収は?職種別の給与相場と転職後の仕事内容を徹底解説」)
不動産業界全体の平均年収は514万円ですが、これは営業職のインセンティブが平均を引き上げているためです。
(2) 未経験からの転職可否|人材ニーズが高い
30代未経験でも不動産業界の事務職への転職は可能です。
未経験歓迎の理由:
- 人員拡大が進んでおり人材ニーズが高い
- 大切なのは仕事に対する姿勢やコミュニケーション能力
- 資格取得も必須ではない
(出典: スタディングキャリア「不動産業界で役立つ資格7選!事務職にも資格は必要?」)
求人サイト(エン転職等)では、未経験歓迎の求人が豊富に掲載されています。
(3) キャリアアップの方法|資格取得・業務範囲の拡大
不動産事務からキャリアアップする方法は、以下の通りです。
キャリアアップの方法:
- 宅建士の資格取得: 月1~5万円の資格手当、業務範囲の拡大
- 業務範囲の拡大: 契約書類作成から重要事項説明まで担当
- 専門知識の習得: 2024年施行の法改正(相続登記の義務化等)を学ぶ
- 営業職への転向: インセンティブで年収アップの可能性
(4) 不動産事務がきついと言われる理由とメリット
きついと言われる理由:
- クレーム対応がある
- 繁忙期(3~4月、9~10月)は忙しい
- 高額取引を扱うためミスが許されない
- 専門知識の習得が必要
メリット:
- ノルマがない(営業職と比べて精神的負担が少ない)
- 未経験歓迎の求人が多い
- 資格取得で年収アップが可能
- 専門性が身につく
(出典: 宅建Jobマガジン「不動産事務で働くのはやめたほうがいい? 仕事内容や向いてる人の特徴を解説!」)
まとめ|不動産事務への就職・転職を検討する際のポイント
不動産事務とは、顧客対応・契約書類作成・物件情報管理・営業サポート等を行う事務職です。賃貸と売買で業務内容が異なるため、応募前に確認することが重要です。
未経験歓迎の求人が多く、30代未経験でも転職可能です。宅地建物取引士(宅建士)の資格は必須ではありませんが、月1~5万円の資格手当が付与される企業が多く、長期的なキャリアを考えるなら取得が推奨されます。
平均年収は384~428万円(地域差あり)で、資格取得・業務範囲の拡大でキャリアアップが可能です。
不動産事務への就職・転職を検討する際は、賃貸か売買か、未経験歓迎か、資格取得のサポートがあるかを確認し、自分に合った企業を選びましょう。
