買い替えによる中古マンション購入の全体スケジュール
既存の住宅を売却して中古マンションへ買い替える際、売却と購入のタイミング調整が最大の課題となります。資金計画を立て、物件を選び、引き渡しまでの流れを理解することで、スムーズな買い替えが実現できます。
この記事の要点
- 買い替えには「売り先行」と「買い先行」の2パターンがあり、資金計画重視なら売り先行が安心
- 全体の所要期間は準備から新居入居まで4~6ヶ月が目安
- 旧居のローン残債を新居ローンに上乗せする「買い替えローン」は審査が厳しく、返済比率35~40%以内が目安
- 旧居と新居の決済を同日にすることで、仮住まい費用(50~100万円)を削減可能
- 住宅ローン控除や買換え特例など、税制優遇を活用することで負担を軽減できる
(1) 準備から新居入居までの期間目安
買い替えの全体スケジュールは、準備期間から新居入居まで約4~6ヶ月が標準的です。
期間 | 主な作業内容 | 所要期間 |
---|---|---|
準備期間 | 資金計画、住宅ローン残債確認、売却査定 | 1~2週間 |
物件選定・事前審査 | 物件探し、内覧、買い替えローン事前審査 | 1~2ヶ月 |
並行進行期間 | 旧居売却活動、新居売買契約 | 2~3ヶ月 |
決済・引き渡し | 旧居・新居の決済、登記手続き | 1ヶ月 |
(2) 売り先行と買い先行の違い
売り先行型
- メリット:旧居売却代金が確定してから購入するため、資金計画が立てやすい
- デメリット:仮住まいが必要になる可能性が高く、引っ越し費用が2回分かかる
- 適した人:旧居のローン残債が多い、資金計画を確実にしたい
買い先行型
- メリット:新居を決めてから引っ越せるため、仮住まい不要
- デメリット:ダブルローンの審査が厳しく、返済負担が一時的に増大
- 適した人:旧居が完済済み、または残債が少ない、年収・勤続年数が安定している
資金計画と売却・購入の順序決定(準備期間)
(1) 旧居の住宅ローン残債と売却価格の確認
買い替えを検討する際、まず旧居の住宅ローン残債を確認します。金融機関に問い合わせるか、返済予定表で確認できます。
次に、旧居の売却価格を不動産会社に査定してもらいます。売却価格 > ローン残債であれば、通常の住宅ローンで新居を購入できます。売却価格 < ローン残債の場合、買い替えローンやつなぎ融資の検討が必要です。
(2) 売り先行のメリット・デメリット
メリット
- 売却代金が確定してから新居を購入するため、予算が明確
- ダブルローンのリスクがない
- 旧居を高く売るための時間的余裕がある
デメリット
- 仮住まいが必要(賃貸の場合、敷金・礼金・仲介手数料で家賃の3~5ヶ月分)
- 引っ越し費用が2回分かかる(合計20~40万円)
- 新居探しの期限がある程度決まってしまう
(3) 買い先行のメリット・デメリット
メリット
- 希望の物件をじっくり探せる
- 仮住まい不要で引っ越し1回で済む
- 生活環境の変化が少ない
デメリット
- 旧居と新居の両方のローンを一時的に返済(ダブルローン)
- 買い替えローンの審査が厳しい(年収・勤続年数の基準が高い)
- 旧居売却を急ぐため、値下げを余儀なくされる可能性
物件選定と住宅ローン事前審査(1~2ヶ月)
(1) 予算設定と物件探し
旧居の売却価格見込みと住宅ローン残債を踏まえ、新居の予算を設定します。
予算の計算式
新居予算 = 旧居売却価格 - ローン残債 + 自己資金 + 新規借入額
中古マンションの場合、築年数、立地、管理状態、修繕履歴を重点的に確認します。特に修繕積立金の積立状況や大規模修繕の予定は、将来的な負担に直結するため要チェックです。
(2) 買い替えローンの事前審査
買い替えローンは、旧居のローン残債を新居のローンに上乗せして借りられる商品です。審査基準は通常の住宅ローンより厳しく、以下の点が重視されます。
- 年収:最低400~500万円以上
- 勤続年数:3年以上
- 返済比率:35~40%以内(年収に対する年間返済額の割合)
- 頭金:購入価格の10~20%程度
事前審査には1~2週間かかるため、早めに申し込むことが重要です。
(3) 内覧と購入申込
中古マンションの内覧では、以下の点を確認します。
- 室内の状態(水回り、床、壁、天井)
- 管理状態(共用部の清掃、エレベーター、エントランス)
- 修繕履歴(過去の大規模修繕の内容と時期)
- 管理組合の運営状況(総会議事録の確認)
気に入った物件が見つかったら、購入申込書を提出します。この時点で、住宅ローンの事前審査承認があると交渉が有利に進みます。
旧居売却と新居購入の並行進行(2~3ヶ月)
(1) 旧居の売却活動
新居の購入申込と並行して、旧居の売却活動を開始します。不動産会社と媒介契約を結び、広告掲載、内覧対応を進めます。
売却期間は平均2~3ヶ月ですが、立地や価格設定により変動します。購入希望者が現れたら、価格交渉、売買契約を締結します。
(2) 新居の売買契約
購入申込が受理されたら、売買契約に進みます。契約時には手付金(購入価格の5~10%)を支払い、重要事項説明を受けます。
重要事項説明では、物件の権利関係、設備の状況、管理費・修繕積立金の滞納有無などを確認します。不明点があれば、必ず質問して解消しておきましょう。
(3) 両方の決済日調整
旧居の売買契約と新居の売買契約が成立したら、両方の決済日を調整します。同日決済が理想的で、午前中に旧居の決済を行い、その代金で旧居のローンを完済・抵当権を抹消。午後に新居の決済を行うという流れになります。
同日決済が難しい場合は、つなぎ融資や仮住まいの検討が必要です。
決済・引き渡しとタイミング調整(1ヶ月)
(1) 旧居と新居の同日決済
同日決済を実現するには、以下の準備が必要です。
午前(旧居決済)
- 買主からの残代金受領
- 住宅ローンの残債一括返済
- 抵当権抹消登記の手続き(司法書士が対応)
- 鍵の引き渡し
午後(新居決済)
- 売主への残代金支払い(旧居売却代金+住宅ローン融資実行)
- 所有権移転登記の手続き(司法書士が対応)
- 鍵の受領
司法書士が両方の登記手続きを調整するため、事前に同日決済の旨を伝えておく必要があります。
(2) 仮住まいが必要な場合の対応
売り先行や決済日調整ができない場合、仮住まいが必要です。
仮住まいの費用目安
- 賃貸:敷金・礼金・仲介手数料で家賃の3~5ヶ月分
- ウィークリーマンション:月15~20万円程度
- 引っ越し費用:2回分で20~40万円
- 合計:50~100万円
仮住まい期間は2~4ヶ月が一般的です。荷物の一時保管にトランクルームを利用する場合、追加で月1~3万円かかります。
(3) つなぎ融資の活用
旧居売却代金を新居購入資金に充てる際、タイミングのずれを補うのがつなぎ融資です。
つなぎ融資の特徴
- 融資期間:1~6ヶ月程度
- 金利:年2.5~4.0%(住宅ローンより高め)
- 融資額:旧居売却予定額の範囲内
- 返済:旧居売却代金で一括返済
つなぎ融資を利用する場合、旧居の売買契約が成立していることが条件となります。
購入後の手続きと税制優遇
(1) 住宅ローン控除の申請
新居入居後、住宅ローン控除の適用を受けるために確定申告が必要です(初年度のみ)。
適用要件
- 床面積50㎡以上(登記簿面積)
- 築年数:耐火建築物25年以内、非耐火20年以内(または耐震基準適合証明書あり)
- 住宅ローン返済期間10年以上
- 年収3,000万円以下
控除額は年末ローン残高の0.7%で、最大13年間(中古住宅は10年間)適用されます。
(2) 旧居売却の譲渡所得税と特例
旧居売却時、譲渡所得が発生した場合、譲渡所得税が課税されます。ただし、以下の特例により税負担を軽減できます。
- 3,000万円特別控除:譲渡所得から最高3,000万円まで控除
- 買換え特例:一定の要件を満たす場合、譲渡益の課税を繰延べ
(3) 不動産取得税の軽減措置
中古マンション購入時、不動産取得税が課税されますが、以下の軽減措置があります。
建物の軽減
- 床面積50㎡以上240㎡以下
- 昭和57年1月1日以降の新築(または耐震基準適合)
- 軽減額:1,200万円控除(控除額は新築年により異なる)
土地の軽減
- 建物の軽減要件を満たす場合、土地も軽減対象
- 軽減額:45,000円または土地1㎡あたりの価格×床面積の2倍×3%のいずれか高い方
これらの軽減措置により、実質的な税負担はかなり抑えられます。
まとめ
買い替えで中古マンションを購入する際は、売り先行か買い先行かを資金計画と生活スタイルに応じて選択することが重要です。旧居のローン残債が多い場合は売り先行が安心ですが、仮住まい費用が50~100万円かかる点を考慮しましょう。
買い替えローンやつなぎ融資を活用することで、タイミング調整が柔軟になりますが、審査基準が厳しく、金利も高めです。旧居と新居の同日決済を実現できれば、仮住まいが不要になり、コスト削減につながります。
住宅ローン控除や買換え特例など、税制優遇を積極的に活用し、負担を軽減しながらスムーズな買い替えを実現しましょう。