買い替えで新築戸建てを購入する基本的な流れ
買い替えで新築戸建てを購入する場合、旧居の売却と新居の購入を並行して進める必要があります。特に新築戸建ては、建売か注文住宅かによって完成までの期間が大きく異なるため、スケジュール管理が重要です。
この記事では、買い替えで新築戸建てを購入する際の流れとスケジュールを、実務的に解説します。
この記事のポイント:
- 売り先行は資金計画が立てやすいが仮住まいが必要
- 買い先行は引越し1回で済むが二重ローンのリスクあり
- 建売住宅は3~4ヶ月、注文住宅は8~12ヶ月で完成
- つなぎ融資は売却完了までの短期融資、住み替えローンはローン残債を上乗せ
- 3000万円特別控除と買い替え特例は併用不可
(1) 旧居の査定から新居探しまでの準備期間
買い替えを検討し始めたら、まず旧居の査定を行います。
準備期間の流れ:
- 旧居の査定依頼(複数の不動産会社に依頼)
- 売却可能価格の確認
- 住宅ローン残債の確認
- 新居の予算設定
- 新居の条件整理(立地、広さ、間取りなど)
この準備期間は1~2ヶ月程度が目安です。旧居の売却価格が確定しないと新居の予算も決まらないため、早めに査定を受けることが重要です。
(2) 売却と購入を並行する際の全体スケジュール
買い替えの全体スケジュールは、売り先行か買い先行かによって異なります。
売り先行の場合:
- 旧居の売却活動(2~3ヶ月)
- 旧居の売買契約・決済(1~2ヶ月)
- 新居探し・契約(1~2ヶ月)
- 新居の建築・引渡し(建売3~4ヶ月、注文住宅8~12ヶ月)
- 引越し
買い先行の場合:
- 新居探し・契約(1~2ヶ月)
- 新居の建築・引渡し(建売3~4ヶ月、注文住宅8~12ヶ月)
- 旧居の売却活動(2~3ヶ月)
- 旧居の売買契約・決済(1~2ヶ月)
- 引越し
(3) 建売と注文住宅の選択と期間の違い
新築戸建ては、建売住宅と注文住宅の2つの選択肢があります。
項目 | 建売住宅 | 注文住宅 |
---|---|---|
完成までの期間 | 3~4ヶ月 | 8~12ヶ月 |
価格 | 比較的安い | 高め |
設計の自由度 | 低い | 高い |
買い替えとの相性 | スケジュールが立てやすい | 工期が長く調整が難しい |
買い替えの場合、建売住宅の方がスケジュール管理がしやすいです。注文住宅は工期が長く、設計変更や工事遅延のリスクもあるため、売却とのタイミング調整が難しくなります。
売り先行と買い先行のスケジュールの違い
(1) 売り先行:資金計画が立てやすいが仮住まいが必要
売り先行は、現在の住まいを先に売却してから新築戸建てを購入する方法です。
メリット:
- 売却価格が確定してから新居を購入するため、資金計画が立てやすい
- 住宅ローン残債を完済してから新居のローンを組むため、審査に通りやすい
- 売却を急ぐ必要がなく、希望価格で売却できる可能性が高い
デメリット:
- 旧居の引渡しから新居の完成まで、仮住まいが必要
- 仮住まいの賃貸契約・引越し(2回)の費用がかかる
- 新居の建築が遅延すると、仮住まい期間が延びる
向いている人:
- 住宅ローン残債が多い
- 資金に余裕がない
- 売却価格を優先したい
(2) 買い先行:引越し1回で済むが二重ローンのリスク
買い先行は、新築戸建てを先に購入してから現在の住まいを売却する方法です。
メリット:
- 仮住まいが不要で、引越しが1回で済む
- 新居の建築工程を確認しながら進められる
- 売却を急ぐ必要がなく、じっくり買主を探せる
デメリット:
- 旧居が売却できるまで、二重ローン(旧居+新居)の負担がある
- 売却価格が想定より低いと、新居の資金計画が狂う
- 売却までの期間、旧居の管理費・固定資産税がかかる
向いている人:
- 住宅ローン残債が少ない、または完済済み
- 資金に余裕がある
- 仮住まいを避けたい
(3) それぞれのメリット・デメリットと選択基準
選択基準:
条件 | おすすめ |
---|---|
住宅ローン残債が多い | 売り先行 |
資金に余裕がない | 売り先行 |
仮住まいを避けたい | 買い先行 |
資金に余裕がある | 買い先行 |
売却価格を優先したい | 売り先行 |
実務的なアドバイス:
- 売り先行の場合、仮住まい期間を最小化するため、新居の建築スケジュールを事前に確認
- 買い先行の場合、旧居の売却期限を設定し、期限内に売却できない場合の対策(価格見直し等)を検討
新築戸建て特有の建築工程とタイムライン
(1) 建売住宅:契約から引渡しまで3~4ヶ月
建売住宅は、すでに設計が完了しており、契約後すぐに建築が始まります。
タイムライン:
- 物件見学・申込(1週間)
- 住宅ローン事前審査(1~2週間)
- 売買契約(1週間)
- 建築工事(2~3ヶ月)
- 完成検査・引渡し(1週間)
合計:3~4ヶ月
建売住宅は工期が短く、スケジュールが立てやすいため、買い替えに適しています。
(2) 注文住宅:土地探し・設計・建築で8~12ヶ月
注文住宅は、土地探し・設計・建築のすべてを行うため、工期が長くなります。
タイムライン:
- 土地探し・購入(2~3ヶ月)
- 設計・プラン作成(2~3ヶ月)
- 建築確認申請(1~2ヶ月)
- 建築工事(4~6ヶ月)
- 完成検査・引渡し(1週間)
合計:8~12ヶ月
注文住宅は工期が長く、設計変更や工事遅延のリスクがあるため、買い替えのスケジュール調整が難しくなります。
(3) 工事遅延リスクと対処法
新築戸建ての工事は、以下の理由で遅延することがあります:
- 天候不良(台風、大雪など)
- 資材不足(木材、半導体など)
- 職人不足
- 近隣トラブル
対処法:
- 契約時に遅延時の対応を確認(引渡し日の延期、違約金の有無など)
- 売り先行の場合、仮住まいの賃貸契約に余裕を持たせる(6ヶ月~1年)
- 買い先行の場合、旧居の売却時期を遅らせる、またはつなぎ融資で対応
国土交通省「宅地建物取引業法」によれば、重要事項説明で工事遅延リスクを説明することが義務付けられています。
買い替え時の住宅ローンとつなぎ融資
(1) つなぎ融資:売却完了までの短期融資
つなぎ融資は、旧居の売却代金を新居の購入資金に充てる場合、売却完了までの期間を埋めるための短期融資です。
金融庁「住宅ローンの基礎知識」によれば、つなぎ融資の特徴は以下の通りです:
特徴:
- 借入期間:3ヶ月~1年程度
- 金利:年2~4%(住宅ローンより高め)
- 返済方法:旧居の売却代金で一括返済
- 審査:旧居の売却が確実であることが条件
計算例:
- つなぎ融資額:2,000万円
- 借入期間:6ヶ月
- 金利:年3%
- 利息:2,000万円 × 3% × 6ヶ月 ÷ 12ヶ月 = 30万円
(2) 住み替えローン:ローン残債を新居ローンに上乗せ
住み替えローンは、旧居の住宅ローン残債を新居のローンに上乗せして借りられる商品です。
特徴:
- 借入額:旧居のローン残債 + 新居の購入価格
- 金利:通常の住宅ローンより高め(年0.3~0.5%程度)
- 審査:厳しい(借入総額が大きくなるため)
- 返済期間:最長35年
計算例:
- 旧居のローン残債:1,000万円
- 新居の購入価格:4,000万円
- 借入総額:5,000万円
審査基準は厳しく、年収や返済比率によっては借入できない場合があります。
(3) 審査基準と金利の違い
項目 | つなぎ融資 | 住み替えローン |
---|---|---|
借入期間 | 短期(3ヶ月~1年) | 長期(最長35年) |
金利 | 高い(年2~4%) | やや高い(通常+0.3~0.5%) |
審査 | 比較的緩い | 厳しい |
返済方法 | 一括返済 | 分割返済 |
つなぎ融資の方が金利は高いですが、審査は比較的緩く、短期間で返済できます。住み替えローンは長期返済できますが、借入総額が大きくなるため審査が厳しくなります。
買い替え時の税制優遇と注意点
(1) 3000万円特別控除:譲渡所得から3000万円控除
旧居を売却する際、3000万円特別控除を適用できます。
国税庁「特定の居住用財産の買換え特例」によれば、以下の要件を満たす必要があります:
- 自己が居住していた家屋・敷地の売却
- 売却先が配偶者や直系血族でないこと
- 過去2年間にこの特例を受けていないこと
譲渡所得の計算:
- 譲渡価格:4,000万円
- 取得費:2,000万円
- 譲渡費用:200万円
- 譲渡所得:4,000万円 - 2,000万円 - 200万円 = 1,800万円
- 3000万円控除適用後:1,800万円 - 3,000万円 = 0円(税額ゼロ)
(2) 買い替え特例:譲渡益の課税を繰延べ
買い替え特例は、旧居の譲渡益への課税を、新居の売却時まで繰り延べられる制度です。
国税庁「特定の居住用財産の買換え特例」によれば、以下の要件があります:
- 旧居の所有期間が10年超
- 旧居の居住期間が10年以上
- 新居の床面積が50㎡以上
- 譲渡価格が1億円以下
注意: 買い替え特例は、課税の「免除」ではなく「繰延べ」です。新居を売却する際に課税されます。
(3) 両制度は併用不可:選択のポイント
重要: 3000万円特別控除と買い替え特例は、併用できません。
選択のポイント:
譲渡益 | おすすめ |
---|---|
3000万円以下 | 3000万円特別控除(税額ゼロ) |
3000万円超 | 買い替え特例(課税繰延べ)または3000万円控除(一部課税) |
住宅ローン控除との関係:
- 3000万円特別控除を適用した年とその前後2年間は、住宅ローン控除を受けられない
- 買い替え特例を選べば、住宅ローン控除と併用可能
国土交通省「住宅ローン減税制度」によれば、新築住宅の住宅ローン控除額は以下の通りです:
住宅の種類 | 控除限度額(年間) | 控除期間 |
---|---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅 | 35万円 | 13年 |
ZEH水準省エネ住宅 | 31.5万円 | 13年 |
省エネ基準適合住宅 | 28万円 | 13年 |
その他の住宅 | 0円(2024年以降) | - |
どちらが有利か計算が必要なため、税理士への相談をお勧めします。
買い替えスケジュール管理の実務ポイント
(1) 売却と購入のタイミング調整
買い替えでは、売却と購入のタイミング調整が最重要です。
売り先行の場合:
- 旧居の売買契約時に、引渡し時期を「新居の完成後」に設定できるか交渉
- 新居の建築スケジュールを事前に確認し、仮住まい期間を最小化
買い先行の場合:
- 新居の引渡し時期を「旧居の売却後」に設定できるか交渉
- 旧居の売却期限を設定し、期限内に売却できない場合の対策を検討
(2) 仮住まい期間を最小化する方法
売り先行の場合、仮住まい期間をできるだけ短くする工夫が必要です。
方法:
- 旧居の引渡し時期を遅らせる(買主と交渉)
- 新居の建築を早める(ハウスメーカーと交渉)
- 仮住まいを親族の家や短期賃貸で対応
仮住まい費用の目安:
- 賃貸契約(6ヶ月):月10万円 × 6ヶ月 = 60万円
- 引越し(2回):30万円 × 2回 = 60万円
- 合計:約120万円
(3) 引越しや子どもの入学時期との調整
買い替えは、家族のライフイベントと調整が必要です。
よくあるケース:
- 子どもの入学・転校時期に合わせて引越し
- 年度末(3月)の引越しは業者が混雑するため、早めに予約
- 仕事の繁忙期を避けて引越し
調整のポイント:
- 逆算スケジュール:「○月までに引越し完了」→「○月までに新居完成」→「○月までに契約」
- 余裕を持ったスケジュール:工事遅延リスクを考慮し、2~3ヶ月の余裕を持つ
まとめ
買い替えで新築戸建てを購入する際の流れとスケジュールについて、以下の点を押さえておきましょう:
- 売り先行は資金計画が立てやすいが仮住まいが必要
- 買い先行は引越し1回で済むが二重ローンのリスクあり
- 建売住宅は3~4ヶ月、注文住宅は8~12ヶ月で完成
- つなぎ融資は売却完了までの短期融資、住み替えローンはローン残債を上乗せ
- 3000万円特別控除と買い替え特例は併用不可
買い替えは、売却と購入を並行して進める複雑な取引です。不動産会社、ハウスメーカー、税理士と連携し、スムーズな買い替えを目指しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 売り先行と買い先行、どちらがおすすめですか?
A. 資金に余裕がない場合は売り先行が安全です。
旧居の売却代金を確定してから新居を購入するため、資金計画が立てやすく、住宅ローン審査にも通りやすくなります。
資金に余裕があり仮住まいを避けたい場合は買い先行です。ただし、旧居が売却できるまで二重ローンの負担があるため、資金計画に注意が必要です。
選択基準:
- 住宅ローン残債が多い → 売り先行
- 仮住まいを避けたい → 買い先行
Q2. 新築戸建ての工事が遅れた場合、買い替えスケジュールはどうなりますか?
A. 天候不良や資材不足で工事が遅延することがあります。
売り先行の場合:
- 仮住まい期間が延びるため、賃貸契約に余裕を持たせる(6ヶ月~1年)
- 追加の仮住まい費用が発生する可能性あり
買い先行の場合:
- 旧居の売却時期を遅らせる
- または、つなぎ融資で対応
対策:
- 契約時に遅延時の対応を確認(引渡し日の延期、違約金の有無など)
- 工事の進捗を定期的に確認
Q3. つなぎ融資と住み替えローンの違いは何ですか?
A. つなぎ融資は、売却完了までの短期融資で、売却代金で一括返済します。
- 借入期間:3ヶ月~1年程度
- 金利:年2~4%(高め)
- 審査:比較的緩い
住み替えローンは、旧居のローン残債を新居のローンに上乗せして借りる長期ローンです。
- 借入額:旧居のローン残債 + 新居の購入価格
- 金利:通常の住宅ローンより高め(年0.3~0.5%程度)
- 審査:厳しい(借入総額が大きくなるため)
つなぎ融資の方が金利は高いですが、短期間で返済できます。住み替えローンは審査が厳しく、借入総額が大きくなります。
Q4. 3000万円特別控除と買い替え特例、どちらを選ぶべきですか?
A. 譲渡益が3000万円以下なら3000万円特別控除が有利です。税金がゼロになります。
譲渡益が3000万円を超える場合は、買い替え特例で課税を繰り延べる選択肢もありますが、次回売却時に課税されます。
重要: 両制度は併用不可のため、どちらが有利か計算が必要です。
住宅ローン控除との関係:
- 3000万円特別控除を適用した年とその前後2年間は、住宅ローン控除を受けられない
- 買い替え特例を選べば、住宅ローン控除と併用可能
税理士への相談をお勧めします。
Q5. 買い替えで住宅ローン控除は受けられますか?
A. はい、新築戸建ての購入で住宅ローンを組めば住宅ローン控除を受けられます。
ただし、3000万円特別控除を適用した年とその前後2年間は住宅ローン控除を受けられません。
控除額(年間):
- 長期優良住宅・低炭素住宅:35万円
- ZEH水準省エネ住宅:31.5万円
- 省エネ基準適合住宅:28万円
- その他の住宅:0円(2024年以降)
どちらが有利か計算が必要:
- 3000万円特別控除で譲渡所得税がゼロになる場合、控除を優先
- 譲渡益が少なく、住宅ローン控除の方が有利な場合、買い替え特例を選択
税理士に相談し、総合的な税負担を比較しましょう。