インターネット不動産販売が普及した背景と現状
インターネットで不動産取引が完結できる時代が到来しています。2022年5月18日施行の宅地建物取引業法(宅建業法)改正により、不動産取引の全手続きをオンラインで完結することが可能になりました。
2023年時点の統計データでは、売買契約における電子契約率が94.2%に到達し、オンライン相談率も86%を超えるなど、ニューノーマルな取引スタイルが定着しています。
この記事のポイント
- 2022年5月の法改正により、不動産取引の全手続きをオンラインで完結可能
- 2023年時点で売買契約の94.2%が電子契約を利用
- IT重説(オンライン重要事項説明)により、遠隔地からの契約手続きが可能
- 時間・コスト削減のメリットがある一方で、現地確認やセキュリティ対策が重要
- 安全な取引のために宅建業者の確認や専門家への相談が必要
2022年5月18日施行の宅建業法改正
2021年のデジタル改革関連法により宅建業法が改正され、2022年5月18日から電子契約が全面的に可能になりました。これにより、従来は対面での押印・郵送が必要だった契約書類が、電子データで締結できるようになっています。
国土交通省は「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」ガイドラインを公表し、IT重説(オンライン重要事項説明)の標準化を推進しています。
2023年時点の電子契約率94.2%
株式会社GA technologiesのRENOSY調査によると、2023年時点で不動産投資における売買契約の94.2%がオンライン化されています。オンライン相談率も86%超に達し、不動産取引におけるオンライン化は急速に進展しています。
ニューノーマルな取引スタイルの定着
COVID-19の影響もあり、非対面での不動産取引がニューノーマル(新しい標準)として定着しました。忙しいビジネスパーソンや遠隔地に住む方にとって、時間・場所の制約なく不動産取引が進められることは大きなメリットです。
インターネット不動産取引の仕組み(IT重説・電子契約)
インターネット不動産取引は、IT重説(オンライン重要事項説明)と電子契約を組み合わせた仕組みで成り立っています。
IT重説(オンライン重要事項説明)の実施方法
IT重説とは、テレビ会議等のITを活用して行う重要事項説明のことです。2021年3月30日から売買取引でも本格運用が開始されました。
IT重説の実施要件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施手段 | ビデオ通話(Zoom、Teams、Google Meet等) |
| 必要な環境 | 安定したネット環境、ビデオ通話可能な端末 |
| 事前準備 | 重要事項説明書のPDFを事前送付 |
| 相手方の承諾 | 必須(電子契約を行う際も同様) |
| 宅建士の義務 | 宅地建物取引士証の提示が必要 |
(出典: 国土交通省)
IT重説では、宅建士がビデオ通話を通じて宅地建物取引士証を提示し、重要事項説明を行います。相手方は事前に送付されたPDFを見ながら説明を受けることができます。
電子契約が可能な書類
2022年5月18日の法改正により、以下の不動産取引の主要書類が電子化可能になりました。
- 媒介契約書: 不動産会社に売却・購入を依頼する契約書(専属専任・専任・一般の3種類)
- 重要事項説明書: 宅建士が買主・借主に説明する重要事項を記載した書類
- 賃貸借契約書: 賃貸物件の契約書
- 売買契約書: 不動産売買の契約書
これらの書類は、電子署名により作成者を証明し、改ざん防止を図ることができます。
オンライン取引の流れ
インターネット不動産取引の一般的な流れは以下の通りです。
- オンライン相談: スマホ・PC・タブレットでビデオ相談
- オンライン内覧: ビデオ通話やVR技術を活用した物件案内
- IT重説: ビデオ通話で重要事項説明を受ける
- 電子契約: 電子データで契約書を締結(電子署名を利用)
- 決済・引渡: 銀行振込等で決済、鍵の引渡
オンライン内覧からIT重説、電子契約まで、すべてスマホ・PC・タブレットで完結できます。
オンライン取引のメリット(時間・コスト削減・情報透明性)
インターネット不動産取引には、以下のようなメリットがあります。
時間・場所の制約がない
遠隔地からでも契約手続きが可能です。転勤や引越しで物件所在地に行けない場合でも、ビデオ通話で重要事項説明を受け、電子契約で契約書を締結できます。
家族全員が説明に参加しやすい
IT重説では、家族全員がビデオ通話に参加できます。対面の場合は全員が不動産会社に集まる必要がありますが、オンラインなら自宅やオフィスから参加可能です。
仲介手数料無料または半額の業者が存在
インターネット経由でコストを削減している不動産会社の中には、仲介手数料を無料または半額にしているところもあります。ただし、サービス内容やサポート体制は業者により異なるため、複数社を比較することが重要です。
紙の書類への押印・郵送が不要
電子契約により、紙の書類への押印・郵送が不要になります。契約書を郵送でやり取りする場合、数日から1週間程度かかりますが、電子契約なら数時間で完結できます。
デメリットと注意点(現地確認・セキュリティ・業者選び)
メリットがある一方で、以下のようなデメリットや注意点もあります。
物件の細部確認が難しい
オンライン内覧では、物件の細部確認が難しい場合があります。特に中古物件の場合、壁のひび割れ、水回りの状態、騒音・臭いなどは、現地に行かないと分かりません。
推奨: オンライン内覧で候補を絞った後、必ず現地確認を行うことをおすすめします。
安定したネット環境とビデオ通話可能な端末が必須
IT重説を受けるには、安定したネット環境とビデオ通話可能な端末が必要です。ネット回線が不安定だと、重要事項説明が中断される可能性があります。
相手方の承諾が必要
電子契約を行う際は、相手方(売主または買主)の承諾が必要です。相手方が電子契約に対応できない場合、従来通りの紙の契約書を用いることになります。
セキュリティ対策の確認
電子契約では、電子署名や暗号化によりセキュリティが担保されていますが、利用する電子契約サービスのセキュリティ対策を確認することが重要です。
安全な取引のためのチェックポイントと必要な準備
インターネット不動産取引を安全に進めるために、以下のチェックポイントを確認してください。
宅建業者の確認
取引する不動産会社が宅地建物取引業の免許を持っているか、免許番号を確認してください。また、過去に行政処分を受けていないかも確認することをおすすめします。
確認方法:
- 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイトで行政処分歴を検索
- 宅建業者の免許番号を確認(免許番号は不動産会社の公式サイトや広告に記載)
国土交通省の公式ガイドラインの参照
国土交通省は「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」ガイドラインを公表しています。IT重説や電子契約を行う際は、必ずこのガイドラインを参照してください。
専門家(宅建士・弁護士)への相談
不動産取引は高額な取引であり、契約内容は個別に異なります。不安な点があれば、宅地建物取引士や弁護士に相談することをおすすめします。
必要な環境の準備
IT重説を受ける前に、以下の環境を準備してください。
| 項目 | 推奨環境 |
|---|---|
| ネット環境 | 光回線、安定した無線LAN |
| 端末 | PC、タブレット、スマホ(カメラ・マイク付き) |
| ビデオ通話ソフト | Zoom、Teams、Google Meet等 |
| 事前準備 | 重要事項説明書PDFのダウンロード |
まとめ:インターネット不動産取引の活用法と次のアクション
インターネット不動産取引は、2022年5月の法改正により全手続きをオンラインで完結できるようになりました。2023年時点で売買契約の94.2%が電子契約を利用しており、ニューノーマルな取引スタイルとして定着しています。
時間・場所の制約がなく、紙の書類への押印・郵送が不要になるなど、多くのメリットがあります。一方で、物件の現地確認やセキュリティ対策、宅建業者の確認は欠かせません。
信頼できる宅地建物取引士や不動産会社に相談しながら、安全かつ効率的な不動産取引を進めましょう。
