賃貸不動産経営管理士とは|2021年に国家資格化された管理の専門資格
不動産業界で働いている方や、キャリアアップを検討している方の中には、「賃貸不動産経営管理士とはどのような資格か」「宅建士との違いは何か」と気になる方も多いでしょう。
この記事では、2021年に国家資格化された賃貸不動産経営管理士について、資格の概要、業務内容、試験の難易度、取得のメリットを賃貸不動産経営管理士協議会等の公式情報を元に解説します。
この記事のポイント
- 賃貸不動産経営管理士は2021年に国家資格化された賃貸住宅管理の専門資格
- 賃貸住宅管理業法で業務管理者の要件の一つに位置づけ
- 業務内容は入居者募集から退去時の対応まで、賃貸管理全般をカバー
- 2024年度の合格率は24.1%で、難化傾向が続いている
- 宅建士とのダブルライセンスで賃貸不動産業務を包括的にカバー可能
賃貸不動産経営管理士の業務内容|入居から退去までの管理業務
入居段階の業務|募集・審査・契約手続き
賃貸不動産経営管理士の業務は、入居者の募集段階から始まります。具体的には、物件の広告作成、内覧対応、入居希望者の審査、契約手続きなどを行います。
オーナー(貸主)に対しては、入居者募集の提案や、適切な賃料設定のアドバイスなどを行い、物件の空室対策をサポートします。
入居中の管理業務|賃料管理・トラブル対応・定期点検
入居中は、賃料の集金・管理、入居者からのクレームやトラブル対応、建物の定期点検・清掃、オーナーへの管理状況報告などが主な業務です。
入居者の快適な生活を支援すると同時に、オーナーの資産の有効活用をサポートする両面の役割を担っています。
| 業務段階 | 主な業務内容 |
|---|---|
| 入居段階 | 入居者募集提案、内覧対応、入居審査、契約手続き |
| 入居中 | 賃料管理、クレーム・トラブル対応、定期点検・清掃、管理状況報告 |
| 退去時 | 立ち会い、原状回復費用算定、リフォーム提案 |
退去時の業務|立ち会い・原状回復費用算定
退去時には、退去立ち会い、原状回復費用の算定、リフォーム提案などを行います。特に原状回復費用を巡っては、入居者とオーナーの間でトラブルが発生しやすいため、国土交通省のガイドラインに基づいた適切な対応が求められます。
原状回復とは、賃貸物件の退去時に入居時の状態に戻すことを指します。費用負担の範囲は、通常使用による経年劣化と入居者の故意・過失による損傷で異なります。
試験概要と難易度|合格率の推移と必要な勉強時間
試験の概要|出題形式・試験日・受験料
賃貸不動産経営管理士試験は、年1回、11月の第3日曜日に実施されます。試験時間は120分、問題数は50問の四肢択一式です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験日 | 11月第3日曜日(2025年は11月16日) |
| 試験時間 | 120分 |
| 問題数 | 50問(四肢択一) |
| 受験料 | 12,000円 |
| 試験会場 | 全国38会場 |
| 合格発表 | 12月下旬 |
合格率の推移と難化傾向|24.1%に低下
賃貸不動産経営管理士試験は、2021年の国家資格化以降、難化傾向が続いています。2014年〜2019年の合格率は約50%でしたが、2024年度は24.1%まで低下し、過去最低を記録しました。
問題数が40問から50問に増加し、出題範囲も拡大したことが難化の要因とされています。合格点は年度ごとに変動しますが、70〜80%(34〜40点/50問)が目安とされています。
必要な勉強時間と5問免除講習の活用
賃貸不動産経営管理士試験の合格に必要な勉強時間は、100〜250時間が目安とされています。宅建士(300〜400時間)と比較すると短期間での取得が可能です。
5問免除講習を受講すると、試験50問中5問が免除されるため、合格の可能性を高められます。講習は試験申込前に受講する必要があるため、スケジュールに余裕を持って申し込むことをおすすめします。
宅建士との違い|業務範囲と資格の位置づけ
「入居前」の宅建士と「入居後」の賃貸不動産経営管理士
宅建士(宅地建物取引士)と賃貸不動産経営管理士は、業務範囲が異なります。
- 宅建士: 「入居前」の仲介業務が専門(重要事項説明、契約書面の記名押印等)
- 賃貸不動産経営管理士: 「入居後」の管理業務が専門(賃料管理、トラブル対応、退去手続き等)
宅建士は不動産の売買・賃貸の仲介時に必要な資格であり、独占業務(重要事項説明等)があります。一方、賃貸不動産経営管理士は管理業務に特化した資格です。
独占業務の有無と業務管理者の役割
賃貸不動産経営管理士には、宅建士のような独占業務はありません。ただし、2021年に施行された賃貸住宅管理業法により、賃貸住宅管理業者は営業所ごとに「業務管理者」を1名以上設置することが義務付けられています。
業務管理者になれるのは、賃貸不動産経営管理士または宅建士(一定の要件を満たす場合)です。この点で、賃貸不動産経営管理士は法的な位置づけを持つ資格となっています。
ダブルライセンスのメリット
宅建士と賃貸不動産経営管理士のダブルライセンスを取得すると、「入居前」と「入居後」の両方の業務をカバーできます。
| 資格 | 業務範囲 | 独占業務 | 合格率(2024年) |
|---|---|---|---|
| 宅建士 | 入居前(仲介) | あり | 17.2% |
| 賃貸不動産経営管理士 | 入居後(管理) | なし | 24.1% |
賃貸不動産業界でキャリアアップを目指す方は、両資格の取得を検討する価値があります。
資格取得のメリットとキャリアパス
賃貸管理業界での評価と転職・昇進への影響
賃貸不動産経営管理士の資格を取得することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 賃貸管理業務の専門家としての評価向上
- 管理会社への転職や昇進での優位性
- 業務管理者としての責任ある立場への登用
- 宅建士とのダブルライセンスによる業務範囲の拡大
不動産管理会社やオーナー対応を行う企業では、資格保有者を優遇する傾向があります。
独占業務がない点の留意事項
一方で、賃貸不動産経営管理士には宅建士のような独占業務がないため、資格だけで仕事が保証されるわけではありません。実務経験や他のスキルと組み合わせることで、資格の価値を高めることが重要です。
業務管理者になるルートとして宅建士ルートもあるため、どちらの資格を優先するかは、個人のキャリアプランに応じて検討することをおすすめします。
まとめ|賃貸不動産経営管理士の資格取得を検討する際のポイント
賃貸不動産経営管理士は、2021年に国家資格化された賃貸住宅管理の専門資格です。賃貸住宅管理業法で業務管理者の要件の一つに位置づけられ、入居者募集から退去対応まで、賃貸管理業務全般を担います。
2024年度の合格率は24.1%で、難化傾向が続いています。必要な勉強時間は100〜250時間が目安で、宅建士よりも短期間での取得が可能です。
宅建士との違いは「入居前」と「入居後」という業務範囲の違いにあります。ダブルライセンスを取得することで、賃貸不動産業務を包括的にカバーできます。
資格取得の判断は個人のキャリアプランにより異なるため、必要に応じてキャリアコンサルタントや業界の専門家に相談することをおすすめします。最新の試験情報は賃貸不動産経営管理士協議会の公式サイトでご確認ください(2025年時点の情報)。
