住宅・土地統計調査とは?調査の目的と歴史
不動産の売却や購入を検討する際、「物件の相場をどう把握すればよいのか」「エリアの住宅状況はどうなっているのか」と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
この記事では、総務省統計局が5年ごとに実施する「住宅・土地統計調査」の概要、最新の調査結果のポイント、不動産取引や住宅政策での活用方法を解説します。公的統計データの読み解き方を理解することで、物件相場の把握やエリア選定に役立つ情報を得られるようになります。
この記事のポイント
- 住宅・土地統計調査は5年ごとに実施される国の基幹統計調査で、1948年から継続して実施されている
- 令和5年(2023年)調査は全国約340万世帯を対象とした標本調査で、政府が実施する標本調査の中で最大規模
- 空き家率、住宅ストック、土地所有状況など不動産市場の実態を把握できる公的データを提供
- e-Stat(政府統計の総合窓口)や総務省統計局のウェブサイトから無料でデータをダウンロード・活用できる
- 調査結果は段階的に公表され、2024年9月に基本集計、2025年3月に土地集計が公表予定
国の基幹統計調査(統計法に基づく)
住宅・土地統計調査は、統計法に基づく「基幹統計調査」に指定されています。基幹統計とは、国の行政機関が作成する特に重要な統計であり、国民経済の実態を把握するための基礎データとして活用されます。
調査の目的(住宅・土地の保有状況の把握)
調査の目的は、日本の住宅や土地の保有状況、世帯の居住状況を把握し、住宅政策の基礎資料を提供することです。具体的には、以下のデータを収集します。
- 住宅の種類(一戸建て、共同住宅等)
- 建て方・構造・床面積
- 空き家の状況
- 土地の所有状況
- 世帯の構成・年齢
調査の歴史(1948年〜、令和5年調査は16回目)
住宅・土地統計調査は、1948年(昭和23年)に「住宅統計調査」として開始されました。1963年(昭和38年)から「住宅統計調査」として5年ごとに実施され、1998年(平成10年)から「住宅・土地統計調査」に名称変更されました。令和5年調査は16回目の実施となります。
5年ごとの実施サイクル
調査は5年ごとに実施されます。最新の調査基準日は令和5年(2023年)10月1日で、次回調査は2028年に実施される予定です。5年ごとの実施のため、最新の市場動向をリアルタイムで反映するものではありませんが、長期的なトレンドを把握する上で重要なデータとなります。
令和5年(2023年)調査の概要と規模
令和5年調査は、全国約340万世帯を対象とした大規模な標本調査です。
調査基準日:令和5年10月1日
令和5年調査の基準日は、2023年10月1日です。この時点での住宅・土地の状況を調査しています。
調査対象:全国約340万世帯(政府標本調査の最大規模)
調査対象は全国約340万世帯で、政府が実施する標本調査の中で最大規模です。東京都では約29万世帯が対象となりました。
標本調査の仕組み(全数調査ではない)
住宅・土地統計調査は「標本調査」であり、全数調査ではありません。全国の一部の世帯を抽出して調査し、統計的に推計する方法です。このため、調査結果は推計値であり、実際の数値と若干の誤差が生じる可能性があります。
令和5年調査の特徴(空き家・高齢者住宅の項目強化)
令和5年調査では、以下の項目が強化されました。
- 空き家対策の重要性: 2024年の空き家特措法改正に対応し、空き家の所有状況をより正確に把握する設計
- 高齢者の住まい方: 超高齢社会における高齢者の住まい方をより正確に把握するため、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の調査項目が追加
これらの強化により、空き家対策や高齢者住宅政策の基礎資料としての重要性が高まっています。
調査結果から分かること(住宅ストック・空き家率・土地所有状況)
住宅・土地統計調査からは、さまざまなデータを得ることができます。
住宅の種類・建て方・構造・床面積
調査では、以下の住宅データが収集されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住宅の種類 | 一戸建て、共同住宅(マンション・アパート)、長屋等 |
| 建て方 | 木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造等 |
| 構造 | 耐震性、断熱性等に関わる構造 |
| 床面積 | 住宅の広さ(㎡) |
空き家の状況(賃貸用・売却用・二次的住宅・その他)
空き家は以下のように分類されます。
- 賃貸用: 賃貸を目的とする空き家
- 売却用: 売却を目的とする空き家
- 二次的住宅: 別荘やセカンドハウス
- その他の住宅: 上記以外の空き家(相続後放置された物件等)
これらのデータから、地域ごとの空き家率や空き家の実態を把握できます。
土地の所有状況
土地の所有状況(自己所有、借地等)や土地の取得時期、面積などのデータも収集されます。
有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(令和5年調査で追加)
令和5年調査では、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の調査項目が追加されました。超高齢社会における高齢者の住まい方を正確に把握するための重要なデータです。
空き家率と住宅ストックの最新データ(2024年9月公表)
2024年9月25日に、総務省から「住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)」が公表されました。この集計結果から、空き家率や住宅ストックの最新データが明らかになっています。
調査データの活用方法(不動産取引・住宅政策)
住宅・土地統計調査のデータは、さまざまな場面で活用できます。
物件相場の把握(エリア別の住宅状況)
調査データから、エリアごとの住宅の平均床面積、築年数、構造などを把握できます。これらのデータを参考にすることで、物件相場の妥当性を判断する材料となります。
エリア選定の判断材料(空き家率・住宅ストック)
空き家率が高いエリアは、人口減少や住宅需要の低下が懸念されます。逆に、空き家率が低く住宅ストックが適切に管理されているエリアは、住環境が良好である可能性があります。
住宅政策の基礎資料(空き家対策・高齢者住宅政策)
国や自治体は、住宅・土地統計調査のデータを基に、空き家対策や高齢者住宅政策を立案します。2024年の空き家特措法改正も、調査データを基にした政策の一環です。
市場トレンドの読み解き方
過去の調査データと比較することで、住宅市場の長期的なトレンドを読み解くことができます。
- 新築住宅の着工数の推移
- 空き家率の変化
- 持ち家率の推移
- 高齢者の住まい方の変化
これらのトレンドを理解することで、将来の不動産市場の見通しを立てる材料となります。
データの入手先と公表スケジュール
住宅・土地統計調査のデータは、無料で入手できます。
e-Stat(政府統計の総合窓口)からダウンロード
e-Statは、日本の統計データを一元的に提供するポータルサイトです。住宅・土地統計調査のデータもダウンロード可能で、過去の調査データとの比較や時系列データの分析ができます。
総務省統計局のウェブサイト
総務省統計局の住宅・土地統計調査ページからも、最新の調査結果や過去データにアクセスできます。
公表スケジュール(2024年4月速報→2024年9月基本集計→2025年1月住宅構造集計→2025年3月土地集計→2025年9月主要統計表)
調査結果は段階的に公表されます。
| 公表時期 | 内容 |
|---|---|
| 2024年4月 | 速報集計(住宅数の概数等) |
| 2024年9月 | 基本集計(住宅及び世帯に関する詳細な集計) |
| 2025年1月 | 住宅構造集計(構造や設備に関する集計) |
| 2025年3月 | 土地集計(土地の所有状況に関する集計) |
| 2025年9月 | 主要統計表(過去の調査との比較等) |
詳細な分析結果を得るには時間がかかるため、最新の公表状況は総務省統計局のウェブサイトで確認しましょう。
次回調査予定(2028年予定)
次回調査は2028年に実施される予定です。5年ごとの調査サイクルにより、長期的な住宅市場のトレンドを把握することができます。
まとめ:住宅・土地統計調査を賢く活用する
住宅・土地統計調査は、5年ごとに実施される国の基幹統計調査で、不動産市場や住宅政策の基礎データとして活用できます。令和5年(2023年)調査は全国約340万世帯を対象とした標本調査で、政府が実施する標本調査の中で最大規模です。
調査結果からは、空き家率、住宅ストック、土地所有状況など、不動産取引やエリア選定に役立つデータを得ることができます。e-Stat(政府統計の総合窓口)や総務省統計局のウェブサイトから無料でデータをダウンロード・活用できるため、物件相場の把握や市場トレンドの読み解きに活用しましょう。
調査は5年ごとのため、最新の市場動向をリアルタイムで反映するものではありません。また、標本調査のため統計的な推計値である点に注意が必要です。データの解釈や活用には専門知識が必要な場合があるため、専門家(統計学者、不動産研究者、不動産業者等)への相談を検討しながら、公的統計データを賢く活用しましょう。
