マンション維持修繕技術者が注目される理由
マンション管理・建築業界で働いている方や、マンション維持修繕技術者資格の取得を検討している方にとって、「試験はどれくらい難しいの?」「取得後のキャリアにどう影響するの?」と気になる点は多いでしょう。
この記事では、マンション維持修繕技術者試験の概要、試験内容、受験資格、難易度・合格率、資格取得後のキャリアと年収を、一般社団法人マンション管理業協会の公式情報やメディア分析を元に詳しく解説します。
マンション管理・建築業界で働く技術者が、資格取得の判断を適切に行い、キャリアアップにつなげられるようになります。
この記事のポイント
- マンション維持修繕技術者は、マンションの維持・修繕に関する一定水準以上の知識及び技術力を有する者を審査・認定する資格
- 2025年4月1日時点で登録者数は4,465名、平成14年度から試験が実施されている
- 試験は年1回(9月上旬)、合格率は約25-30%で難易度は高め
- 受験資格として建築・設備関係の実務経験または関連資格(一級・二級建築士、管理業務主任者等)が必要
- 平均年収は472万円(東京都では522万円)、長期修繕計画の作成や大規模修繕工事のコンサルティングが主な業務
(1) マンションの老朽化と計画修繕の必要性
高度経済成長時代に建てられたマンションの老朽化が進んでおり、計画修繕の必要性が年々高まっています。2024年時点で、マンション維持修繕技術者の需要も増加傾向にあります。
(2) 管理組合を支援する専門家の役割
マンション維持修繕技術者は、分譲マンション(区分所有建物)の特性を理解し、維持・修繕について専門知識をもって管理組合を支援する役割を担います。長期修繕計画の作成や大規模修繕工事の際のアドバイスなど、専門的な知識が求められます。
資格の概要と登録者数
(1) マンション維持修繕技術者とは
マンション維持修繕技術者は、一般社団法人マンション管理業協会が認定する資格です。マンションの維持・修繕に関する一定水準以上の知識及び技術力を有する者を審査・認定します。
(2) 登録者数と資格の歴史
2025年4月1日時点で登録者数は4,465名です。試験は平成14年度(2002年)から実施されており、20年以上の歴史があります。
(3) 登録証の有効期限と更新
登録証の有効期限は5年間で、更新が必要です。継続的な学習と資格維持のコストが発生する点に注意が必要です。
試験内容と受験資格
(1) 試験形式と科目(9分野)
試験は多肢選択方式(四肢択一)と記述式の両方で構成されています。試験科目は以下の9分野です。
| 分野 | 内容 |
|---|---|
| 1. 建築の劣化概要 | 建物の劣化要因・現象を理解 |
| 2. 調査診断手法 | 劣化状況の調査・診断方法 |
| 3. 修繕設計業務 | 修繕計画の設計 |
| 4. 工事監理技術 | 修繕工事の監理 |
| 5. 設備の基礎 | マンション設備の基礎知識 |
| 6. 設備の調査診断 | 給排水・電気・空調設備の診断 |
| 7. 設備の修繕設計 | 設備の修繕計画の設計 |
| 8. 設備の工事監理 | 設備工事の監理 |
| 9. 修繕に関わる法律 | 建築基準法等の関連法律 |
試験範囲が非常に広範囲で詳細な問題が出題されるため、過去問を徹底的に分析することが重要です。
(2) 受験資格(学歴・実務経験・保有資格)
受験資格として、以下のいずれかが必要です。
- 学歴+実務経験:建築に関する課程の卒業+建築・設備関係の実務経験
- 実務経験のみ:建築・設備関係の実務経験が一定年数以上
- 保有資格:一級・二級建築士、技術士(建設部門)、建築設備士、管理業務主任者、マンション管理士、一級・二級建築施工管理技士、管工事施工管理技士等の保有者
誰でも受験できるわけではなく、建築・設備関係の経験または資格が必要です。
(3) 試験日程と実施都市
試験は**年1回(9月上旬)**のみの実施です。2024年度の試験は9月1日(日)に実施され、申込期間は6月5日~7月2日でした。
試験は7都市(東京、大阪、札幌、仙台、名古屋、広島、福岡)で実施されます。受験料は11,000円です。
難易度・合格率と勉強法
(1) 合格率と合格基準
合格率は約25-30%で、難易度は高めです。合格基準は60%~72%程度の正答率とされています。建築・設備関係の資格や実務経験を持つ受験者でも、油断できない難易度です。
(2) 必要な勉強時間と対策方法
マンション維持修繕技術者試験の合格には、約100時間(2ヶ月)の勉強が必要とされています。試験範囲が9分野と非常に広範囲で詳細な問題が出題されるため、計画的な準備が重要です。
(3) 過去問の重要性と独学の可能性
過去問を徹底的に分析することが合格への近道です。独学でも合格可能ですが、徹底的な準備が必要です。試験は年1回(9月上旬)のみで再受験の機会が限られるため、計画的な準備を心がけましょう。
資格取得後のキャリアと年収
(1) 仕事内容(長期修繕計画・大規模修繕工事)
マンション維持修繕技術者の主な仕事内容は以下の通りです。
- 長期修繕計画書の作成・更新:マンションの建物や設備の劣化を予測し、将来の修繕工事の時期・内容・費用を計画する
- 大規模修繕工事の立ち会い:外壁塗装、防水工事、設備更新などの大規模修繕工事に計画修繕のプロフェッショナルとして立ち会い、アドバイスやコンサルティングを行う
- マンション管理組合への説明業務:専門的な知識をもって管理組合を支援し、修繕計画や工事内容を説明する
(2) 平均年収と地域別の違い
マンション維持修繕技術者の平均年収は472万円です。東京都では平均522万円と、地域により差があります。
| 地域 | 平均年収 |
|---|---|
| 全国平均 | 472万円 |
| 東京都 | 522万円 |
(3) 他の資格との併用メリット
マンション維持修繕技術者は、以下の資格と併用することでキャリアの幅が広がります。
- 一級・二級建築士:建築設計・工事監理との組み合わせ
- 管理業務主任者:マンション管理業務との組み合わせ
- マンション管理士:管理組合コンサルティングとの組み合わせ
これらの資格を組み合わせることで、マンション管理・修繕の総合的な専門家としての地位を確立できます。
まとめ:資格取得を検討すべき人
マンション維持修繕技術者は、マンションの維持・修繕に関する専門資格で、2025年4月1日時点で登録者数は4,465名です。
試験は年1回(9月上旬)、合格率は約25-30%で難易度は高めです。約100時間(2ヶ月)の勉強が必要で、受験資格として建築・設備関係の実務経験または関連資格(一級・二級建築士、管理業務主任者等)が必要です。
平均年収は472万円(東京都では522万円)で、長期修繕計画の作成や大規模修繕工事のコンサルティングが主な業務です。登録証の有効期限は5年間で更新が必要な点にも注意が必要です。
資格取得を検討すべき人:
- マンション管理・建築業界で働いている技術者
- 一級・二級建築士、管理業務主任者等の関連資格を既に保有している方
- マンション維持修繕分野でキャリアアップを目指す方
- 長期修繕計画や大規模修繕工事の専門家を目指す方
試験は年1回のみの実施で、計画的な準備が必要です。過去問を徹底的に分析し、約100時間(2ヶ月)の勉強時間を確保しましょう。資格取得・維持の判断は個別の状況により異なるため、キャリアカウンセラーや資格取得支援講師等の専門家への相談もおすすめします。
