中国不動産バブルとは?崩壊の経緯と日本への影響を解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/20

中国不動産バブル崩壊とは?注目される理由

中国の不動産バブル崩壊は、2021年12月の中国恒大集団のデフォルト(債務不履行)を契機に表面化し、2025年時点で4年目に突入しています。世界経済への影響が懸念されており、特に日本との貿易関係から注目されています。

2021年12月の中国恒大集団デフォルトが契機

中国恒大集団は、2021年12月に負債約48兆円でデフォルト(債務不履行)と判定されました。2025年8月には香港証券取引所から上場廃止となり、約50兆円の債務問題が完全に明るみに出ました(三菱UFJ銀行)。

世界経済への影響と日本との関連性

中国は日本にとって米国に次ぐ貿易相手国であり、中国経済の低迷は日本経済にも大きな影響を及ぼす可能性があります。日本の中国向け輸出は全体の26%を占めており、建築資材などの売れ行き悪化が懸念されています(リビンマッチ)。

中国不動産バブルの背景と崩壊の経緯

中国の不動産バブル崩壊の背景には、政府の融資規制、ゼロコロナ政策、そして習近平主席の政策方針があります。

三道紅線(三本の赤線)による融資規制

中国政府は2020年8月に「三道紅線(三本の赤線)」という規制を導入しました。これは、財政状況に不安のある不動産開発企業への銀行融資を制限する措置で、バブル抑制を目的としています。

三道紅線の内容:

  • 負債比率が70%以下
  • 純負債比率が100%以下
  • 現金短期債務比率が1倍以上

この規制により、多くの不動産企業が資金繰りに窮し、経営悪化が加速しました。

ゼロコロナ政策と企業倒産・失業率上昇

2020〜2022年に実施された厳格な新型コロナウイルス感染対策(ゼロコロナ政策)により、企業倒産や若年失業率の上昇を招き、不動産市場にも悪影響を与えました。

「住むためのもの、投機の対象でない」政策方針

習近平主席は「家は住むためのものであり、投機の対象ではない」という方針を打ち出しました。この方針のもと、政府は不動産投機を抑制し、住宅価格の安定化を図りましたが、結果的に市場の急激な冷え込みを招きました。

バブル崩壊の現状と規模

2025年時点で、中国の不動産バブル崩壊は深刻な状況にあります。住宅在庫は膨大で、不動産会社の多くが赤字決算を予想しています。

住宅在庫44億平米・住宅着工件数60%超減少

2024年の中国の住宅在庫は約44億平米(約4,400万戸相当)に上り、住宅着工件数はパンデミック前の水準と比較して60%超減少しています(みずほリサーチ&テクノロジーズ)。

2025年の不動産会社業績:大手41社が赤字見通し

2025年上半期には、大手不動産会社である万科企業が2,000億円超の純損失を計上する見通しであり、大手65社のうち41社が赤字決算を予想しています(東洋経済オンライン)。

住宅価格の推移:4年間で20%下落、2027年まで下落予測

ゴールドマン・サックスは、中国の住宅価格が過去4年間で20%下落し、2027年まで底を打たずにさらに10%下落する可能性があると予測しています(2025年時点)。

地域差(一線都市と三線都市の状況)

不動産市場の状況は地域によって大きく異なります。

都市分類 状況 代表都市
一線都市 2024年後半に底打ち上昇の兆し 北京、上海、広州、深圳
二線都市 下落継続、一部で回復の兆し 省都級都市
三線都市 下落継続、回復の兆しなし 規模の小さい都市

2025年4月時点で、主要70都市のうち45都市で新築住宅価格指数が前月比下落、64都市で中古住宅価格が下落しています。

日本への影響と市場への波及効果

中国の不動産バブル崩壊は、日本の貿易、投資、不動産市場に影響を及ぼす可能性があります。

貿易面での影響:中国向け輸出26%、建築資材の減少懸念

日本の中国向け輸出は全体の26%を占めており、中国経済の低迷により建築資材の売れ行き悪化が懸念されています。特に鉄鋼、セメント、木材などの建築資材は中国向け輸出の大きな割合を占めるため、影響を受ける可能性があります(東急リバブル)。

投資資金の流入可能性と日本不動産市場への影響

一方で、中国からの投資資金が日本の不動産市場に流入する可能性もあります。中国の不動産市場が不安定な状況では、投資家が安全資産として日本の不動産を購入する動きが見られる場合があります。

中国人投資家の動向変化

中国の住宅価格下落により、日本物件の割安感が減少する可能性があります。一方で、中国人投資家による日本物件購入の減少も予想されます。

中国政府の対策と今後の見通し

中国政府は、不動産市場を支えるためにさまざまな対策を実施していますが、効果は限定的です。

ホワイトリスト制度と資金繰り支援

2024年1月に導入されたホワイトリスト制度は、財政状況が比較的良好な不動産ディベロッパーへの資金繰り支援策です。しかし、市況好転には至っていません(野村資本市場研究所)。

地方政府による住宅在庫買い取り策

2024年5月には、地方政府による住宅在庫の買い取り策が実施されました。在庫削減を目的としていますが、効果は限定的です。

値下げ禁止の放棄と市場化への転換

地方政府が新築住宅の販売価格統制(値下げ禁止)を放棄し始めており、「市場化」が進むことでさらなる価格下落の可能性があります(NEC)。

ゴールドマン・サックスの予測:2027年まで下落継続

ゴールドマン・サックスは、中国の住宅価格が2027年まで下落を続けると予測しています。全体的な回復時期は不透明です。

まとめ:市場動向の注視と情報収集の重要性

中国の不動産バブル崩壊は、2021年12月の中国恒大集団のデフォルトを契機に表面化し、2025年時点で4年目に突入しています。住宅在庫は約44億平米と膨大で、大手不動産会社の多くが赤字決算を予想しており、住宅価格は過去4年間で20%下落しています。

日本への影響として、貿易面では中国向け輸出(全体の26%)の減少による建築資材の売れ行き悪化が懸念される一方、中国からの投資資金が日本の不動産市場に流入する可能性もあります。相反する要素があり、実際の影響は状況次第です。

中国政府は、ホワイトリスト制度や地方政府による住宅在庫買い取り策などの支援策を実施していますが、効果は限定的です。ゴールドマン・サックスは2027年まで価格下落が続くと予測しており、全体的な回復時期は不透明です。

中国の不動産市場は2025年時点でも底入れの兆しが不透明であり、地域差が大きい(一線都市は底打ち上昇の兆し、三線都市は下落継続)ため、最新情報の確認が重要です。専門家(不動産アナリスト、エコノミスト等)の意見を参考にしながら、市場動向を注視しましょう。

よくある質問

Q1中国の不動産バブルはいつ回復するのか?

A12024年後半に一部大都市(北京、上海など)で底打ち上昇の兆しが見られますが、地方都市では下落が継続しています。ゴールドマン・サックスは2027年まで価格下落が続くと予測しており、全体的な回復時期は不透明です。地域差が大きく、一線都市は回復の兆しがある一方、三線都市は依然として厳しい状況です。

Q2日本の不動産市場にはどのような影響があるか?

A2貿易面では、日本の中国向け輸出(全体の26%)の減少により建築資材の売れ行き悪化が懸念されます。一方で、中国からの投資資金が日本の不動産市場に流入する可能性もあります。中国の不動産市場が不安定な状況では、投資家が安全資産として日本の不動産を購入する動きが見られる場合があります。相反する要素があり、実際の影響は状況次第です。

Q3中国政府はどのような対策を取っているか?

A32024年1月にホワイトリスト制度を導入し、財政状況が比較的良好な不動産ディベロッパーへの資金繰り支援を行っています。また、2024年5月には地方政府による住宅在庫の買い取り策を実施しました。しかし、これらの支援策は市況好転には至っておらず、効果は限定的です。さらに、地方政府が新築住宅の販売価格統制(値下げ禁止)を放棄し始めており、市場化への転換が進んでいます。

Q4日本のバブル崩壊との違いは何か?

A4中国の不動産バブル崩壊は、規模が大きく住宅在庫が約44億平米と膨大である点、政府の価格統制(値下げ禁止)が失敗した点など、日本の1990年代のバブル崩壊と類似しながらも、より深刻な状況にあります。地方政府が値下げ禁止を放棄し始めている点も特徴的です。また、住宅価格が過去4年間で20%下落し、2027年までさらに下落が続くと予測されている点も異なります。

Q5中国恒大集団のデフォルトの影響は?

A5中国恒大集団は2021年12月に負債約48兆円でデフォルト(債務不履行)と判定され、2025年8月には香港証券取引所から上場廃止となりました。バブル崩壊の象徴的事例として、不動産市場全体の信用不安を引き起こしました。この事件をきっかけに、多くの不動産企業が資金繰りに窮し、市場全体の冷え込みが加速しました。

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Room Match編集部

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