買い替えで中古マンションを売却する際の固定資産税の基本
買い替えで中古マンションを売却する際、固定資産税の取り扱いは重要な確認事項です。本記事では、売却年の固定資産税の支払義務、日割り清算の実務、買主との負担調整について詳しく解説します。
本記事のポイント
- 1月1日時点の所有者に納税義務があり、売却後も納税通知書が届く
- 売却時は引渡日を基準に日割り計算で買主と清算するのが一般的
- 起算日は関東(1月1日)と関西(4月1日)で異なり、清算金額に影響
- 清算金は売却益の一部として扱われ、譲渡所得の計算に影響する場合がある
- 買い替え特例との併用時は税理士への相談を推奨
固定資産税は1月1日時点の所有者に課税
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者が納税義務を負います。年の途中で売却しても、1月1日時点で所有していれば、その年の固定資産税を納付する義務があります。
売却年の納税義務
- 1月2日に売却: その年の固定資産税は売主が負担(ただし精算が一般的)
- 12月31日に売却: その年は売主が納税、翌年から買主
- 納税通知書: 4〜6月頃に1月1日時点の所有者に送付
売却後に納税通知書が届いても驚かないよう、事前に理解しておきましょう。
売却後に届く納税通知書の対応方法
年の途中で売却した場合でも、売主宛てに納税通知書が届きます。
対応手順
- 納税通知書を確認(年税額を把握)
- 清算時の計算が正しいか確認
- 売主負担分を納付
- 買主から清算金を受領済みであれば、買主分の納付も売主が実施
清算金の授受が済んでいれば、売主が全額を納付しても実質的な損失はありません。
売却時の固定資産税清算の実務
日割り計算による買主との精算
中古マンション売却時、固定資産税を売主・買主間で日割り計算して精算するのが一般的です。
精算の流れ
- 売主が年税額を確認(納税通知書)
- 引渡日を基準に日割り計算
- 買主負担分を清算金として授受
- 売主が全額を納税
この精算は法的義務ではなく商慣行ですが、ほぼすべての取引で実施されています。
起算日による清算金額の違い
固定資産税精算の起算日は地域により異なります。
地域別の起算日
- 関東(東京・神奈川など): 1月1日起算
- 関西(大阪・京都など): 4月1日起算
精算金額の差異(年税額12万円、7月1日引渡しの例)
起算日 | 売主負担期間 | 売主負担額 | 買主清算金 |
---|---|---|---|
1月1日(関東) | 1/1~6/30(181日) | 59,507円 | 60,493円 |
4月1日(関西) | 4/1~6/30(91日) | 29,918円 | 90,082円 |
起算日により清算金額が数万円変わるため、契約書に起算日を明記することが重要です。
清算金の税務上の取り扱い
固定資産税の清算金は、税務上の取り扱いに注意が必要です。
清算金の位置づけ
- 原則: 売却代金の一部として扱われる
- 譲渡所得の計算: 清算金を含めた金額で譲渡所得を計算
- 3,000万円特別控除: 清算金を含めても適用可能
買い替え特例を適用する場合は、清算金の取り扱いについて税理士に相談することをお勧めします。
買い替えパターン別の税負担
売り先行の場合
旧居を先に売却し、その後新居を購入するパターンです。
税負担のタイミング
- 1月1日時点で旧居のみ所有: 旧居の固定資産税のみ
- 旧居売却後、年末までに新居購入: 翌年1月1日以降、新居の固定資産税が課税
- 1月1日時点で不動産を所有していない: その年の固定資産税負担なし
売り先行は、二重負担のリスクが低いパターンです。
買い先行の場合
新居を先に購入し、その後旧居を売却するパターンです。
税負担のタイミング
- 1月1日時点で両方所有: 旧居・新居の両方に固定資産税が課税
- 二重負担期間の資金計画に注意
買い先行は、1月1日をまたぐと二重負担のリスクがあります。
同時決済の場合
旧居の売却と新居の購入を同日に決済するパターンです。
税負担のタイミング
- 決済日が1月1日以外: 1月1日時点の所有状況で課税
- 年末に決済: 翌年1月1日から新居のみ課税
- 年始に決済: その年は旧居のみ課税
二重負担を回避する方法
引渡時期の調整
二重負担を避けるには、引渡時期を調整します。
調整パターン
- 年末までに旧居を売却: 翌年1月1日から旧居の固定資産税負担なし
- 年始に新居を購入: その年は旧居のみ課税、翌年から新居のみ
不動産会社に相談し、引渡時期を調整することで二重負担を回避できます。
資金計画への組み込み
買い替えの資金計画では、固定資産税の負担を織り込みます。
資金計画の例
- 旧居売却代金: 3,000万円
- 固定資産税清算金(受領): 6万円
- 新居購入費用: 3,500万円
- 新居固定資産税(初年度): 8万円
清算金と新居の固定資産税を含めた総費用を把握し、資金計画を立てましょう。
買い替え特例との関係
買い替え特例の適用要件
買い替え特例は、居住用財産を売却し、新たに居住用財産を購入した場合に適用できる特例です。
主な要件
- 居住期間10年以上
- 売却価格1億円以下
- 買い替え物件の床面積50㎡以上
- 買い替え物件の居住開始時期
固定資産税清算金の取り扱い
買い替え特例を適用する場合、固定資産税清算金の取り扱いに注意が必要です。
清算金の位置づけ
- 清算金を含めた金額で譲渡所得を計算
- 買い替え特例の適用判定(1億円以下)にも影響
税理士に相談し、最適な税制優遇を選択しましょう。
3,000万円特別控除との併用
買い替え特例と3,000万円特別控除は併用できません。
選択のポイント
- 3,000万円特別控除: 譲渡益が3,000万円以下なら税額ゼロ
- 買い替え特例: 譲渡益の課税を将来に繰り延べ
どちらを選択するかは、譲渡益の額や将来の売却予定により異なります。
まとめ
買い替えで中古マンションを売却する際の固定資産税について、重要なポイントを整理します。
押さえるべきポイント
- 1月1日時点の所有者に納税義務があり、売却後も納税通知書が届く
- 売却時は引渡日を基準に日割り計算で買主と清算するのが一般的
- 起算日は関東(1月1日)と関西(4月1日)で異なり、清算金額に数万円の差が出る
- 清算金は売却益の一部として扱われ、譲渡所得の計算に影響する
- 買い替え特例との併用時は税理士への相談を推奨
- 引渡時期を調整することで二重負担を回避できる
買い替えの資金計画では、固定資産税の清算を正確に把握し、引渡時期を調整することが重要です。不明点がある場合は、不動産会社や税理士に相談し、最適な買い替えプランを立てましょう。