新築戸建て売却の流れ|価格下落・短期譲渡税・ローン残債処理

公開日: 2025/10/18

新築戸建て売却の全体スケジュール

新築戸建て(築浅物件)を売却する場合、通常の中古物件とは異なる特徴があります。新築プレミアムの消失により、購入価格から10-20%程度下落するのが一般的ですが、築浅であることから需要は高く、売却期間は比較的短い傾向があります。

新築戸建て売却のポイント:

  • 査定から引き渡しまで平均4-7ヶ月(中古戸建てより短い傾向)
  • 新築プレミアムは購入時に10-20%程度含まれる(売却時は中古扱い)
  • 築5年以内の売却は短期譲渡税率39.63%(5年超は20.315%)
  • 3,000万円特別控除で多くのケースが非課税(居住要件を満たせば)
  • 住宅ローン残債処理が重要(オーバーローンのリスク)

査定から引渡しまでの期間(4-7ヶ月)

新築戸建て売却の全体スケジュールは以下の通りです:

ステップ 所要期間 主な内容
査定依頼 1-2週間 複数社に査定依頼、価格比較
媒介契約締結 1週間 不動産会社と契約、売却条件の決定
売却活動 3-6ヶ月 広告掲載、内覧対応、価格交渉
売買契約 1日 重要事項説明、契約書締結、手付金受領
決済・引き渡し 契約から1-2ヶ月 残代金受領、登記、鍵の引き渡し
確定申告 翌年2-3月 譲渡所得税の申告

築浅物件は需要が高いため、売却活動期間が3-4ヶ月と短いケースもあります。

築浅物件の売却期間

築年数別の平均売却期間は以下の通りです:

築年数 平均売却期間 需要
築1-3年 3-4ヶ月 高い(新築同様の状態)
築3-5年 4-5ヶ月 高い(築浅で設備も新しい)
築5-10年 5-6ヶ月 中程度
築10-20年 6-9ヶ月 中程度

新築戸建て(築5年以内)は、設備が新しく、建物の状態も良いため、買主にとって魅力的です。適正価格で売り出せば、比較的早く成約します。

各工程の所要期間

各工程の詳細な所要期間は以下の通りです:

  • 複数社への査定依頼:1-2週間(3-5社に依頼)
  • 査定書の比較検討:数日
  • 媒介契約締結:1週間
  • 売却活動開始:即日(レインズ登録、広告掲載)
  • 内覧対応:売却活動期間中、週1-3回
  • 価格交渉:数日-2週間
  • 売買契約締結:1日
  • 決済準備:1-2ヶ月(ローン審査、登記準備)
  • 決済・引き渡し:1日

査定と価格設定のポイント

新築戸建て売却で最も重要なのが、適正な価格設定です。新築プレミアムの消失を理解し、現実的な価格で売り出すことが早期成約の鍵です。

新築プレミアムの消失

新築プレミアムとは、新築物件に上乗せされる価格のことで、一度でも人が住むと「中古」扱いになり、このプレミアムが消失します。

新築プレミアムの内訳:

  • 広告宣伝費:購入価格の5-10%
  • 販売会社の利益:購入価格の5-10%
  • 「新築」というブランド価値:購入価格の5-10%

合計:購入価格の10-20%

例えば、4,000万円で購入した新築戸建ては、引き渡し直後でも中古扱いとなり、3,200-3,600万円が市場価格になります。

適正な査定価格の見極め方

査定価格は不動産会社によって異なります。適正価格を見極めるため、以下を確認しましょう:

査定書の確認ポイント:

  • 査定価格の根拠(近隣の成約事例、類似物件との比較)
  • 成約事例の築年数(築浅物件の事例を参照しているか)
  • 成約時期(直近6ヶ月以内の事例が理想)
  • 類似物件の条件(駅距離、面積、間取りが似ているか)

高値査定に注意:

相場より明らかに高い査定額を提示する会社は、媒介契約を取るための「高値提示」の可能性があります。契約後に「売れないので値下げしましょう」と提案されるケースも多いです。

購入価格からの下落率

築浅戸建ての購入価格からの下落率は、以下が目安です:

築年数 購入価格からの下落率 4,000万円購入の場合の売却価格
築1年未満 10-15%下落 3,400-3,600万円
築1-3年 15-20%下落 3,200-3,400万円
築3-5年 20-25%下落 3,000-3,200万円
築5-10年 25-30%下落 2,800-3,000万円

立地(駅近、人気エリア)や建物の状態(メンテナンス状況)によって、下落率は変動します。

新築戸建て売却の基本的な流れ

新築戸建て売却の基本的な流れは、通常の戸建て売却と同じです。

査定依頼と査定書の確認

査定依頼の流れ:

  1. 一括査定サイトで複数社(3-5社)に一斉依頼
  2. 各社から査定書を受領(1-2週間)
  3. 査定価格と根拠を比較
  4. 担当者と面談し、販売戦略を確認
  5. 媒介契約を締結する会社を決定

査定書の記載内容:

  • 査定価格(売り出し価格の目安)
  • 成約予想価格(実際に売れる価格の目安)
  • 査定の根拠(近隣の成約事例)
  • 売却活動の提案(広告の出し方、ターゲット層)

売却手続きの各ステップ

売却手続きは以下のステップで進みます:

  1. 媒介契約締結:不動産会社と契約(一般・専任・専属専任)
  2. 売却活動開始:レインズ登録、広告掲載、内覧対応
  3. 購入申込受領:買主から購入申込書を受領
  4. 価格交渉:買主と売却条件を調整
  5. 売買契約締結:重要事項説明、契約書締結、手付金受領
  6. 決済・引き渡し:残代金受領、所有権移転登記、鍵の引き渡し

必要書類の準備

新築戸建て売却に必要な書類は以下の通りです:

必須書類:

  • 登記済権利証または登記識別情報
  • 固定資産税納税通知書・評価証明書
  • 土地測量図・境界確認書(新築購入時に受領)
  • 建築確認済証・検査済証
  • 購入時の売買契約書・重要事項説明書
  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 印鑑証明書(3ヶ月以内)

任意書類:

  • 建物図面・間取り図
  • 設備の説明書・保証書
  • リフォーム・修繕履歴(ある場合)

新築購入時に受領した書類は、すべて保管しておきましょう。

媒介契約と売却活動

媒介契約を締結したら、売却活動が開始されます。

媒介契約の種類と選び方

媒介契約には3種類あります:

契約種類 複数社と契約 自己発見取引 レインズ登録 報告義務
一般媒介 可能 可能 任意 なし
専任媒介 不可 可能 義務(7日以内) 2週間に1回以上
専属専任媒介 不可 不可 義務(5日以内) 1週間に1回以上

新築戸建ての場合の選び方:

  • 人気エリア、駅近→一般媒介(複数社が競争して早期成約を目指す)
  • じっくり売却したい→専任媒介(1社が責任を持って対応)
  • 不動産会社に任せたい→専属専任媒介(完全に委任)

築浅で需要が高い物件は、一般媒介でも十分に売却可能です。

レインズへの登録

**レインズ(REINS)**とは、不動産流通標準情報システムで、全国の不動産会社が物件情報を共有するデータベースです。

専任媒介・専属専任媒介の場合:

  • 媒介契約締結から7日以内(専任)または5日以内(専属専任)にレインズへ登録義務
  • 登録証明書を売主に交付
  • 全国の不動産会社が物件情報を閲覧可能

レインズに登録されると、買主候補が大幅に増えます。

内覧対応のポイント

内覧は売却成功の鍵です。以下のポイントを押さえましょう:

準備:

  • 清掃・整理整頓:特に玄関・リビング・水回りを念入りに
  • 明るさの確保:カーテンを開け、照明をつける
  • 臭い対策:換気、消臭剤を活用
  • パンフレット準備:間取り図、設備の説明書を用意

内覧当日:

  • 笑顔で迎える:第一印象が重要
  • 質問に誠実に回答:建物の不具合や近隣状況を正直に伝える
  • 距離を保つ:買主がゆっくり見られるよう、適度な距離を保つ
  • メリットをアピール:新築時の設備、駅までの距離、学区の評判など

新築戸建ては築浅で状態が良いため、内覧で好印象を与えやすいです。

税金と諸費用の計算

新築戸建て売却では、税金と諸費用がかかります。特に短期譲渡税率に注意が必要です。

譲渡所得税の仕組み

譲渡所得の計算式:

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

**取得費:**購入価格 + 購入時の諸費用 - 減価償却費 **譲渡費用:**仲介手数料、測量費用、取り壊し費用など

減価償却費の計算:

建物は経年劣化するため、減価償却費を差し引きます。

  • 木造戸建ての法定耐用年数:22年
  • 償却率(定額法):0.046
  • 減価償却費(年額)= 建物取得価額 × 0.046 × 所有年数

計算例:

  • 購入価格:4,000万円(土地2,000万円、建物2,000万円)
  • 所有期間:3年
  • 減価償却費:2,000万円 × 0.046 × 3年 = 276万円
  • 建物の取得費:2,000万円 - 276万円 = 1,724万円
  • 土地の取得費:2,000万円
  • 合計取得費:3,724万円

短期譲渡税率(39.63%)の注意点

所有期間によって税率が大きく異なります:

所有期間 税率 内訳
短期(5年以下) 39.63% 所得税30% + 復興特別所得税0.63% + 住民税9%
長期(5年超) 20.315% 所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%

**所有期間の判定日:**売却した年の1月1日時点

例:2022年4月1日購入、2027年5月1日売却の場合

  • 実際の所有期間:5年1ヶ月
  • 判定日(2027年1月1日)時点:4年9ヶ月
  • 短期譲渡に該当(税率39.63%)

5年を超えるまで待つと、税率が半分以下になります。

3,000万円特別控除の適用要件

居住用財産の3,000万円特別控除を利用すれば、譲渡所得から3,000万円を控除できます。

適用要件:

  • 自己が居住していた不動産であること
  • 住まなくなってから3年以内の売却
  • 売却先が配偶者・親族でないこと
  • 前年・前々年にこの特例を利用していないこと

計算例:

  • 売却価格:3,500万円
  • 取得費:3,724万円
  • 譲渡費用:150万円(仲介手数料など)
  • 譲渡所得:3,500万円 - 3,724万円 - 150万円 = −374万円

譲渡所得がマイナスなので、譲渡所得税はかかりません。3,000万円特別控除を使う必要もありません。

新築戸建てを築浅で売却する場合、購入価格より下がるため、多くのケースで譲渡所得税は非課税になります。

売買契約から引渡しまでの手続き

買主が決まったら、売買契約を締結し、決済・引き渡しへと進みます。

売買契約と手付金

売買契約日には、以下を行います:

  1. 重要事項説明(宅地建物取引士が買主に説明)
  2. 売買契約書の締結(売主・買主が署名・押印)
  3. 手付金の受領(売買代金の5-10%)

売買契約書の主な記載事項:

  • 売買代金・支払方法
  • 引き渡し時期
  • 契約不適合責任の範囲・期間
  • 手付解除の条件と期限
  • 融資特約(買主のローン審査が通らなかった場合の解除条件)

契約不適合責任:

新築戸建ては築浅のため、建物の不具合は少ないですが、契約書に「築浅で状態良好」と明記し、引き渡し後のトラブルを防ぎましょう。

住宅ローン残債の処理

売却物件に住宅ローン残債がある場合、売却代金で一括返済します。

パターン1:売却価格 > ローン残債

  • 決済日に売却代金でローンを一括返済
  • 抵当権抹消登記を申請
  • 余剰金を受領

パターン2:売却価格 < ローン残債(オーバーローン)

  • 自己資金で不足分を補填
  • または住み替えローンで新居ローンに上乗せ
  • 抵当権抹消後に売却可能

計算例:

  • 売却価格:3,500万円
  • ローン残債:3,800万円
  • 不足分:300万円

不足分300万円を自己資金で補填するか、住み替えローンを検討します。

決済・引渡しの当日手続き

決済日には、売主・買主・不動産会社・司法書士・金融機関が立ち会い、以下を行います:

  1. 登記書類の確認(司法書士)
  2. 残代金の受領(買主→売主)
  3. 固定資産税・都市計画税の清算(引き渡し日で日割り計算)
  4. 鍵・書類の引き渡し(売主→買主)
  5. 抵当権抹消登記・所有権移転登記の申請(司法書士)

決済と引き渡しは同日に行われ、残代金受領と同時に所有権が移転します。

まとめ

新築戸建て売却は、新築プレミアムの消失により購入価格から10-20%程度下落するのが一般的ですが、築浅で需要が高いため、売却期間は比較的短い傾向があります。

査定価格は複数社に依頼して比較し、相場より高すぎる査定には注意しましょう。適正価格で売り出すことが早期成約の鍵です。

築5年以内の売却は短期譲渡税率39.63%が適用されますが、3,000万円特別控除を利用すれば多くのケースで非課税になります。購入価格より下がる場合、譲渡所得がマイナスになるため、税金はかかりません。

住宅ローン残債が売却価格を上回る場合、自己資金で補填するか、住み替えローンを検討する必要があります。決済日に一括返済し、抵当権を抹消してから引き渡しを行います。

よくある質問

Q1新築戸建ての売却にかかる期間は?

A1査定から引き渡しまで平均4-7ヶ月です。内訳は、査定1-2週間、媒介契約締結1週間、売却活動3-6ヶ月、契約から決済まで1-2ヶ月です。築浅物件は需要が高く、適正価格で売り出せば3-4ヶ月で成約するケースもあります。立地(駅近、人気エリア)や建物の状態によって売却期間は変動します。

Q2新築で買った戸建て、売却するといくら下がる?

A2新築プレミアムは購入時に10-20%程度含まれており、一度でも人が住むと「中古」扱いになりこのプレミアムが消失します。築1年未満で10-15%下落、築1-3年で15-20%下落、築3-5年で20-25%下落が目安です。例えば4,000万円で購入した新築戸建ては、築1-3年で3,200-3,400万円が市場価格になります。立地や建物の状態によって下落率は変動します。

Q3築5年以内の売却、税金は高い?

A3所有期間5年以下は短期譲渡税率39.63%が適用されます(5年超は20.315%)。ただし、居住用財産の3,000万円特別控除を利用すれば、譲渡所得から3,000万円を控除できるため、多くのケースで非課税になります。新築戸建てを築浅で売却する場合、購入価格より下がるため譲渡所得がマイナスになり、税金がかからないケースが多いです。

Q4住宅ローン残債が売却価格より多い場合は?

A4オーバーローン状態です。自己資金で不足分を補填するか、住み替えローンで新居のローンに上乗せする方法があります。例えば、売却価格3,500万円、ローン残債3,800万円なら、不足分300万円を自己資金で補填するか、住み替えローンを検討します。金融機関の承諾を得て抵当権を抹消してから売却する必要があります。任意売却を検討する場合は、金融機関と早めに相談しましょう。

Q5新築戸建て売却の諸費用はいくらかかりますか?

A5主な諸費用は、仲介手数料(売買代金×3%+6万円+消費税、上限)、抵当権抹消登記費用(1-2万円、ローン残債がある場合)、測量費用(30-80万円、境界確定が必要な場合)、引越し費用(10-20万円)です。例えば3,500万円で売却する場合、仲介手数料は約123万円、その他諸費用を含めて合計150-200万円が目安です。

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