「成仏不動産」とは何か?事故物件・訳あり物件の基礎知識
不動産売買や賃貸を検討する際、「成仏不動産」という言葉を目にすることがあります。この言葉は、事故物件や訳あり物件を扱う不動産サービスを指す俗語です。
この記事では、成仏不動産の意味、事故物件の定義と告知義務、相場、調べ方、売却・購入時の注意点について解説します。2021年に国土交通省が公表したガイドラインを元に、正確な情報を提供します。
この記事のポイント
- 「成仏不動産」は事故物件を扱う不動産サービスの俗語、正式には「心理的瑕疵物件」「事故物件」
- 2021年国土交通省ガイドラインにより、賃貸は約3年間、売買は期限なしで告知義務が発生
- 事故物件の相場は死因により異なり、自然死10〜20%減、自殺20〜30%減、他殺30〜50%減が目安
- 「大島てる」などの事故物件情報サイトで事前に調査可能だが、不動産業者への確認も必須
(1) 「成仏不動産」という俗語の意味
「成仏不動産」とは、事故物件や訳あり物件を専門に扱う不動産サービスを指す俗語です。亡くなられた方が成仏できるように、という意味合いを込めてこの名称が使われています。
(2) 正式には「心理的瑕疵物件」「事故物件」
不動産業界では、自殺・他殺・孤独死などが発生し、心理的な抵抗感を生じさせる物件を「心理的瑕疵物件」または「事故物件」と呼びます。物理的な欠陥はないものの、心理的な抵抗感が購入や賃貸の判断に影響するため、告知義務が発生します。
(3) 事故物件専門の「成仏不動産」サービス
成仏不動産は、2019年4月に開設された事故物件専門サイトです。7段階のレベル分けで詳細情報を開示し(墓地見える物件〜殺人事件)、特殊清掃・遺品整理・ご供養まで総合サポートを提供しています。
事故物件の定義と告知義務(2021年国土交通省ガイドライン)
事故物件の定義と告知義務について、2021年に国土交通省が公表したガイドラインを元に解説します。
(1) 事故物件の定義(自殺・他殺・孤独死等)
事故物件とは、以下のような死因が発生した物件を指します。
| 死因 | 告知義務 |
|---|---|
| 自殺 | あり |
| 他殺 | あり |
| 孤独死(発見が遅れた場合) | あり(特殊清掃が必要な場合) |
| 自然死 | なし |
| 日常的な事故(風呂場での転倒等) | なし |
心理的瑕疵があるかどうかは、個別の状況により異なります。
(2) 告知義務の期間(賃貸は約3年、売買は期限なし)
ALSOKによると、2021年10月に国土交通省が公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」により、告知義務の基準が明確化されました。
- 賃貸: 約3年間の告知義務(3年経過後は告知不要)
- 売買: 期限なしで永久に告知義務
ただし、自然死や日常的な事故は告知不要です。
(3) 告知不要なケース(自然死・日常的な事故)
以下のケースは告知義務がありません。
- 自然死: 病気や老衰による死亡
- 日常的な事故: 風呂場での転倒、階段からの転落等
- 孤独死(早期発見): 発見が遅れず、特殊清掃が不要な場合
これらは誰にでも起こりうる日常的な出来事であるため、告知義務の対象外です。
事故物件の相場と価格への影響
事故物件の売却価格は、死因や発見までの期間によって大きく異なります。
(1) 死因別の価格下落率(自然死10〜20%、自殺20〜30%、他殺30〜50%)
訳あり物件買取プロによると、事故物件の売却相場は通常の50〜90%程度です。具体的には以下の通りです。
| 死因 | 価格下落率 |
|---|---|
| 自然死・孤独死(早期発見) | 10〜20%減 |
| 自殺 | 20〜30%減 |
| 他殺 | 30〜50%減 |
死因の心理的抵抗感が強いほど、価格下落率が大きくなります。
(2) 発見までの期間による影響
孤独死の場合、発見までの期間が長いほど価格下落率が大きくなります。発見が遅れた場合、特殊清掃が必要となり、心理的瑕疵が強くなるためです。
特殊清掃とは、遺体の発見が遅れた場合など、通常の清掃では対応できない状況の清掃を指します。特殊清掃が必要な場合、3年間の告知義務が発生します。
(3) 実際の価格を調べる方法
事故物件の実際の価格を調べる方法は以下の通りです。
- 成仏不動産等の専門サイト: 事故物件の取引価格を公開している
- 不動産一括査定サイト: 複数社の査定額を比較できる
- 事故物件買取専門業者: 直接査定を依頼できる
事故物件の調べ方(大島てる等のサイト活用)
事故物件を事前に調べる方法について解説します。
(1) 「大島てる」の使い方と注意点
大島てるは、事故物件情報を公開する日本最大級のウェブサイトです。殺人・自殺・火災等の事故情報を早期更新し、地図上で確認できます。
注意点:
- 全ての事故物件が掲載されているわけではない
- 情報の正確性は投稿者に依存する
- 必ず不動産業者への確認も行う
(2) 事故物件専門サイトの活用
成仏不動産等の事故物件専門サイトでは、詳細な情報開示が行われています。7段階のレベル分けにより、事故の内容や心理的瑕疵の程度を確認できます。
(3) 物件調査の重要性
事故物件サイトの情報だけで判断せず、以下の方法も併せて活用してください。
- 不動産業者への確認: 宅地建物取引業法により、告知義務がある
- 近隣住民への聞き込み: 地域の情報を収集
- 物件の履歴調査: 過去の取引履歴を確認
事故物件の売却・購入時の注意点
事故物件を売却・購入する際の注意点について解説します。
(1) 告知義務違反のリスク(契約解除・損害賠償請求)
告知義務違反は、契約後に発覚した場合、以下のリスクがあります。
- 契約解除: 買主・借主から契約解除を求められる
- 損害賠償請求: 価格下落分や引っ越し費用等の賠償請求
- 刑事罰: 詐欺罪に問われる可能性
賃貸は3年経過後は告知不要ですが、売買は永久に告知義務が残ります。
(2) 購入時の心理的負担の考慮
事故物件の購入を検討する際は、価格の安さだけでなく、心理的負担も十分に考慮してください。
- 長期間住む場合: 心理的負担が続く可能性
- 賃貸や売却時: 将来的に告知義務が発生するため、売却しにくい
- 家族の意見: 家族全員が納得しているか確認
(3) 専門業者の活用(特殊清掃・遺品整理・ご供養)
事故物件の売却・購入時には、専門業者の活用が推奨されます。
| サービス | 内容 |
|---|---|
| 特殊清掃 | 遺体発見が遅れた場合の清掃 |
| 遺品整理 | 故人の遺品を整理・処分 |
| ご供養 | 僧侶によるお清め・供養 |
成仏不動産等の専門サイトでは、これらのサービスを総合的に提供しています。
まとめ:事故物件取引で知っておくべきこと
「成仏不動産」は事故物件を扱う不動産サービスの俗語で、正式には「心理的瑕疵物件」「事故物件」と呼ばれます。2021年国土交通省ガイドラインにより、賃貸は約3年間、売買は期限なしで告知義務が発生します。
事故物件の相場は死因により異なり、自然死10〜20%減、自殺20〜30%減、他殺30〜50%減が目安です。「大島てる」などの事故物件情報サイトで事前に調査可能ですが、全ての事故物件が掲載されているわけではないため、不動産業者への確認も必須です。
告知義務違反は契約解除や損害賠償請求のリスクがあります。信頼できる不動産会社や宅地建物取引士に相談しながら、慎重に判断してください。
