マンション大規模修繕の全知識|費用相場・周期・進め方を徹底解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/2

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マンション大規模修繕とは?基本を理解する

マンションを所有している方や購入を検討している方にとって、「大規模修繕の費用負担はどのくらい?」「いつ実施すればいいの?」という不安は尽きません。

この記事では、マンション大規模修繕の費用相場、周期、進め方について、国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」などの公式情報を元に解説します。

修繕積立金が不足した場合の対処法や施工会社選定のポイントまで、初めて大規模修繕に直面する方でも正確に理解できるようになります。

(1) 大規模修繕が必要な理由

マンションは経年劣化により、外壁のひび割れ、防水層の劣化、配管の老朽化などが進行します。これを放置すると、建物の資産価値が低下するだけでなく、雨漏りや設備の故障など住民生活に直接影響を及ぼします。

大規模修繕は、これらの劣化箇所を計画的に修繕し、建物を長期的に健全な状態に保つための工事です。

(2) 本記事で分かること

この記事のポイント

  • マンション大規模修繕の費用は1戸あたり初回75-125万円、2回目以降は100-125万円以上が相場(国土交通省調査
  • 修繕周期は12-15年が一般的だが、高耐久材料の使用で15-18年への延長も可能
  • 修繕積立金が不足する管理組合が約40%あり、早めの資金計画見直しが重要
  • 設計監理方式では第三者が価格・品質を客観的に評価できるが、悪質コンサルタントに注意
  • 工事中は足場・騒音で日常生活に影響があるため、事前説明が必須

マンション大規模修繕の基礎知識

(1) 大規模修繕の定義と目的

大規模修繕とは、マンションの建物・設備の経年劣化を修繕し、長期的に健全な状態を保つための工事を指します。通常の小規模な修繕(管理費で対応)とは異なり、修繕積立金を使って行う計画的な工事です。

目的は以下の3点です。

  • 安全性の確保: 外壁の剥落、配管の破損などを防ぐ
  • 資産価値の維持: 適切な修繕で建物の寿命を延ばす
  • 住環境の向上: 設備の更新で快適性を向上

(2) 主な工事内容(外壁・屋上・配管・設備等)

大規模修繕の代表的な工事内容は以下の通りです。

工事項目 内容 実施頻度
外壁補修・塗装 ひび割れ補修、塗装の塗り替え 12-15年ごと
屋上防水工事 防水層の更新 12-15年ごと
鉄部塗装 階段・手すりの錆止め・塗装 12-15年ごと
給排水管更新 配管の全面交換(2回目以降) 25-30年ごと
エレベーター更新 機器の全面更新(2回目以降) 25-30年ごと

(出典: 国土交通省

初回修繕では主に外壁・屋上・鉄部の修繕が中心ですが、2回目以降は配管・エレベーター等の設備更新が加わり、費用が大幅に増加します。

(3) 修繕積立金の仕組み

修繕積立金とは、各区分所有者が毎月積み立てる将来の大規模修繕費用です(管理費とは別)。

一般的な積立方法は以下の2種類です。

  • 均等積立方式: 毎月一定額を積み立てる
  • 段階増額方式: 最初は少額で、一定期間ごとに増額

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、30年程度の長期修繕計画に基づいて適切な積立額を設定することが推奨されています。

(4) 長期修繕計画の重要性

長期修繕計画とは、将来の修繕工事の時期・内容・費用を予測した計画書です。

国土交通省のガイドラインでは、以下の内容を含めることが推奨されています。

  • 今後30年間の修繕工事の実施時期
  • 各工事の概算費用
  • 修繕積立金の収支シミュレーション

長期修繕計画を定期的に見直すことで、修繕積立金の不足を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。

マンション大規模修繕の費用相場

(1) 1戸あたりの費用相場(初回75-125万円、2回目以降100-125万円以上)

国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、1戸あたりの費用相場は以下の通りです。

  • 初回修繕: 75-125万円が最多(75-100万円が30.6%、100-125万円が24.7%)
  • 平均費用: 1戸あたり約151.6万円

ただし、建物の規模・築年数・工事内容により費用は大きく変動します。

(2) 費用の内訳(工事費・設計監理費・予備費)

大規模修繕の費用は以下のように構成されます。

項目 割合 内容
工事費 85-90% 実際の施工費用
設計監理費 5-10% 設計事務所への報酬(設計監理方式の場合)
予備費 5-10% 追加工事への備え

予備費を用意しないと、工事中に予期せぬ追加費用が発生した際に対応できません。

(3) 修繕積立金が足りない場合の対処法

国土交通省の調査によると、修繕積立金が計画額を下回る管理組合が約39.9%存在します。

資金不足時の主な対処法は以下の通りです。

  • 一時金の徴収: 不足分を区分所有者から追加徴収(管理組合総会の決議が必要)
  • 金融機関からの借入: マンション管理組合向けローンを活用
  • 工事の優先順位付け: 緊急性の高い工事から実施し、他は延期
  • 修繕積立金の増額: 将来の修繕に備えて月額を引き上げ

いずれの方法も管理組合総会での決議が必要なため、早めに専門家(マンション管理士等)に相談することが重要です。

(4) 予備費の重要性(工事費の5-10%)

大規模修繕では、工事中に以下のような追加費用が発生する可能性があります。

  • 外壁を剥がしたら予想外の劣化が見つかった
  • 配管の腐食が想定以上に進行していた
  • 設計段階では見えなかった箇所の修繕が必要になった

このため、工事費の5-10%程度を予備費として確保しておくことが推奨されます。

マンション大規模修繕の周期と時期

(1) 大規模修繕の周期(12-15年が一般的)

国土交通省の調査によると、実際の修繕周期は以下の通りです。

  • 1回目: 平均15.6年
  • 2回目: 平均14.0年
  • 3回目: 平均12.9年

全体の約70%が12-15年周期で実施されています。

(2) 12年周期の起源と現状(2008年の国交省ガイドライン)

「12年周期」という数字は、2008年の国土交通省『長期修繕計画作成ガイドライン』が起源です。ただし、これはあくまで目安であり、建物の状況に応じて柔軟に判断すべきとされています。

近年は材料・工法の進化により、必ずしも12年で実施する必要はなくなっています。

(3) 周期延長の可能性(高耐久材料で15-18年)

高耐久性塗料や防水材の使用により、従来の12年周期を15-18年に延長する事例が増加しています(2024年時点)。

周期を延長することで、以下のメリットがあります。

  • 修繕回数が減り、長期的なコストを削減できる
  • 工事による住民への負担を軽減できる

ただし、延長する場合は建物の劣化診断を定期的に行い、適切なタイミングを見極めることが重要です。

(4) 適切な周期の判断基準(建物劣化診断)

大規模修繕の実施時期は、以下の要素を総合的に判断します。

  • 建物劣化診断の結果: 外壁・屋上・配管の劣化状況を専門家が調査
  • 長期修繕計画: 計画上の実施時期
  • 修繕積立金の状況: 必要な資金が確保できているか

一律に「12年」「15年」と決めるのではなく、建物の状態を診断した上で最適な時期を判断してください。詳細は建築士やマンション管理士にご相談ください。

マンション大規模修繕の進め方と注意点

(1) 大規模修繕の流れ(準備~完了まで)

大規模修繕は通常、以下の流れで進みます。

  1. 準備段階(1-2年前)

    • 建物劣化診断
    • 長期修繕計画の見直し
    • 修繕委員会の設置
  2. 設計段階(1年前)

    • 設計事務所の選定(設計監理方式の場合)
    • 工事内容・仕様の決定
    • 見積もりの取得
  3. 施工業者選定(半年前)

    • 複数社から見積もり取得
    • 施工業者の選定(管理組合総会で決議)
  4. 工事実施(3-6か月)

    • 着工
    • 定期的な工事報告・検査
    • 竣工・引き渡し
  5. アフターフォロー

    • 保証期間中の不具合対応

(2) 設計監理方式と責任施工方式の違い

マンション大規模修繕には、主に2つの発注方式があります。

方式 内容 メリット デメリット
設計監理方式 第三者(設計事務所等)が工事内容を設計し、施工を監理 価格・品質を客観的に評価できる 設計監理費が別途必要
責任施工方式 施工業者が設計から施工まで一貫して行う 手続きが簡素、コストを抑えやすい 第三者チェックがないため業者の質に依存

設計監理方式は透明性が高い一方、悪質なコンサルタントに注意が必要です(後述)。

(3) 施工会社選定のポイント

施工会社を選定する際は、以下のポイントを確認してください。

  • 実績: マンション大規模修繕の施工実績が豊富か
  • 見積もりの妥当性: 複数社から見積もりを取り、価格と内容を比較
  • 工事保証: 工事後の保証期間・内容が明確か
  • 施工体制: 現場監督・作業員の体制が適切か

(4) 悪質コンサルタントへの注意

近年、設計監理方式において、悪質なコンサルタント(設計事務所)による以下のトラブルが報告されています。

  • 特定の施工業者への不当な誘導(バックマージンの受け取り)
  • 過大な設計監理費の請求
  • 不要な工事の追加

対策として、以下を実施してください。

  • コンサルタントの実績・評判を確認
  • 複数のコンサルタントから提案を受ける
  • 見積もりの内訳を詳細に確認し、不明点は質問
  • 管理組合で情報共有し、透明性を確保

(5) 工事中の生活への影響(騒音・足場等)

大規模修繕工事中は、以下の影響があります。

  • 足場の設置: ベランダが使用できない、窓が開けられない期間がある
  • 騒音: 外壁補修・塗装作業による音
  • 作業員の出入り: 共用部の混雑

工事期間は通常3-6か月程度です。管理組合は事前に住民への説明会を開き、工事内容・期間・生活への影響を周知することが重要です。

まとめ:マンション大規模修繕で失敗しないために

マンション大規模修繕は、1戸あたり初回75-125万円、2回目以降は100-125万円以上の費用がかかる大規模な工事です。修繕周期は12-15年が一般的ですが、建物の状況により15-18年への延長も可能です。

修繕積立金が不足する管理組合が約40%存在するため、早めに長期修繕計画を見直し、必要な資金を確保することが重要です。

施工会社選定では複数社から見積もりを取り、設計監理方式の場合は悪質コンサルタントに注意してください。

(1) 早めの資金計画見直しの重要性

大規模修繕の費用は建物の規模・築年数により大きく変動します。長期修繕計画を定期的に見直し、修繕積立金が不足する見込みがあれば、早めに対策を講じることで、一時金の負担を軽減できます。

(2) 次のアクション(管理組合・専門家への相談)

大規模修繕の詳細な計画や費用の見積もりについては、管理組合の理事会や専門家(マンション管理士、建築士等)にご相談ください。

信頼できる専門家のアドバイスを受けながら、無理のない資金計画を立て、建物の資産価値を長期的に維持しましょう。

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よくある質問

Q1マンション大規模修繕はどのくらいの周期で行うべきですか?

A1一般的には12-15年周期が目安です。国土交通省の調査では、1回目の平均周期は15.6年となっています。ただし、高耐久材料を使用した場合は15-18年への延長も可能です。建物の劣化状況を専門家が診断し、管理組合で適切な周期を判断してください。詳細は建築士やマンション管理士にご相談ください。

Q2マンション大規模修繕の1戸あたり費用はいくらですか?

A2初回修繕は1戸あたり75-125万円、2回目以降は100-125万円以上が相場です(令和3年度国土交通省調査)。平均費用は約151.6万円となっています。設備の全面更新が必要な2回目以降は更に高額になる傾向があります。建物の規模・築年数・工事内容により費用は大きく変動するため、複数の施工業者から見積もりを取得してください。

Q3修繕積立金が足りない場合、どうすればよいですか?

A3一時金の徴収、金融機関からの借入、工事の優先順位付けなどの対処法があります。国土交通省の調査では、修繕積立金が計画額を下回る管理組合が約39.9%存在します。いずれの方法も管理組合総会での決議が必要なため、早めに資金計画を見直し、専門家(マンション管理士等)に相談してください。

Q412年周期は古いのですか?

A412年周期は2008年の国土交通省ガイドラインが起源で、あくまで目安です。近年は高耐久材料の進化により15-18年周期への延長も可能になっています。実際の修繕周期は1回目平均15.6年、2回目平均14.0年となっており、建物の状況に応じて柔軟に判断することが推奨されています。定期的な建物劣化診断を行い、適切な時期を見極めてください。

Q5大規模修繕の工事中、生活にどんな影響がありますか?

A5足場の設置によりベランダが使用できない期間があるほか、外壁補修・塗装作業による騒音、作業員の出入りによる共用部の混雑などで日常生活に影響があります。工事期間は通常3-6か月程度です。管理組合は事前に住民への説明会を開き、工事内容や期間、生活への影響を周知することが重要です。

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Room Match編集部

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