買い替えで新築戸建て売却の流れ・スケジュール|完全ガイド

公開日: 2025/10/19

買い替えで新築戸建てを売却する流れを理解する

買い替えに伴う新築戸建ての売却は、築浅での売却となるため、売却価格や税務面で通常の売却とは異なる点があります。売り先行か買い先行か、同時決済は可能か、税制優遇はどう活用するかなど、買い替え特有の流れを理解しておくことが重要です。

この記事でわかること

  • 買い替えによる新築戸建て売却の全体スケジュールと期間の目安
  • 売り先行・買い先行の選択基準と資金計画のポイント
  • 売却前の住宅ローン確認と査定依頼の流れ
  • 重要事項説明・売買契約・決済の実務
  • 買換え特例と3,000万円特別控除の使い分け
  • 同時決済の実務と新築引き渡し遅延への対策

1. 買い替えによる新築戸建て売却の全体スケジュール

(1) 売却開始から新居引渡しまでの期間(4〜10か月)

買い替えに伴う新築戸建て売却は、売却開始から新居引渡しまで平均4〜10か月程度かかります。国土交通省の「不動産取引の流れと重要事項説明」によれば、標準的な流れは次の通りです。

買い替え全体スケジュール(売り先行の場合):

期間 ステップ 内容
1〜2週間 準備・査定 住宅ローン残債確認、複数社への査定依頼
1〜2か月 売却活動 媒介契約締結、広告、内覧対応
1〜2週間 売買契約 重要事項説明、売買契約締結
1か月 決済・引き渡し 残代金決済、所有権移転登記
1〜2か月 仮住まい 賃貸住宅などへの一時移転
2〜3か月 新居購入 新居の契約・引き渡し

合計:4〜10か月程度

(2) 売り先行と買い先行の流れの違い

買い替えには「売り先行」と「買い先行」の2つの方法があります。

売り先行の流れ:

新築戸建て売却(3〜6か月)
↓
仮住まい(1〜3か月)
↓
新居購入(2〜3か月)
↓
新居引き渡し

買い先行の流れ:

新居購入契約(1〜2か月)
↓
新築戸建て売却(3〜6か月)※並行
↓
売却決済と新居引き渡しを同時期に調整

(3) 築浅売却の特徴

新築戸建てを築浅(築5年以内)で売却する場合、次のような特徴があります。

築浅売却のメリット:

  • 建物の価値が高く、売却価格が高めに設定できる
  • 設備が新しく、修繕費用がかからない
  • 購入希望者が見つかりやすい

築浅売却のデメリット:

  • 購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用など)を回収できない場合がある
  • 住宅ローン控除の残存期間が残っている(控除を放棄することになる)
  • 譲渡所得が発生する可能性が高い(購入価格との差が小さい)

2. 売り先行・買い先行の選択基準

(1) 資金状況による判断

売り先行か買い先行かは、資金状況によって判断します。

売り先行が向いているケース:

  • 住宅ローン残債が多く、売却代金で完済したい
  • 資金に余裕がなく、二重ローンを避けたい
  • 仮住まいの負担を許容できる

買い先行が向いているケース:

  • 資金に余裕があり、二重ローンに対応できる
  • 仮住まいを避け、引っ越しを1回で済ませたい
  • 新居を先に確保し、じっくり売却活動を行いたい

(2) 仮住まいコストと二重ローンリスク

売り先行と買い先行のコストを比較します。

売り先行の仮住まいコスト(1〜3か月):

  • 賃貸住宅の家賃:月10〜15万円
  • 敷金・礼金:家賃の3〜4か月分
  • 引っ越し費用:往復で30〜50万円
  • 合計:50〜100万円程度

買い先行の二重ローンコスト(3〜6か月):

  • 新築戸建てのローン:月10万円
  • 新居のローン:月15万円
  • 合計:月25万円
  • 合計(6か月):150万円

二重ローンの方がコスト負担が大きいため、資金計画を慎重に立てる必要があります。

(3) それぞれのメリット・デメリット

売り先行・買い先行の比較:

項目 売り先行 買い先行
資金計画 明確 不透明(売却価格未定)
仮住まい 必要 不要
引っ越し回数 2回 1回
二重ローン なし あり(3〜6か月)
売却価格 焦って安売りリスク じっくり売却可能
おすすめ ローン残債多い 資金に余裕あり

3. 売却前の準備と住宅ローン確認

(1) 住宅ローン残債の確認と返済

売却前に、住宅ローンの残債を確認します。金融庁の「住宅ローンの繰上返済」によれば、売却代金で一括返済する場合、次の手続きが必要です。

住宅ローン残債の確認方法:

  1. 金融機関に「残高証明書」を依頼(発行に1〜2週間)
  2. 一括返済時の「返済予定額」を確認(利息の日割り計算)
  3. 繰上返済手数料を確認(数千円〜数万円)

残債が売却価格を上回る場合(オーバーローン):

  • 自己資金で補填するか、住み替えローンを利用
  • 住み替えローンは審査が厳しい傾向(金融機関に事前相談)

(2) 査定依頼と価格設定

複数社(3〜5社)に査定を依頼し、適正価格を把握します。

新築戸建ての査定ポイント:

  • 築年数(築浅は高評価)
  • 立地条件(駅からの距離、周辺環境)
  • 建物の状態(設備、内装、外装)
  • 周辺の成約事例

査定価格の目安(築3年の場合):

購入価格:4,000万円
査定価格:3,500〜3,800万円程度
(購入価格の85〜95%程度)

築浅でも購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用など)は回収できないため、売却価格は購入価格を下回る傾向があります。

(3) 媒介契約の選択

媒介契約には、一般・専任・専属専任の3種類があります。

買い替え時の媒介契約選択:

契約種類 複数社への依頼 レインズ登録 活動報告 買い替え時の推奨
一般媒介 可能 任意 義務なし △(進捗把握が難しい)
専任媒介 不可 義務(7日以内) 2週間に1回以上 ◎(推奨)
専属専任媒介 不可 義務(5日以内) 1週間に1回以上 ○(急ぎの場合)

買い替え時は、専任媒介契約で積極的な売却活動を期待するのがおすすめです。

4. 売却契約から引き渡しまでの流れ

(1) 重要事項説明と売買契約

重要事項説明は、売買契約締結前に宅地建物取引士が買主に対して行います。

重要事項説明の主な内容:

  • 土地・建物の面積、構造、築年数
  • 用途地域、建ぺい率、容積率
  • 接道義務、ライフライン(上下水道、電気、ガス)
  • 法令上の制限(都市計画法、建築基準法など)
  • 契約不適合責任の範囲と期間

売買契約書の記載内容:

  • 売買代金と支払方法(手付金、残代金)
  • 引き渡し日(買い替えの場合、新居の引き渡しに合わせる)
  • 契約解除の条件(ローン特約、買い替え特約)
  • 固定資産税・都市計画税の精算方法

(2) 決済・引き渡し手続き

残代金決済は、売買契約締結から1か月程度後に行われます。

決済当日の流れ:

時間 内容
決済前 登記書類の確認、本人確認
決済時 残代金の受領、住宅ローン完済
決済後 抵当権抹消登記、所有権移転登記の申請
引き渡し後 鍵の受け渡し、設備の引き渡し

(3) 登記手続きの流れ

所有権移転登記と抵当権抹消登記は、司法書士が代行します。法務局の「不動産登記の手続き」に詳細が記載されています。

登記に必要な書類:

  • 登記識別情報(権利証)
  • 印鑑証明書(発行3か月以内)
  • 固定資産評価証明書
  • 委任状(司法書士への委任)

登記費用:

  • 抵当権抹消登記:登録免許税1,000円/件 + 司法書士報酬1〜2万円
  • 所有権移転登記:買主負担(登録免許税 + 司法書士報酬)

5. 買い替え時の税務手続き

(1) 買換え特例の活用

買換え特例は、居住用財産を売却して新たな居住用財産を購入する場合、譲渡所得税を繰延べできる制度です。国税庁の「居住用財産の買換え特例」に詳細が記載されています。

買換え特例の要件:

  • 売却する住宅に10年以上居住していること
  • 売却価格が1億円以下
  • 売却年の前年から翌年までに新居を購入
  • 売却と購入がともに居住用財産

注意点:

新築戸建てを築浅(築5年以内)で売却する場合、「10年以上居住」の要件を満たさないため、買換え特例は適用できません。

(2) 3,000万円特別控除の適用

3,000万円特別控除は、居住用財産の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。国税庁の「居住用財産の3,000万円特別控除」に詳細が記載されています。

3,000万円特別控除の要件:

  • 売却する住宅が自己の居住用財産であること
  • 売却年の前年・前々年に3,000万円控除を受けていないこと
  • 売却相手が親族でないこと

築浅売却での適用例:

売却価格:3,500万円
取得費:4,000万円(購入価格)
譲渡費用:100万円(仲介手数料など)

譲渡所得 = 3,500万円 - (4,000万円 + 100万円) = -600万円
→ 譲渡損失のため、課税なし

築浅売却の場合、購入価格より低い価格で売却することが多いため、譲渡所得が発生しないケースが多いです。

(3) 譲渡所得税の計算

万一、譲渡所得が発生した場合の税率は次の通りです。

譲渡所得税の税率:

所有期間 所得税 住民税 復興特別所得税 合計税率
5年以下(短期譲渡) 30% 9% 0.63% 39.63%
5年超(長期譲渡) 15% 5% 0.315% 20.315%

※所有期間は売却年の1月1日時点で判定

築浅売却の場合、所有期間が5年以下となるため、短期譲渡(税率39.63%)が適用されます。ただし、3,000万円特別控除を適用すれば、ほとんどのケースで課税されません。

6. タイミング調整とトラブル対策

(1) 同時決済の実務

売却と新居購入を同日に決済する「同時決済」は、仮住まいを避けられる理想的な方法ですが、スケジュール調整が難しいです。

同時決済のスケジュール例:

時間 内容
9:00〜10:30 新築戸建ての決済(売主として)、残代金受領
11:00〜12:00 売却代金を新居購入資金に移動
13:00〜14:30 新居の決済(買主として)、残代金支払い
15:00〜16:00 新居の鍵受領、引っ越し

同時決済の注意点:

  • 売却と購入の決済日を完全に合わせる必要がある
  • どちらかのスケジュールが遅れると全体が狂う
  • 司法書士や金融機関との綿密な事前調整が必要

(2) 新築戸建ての引き渡し遅延対策

新居が新築の場合、建築遅延により引き渡しが遅れるリスクがあります。

引き渡し遅延時の対応:

  • 売り先行の場合: 仮住まい期間を延長(追加費用が発生)
  • 買い先行の場合: 二重ローン期間が延長(金利負担増)

遅延対策:

  • 新居の売買契約書に「引き渡し遅延時の違約金条項」を明記
  • 余裕のあるスケジュール設定(引き渡し予定日の1〜2か月前に売却決済を設定しない)
  • 建築会社との定期的な進捗確認

(3) 住所変更届と各種手続き

引っ越し後は、住所変更届などの行政手続きが必要です。総務省の「引越し手続き一覧」に詳細が記載されています。

引っ越し後の主な手続き:

手続き 期限 窓口
転出届・転入届 引っ越し後14日以内 市区町村役場
マイナンバーカードの住所変更 引っ越し後14日以内 市区町村役場
運転免許証の住所変更 引っ越し後速やかに 警察署・免許センター
車庫証明の取得 引っ越し後15日以内 警察署
自動車検査証の住所変更 引っ越し後15日以内 運輸支局

まとめ:買い替えで新築戸建てを売却する流れを計画的に進める

買い替えに伴う新築戸建ての売却は、売り先行か買い先行かを資金状況に応じて選択し、スケジュール管理を徹底することが重要です。

築浅売却の場合、住宅ローン控除の残存期間を放棄することになりますが、買い替えのタイミングが優先される場合は検討の余地があります。

税務面では、築浅売却は譲渡損失となるケースが多く、3,000万円特別控除を適用すればほとんどの場合、課税されません。ただし、買換え特例は「10年以上居住」の要件を満たさないため適用できない点に注意が必要です。

同時決済は理想的ですが、スケジュール調整が難しいため、余裕を持った計画を立て、不動産会社や司法書士と綿密に連携することが成功の鍵となります。

よくある質問(FAQ)

Q1: 買い替えで新築戸建てを売る場合、全体でどのくらい期間がかかる?

A: 売却開始から新居引渡しまで平均4〜10か月程度です。売り先行の場合、売却に3〜6か月、仮住まい期間1〜3か月、新居購入に2〜3か月かかります。買い先行の場合、購入と売却を並行して進めるため、スケジュールは柔軟ですが、二重ローン期間が3〜6か月発生します。同時決済が理想的ですが、タイミング調整の難易度が高いため、不動産会社と綿密に連携する必要があります。

Q2: 売り先行と買い先行、どちらがおすすめ?

A: 資金に余裕がなければ売り先行が安全です。仮住まいが必要ですが、資金計画が明確で、二重ローンのリスクを避けられます。買い先行は引っ越しが1回で済むメリットがありますが、二重ローン(月25万円程度)の負担と資金繰りリスクがあります。新築戸建ては住宅ローン控除の残存期間もあるため、控除を最大限活用したい場合は売却タイミングを慎重に検討しましょう。

Q3: 買い替え時に使える税制優遇は?

A: 買換え特例(譲渡所得税の繰延べ)または3,000万円特別控除(非課税)が使えますが、併用はできません。築浅売却の場合、買換え特例は「10年以上居住」の要件を満たさないため適用できません。一方、3,000万円特別控除は適用可能で、築浅売却は譲渡損失となるケースが多いため、ほとんどの場合課税されません。税理士に相談し、最適な選択をすることをおすすめします。

Q4: 新築戸建ての引き渡しが遅れたらどうする?

A: 建築遅延は珍しくありません。売り先行の場合、仮住まい期間を延長し、追加の家賃負担が発生します。買い先行の場合、二重ローン期間が延長され、金利負担が増加します。対策として、新居の売買契約書に「引き渡し遅延時の違約金条項」を明記し、余裕のあるスケジュール設定(引き渡し予定日の1〜2か月前に売却決済を設定しない)が重要です。建築会社との定期的な進捗確認も欠かせません。

よくある質問

Q1買い替えで新築戸建てを売る場合、全体でどのくらい期間がかかる?

A1売却開始から新居引渡しまで平均4〜10か月程度です。売り先行の場合、売却に3〜6か月、仮住まい期間1〜3か月、新居購入に2〜3か月かかります。買い先行の場合、購入と売却を並行して進めるため、スケジュールは柔軟ですが、二重ローン期間が3〜6か月発生します。同時決済が理想的ですが、タイミング調整の難易度が高いため、不動産会社と綿密に連携する必要があります。

Q2売り先行と買い先行、どちらがおすすめ?

A2資金に余裕がなければ売り先行が安全です。仮住まいが必要ですが、資金計画が明確で、二重ローンのリスクを避けられます。買い先行は引っ越しが1回で済むメリットがありますが、二重ローン(月25万円程度)の負担と資金繰りリスクがあります。新築戸建ては住宅ローン控除の残存期間もあるため、控除を最大限活用したい場合は売却タイミングを慎重に検討しましょう。

Q3買い替え時に使える税制優遇は?

A3買換え特例(譲渡所得税の繰延べ)または3,000万円特別控除(非課税)が使えますが、併用はできません。築浅売却の場合、買換え特例は「10年以上居住」の要件を満たさないため適用できません。一方、3,000万円特別控除は適用可能で、築浅売却は譲渡損失となるケースが多いため、ほとんどの場合課税されません。税理士に相談し、最適な選択をすることをおすすめします。

Q4新築戸建ての引き渡しが遅れたらどうする?

A4建築遅延は珍しくありません。売り先行の場合、仮住まい期間を延長し、追加の家賃負担が発生します。買い先行の場合、二重ローン期間が延長され、金利負担が増加します。対策として、新居の売買契約書に「引き渡し遅延時の違約金条項」を明記し、余裕のあるスケジュール設定(引き渡し予定日の1〜2か月前に売却決済を設定しない)が重要です。建築会社との定期的な進捗確認も欠かせません。

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