マンションの風呂リフォームが注目される理由
マンションに長く住んでいると、「浴室のカビが取れない」「タイルが割れている」「設備が古くて使いづらい」と感じることがあります。また、売却前に「リフォームすべきか」「費用はいくらか」と迷う方も少なくありません。
この記事では、マンションの風呂リフォームの費用相場、工事の流れ、管理規約の注意点、売却前リフォームの必要性を、住宅リフォーム推進協議会や国土交通省の公式情報を元に解説します。
初めてマンションリフォームを検討する方でも、費用の目安を把握し、失敗しない判断ができるようになります。
この記事のポイント
- マンション浴室リフォームの費用は80~120万円(ユニットバス交換)、在来浴室からユニットバスへは70~150万円が相場
- 工期はユニット→ユニット3~4日、在来→ユニット4~7日が目安
- 管理組合への申請は必須(着工2~3週間前)、申請なしで工事すると中止・原状回復を求められる
- マンション売却前のリフォームは原則不要(費用対効果が低く、買主の好みと合わないリスクあり)
- 水回り4点セット(キッチン・浴室・トイレ・洗面)なら100~300万円でセット割引が適用される
(1) 築20年以上のマンションで浴室劣化が顕在化
築20年以上のマンションでは、浴室の劣化が目立ち始めます。
よくある劣化症状:
- カビ・水アカの蓄積(タイル目地・浴槽周辺)
- タイル割れ・ひび割れ
- 換気扇・給湯器の老朽化
- 排水の流れが悪い
システムバスの寿命は約15年とされており、設置から10~20年が経過するとリフォームのタイミングです。
(2) 2025年のリフォーム市場動向とトレンド
2025年のリフォーム市場には以下のトレンドが見られます。
最新動向(ゼロリノベジャーナル調査):
- 広いリビング空間が主流: 個室重視から「広いリビングが欲しい」という声が増加
- 窓辺の居心地の良い空間: 小上がり・ヌック・ワークスペース等を窓辺に設置
- 洗面化粧台と脱衣室の分離が定着: 家族構成に応じて洗面と脱衣を分けるレイアウトが増加
- 省エネ・ZEHリフォームの需要急拡大: 2030年までに新築住宅の60%をZEHにする政府目標に伴い、既存住宅の省エネリフォームが増加
中古マンション購入+リフォーム市場が拡大しており、政府の空き家対策・中古住宅市場活性化により、中古購入+リフォームが一般化しています。
(3) 戸建てとマンションのリフォームの違い
マンションと戸建てでは、リフォームの制約が大きく異なります。
| 項目 | マンション | 戸建て |
|---|---|---|
| リフォーム可能範囲 | 専有部分のみ | 全て可能 |
| 管理規約の制約 | あり(水回り移動・配管交換等) | なし |
| 管理組合への申請 | 必須 | 不要 |
| 費用相場(浴室) | 80~120万円 | 90~180万円 |
| 工期 | 3~7日 | 4~10日 |
マンションは専有部分のみリフォーム可能で、共用部分(玄関ドア・窓・ベランダ・配管縦管)は変更できません。
2. マンション浴室リフォームの基礎知識
(1) 専有部分と共用部分の定義
マンションには「専有部分」と「共用部分」があり、リフォーム可能範囲が異なります。
| 区分 | 内容 | リフォーム |
|---|---|---|
| 専有部分 | 室内(壁・床・天井・設備) | 可能 |
| 共用部分 | 玄関ドア・窓・ベランダ・配管縦管(PS内) | 不可 |
注意点:
- PS(パイプスペース)内の縦管は共用部分で変更不可
- 配管の横管(専有部分)は交換可能だが、管理規約で制限される場合がある
- 玄関ドア・窓の変更は管理規約違反
リフォーム前に管理規約を必ず確認してください。
(2) ユニットバスと在来浴室の違い
浴室には「ユニットバス」と「在来浴室」の2種類があります。
| 項目 | ユニットバス | 在来浴室 |
|---|---|---|
| 施工方法 | 工場生産パーツを現場で組み立て | タイル・モルタルで現場施工 |
| 防水性 | 高い(一体成型) | 低い(目地から水漏れリスク) |
| 工期 | 短い(3~4日) | 長い(4~7日以上) |
| デザイン自由度 | 低い(規格品) | 高い(自由設計) |
| 費用 | 80~120万円 | 70~150万円 |
現在のマンションはユニットバスが主流です。在来浴室からユニットバスへのリフォームが一般的です。
(3) システムバスの寿命とリフォームのタイミング
システムバスの寿命は約15年です。
リフォームのタイミング:
- 10~15年: 浴槽・壁の汚れが目立ち始める
- 15~20年: 設備(換気扇・給湯器)の老朽化が進む
- 20年以上: カビ・水漏れリスクが高まる
設置から10~20年が経過したら、リフォームを検討するタイミングです。
(4) マンション特有の制約(排水勾配・配管・管理規約)
マンションリフォームには以下の制約があります。
主な制約:
- 排水勾配の確保: 水回りの移動は配管の勾配確保が必要(床下スペースが不足する場合は不可)
- 配管交換の制限: PS内の縦管は共用部分で交換不可
- 分電盤容量の上限: 電気容量の増強は管理規約で制限される場合がある
- 遮音等級の基準: 床材は遮音等級基準(L-45等)を満たす必要がある
管理規約は物件ごとに異なるため、工事前に管理組合に確認することが必須です。
3. マンション浴室リフォームの費用相場と工期
(1) ユニットバス交換の費用(80~120万円)
ユニットバスからユニットバスへの交換費用は80~120万円が相場です。
| 内訳 | 費用 |
|---|---|
| ユニットバス本体 | 50~80万円 |
| 解体・撤去費 | 10~15万円 |
| 組立・設置費 | 15~20万円 |
| 配管・電気工事 | 5~10万円 |
| 合計 | 80~120万円 |
(出典: TOTOリモデルライブラリー、リショップナビ)
費用は設備グレード(スタンダード・ミドル・ハイグレード)により変動します。
(2) 在来浴室からユニットバスへの費用(70~150万円)
在来浴室からユニットバスへのリフォーム費用は70~150万円が相場です。
| 内訳 | 費用 |
|---|---|
| 解体・撤去費(タイル・モルタル) | 20~30万円 |
| ユニットバス本体 | 50~80万円 |
| 下地補修・防水工事 | 10~20万円 |
| 組立・設置費 | 15~20万円 |
| 配管・電気工事 | 5~10万円 |
| 合計 | 70~150万円 |
在来浴室は解体・撤去に手間がかかるため、ユニットバス交換よりやや高額になる場合があります。
(3) 浴槽のみ交換の費用(10~50万円)
浴槽のみを交換する場合、10~50万円で1日完了します。
| 浴槽の種類 | 費用 |
|---|---|
| FRP浴槽(標準) | 10~20万円 |
| ホーロー浴槽 | 20~30万円 |
| ステンレス浴槽 | 15~25万円 |
| 人工大理石浴槽 | 30~50万円 |
浴槽のみ交換は「予算を抑えたい」「浴室全体は劣化していない」場合に適しています。
(4) 水回り4点セット(キッチン・浴室・トイレ・洗面)の費用
水回り4点セット(キッチン・浴室・トイレ・洗面)なら100~300万円で一括リフォームが可能です。
| セット内容 | 費用相場 |
|---|---|
| 3点セット(浴室・トイレ・洗面) | 70~200万円 |
| 4点セット(浴室・トイレ・洗面・キッチン) | 100~300万円 |
(出典: リショップナビ)
セットプランは仕入れ値が安くなり、単品でリフォームするよりお得です。
(5) 工期の目安(ユニット→ユニット3~4日、在来→ユニット4~7日)
浴室リフォームの工期は以下の通りです。
| リフォーム内容 | 工期 |
|---|---|
| ユニットバス→ユニットバス | 3~4日 |
| 在来浴室→ユニットバス | 4~7日 |
| 浴槽のみ交換 | 1日 |
工期中は浴室が使えないため、近隣の銭湯やスポーツジムのシャワーを利用する準備が必要です。
4. マンションリフォームの流れと管理規約の注意点
(1) リフォームの基本ステップ(計画→見積もり→申請→工事)
マンションリフォームの流れは以下の通りです。
| ステップ | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 1. 計画・現地調査 | リフォーム会社に現地調査を依頼 | 1週間 |
| 2. 見積もり取得 | 複数社から相見積もり | 1~2週間 |
| 3. 管理規約確認 | 管理組合に規約を確認 | 1週間 |
| 4. 管理組合へ申請 | 着工2~3週間前に申請書提出 | 2~3週間 |
| 5. 工事実施 | 解体→設置→仕上げ | 3~7日 |
| 6. 完了検査 | 管理組合・施工会社の検査 | 1日 |
(出典: 住宅リフォーム推進協議会)
管理組合への申請を忘れると、工事中止や原状回復を求められるため注意が必要です。
(2) 管理組合への申請手順(着工2~3週間前)
マンションリフォームでは管理組合への申請が必須です。
申請に必要な書類:
- 工事内容の詳細(図面・仕様書)
- 工事期間・施工時間
- 施工業者の情報(会社名・連絡先)
- 近隣への説明方法
申請の流れ:
- 管理組合に申請書を提出(着工2~3週間前)
- 理事長・管理会社が審査
- 承認後、着工可能
申請なしで工事を開始すると、管理規約違反となり、工事中止・原状回復を求められます。
(3) 管理規約の確認ポイント(水回り移動・配管交換・遮音等級)
管理規約には以下の制約が記載されています。
確認すべきポイント:
- 水回り設備の移動禁止: 配管の勾配確保が困難な場合、移動不可
- 配管交換の制限: PS内の縦管は共用部分で交換不可
- 分電盤容量の上限: 電気容量の増強が制限される場合がある
- 遮音等級の基準: 床材は遮音等級基準(L-45等)を満たす必要がある
- 管理組合指定業者の使用義務: 特定業者の使用を義務づけるケースもある
管理規約は物件ごとに異なるため、工事前に管理組合に確認することが重要です。
(4) 業者選びのポイント(相見積もり・実績・保証)
リフォーム業者は複数社から相見積もりを取ることが重要です。
業者選びのポイント:
- 相見積もり: 3社以上から見積もりを取る
- 実績: マンションリフォームの施工実績を確認
- 保証: 工事保証・アフターサービスの内容を確認
- 管理規約への対応: 管理組合への申請代行が可能か
施工会社ごとに得意分野が異なるため、相見積もりは必須です。
5. マンション売却前のリフォームは必要か
(1) 売却前リフォームが不要な理由(費用対効果・買主の好み)
マンション売却前のリフォームは原則不要です。
不要な理由:
- 費用を売却価格に転嫁しづらい: リフォーム費用100万円をかけても、売却価格が同額上がるとは限らない
- 買主の好みと合わないリスク: 買主が自分好みにリフォームしたい場合、リフォーム済み物件は敬遠される
- リフォーム済み希望の買主は約14%のみ: LIFULL HOME'Sの調査によると、リフォーム済み物件を希望する買主は約14%のみ
売却前は「ハウスクリーニング」で印象を改善する方がコスパが良いとされています。
(2) リフォームが必要なケース(水漏れ・設備故障等)
以下の場合のみ、売却前リフォームを検討します。
リフォームが必要なケース:
- 水漏れ・配管トラブルがある
- 浴槽・給湯器が故障している
- タイル割れ・ひび割れが著しい
- カビ・悪臭がひどい
これらの問題は買主が購入をためらう原因となるため、最低限の修繕が必要です。
(3) ハウスクリーニングで十分な理由
売却前は「ハウスクリーニング」で印象を改善する方が効果的です。
| 項目 | ハウスクリーニング | リフォーム |
|---|---|---|
| 費用 | 3~10万円 | 80~120万円 |
| 工期 | 1~2日 | 3~7日 |
| 効果 | 印象改善 | 物理的な改善 |
| 費用対効果 | 高い | 低い(売却価格に転嫁困難) |
ハウスクリーニングは「安く短期間で印象改善できる」点で、売却前の準備として最適です。
(4) リフォーム済み物件を希望する買主は約14%のみ
LIFULL HOME'Sの調査によると、リフォーム済み物件を希望する買主は約14%のみです。
買主の意向:
- 86%: リフォームなし・または自分でリフォームしたい
- 14%: リフォーム済み物件を希望
大多数の買主は「自分好みにリフォームしたい」と考えており、売却前の大規模リフォームは費用対効果が低いとされています。
6. まとめ:状況別のリフォーム判断基準
マンションの風呂リフォームでは、「費用相場の把握」「管理規約の確認」「売却前リフォームの是非」が判断の鍵です。
状況別のリフォーム判断基準:
- 築20年以上で設備が劣化: ユニットバス交換(80~120万円)を検討
- 予算を抑えたい: 浴槽のみ交換(10~50万円)または水回り4点セット(100~300万円)
- 売却前のリフォーム: 原則不要、水漏れ・故障がある場合のみ最低限の修繕
- マンション特有の制約: 管理組合への申請(着工2~3週間前)、管理規約の確認(水回り移動・配管交換・遮音等級)
次のアクション:
- 複数のリフォーム会社から相見積もりを取る(3社以上)
- 管理組合に管理規約を確認し、申請手順を把握する
- 工事内容・期間を決定し、管理組合へ申請書を提出
- 工期中の銭湯・シャワー利用を準備する
信頼できるリフォーム会社や管理組合に相談しながら、無理のない計画を立てましょう。
