マンション退去費用の内訳と相場|敷金返還と原状回復の注意点

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/25

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マンション退去費用とは|敷金との関係と基礎知識

賃貸マンションの退去を控えている際、「退去費用はいくらかかるのか」「敷金は戻ってくるのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、マンション退去費用の内訳と相場、原状回復のルール、高額請求トラブルの対処法を、国土交通省ガイドラインを元に解説します。入居時・退去時の対策も紹介しますので、退去費用で損せず、スムーズに退去できるようになります。

この記事のポイント

  • 退去費用の相場はワンルーム・1Kで1.5万〜7万円、2LDK以上で10〜20万円程度
  • 経年劣化・通常損耗は貸主負担、故意・過失による損耗は借主負担(国土交通省ガイドライン)
  • 敷金から退去費用を差し引いた残額が返還される
  • 入居時に傷や汚れを写真撮影し、管理会社と共有するとトラブルを防げる
  • 高額請求された場合は消費生活センター(188)や弁護士に相談できる

(1) 退去費用の定義|原状回復費用+清掃費用

退去費用は、借主の故意・過失による損耗を修繕する「原状回復費用」と、退去後の「清掃費用(ハウスクリーニング)」で構成されます。

退去費用の内訳:

  • 原状回復費用: 壁紙の張替え、床の補修、設備の修理等
  • ハウスクリーニング費用: 専門業者による退去後の清掃
  • その他: 鍵の交換費用(契約による)

原状回復は「入居前の状態に戻す」という意味ではありません。国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、原状回復は「借主の故意・過失による損耗を修繕すること」と定義されています。

(2) 敷金との関係|退去費用を差し引いた残額が返還される

敷金は、賃貸契約時に借主が貸主に預ける保証金で、退去時に退去費用を差し引いた残額が返還されます。

敷金と退去費用の関係(例):

  • 敷金: 家賃1ヶ月分(10万円)
  • 退去費用: 5万円
  • 返還額: 10万円 - 5万円 = 5万円

退去費用が敷金を上回る場合は、追加で費用を請求される場合があります。逆に退去費用が敷金を下回る場合は、差額が返還されます。

敷金の返還時期は、退去後1〜2ヶ月以内が一般的です。契約書で確認しましょう。

退去費用の内訳と相場|間取り別の費用目安

(1) ワンルーム・1Kの相場|1.5万〜7万円

SUUMOによると、ワンルーム・1Kの退去費用相場は1.5万〜7万円程度です。

ワンルーム・1Kの退去費用内訳(例):

項目 金額目安
ハウスクリーニング 1.5万〜3万円
壁紙の張替え 1万〜3万円(部分的な場合)
床の補修 1万〜2万円(傷が少ない場合)
合計 1.5万〜7万円

居住年数が短く、目立った傷や汚れがない場合は、ハウスクリーニング費用のみで済むケースもあります。

(2) 1DK・1LDKの相場|7〜12万円

三井のリハウスによると、1DK・1LDKの退去費用相場は7〜12万円程度です。

1DK・1LDKの退去費用内訳(例):

項目 金額目安
ハウスクリーニング 3万〜5万円
壁紙の張替え 3万〜5万円
床の補修 1万〜3万円
合計 7〜12万円

部屋数が増えると、壁紙・床の面積が増えるため、退去費用も上昇します。

(3) 2LDK以上の相場|10〜20万円程度

三井のリハウスによると、2LDK以上の退去費用相場は10〜20万円程度です。

2LDK以上の退去費用内訳(例):

項目 金額目安
ハウスクリーニング 5万〜8万円
壁紙の張替え 5万〜10万円
床の補修 2万〜5万円
合計 10〜20万円

ファミリー向け物件は面積が広く、使用頻度も高いため、退去費用が高額になりやすい傾向があります。

(4) 退去費用を左右する要因|居住年数・物件の状態・特約

退去費用は、以下の要因により大きく変動します。

居住年数:

  • 長期居住(5年以上)の場合、経年劣化による減価償却が適用され、借主負担が軽減される
  • 短期居住(1〜2年)の場合、壁紙・床の耐用年数が残っているため、借主負担が増える

物件の状態:

  • タバコの臭い・ヤニ汚れ、ペットの傷・臭いは借主負担が増える
  • 通常の使用による汚れは経年劣化として貸主負担になる場合が多い

特約:

  • 契約書に「ハウスクリーニング費用は全額借主負担」等の特約がある場合、借主負担が増える
  • 特約の有効性は契約内容により異なるため、契約書を確認する

原状回復のルール|借主・貸主の負担区分(国土交通省ガイドライン)

(1) 経年劣化・通常損耗は貸主負担|日焼け・家具のへこみ等

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、経年劣化・通常損耗は原則として貸主負担です。

貸主負担となる損耗の例:

  • 日焼けによる壁紙・床の変色
  • 家具設置によるカーペット・床のへこみ
  • テレビ・冷蔵庫背面の壁の黒ずみ(電気やけ)
  • 壁に貼ったポスターや絵画の跡(画鋲の穴程度)
  • 自然損耗による設備の故障(寿命による給湯器の故障等)

これらは普通に生活していて生じる損耗であり、借主が負担する必要はありません。

(2) 故意・過失による損耗は借主負担|タバコの臭い・ペットの傷等

借主の故意・過失による損耗は、借主が原状回復費用を負担します。

借主負担となる損耗の例:

  • タバコのヤニ汚れ・臭い(壁紙の全面張替えが必要な場合)
  • ペットによる床・壁の傷・臭い
  • 飲み物をこぼしたシミ(掃除を怠った場合)
  • 釘穴・ネジ穴(壁に棚を設置した場合)
  • 鍵の紛失による交換費用
  • 結露を放置したカビ・腐食

これらは通常の使用範囲を超える損耗であり、借主が修繕費用を負担する必要があります。

(3) 壁紙の耐用年数と負担割合|経過年数による減価償却

LIFULL HOME'Sによると、壁紙には耐用年数(6年)があり、経過年数により借主負担が減価償却されます。

壁紙の減価償却の例:

居住年数 新品時の価値 借主負担割合
1年 100% 約83%
3年 100% 約50%
6年以上 100% 10%(最低残存価額)

例えば、居住3年で壁紙の全面張替え(12万円)が必要な場合、借主負担は約6万円(50%)になります。居住6年以上の場合、借主負担は約1.2万円(10%)になります。

このように、長期居住の場合は経年劣化が考慮され、借主負担が軽減されます。

(4) 特約による借主負担の拡大|ハウスクリーニング特約

契約書に「ハウスクリーニング費用は全額借主負担」等の特約がある場合、国土交通省ガイドラインとは異なり借主負担が拡大します。

よくある特約:

  • ハウスクリーニング費用の全額借主負担
  • 畳の表替え費用の全額借主負担
  • 鍵交換費用の全額借主負担

特約は、以下の条件を満たす場合に有効とされます(判例による):

  1. 借主が特約の内容を明確に認識していた
  2. 特約の内容が合理的である
  3. 借主が特約に合意した証拠がある

特約の有効性に疑問がある場合は、消費生活センターや弁護士に相談しましょう。

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退去費用を抑えるポイント|入居時・退去時の対策

(1) 入居時の対策|傷や汚れを写真撮影・管理会社と共有

入居時に部屋の傷や汚れを写真撮影し、管理会社と共有しておくと、退去時のトラブルを防げます。

入居時チェックリスト:

  • 壁・床・天井の傷・シミを撮影
  • 設備の動作確認(エアコン、給湯器、水栓等)
  • 窓・ドアの開閉確認
  • 撮影した写真を管理会社にメールで送付し、記録を残す

入居時の状態を記録しておけば、退去時に「入居前からあった傷」と証明できます。

(2) 退去時の対策|清掃・修繕の自主対応

退去時に自分で清掃・修繕を行うことで、退去費用を抑えられる場合があります。

退去時の対策:

  • 壁・床・水回りを徹底的に清掃する
  • 画鋲の穴・小さな傷は市販の補修材で修繕する
  • 不用品はすべて処分し、部屋を空にする
  • 換気扇・エアコンのフィルターを清掃する

ただし、ハウスクリーニング費用は契約上の特約で借主負担となっている場合が多く、自分で清掃しても費用が免除されない場合があります。契約書を確認しましょう。

(3) 複数業者から見積もりを取る

管理会社から提示された退去費用が高額な場合、複数の原状回復業者から見積もりを取ることで適正価格を把握できます。

2024年のアパート・マンションの原状回復費用の相場によると、物価高の影響で原状回復工事費用が上昇傾向にあります。複数業者から見積もりを取ることで、適正価格を確認しましょう。

(4) 退去費用の内訳を必ず確認する

退去費用の請求書を受け取ったら、内訳を必ず確認し、不明点があれば支払い前に管理会社に連絡しましょう。

確認ポイント:

  • 原状回復費用の項目(壁紙、床、設備等)
  • ハウスクリーニング費用の内訳
  • 経年劣化による減価償却が適用されているか
  • 特約に基づく費用請求があるか

内訳が不明確な場合や、国土交通省ガイドラインに反する請求がある場合は、支払い前に交渉しましょう。

高額請求トラブルの対処法|相談窓口と解決方法

(1) 不当な請求の見極め方|ガイドラインとの照合

退去費用が高額な場合、国土交通省ガイドラインと照合し、不当な請求かどうかを確認しましょう。

不当な請求の例:

  • 経年劣化(日焼け・家具のへこみ等)を借主負担としている
  • 壁紙の減価償却を適用せず、全額請求している
  • 特約がないのにハウスクリーニング費用を全額請求している
  • 通常の清掃で除去できる汚れを「特別清掃」として高額請求している

国土交通省ガイドラインは法的強制力はありませんが、裁判の判断基準として広く使われています。

(2) 交渉のポイント|証拠写真・内訳確認・減額交渉

不当な請求に対しては、以下のポイントで交渉しましょう。

交渉のポイント:

  • 証拠写真: 入居時・退去時の写真を提示し、入居前からあった傷を証明
  • 内訳確認: 請求書の内訳を詳細に確認し、不明点を質問
  • ガイドライン提示: 国土交通省ガイドラインに基づき、経年劣化・減価償却を主張
  • 減額交渉: 明らかに過大な請求については減額を要求

交渉は書面(メール)で記録を残すことを推奨します。口頭での交渉は証拠が残りにくいため、後でトラブルになる可能性があります。

(3) 相談窓口|消費生活センター(188)・法テラス

管理会社との交渉が難航した場合、専門機関に相談しましょう。

相談窓口 内容 連絡先
消費生活センター 賃貸トラブル全般の相談 188(局番なし)
法テラス 法的トラブルの相談・弁護士紹介 0570-078374
弁護士 法的手続き(少額訴訟等) 地域の弁護士会

国民生活センターによると、毎年約13,000件の原状回復トラブル相談が寄せられています。一人で悩まず、専門家に相談しましょう。

(4) 毎年約13,000件の退去費用トラブル相談

国民生活センターによると、賃貸住宅の原状回復トラブルの相談は毎年約13,000件と高止まりしています。

よくあるトラブル:

  • 敷金が全額返還されない
  • 経年劣化を借主負担としている
  • ハウスクリーニング費用が相場より高額
  • 契約書にない費用を請求される

トラブルを未然に防ぐためには、入居時の写真撮影、契約書の確認、退去費用の内訳確認が重要です。

まとめ:退去費用で損しないための確認事項

マンション退去費用の相場は、ワンルーム・1Kで1.5万〜7万円、2LDK以上で10〜20万円程度です。原状回復のルールは国土交通省ガイドラインに基づき、経年劣化・通常損耗は貸主負担、故意・過失による損耗は借主負担となります。

退去費用を抑えるためには、入居時に傷や汚れを写真撮影し管理会社と共有する、退去時に清掃・修繕を自主対応する、退去費用の内訳を必ず確認することが重要です。

高額請求された場合は、国土交通省ガイドラインと照合し、不当な請求であれば消費生活センター(188)や弁護士に相談しましょう。契約書の特約内容も確認し、納得できない請求には交渉することを推奨します。

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よくある質問

Q1退去費用の相場はどれくらい?

A1退去費用の相場は、ワンルーム・1Kで1.5万〜7万円、1DKで7〜8万円、1LDKで8〜12万円、2LDK以上で10〜20万円程度です。居住年数、物件の状態、特約により変動します。長期居住(5年以上)の場合、経年劣化による減価償却が適用され、借主負担が軽減されます。タバコの臭い・ヤニ汚れ、ペットの傷・臭いは借主負担が増えるため、注意が必要です。

Q2経年劣化と借主負担の違いは?

A2国土交通省ガイドラインによると、経年劣化・通常損耗(日焼けによる壁紙の変色、家具設置によるカーペットのへこみ等)は原則として貸主負担です。一方、借主の故意・過失による損耗(タバコのヤニ汚れ・臭い、ペットによる床・壁の傷等)は借主負担となります。普通に生活していて生じる損耗は経年劣化として貸主負担になりますが、通常の使用範囲を超える損耗は借主が修繕費用を負担します。

Q3敷金は戻ってくる?

A3敷金は、退去費用を差し引いた残額が返還されます。例えば、敷金が家賃1ヶ月分(10万円)で退去費用が5万円の場合、差額の5万円が返還されます。退去費用が敷金を上回る場合は追加で費用を請求される場合があり、逆に退去費用が敷金を下回る場合は差額が返還されます。敷金の返還時期は退去後1〜2ヶ月以内が一般的です。

Q4高額請求された場合はどうすればいい?

A4まず退去費用の内訳を確認し、国土交通省ガイドラインと照合して不当な請求かどうか判断しましょう。経年劣化を借主負担としている、壁紙の減価償却を適用していない等の不当な請求があれば、証拠写真やガイドラインを提示して減額交渉します。管理会社との交渉が難航した場合は、消費生活センター(188)や弁護士に相談しましょう。交渉は書面(メール)で記録を残すことを推奨します。

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