土地の値段を調べる必要がある理由と複数の価格指標の存在
土地購入・売却を検討する際、または相続で土地を取得した時、「適正な価格はいくらなのか」「公示地価と実勢価格の違いは何か」「どこで調べればよいのか」と悩む方は少なくありません。
この記事では、土地価格の5つの指標(公示地価、実勢価格、相続税路線価、固定資産税評価額、基準地価)の違い、それぞれの調べ方、実勢価格の算出方法、相場の見極め方を解説します。
土地購入・売却検討者や相続で土地を取得した方にとって、適正価格を理解し、最適な判断ができるようになります。
この記事のポイント
- 土地の値段は「一物五価」と呼ばれる5つの指標(公示地価、実勢価格、相続税路線価、固定資産税評価額、基準地価)で表される
- 公示地価は実勢価格の約90%、相続税路線価は約80%、固定資産税評価額は約70%に設定されている
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2024年4月に名称変更)で公示地価・実勢価格を無料で確認可能
- 路線価から実勢価格を推定する方法:路線価 ÷ 0.8 × 1.1 で概算値を算出
- 最終的な価格判断は専門家(宅建士、不動産鑑定士等)への相談を推奨
一物五価とは?土地価格の5つの指標の違いと関係性
(1) 公示地価:国土交通省が毎年1月1日時点で調査(実勢価格の約90%)
大和ハウスの解説によると、**公示地価(こうじちか)**は、国土交通省が毎年1月1日時点の標準的な土地について調査し、3月に公表する土地価格の指標です。
公示地価は実勢価格(実際の取引価格)の約**90%**に設定されています。
(2) 基準地価:都道府県が毎年7月1日時点で調査
**基準地価(きじゅんちか)**は、都道府県が毎年7月1日時点で調査し、9月下旬に公表する土地価格の指標です(正式名称は「都道府県基準地標準価格」)。
公示地価と基準地価は調査主体と調査時期が異なりますが、いずれも指標として活用されます。
(3) 実勢価格:実際の取引価格(需要と供給で決定)
**実勢価格(じっせいかかく)**は、実際に土地が売買された際に取引された価格です。
売主と買主の需要と供給で決まるため、公示地価より高い・安い場合があります。
(4) 相続税路線価:相続税・贈与税の計算用(公示地価の約80%)
**相続税路線価(そうぞくぜいろせんか)は、相続税・贈与税の計算に利用される価格で、公示地価の約80%**に設定されています。
(5) 固定資産税評価額:固定資産税算出用(公示地価の約70%)
**固定資産税評価額(こていしさんぜいひょうかがく)は、市区町村が固定資産税を算出するために不動産を評価した価格で、公示地価の約70%**に設定されています。
| 指標 | 調査主体 | 調査時点 | 公示地価との関係 | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| 公示地価 | 国土交通省 | 毎年1月1日 | 100%(基準) | 土地取引の指標 |
| 基準地価 | 都道府県 | 毎年7月1日 | ほぼ同等 | 土地取引の指標 |
| 実勢価格 | - | - | 約110%(公示地価より高い) | 実際の売買価格 |
| 相続税路線価 | 国税庁 | 毎年1月1日 | 約80% | 相続税・贈与税計算 |
| 固定資産税評価額 | 市区町村 | 3年ごと | 約70% | 固定資産税計算 |
公示地価・基準地価の調べ方と活用法
(1) 国土交通省「不動産情報ライブラリ」の使い方(2024年4月に名称変更)
トーマ不動産の解説によると、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」(2024年4月に「土地総合情報システム」から名称変更)で、公示地価・基準地価・実勢価格を無料で確認できます。
(2) 全国地価マップで4種類の価格を一括閲覧
全国地価マップでは、固定資産税路線価・相続税路線価・公示地価・基準地価の4種類の公的土地評価情報を一括で閲覧できます。
(3) 公示地価から実勢価格を概算する方法(公示地価 × 1.1)
公示地価は実勢価格の約90%に設定されているため、以下の式で実勢価格の概算値を算出できます。
実勢価格の概算 = 公示地価 × 土地面積 × 1.1
ただし、あくまで目安であり、実際の価格は立地・形状・市場動向等により変動します。
実勢価格(実際の取引価格)の調べ方と相場の見極め方
(1) 不動産情報ライブラリで過去の取引価格を確認
不動産情報ライブラリでは、過去の実際の取引価格(実勢価格)を確認できます。
地域・時期を指定して、近隣の取引事例を参考にしてください。
(2) SUUMO等の不動産ポータルサイトで相場を把握
SUUMO等の不動産ポータルサイトで、都道府県別の土地価格相場と坪単価を確認できます。
(3) 土地価格を決める5つの要因:立地、形状、用途地域、建ぺい率・容積率、市場動向
HOME4Uの解説によると、土地価格を決める主な要因は以下の通りです。
- 立地:エリア、駅距離、交通利便性
- 形状:向き、広さ、接道幅
- 用途地域:住居系・商業系・工業系等の指定
- 建ぺい率・容積率:建築可能な建物の規模
- 市場動向:需要と供給のバランス
(4) 2024年の土地価格動向:全国平均・東京23区・多摩地区
2024年第1四半期の全国平均土地価格は98,655円/㎡(約32.6万円/坪)で、前年比5.53%減です。
ただし、Cleverly Homeの調査によると、東京23区は約230万円/坪、多摩地区は約75万円/坪と、地域により大きく異なります。
中央区・渋谷区は約490万円/坪で最高値です。
相続税路線価・固定資産税評価額の調べ方と逆算による実勢価格推定
(1) 国税庁「路線価図・評価倍率表」の使い方
相続税路線価は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認できます。
(2) 全国地価マップで固定資産税路線価を確認
全国地価マップで、固定資産税路線価を確認できます。
(3) 路線価から公示地価を逆算する方法(路線価 ÷ 0.8)
相続税路線価は公示地価の約80%に設定されているため、以下の式で公示地価を逆算できます。
公示地価の推定 = 相続税路線価 ÷ 0.8
(4) 公示地価から実勢価格を推定(公示地価 × 1.1)
公示地価を推定できたら、さらに × 1.1 で実勢価格の概算値を得られます。
実勢価格の概算 = (相続税路線価 ÷ 0.8)× 1.1
ただし、あくまで目安であり、最終判断は専門家(宅建士、不動産鑑定士等)に相談してください。
まとめ:土地の値段を正しく理解し、専門家と連携して最適な判断を
土地の値段は「一物五価」と呼ばれる5つの指標(公示地価、実勢価格、相続税路線価、固定資産税評価額、基準地価)で表されます。
公示地価は実勢価格の約90%、相続税路線価は約80%、固定資産税評価額は約70%に設定されています。
国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2024年4月に名称変更)で公示地価・実勢価格を無料で確認でき、全国地価マップで4種類の価格を一括閲覧できます。
路線価から実勢価格を推定する方法は、路線価 ÷ 0.8 × 1.1 で概算値を算出できますが、あくまで目安です。
土地の値段は地域・時期・個別条件により大きく異なるため、最新の市場動向を確認し、専門家(宅建士、不動産鑑定士等)への相談を推奨します。
