商業ビル・オフィスビルの基礎知識|テナント選び・賃料相場・契約時のポイント

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/1

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オフィスビル選びで失敗しないために知っておくべきこと

オフィス移転や新規開業を検討する際、「賃料相場がわからない」「どのビルを選べばいいのか」と悩む事業者は少なくありません。

この記事では、商業ビル・オフィスビルの種類と特徴、賃料相場の調べ方、立地選びのポイント、契約時の注意点を公的機関や信頼できる調査機関の情報を元に解説します。九電不動産ビル、住友不動産ビル、常盤不動産ビルなど、具体的な事例も交えながら、初めての方でも自社に合ったオフィスビルを選べるようになります。

この記事のポイント

  • オフィスビルは「企業系」「独立系」「複合型」に分類され、それぞれ賃料・設備・管理体制が異なる
  • 賃料相場は立地・築年数・設備・階数で決まり、東京都心は坪単価1万円台後半~3万円以上、地方都市は5千円~1万円台が目安
  • 契約時は保証金・原状回復義務・耐震性能(新耐震基準)を必ず確認する
  • 複数のビルを比較検討し、専門家(宅建士、商業不動産コンサルタント等)への相談を推奨する

(1) オフィスビル選びが事業運営に与える影響

オフィスビルの立地や設備は、従業員の通勤効率、取引先の訪問しやすさ、企業イメージに直結します。交通アクセスが悪いビルは採用や営業活動に影響し、築年数が古く設備が不十分なビルは業務効率を下げる可能性があります。

また、賃料は固定費の大部分を占めるため、適正な相場を把握せずに契約すると経営を圧迫するリスクがあります。2024年の東京オフィスビル市場は供給が減少し空室率が低下基調にあるため、賃料が上昇する傾向があります(出典: JLL)。

(2) この記事で解説する内容

この記事では、以下の項目を順に解説します。

  • 商業ビル・オフィスビルの種類(企業系・独立系・複合型)と特徴
  • 賃料相場の調べ方と決定要因(立地・築年数・設備・階数)
  • 立地選びのポイント(交通アクセス・周辺環境)
  • 契約時に確認すべき条件(保証金・原状回復義務・耐震性能)

商業ビル・オフィスビルの種類と特徴

オフィスビルは運営主体や用途により「企業系」「独立系」「複合型」に分類されます。

(1) 企業系ビルの特徴

企業系ビルは、大手不動産会社(住友不動産、三井不動産等)が所有・運営するビルです。

メリット:

  • 設備が充実(高速エレベーター、OAフロア、セキュリティ)
  • 管理体制が整っている(24時間対応、清掃・保守が行き届く)
  • ブランド価値が高く、企業イメージ向上に寄与

デメリット:

  • 賃料が高め(都心の新築ビルは坪単価3万円以上も)
  • 契約条件が厳格(保証金が賃料の10-12ヶ月分等)

事例: 住友不動産の賃貸オフィスは東京都心7区を中心に展開し、交通利便性が高い立地を重視しています。

(2) 独立系ビルの特徴

独立系ビルは、中小の不動産会社や個人オーナーが所有するビルです。

メリット:

  • 賃料が抑えられる(企業系ビルより1-2割安い場合も)
  • 契約交渉の余地がある(敷金・契約期間等)
  • 地元企業にとってアクセス・人脈面でメリット

デメリット:

  • 設備・管理体制は個別に確認が必要
  • 築年数が古い場合、耐震性能やインターネット設備が不十分な可能性

事例: 九電不動産ビル(福岡市中央区薬院)は1963年築、地上5階・地下1階で、西鉄薬院駅から徒歩5分のアクセスです。地域密着型のビルとして、地元企業にとって賃料面やアクセス面でメリットがあります。

(3) 複合ビル(商業・オフィス併設型)の特徴

複合ビルは、商業施設(ショップ・飲食店)とオフィスが同居するビルです。

メリット:

  • 利便性が高い(昼食・買い物が建物内で完結)
  • 集客力のある立地(駅直結・繁華街)

デメリット:

  • 賃料が高め(商業エリアの賃料に影響される)
  • 営業時間外の出入りに制約がある場合も

(4) ビル管理の種類(系列系・独立系)

ビル管理会社は「系列系」(大手不動産・ゼネコン系)と「独立系」に分かれます。

種類 特徴 メリット デメリット
系列系 大手不動産・ゼネコンの関連会社 設備保守・テナント対応が充実 管理費が高め
独立系 中小の専門管理会社 管理費が抑えられる 対応品質は会社により差がある

(出典: 生和コーポレーション

賃料相場の調べ方と決定要因

オフィスビルの賃料相場は、立地・築年数・設備・階数により大きく異なります。

(1) 賃料相場を左右する要因(立地・築年数・設備・階数)

主な要因:

要因 影響
立地 駅からの距離(徒歩5分以内が高額)、都心か地方か
築年数 新築・築浅(10年以内)が高額、築30年超は1-2割安
設備 OAフロア、24時間利用、光回線対応、エレベーター台数
階数 高層階は眺望・ステータスで高額、低層階は搬入が容易

(2) 坪単価の目安と計算方法

坪単価(1坪=約3.3平米あたりの月額賃料)の目安:

エリア 坪単価の目安
東京都心(千代田・港・中央区等) 1万円台後半~3万円以上
東京23区外(新宿・渋谷・品川等) 1万円~2万円
地方都市(福岡・大阪・名古屋等) 5千円~1万円台

計算例:

  • 面積50坪、坪単価2万円の場合: 月額賃料 = 50坪 × 2万円 = 100万円

(3) 2024年のオフィスビル市場動向

2024年の東京オフィスビル供給は約92万平米で、過去平均より約4割少なく、空室率は低下基調が続く見通しです(出典: CBRE)。

主な竣工ビル:

  • 赤坂トラストタワー
  • 住友不動産中野駅前ビル(2024年2月竣工)
  • 大和秋葉原ビル(2024年6月竣工)

空室率の低下は賃料上昇圧力となるため、移転を検討する場合は早めの情報収集が推奨されます。

(4) 公的データと調査機関の活用

賃料相場を調べる際は、以下のデータを参照してください。

  • 公的機関: 国土交通省の不動産市場動向調査
  • 調査機関: JLL、CBRE等の不動産調査会社のレポート
  • ビル検索サイト: オフィスナビ、建美家等の賃料データベース

データは執筆時点(2024-2025年)のものであり、最新情報は公式サイトでご確認ください。

立地選びのポイントとアクセス評価

オフィスビルの立地は、従業員の通勤効率や取引先の訪問しやすさに直結します。

(1) 交通アクセスの評価基準(駅からの距離・路線)

評価基準:

  • 駅からの距離: 徒歩5分以内が理想、10分以内が許容範囲
  • 複数路線: 2路線以上使えると通勤の柔軟性が高まる
  • 主要駅へのアクセス: 東京駅・品川駅・新宿駅等への30分以内が目安

事例: 常盤不動産ビル(横浜市中区)は関内駅から徒歩3分の好立地で、24時間利用可能、光回線対応です。

(2) 周辺環境の確認(金融機関・飲食店・駐車場)

確認項目:

  • 金融機関: ATM・銀行窓口の有無(経理業務の効率化)
  • 飲食店: ランチ・会食の選択肢(従業員満足度)
  • 駐車場: 来客用・社用車の駐車スペース
  • コンビニ: 徒歩3分以内にあると便利

(3) 東京都心と地方都市の立地特性の違い

項目 東京都心 地方都市
交通手段 電車中心 車通勤が多い
駐車場の重要度 低い 高い(来客用駐車場必須)
賃料相場 高額 抑えられる
採用への影響 駅近が重要 駐車場の有無が重要

地方都市では、駐車場の台数・料金が立地選びの重要な要素となります。

契約時に確認すべき条件と注意点

オフィスビルの契約時は、保証金・原状回復義務・耐震性能を必ず確認してください。

(1) 保証金・敷金の相場と返還条件

相場:

  • 敷金: 賃料の6-12ヶ月分(大手不動産会社のビルは10-12ヶ月分が多い)
  • 返還条件: 契約終了時に原状回復費用を差し引いて返還

注意点:

  • 返還時期(契約終了後1-3ヶ月)を確認
  • 原状回復費用の見積もり基準を事前に確認

(2) 原状回復義務の範囲

原状回復義務とは、退去時にオフィスを入居時の状態に戻す義務です。

確認項目:

  • 壁・床の修繕: クロス・カーペットの張替え費用
  • 造作の撤去: パーテーション・什器の撤去費用
  • 設備の復旧: 電気・空調の増設分の撤去

費用は数十万円~数百万円になる場合があるため、契約時に詳細を確認してください。

(3) 契約期間と中途解約の条件

一般的な契約期間:

  • 2年契約: 住居用賃貸と同様
  • 3-5年契約: 商業ビル・オフィスビルで多い

中途解約:

  • 解約予告期間(3-6ヶ月前)を確認
  • 違約金の有無(賃料の数ヶ月分)を確認

(4) 設備・セキュリティの確認(24時間利用・光回線・OAフロア)

確認項目:

設備 確認内容
24時間利用 休日・深夜の入館可否、追加料金の有無
セキュリティ 警備員常駐、カードキー、防犯カメラ
インターネット 光回線対応、回線速度(1Gbps以上推奨)
OAフロア 配線収納の二重床構造、レイアウト変更の自由度
エレベーター 台数、待ち時間、搬入用の有無

(5) 耐震性能の確認(新耐震基準)

新耐震基準とは、1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用される耐震基準です。それ以前の旧耐震基準の建物は、耐震改修が推奨されます(出典: 国土交通省)。

確認方法:

  • 建築確認日(1981年6月1日以降か)
  • 耐震診断・耐震改修の実施履歴
  • 大規模地震時の安全性

築年数が古いビル(特に1981年以前)を検討する場合は、耐震性能を必ず確認してください。

まとめ:自社に合ったオフィスビルの選び方

オフィスビル選びでは、賃料相場・立地・設備・契約条件を総合的に比較検討することが重要です。企業系ビルは設備・管理が充実していますが賃料が高く、独立系ビルは賃料を抑えられますが個別の確認が必要です。

2024年の東京オフィスビル市場は供給減少により空室率が低下し、賃料が上昇傾向にあります。移転を検討する場合は、複数のビルを比較し、立地・設備・耐震性能を確認してください。

契約時は保証金・原状回復義務・中途解約条件を必ず確認し、疑問点は宅建士や商業不動産コンサルタントに相談することを推奨します。自社の事業規模・業種・予算に合ったオフィスビルを選び、効率的な事業運営を実現しましょう。

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よくある質問

Q1オフィスビルの賃料相場はどのように決まりますか?

A1立地(駅からの距離、都心か地方か)、築年数、設備(エレベーター数、OAフロア、セキュリティ)、階数などが主な要因です。東京都心の場合、坪単価は1万円台後半~3万円以上、地方都市は5千円~1万円台が目安です。賃料は固定費の大部分を占めるため、複数のビルを比較し、公的機関や調査機関のデータを参照することを推奨します。

Q2大手不動産会社のビルと中小ビルの違いは何ですか?

A2大手不動産会社(住友不動産、三井不動産等)のビルは設備・管理が充実し、ブランド価値がある反面、賃料が高めです。中小ビルは賃料が抑えられますが、設備や管理体制は個別に確認が必要です。企業の規模や予算、求める設備レベルに応じて選ぶことが重要です。複数のビルを見学し、比較検討してください。

Q3契約前に必ず確認すべき設備は何ですか?

A324時間利用可能か、セキュリティ体制(警備員常駐・カードキー)、インターネット設備(光回線対応)、OAフロアの有無、エレベーター台数、空調設備、耐震性能(新耐震基準対応か)を確認してください。業種によっては天井高や電気容量も重要です。また、1981年以前の旧耐震基準の建物は耐震改修の実施履歴を確認することを推奨します。

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Room Match編集部

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