新築戸建て購入時の登記の基本
新築戸建てを購入する際、登記手続きは避けて通れません。しかし、登記の種類や手続きの流れは複雑で、初めての方には分かりにくいものです。
本記事では、新築戸建て購入時の登記・名義変更の基礎知識と手続きの流れを解説します。
この記事でわかること:
- 新築戸建てで必要な3種類の登記(建物表題登記・所有権保存登記・抵当権設定登記)
- 土地家屋調査士と司法書士の役割分担
- 建物表題登記の申請期限(完成後1ヶ月以内)
- 登記にかかる費用と税制優遇措置
- 住宅ローン利用時の手続きの流れ
新築戸建て購入時の登記の基礎知識
(1) 登記とは何か:不動産取引における役割
登記とは、不動産の物理的状況や権利関係を法務局の登記簿に記録する手続きです。第三者に対して「この不動産は私のものです」と主張するための重要な制度です。
(2) 新築戸建てならではの登記の特徴
中古住宅の購入では所有権移転登記を行いますが、新築戸建ての場合は建物がまだ登記されていない状態からスタートします。そのため、以下の順序で登記を行います:
- 建物表題登記(建物の物理的情報を登記)
- 所有権保存登記(最初の所有者を登記)
- 抵当権設定登記(住宅ローン利用時)
新築特有の登記の種類と流れ
(1) 表題登記→保存登記→抵当権設定登記の順序
法務局の資料によると、新築戸建ての登記は以下の順序で進めます:
ステップ | 登記種類 | 担当者 | 期限 |
---|---|---|---|
1 | 建物表題登記 | 土地家屋調査士 | 完成後1ヶ月以内 |
2 | 所有権保存登記 | 司法書士 | 任意(ローン利用時は必須) |
3 | 抵当権設定登記 | 司法書士 | ローン実行と同時 |
(2) 土地家屋調査士と司法書士の役割分担
土地家屋調査士:
- 建物表題登記を担当
- 建物の物理的状況(所在地・構造・床面積)を測量・調査
司法書士:
- 所有権保存登記・抵当権設定登記を担当
- 権利関係の登記を専門とする
(3) 登記完了までのスケジュール
一般的なスケジュール:
- 建物完成
- 引き渡し前後:建物表題登記(1週間程度)
- 引き渡し当日:所有権保存登記・抵当権設定登記(即日〜数日)
建物表題登記の手続きと費用
(1) 建物表題登記とは:建物の物理的状況の登記
建物表題登記は、新築建物の物理的情報(所在地・種類・構造・床面積など)を登記簿に初めて記録する手続きです。
登記事項:
- 所在地番
- 家屋番号
- 種類(居宅・店舗など)
- 構造(木造・鉄骨造など)
- 床面積
(2) 申請期限と必要書類(完成後1ヶ月以内)
法務局の資料によると、建物表題登記は建物完成後1ヶ月以内に申請する義務があります。違反すると10万円以下の過料が科される可能性があります。
必要書類:
- 建築確認済証・検査済証
- 工事完了引渡証明書
- 建物図面・各階平面図
- 住民票
(3) 土地家屋調査士報酬の相場
土地家屋調査士の報酬は地域や建物規模により異なりますが、一般的な相場は7〜10万円程度です。
所有権保存登記の手続きと費用
(1) 所有権保存登記とは:最初の所有者を記録
所有権保存登記は、新築建物の最初の所有者を登記簿に記録する手続きです。法務局の資料によると、表題登記完了後に申請できます。
(2) 法務局での申請手続きの流れ
所有権保存登記は、司法書士に依頼するのが一般的です。
手続きの流れ:
- 司法書士に必要書類を提出
- 司法書士が登記申請書を作成
- 法務局に申請
- 登記完了(数日〜1週間)
(3) 登録免許税と司法書士報酬
登録免許税:
- 標準税率:固定資産税評価額 × 0.4%
- 軽減措置適用時:固定資産税評価額 × 0.15%
司法書士報酬:
- 相場:3〜5万円
計算例:
- 建物評価額:1,500万円
- 登録免許税(軽減適用):1,500万円 × 0.15% = 2.25万円
- 司法書士報酬:4万円
- 合計:約6.25万円
住宅ローン利用時の抵当権設定登記
(1) 抵当権設定登記の仕組み
住宅ローンを借りる場合、金融機関が不動産に担保権(抵当権)を設定します。この権利を登記するのが抵当権設定登記です。
(2) 金融機関との調整と必要書類
抵当権設定登記は、所有権保存登記と同時に行われるのが一般的です。司法書士が金融機関と調整し、引き渡し当日に手続きを行います。
必要書類:
- 金銭消費貸借契約書
- 抵当権設定契約書
- 印鑑証明書
- 住民票
(3) 抵当権設定登録免許税の計算
登録免許税:
- 標準税率:借入額 × 0.4%
- 軽減措置適用時:借入額 × 0.1%
計算例:
- 借入額:3,000万円
- 登録免許税(軽減適用):3,000万円 × 0.1% = 3万円
- 司法書士報酬:3〜5万円
- 合計:約6〜8万円
登記にかかる費用と税制優遇措置の全体像
(1) 登録免許税の軽減措置(0.4%→0.15%)
国税庁の資料によると、新築住宅の所有権保存登記には軽減措置があります。
適用要件:
- 床面積50㎡以上
- 取得後1年以内の登記
- 自己居住用
軽減措置適用により、登録免許税が0.4%から0.15%に減額されます。
(2) 土地家屋調査士・司法書士報酬の合計
登記費用の目安(建物評価額1,500万円、借入額3,000万円の場合):
項目 | 費用 |
---|---|
建物表題登記(土地家屋調査士報酬) | 7〜10万円 |
所有権保存登記(登録免許税+司法書士報酬) | 6〜7万円 |
抵当権設定登記(登録免許税+司法書士報酬) | 6〜8万円 |
合計 | 19〜25万円 |
(3) 住宅ローン控除と登記の関係
住宅ローン控除を受けるには、所有権保存登記が必要です。取得後6ヶ月以内に居住開始し、その年の12月31日まで居住していることが要件です。
住宅ローン控除:
- 年末残高の0.7%を最大13年間控除
- 新築最大3,000万円(税額21万円)
まとめ
新築戸建て購入時の登記は、建物表題登記・所有権保存登記・抵当権設定登記の3種類が必要です。建物表題登記は完成後1ヶ月以内の申請義務があり、土地家屋調査士が担当します。所有権保存登記と抵当権設定登記は司法書士が担当し、住宅ローン利用時は同時に手続きを行います。
重要ポイント:
- 建物表題登記は完成後1ヶ月以内に申請義務
- 土地家屋調査士(表題登記)と司法書士(権利登記)の役割分担
- 登録免許税の軽減措置で0.4%→0.15%に減額
- 登記費用の総額は19〜25万円程度
建築会社や不動産会社が土地家屋調査士・司法書士を紹介してくれるのが一般的です。専門家に依頼することで、スムーズな登記手続きが可能です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 新築戸建てを購入する場合、どのような登記が必要ですか?
A. 建物表題登記(土地家屋調査士が担当)、所有権保存登記(司法書士が担当)、住宅ローン利用時は抵当権設定登記が必要です。この順序で進めます。
Q2. 建物表題登記はいつまでに申請しないといけませんか?
A. 建物完成後1ヶ月以内に申請する義務があり、違反すると10万円以下の過料が科されます。通常は建築会社や土地家屋調査士が手配します。
Q3. 新築戸建ての登記費用はどのくらいかかりますか?
A. 建物表題登記(土地家屋調査士報酬7〜10万円)、所有権保存登記の登録免許税(固定資産税評価額の0.15〜0.4%)と司法書士報酬(3〜5万円)、抵当権設定登記(登録免許税+司法書士報酬で6〜8万円)が主な費用です。総額で19〜25万円程度が目安です。
Q4. 土地家屋調査士と司法書士はどう違いますか?
A. 土地家屋調査士は建物の物理的状況(構造・床面積など)を登記する表題登記を担当し、司法書士は所有権や抵当権など権利関係の登記を担当します。新築戸建ての購入では両方の専門家が必要です。