相続中古マンション売却の流れ|6-15ヶ月完全ガイド

公開日: 2025/10/14

相続した中古マンション売却の流れ:スケジュールを理解しよう

相続で中古マンションを取得した場合、売却には相続登記や遺産分割協議など、通常の売却とは異なる手続きが必要です。特に2024年4月から相続登記が義務化されたことで、期限内に登記を完了させる必要があります。本記事では、相続発生から売却完了までの全体の流れ、各フェーズの所要期間、税制優遇措置の活用方法を解説します。

この記事でわかること

  • 相続発生から売却完了までの全体スケジュール(6~15ヶ月)
  • 遺産分割協議・相続登記・相続税申告の流れ
  • 売却査定から契約・引渡しまでの手順
  • 取得費加算の特例・空き家特例の活用方法
  • 複数相続人がいる場合の注意点

1. 相続した中古マンション売却の流れとスケジュール

(1) 相続発生から売却完了までの全体像

相続した中古マンションを売却する場合、相続発生から引渡しまで6~15ヶ月程度が目安です。相続手続きと売却活動を並行して進める場合もありますが、遺産分割協議が完了してから売却活動を始めるのが一般的です。

全体スケジュールの目安

フェーズ 期間 主な内容
遺産分割協議と相続登記 1~6ヶ月 財産調査、遺産分割協議、相続登記申請
売却準備・査定 1~2ヶ月 査定依頼、媒介契約締結
売却活動 2~4ヶ月 物件公開、内覧対応、価格交渉
売買契約・引渡し 1~2ヶ月 売買契約、残金決済、引渡し
相続税申告・納税 10ヶ月以内 相続税申告、納税(売却代金を充当可能)

遺産分割協議がスムーズに進めば6~8ヶ月で完了しますが、協議が難航する場合は15ヶ月以上かかることもあります。

(2) 相続登記義務化と3年以内の登記期限

2024年4月から相続登記が義務化され、相続開始を知った日から3年以内に登記申請が必要となりました(法務局「相続登記の申請手続」)。

相続登記義務化のポイント

項目 内容
登記期限 相続開始を知った日から3年以内
罰則 正当な理由なく登記しない場合、10万円以下の過料
対象 2024年4月1日以降の相続(過去の相続も対象)
申請義務者 相続人全員(遺産分割前でも相続人申告登記で対応可能)

売却前に相続登記を完了させることが必須です。登記しなければ所有権を証明できず、売却できません。

2. 遺産分割協議と相続登記の手続き

(1) 遺産分割協議の進め方と必要書類

相続が発生したら、まず相続人全員で遺産の分け方を話し合います(国税庁「相続税の計算方法」)。

遺産分割協議の流れ

  1. 相続人の確定:戸籍謄本で相続人を確定
  2. 財産調査:不動産・預貯金・有価証券など全財産を調査
  3. 協議の開始:相続人全員で財産の分け方を話し合い
  4. 合意形成:各相続人の取得財産を決定
  5. 遺産分割協議書の作成:合意内容を書面化、全員が署名・押印

遺産分割協議書に記載すべき内容

  • 被相続人の氏名・死亡年月日
  • 相続人の氏名・住所
  • 不動産の表示(所在・地番・家屋番号・構造・床面積)
  • 各相続人の取得財産
  • 協議成立日・相続人全員の署名・押印

中古マンションを売却する場合、「相続人全員の共有」または「代表相続人の単独相続」のいずれかを選択します。

(2) 相続登記の申請手順と費用

遺産分割協議が完了したら、相続登記を申請します。

相続登記の流れ

  1. 必要書類の準備:遺産分割協議書、戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書など
  2. 登記申請書の作成:法務局の様式に従い作成
  3. 登録免許税の納付:固定資産税評価額の0.4%
  4. 法務局への申請:管轄法務局に書類を提出
  5. 登記完了:通常1~2週間で登記完了、登記識別情報の受領

登記費用の目安

項目 金額
登録免許税 固定資産税評価額×0.4%
司法書士報酬 5~10万円程度
戸籍謄本等の取得費用 数千円~1万円程度

例えば、固定資産税評価額が2,000万円の中古マンションの場合、登録免許税は8万円、司法書士報酬を含めると合計13~18万円程度となります。

3. 相続税申告期限と売却タイミング

(1) 相続税の申告期限(10ヶ月)の確認

相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。

相続税申告のスケジュール

時期 内容
相続開始~3ヶ月 財産調査、相続人確定
3~6ヶ月 遺産分割協議、財産評価
6~10ヶ月 相続税申告書作成、納税準備
10ヶ月以内 相続税申告・納税

相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。遺産総額がこの基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納税が必要です。

(2) 売却代金を相続税納付に充当する計画

中古マンションを売却し、売却代金を相続税の納付に充当することができます。

売却代金で相続税を納付する場合のスケジュール

  1. 相続発生~3ヶ月:遺産分割協議、相続税の概算計算
  2. 3~6ヶ月:相続登記、売却査定、媒介契約
  3. 6~8ヶ月:売却活動、売買契約
  4. 8~10ヶ月:残金決済、売却代金を相続税納付に充当
  5. 10ヶ月以内:相続税申告・納税

注意点

  • 売却が長期化し、10ヶ月以内に完了しない場合、自己資金での納税または延納・物納の検討が必要
  • 売却代金は相続人間で分配するため、代表相続人が納税資金を立て替える場合あり
  • 売却代金を納税に充当する計画は、遺産分割協議書に明記することを推奨

4. 売却査定から契約までの進め方

(1) 適正査定額の判断と複数社比較

相続登記が完了したら、売却査定を依頼します。

査定依頼の流れ

  1. 複数の不動産会社に査定依頼:一括査定サイトを活用(3~5社が目安)
  2. 訪問査定の実施:実際に物件を見てもらい正確な査定額を取得
  3. 査定額の比較:国土交通省の「不動産取引価格情報」で相場を確認
  4. 媒介契約の締結:専任媒介または一般媒介契約

査定額の妥当性判断

  • 国土交通省「不動産取引価格情報」で同じエリア・築年数・専有面積の成約事例を確認
  • 複数社の査定額を比較し、平均値を参考にする
  • 査定額が高すぎる場合、売却が長期化するリスクあり

(2) 相続不動産の売却活動と価格交渉

媒介契約締結後、売却活動を開始します。

売却活動の流れ

  1. 物件情報の公開:不動産ポータルサイト(SUUMO、LIFULL HOME'Sなど)に掲載
  2. 内覧対応:購入希望者に物件を見せる(清掃・整理整頓が重要)
  3. 価格交渉:購入希望者から価格交渉があれば対応
  4. 購入申込の受領:購入希望者から購入申込書を受領
  5. 売買契約の締結:重要事項説明・売買契約書の署名・押印

相続不動産売却の注意点

  • 複数相続人がいる場合、売却価格の決定に全員の合意が必要
  • 内覧対応は代表相続人が行うことが多い
  • 売買契約時、相続人全員の署名・押印が必要(または代表相続人が委任状で代理)

5. 相続マンション売却時の税制優遇

(1) 取得費加算の特例(3年以内の売却)

相続した不動産を一定期間内に売却すると、相続税の一部を取得費に加算できます(国税庁「相続した不動産の売却」)。

取得費加算の特例の内容

項目 内容
適用要件 相続税申告期限から3年以内の売却
加算できる額 相続税額×(売却不動産の相続税評価額÷相続財産総額)
効果 譲渡所得税の軽減

計算例

  • 相続税額:500万円
  • 売却マンションの相続税評価額:3,000万円
  • 相続財産総額:1億円
  • 取得費加算額:500万円×(3,000万円÷1億円)=150万円

取得費に150万円を加算できるため、譲渡所得が150万円減り、譲渡所得税が軽減されます。

(2) 空き家特例の3000万円控除と適用条件

相続した空き家を売却した場合、一定要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を控除できます(国税庁「空き家特例(3000万円控除)」)。

空き家特例の適用要件

項目 要件
建物の築年数 1981年5月31日以前に建築された建物
耐震基準 耐震基準を満たす必要あり(耐震改修または取り壊し)
対象建物 戸建て住宅(マンションは対象外)
売却期限 相続開始後3年を経過する年の12月31日まで
売却価格 1億円以下

注意点

  • 中古マンションは区分所有建物のため、空き家特例の対象外となるケースが多い
  • 戸建て住宅のみが対象のため、マンションを相続した場合は取得費加算の特例が主な優遇措置

6. 複数相続人がいる場合の注意点

(1) 遺産分割前の売却リスク

遺産分割協議が整わない状態で売却することはできません。

遺産分割前の売却リスク

  • 相続登記ができないため、所有権を証明できない
  • 売買契約時、相続人全員の同意が必要
  • 売却代金の分配方法が未確定のためトラブルのリスク

対策

  • まず遺産分割協議を優先し、合意形成を図る
  • 協議が難航する場合、弁護士に相談し調停・審判を検討
  • 代表相続人に売却を委任する場合、委任状を作成

(2) 代償分割での売却代金活用方法

代償分割とは、特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法です。

代償分割の流れ

  1. 遺産分割協議:特定の相続人(例:長男)が中古マンションを取得
  2. 代償金の決定:他の相続人に支払う代償金の額を決定
  3. マンションの売却:長男がマンションを売却
  4. 代償金の支払い:売却代金から他の相続人に代償金を支払い

代償分割のメリット

  • 遺産分割協議が円滑に進む
  • 売却手続きが代表相続人のみで完結
  • 他の相続人は売却活動に関与不要

注意点

  • 代償金を支払う前に売却が完了する必要あり
  • 売却代金が予想より低い場合、代償金の支払いが困難になるリスク
  • 遺産分割協議書に代償分割の内容を明記

まとめ

相続した中古マンションを売却する場合、相続発生から引渡しまで6~15ヶ月程度が目安です。遺産分割協議(1~6ヶ月)、相続登記(1~2週間)、売却活動(2~4ヶ月)、売買契約・引渡し(1~2ヶ月)の流れで進みます。

2024年4月から相続登記が義務化され、相続開始を知った日から3年以内に登記申請が必要です。遺産分割協議がまとまらないと売却できないため、相続人間の合意形成が重要です。

相続税の申告期限は10ヶ月以内で、売却代金を納税に充当することも可能です。取得費加算の特例(相続税申告期限から3年以内)を活用すれば、譲渡所得税を軽減できます。空き家特例はマンションでは適用されないケースが多いため、取得費加算の特例が主な優遇措置となります。

複数相続人がいる場合、遺産分割協議の完了が売却の前提です。代償分割を活用すれば、代表相続人が単独で売却手続きを進めることができます。弁護士や税理士と連携し、計画的に進めることが成功の鍵です。

よくある質問

Q1相続した中古マンションはいつまでに売却すべきですか?

A1取得費加算の特例は相続税申告期限から3年以内が期限です。また、2024年4月から相続登記が義務化され、相続開始を知った日から3年以内に登記申請が必要です。税制優遇を受けるなら、相続開始後なるべく早く売却活動を始めることが有利です。相続税の納税資金として売却代金を充当する場合、相続開始から10ヶ月以内の売却完了を目指す必要があります。

Q2遺産分割協議がまとまらない場合でも売却できますか?

A2遺産分割協議が整わないと相続登記ができず、売却も不可能です。売買契約時には相続人全員の同意が必要で、売却代金の分配方法も確定している必要があります。協議が難航する場合は弁護士に相談し、調停・審判を検討しましょう。代償分割を活用すれば、代表相続人が単独で売却手続きを進めることもできます。

Q3相続税の申告期限までに売却が間に合わない場合はどうすればいいですか?

A3相続税は申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに納付が必要です。売却が間に合わない場合、自己資金での納付、延納(分割払い)、物納(不動産で納付)を検討します。延納は担保提供が必要で、物納は一定の要件を満たす必要があります。売却代金を納税に充当する計画の場合、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。

Q4空き家特例の3000万円控除は誰でも使えますか?

A4空き家特例は1981年5月31日以前の建物が対象で、耐震基準を満たす必要があります。また、対象は戸建て住宅のみで、中古マンションは区分所有建物のため適用されないケースが多いです。マンションを相続した場合は、取得費加算の特例(相続税申告期限から3年以内の売却)が主な税制優遇措置となります。

Q5複数の相続人がいる場合、売却手続きはどうすればよいですか?

A5複数相続人がいる場合、まず遺産分割協議で売却方針を決定します。全員で共有名義とするか、代表相続人が単独相続するかを選択します。共有名義の場合、売買契約時に全員の署名・押印が必要です。代償分割を活用すれば、代表相続人が単独で売却手続きを進め、売却代金から他の相続人に代償金を支払うことができます。

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