不動産管理会社の選び方が重要な理由
賃貸物件のオーナーやマンション管理組合の役員として、管理会社の選定や変更を検討する際、どのような基準で評価すべきか悩む方は多いでしょう。
この記事では、不動産管理会社の種類と業務内容、選定時の評価ポイント、管理手数料の相場、見積もり比較のコツを、業界データを元に解説します。
適切な管理会社を選ぶことで、入居率の向上、トラブル対応の迅速化、物件価値の維持・向上を実現できます。
この記事のポイント
- 管理会社選定は入居率とトラブル対応力に直結し、物件の収益性と価値を左右する
- 賃貸管理会社と分譲マンション管理会社は役割が異なり、契約形態も一般管理とサブリースの2種類がある
- 管理手数料の相場は一般管理で家賃の3-5%、サブリースで10-20%、集金代行のみなら3%程度
- 入居者募集力、24時間サポート体制、地域での実績が選定の重要ポイント
- 大手は知名度と集客力が強み、地域密着型は地元の人口動態に精通している特徴がある
(1) 管理会社選定が収益性に与える影響
不動産管理会社の選定は、賃貸物件の収益性に大きな影響を与えます。入居者募集力が高い管理会社であれば、空室期間を短縮し、安定した家賃収入を確保できます。
一方、入居者募集力が弱い会社を選んでしまうと、空室期間が長引き、収益が減少します。また、管理手数料の適正さも重要で、手数料が安すぎる会社はサービス品質が低い可能性があります。
(2) 入居率とトラブル対応が物件価値を左右する
入居率の維持と迅速なトラブル対応は、物件価値を左右する重要な要素です。設備トラブルや入居者トラブルに迅速に対応できる管理会社であれば、入居者満足度が高まり、長期入居につながります。
反対に、対応が遅い管理会社では、入居者の不満が蓄積し、退去率が高まります。24時間サポート体制の有無は、トラブル対応力を見極める重要な指標です。
不動産管理会社の種類と業務内容
(1) 賃貸管理会社と分譲マンション管理会社の違い
不動産管理会社は、大きく分けて賃貸管理会社と分譲マンション管理会社の2種類があります。
| 種類 | 対象 | 主な業務 |
|---|---|---|
| 賃貸管理会社 | 賃貸物件のオーナー | 入居者募集、契約手続き、家賃回収、クレーム対応、建物管理 |
| 分譲マンション管理会社 | マンション管理組合 | 共用部分の清掃、設備保守、管理組合運営サポート |
賃貸管理会社は収益物件の運営管理を担当し、分譲マンション管理会社は区分所有者の共有部管理を担当します。
(2) 賃貸管理会社の主な業務範囲
賃貸管理会社の主な業務範囲は以下の通りです。
- 入居者募集:広告掲載、内見対応、入居者選定
- 契約手続き:賃貸借契約の締結、契約更新
- 家賃回収:家賃の集金、滞納時の督促
- クレーム対応:入居者からの問い合わせ、トラブル対応
- 建物管理:定期清掃、設備点検、修繕手配
管理手数料に含まれる業務範囲は会社により異なるため、契約前に必ず確認しましょう。
(3) 分譲マンション管理会社の業務内容
分譲マンション管理会社の業務内容は以下の通りです。
- 共用部分の清掃:エントランス、廊下、ゴミ置き場等の定期清掃
- 設備保守:エレベーター、給排水設備、消防設備等の点検・保守
- 管理組合運営サポート:総会運営、理事会運営、会計業務
- 長期修繕計画の策定:大規模修繕の計画立案と実施サポート
マンション管理組合から委託を受けて業務を遂行し、管理費・修繕積立金から報酬を受け取ります。
(4) 管理戸数ランキング上位企業の特徴
全国賃貸住宅新聞の調査によると、2025年の賃貸管理戸数ランキングでは、大東建託グループ、積水ハウス不動産グループ、大和リビングが各100万戸超の管理実績でトップ3を維持しています。
管理戸数が多い会社は、ノウハウの蓄積と全国ネットワークによる集客力が強みです。ただし、管理戸数の多さだけでなく、自分の物件エリアでの実績とサービス品質を確認することが重要です。
管理会社選定の評価ポイント
(1) 入居者募集力の見極め方
入居者募集力は、管理会社選定の最重要ポイントです。以下の観点で評価しましょう。
- 広告掲載の範囲:SUUMO、HOME'S等の主要ポータルサイトへの掲載有無
- 自社ネットワーク:自社店舗数、提携不動産会社のネットワーク
- 過去の実績:同エリアでの平均空室期間、入居率
- 内見対応の迅速さ:問い合わせから内見までのスピード
入居者募集力が高い会社を選ぶことで、空室リスクを最小限に抑えられます。
(2) トラブル対応力と24時間サポート体制
設備トラブルや入居者トラブルは、時間を問わず発生します。24時間サポート体制がある管理会社であれば、夜間や休日のトラブルにも迅速に対応できます。
以下のポイントを確認しましょう。
- 24時間対応窓口の有無
- 緊急時の駆けつけサービス
- 過去のトラブル対応事例
- 入居者満足度調査の結果
24時間サポート体制は、入居者満足度向上に直結し、長期入居を促進します。
(3) 大手と地域密着型それぞれの強み
管理会社は、大手と地域密着型でそれぞれ強みが異なります。
| 種類 | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| 大手管理会社 | 知名度と集客力、全国ネットワーク、豊富なノウハウ | 地域特性への理解が弱い場合がある |
| 地域密着型 | 地元の人口動態に精通、きめ細かい対応 | 広告掲載範囲が限定的、ネットワークが狭い |
自分の物件エリアでの実績を確認し、どちらが適しているか判断しましょう。
(4) 顧客満足度調査と口コミの活用方法
オリコンや住まいサーフィン等の顧客満足度調査は、実際の利用者数千人規模で実施されており、一定の信頼性があります。
2025年のオリコン調査では、分譲マンション管理会社の首都圏ランキングで82社、10,000人以上の実際の利用者による評価が行われています。このような調査結果を参考にすることで、サービス品質の傾向を把握できます。
ただし、ネット上の口コミはネガティブな評判が多い傾向があるため、参考程度にとどめ、複数の情報源で総合的に判断しましょう。
管理手数料の相場と契約形態の違い
(1) 一般管理契約の手数料相場(家賃の3-5%)
一般管理契約では、オーナーが家賃収入を受け取り、管理会社に手数料を支払います。相場は家賃の3-5%程度です。
例えば、家賃10万円の物件であれば、月3,000円〜5,000円が管理手数料となります。この手数料には、入居者募集、契約手続き、家賃回収、クレーム対応、建物管理が含まれることが一般的です。
(2) サブリース契約の特徴とリスク(10-20%)
サブリース契約(一括借上げ)では、管理会社が物件を一括借上げし、オーナーに一定の家賃を保証します。管理手数料は家賃の10-20%程度と割高になります。
メリット:
- 空室リスクがなく、安定した家賃収入を確保できる
- 家賃回収や入居者トラブルの対応を管理会社が行う
デメリット:
- 管理手数料が割高
- 契約条件によっては家賃減額のリスクがある
サブリース契約を検討する場合は、契約条件を専門家と十分確認することを推奨します。
(3) 集金代行のみの費用(3%程度)
集金代行のみのサービスでは、管理会社が家賃の集金と滞納督促のみを行います。手数料は家賃の3%程度が相場です。
オーナー自身で入居者募集や建物管理を行い、家賃回収だけを委託したい場合に適しています。
(4) 手数料に含まれる業務と別途費用の確認
管理手数料に含まれる業務範囲は会社により異なります。以下の点を契約前に必ず確認しましょう。
管理手数料に含まれる業務:
- 入居者募集、契約手続き、家賃回収、クレーム対応、定期清掃
別途費用がかかる業務:
- 広告費(入居者募集時)
- 修繕費用(設備故障時)
- 原状回復費用(退去時)
- 24時間サポート費用(オプション)
トータルコストで比較することが重要です。
管理会社の比較と見積もりのコツ
(1) 複数社から見積もりを取る際のポイント
管理会社を選定する際は、必ず複数社(3社以上)から見積もりを取りましょう。以下のポイントを比較します。
- 管理手数料:一般管理・サブリース・集金代行のそれぞれの料金
- 手数料に含まれる業務範囲
- 別途費用がかかる項目
- 入居者募集の実績(同エリアでの平均空室期間)
- 24時間サポートの有無
- 契約期間と解約条件
見積もりを比較する際は、手数料の安さだけでなく、サービス内容と実績を総合的に評価しましょう。
(2) 管理手数料の安さだけで判断してはいけない理由
管理手数料が相場(家賃の3-5%)より極端に安い会社は、人件費削減や広告費削減でサービス品質が低い可能性があります。
以下のようなリスクがあります。
- 入居者募集が弱い:広告掲載範囲が限定的、空室期間が長引く
- トラブル対応が遅い:人手不足で対応が後回しになる
- 建物管理が疎かになる:清掃や点検の頻度が低い
管理手数料だけでなく、入居率の維持やトラブル対応のスピードがトータルコストに影響するため、総合的に評価しましょう。
(3) 自分の物件エリアでの実績確認
大手管理会社でも、地域によっては対応力が弱い場合があります。自分の物件エリアでの実績を確認しましょう。
- 同エリアでの管理戸数
- 同エリアでの平均入居率
- 近隣物件の管理実績
- 地域密着型との比較
地域での実績が豊富な会社を選ぶことで、入居者募集と物件管理の質を高められます。
(4) 管理会社の経営安定性の確認方法
管理会社の経営安定性も重要です。倒産した場合、家賃回収や入居者対応に支障が出るため、以下の点を確認しましょう。
- 設立年数:長期にわたり営業している会社は信頼性が高い
- 管理戸数の推移:年々増加している会社は安定している
- 業界団体への加盟:賃貸不動産経営管理士協会等への加盟状況
- 財務状況:上場企業であれば決算情報を確認
経営が安定している会社を選ぶことで、長期的な管理委託が可能になります。
まとめ:物件タイプ別の選び方
(1) 賃貸物件オーナーの選定チェックリスト
賃貸物件オーナーが管理会社を選定する際のチェックリストは以下の通りです。
- 入居者募集力:広告掲載範囲、自社ネットワーク、過去の実績
- 24時間サポート体制:緊急時の対応可否
- 管理手数料:一般管理(3-5%)、サブリース(10-20%)の相場との比較
- 手数料に含まれる業務範囲:トータルコストでの評価
- 自分の物件エリアでの実績:地域での管理戸数、入居率
- 経営安定性:設立年数、管理戸数の推移、業界団体への加盟
複数社から見積もりを取り、これらのポイントを総合的に評価して選定しましょう。
(2) マンション管理組合の選定チェックリスト
マンション管理組合が管理会社を選定する際のチェックリストは以下の通りです。
- 管理実績:同規模・同築年数のマンション管理実績
- 顧客満足度:オリコン等の顧客満足度調査の結果
- 管理組合運営サポート:総会・理事会運営の支援体制
- 長期修繕計画の策定能力:大規模修繕の計画立案と実施サポート
- 管理費の適正さ:同規模マンションとの比較
- 担当者の対応力:理事会への提案力、問題解決力
管理組合の総会決議で管理会社を選定するため、理事会で複数社を比較検討し、組合員に情報を共有することを推奨します。
