買い替えで中古マンション売却時の固定資産税|日割り清算と二重負担回避

公開日: 2025/10/14

買い替えで中古マンションを売却する際の固定資産税の基本

買い替えで中古マンションを売却する際、固定資産税の取り扱いは重要な確認事項です。本記事では、売却年の固定資産税の支払義務、日割り清算の実務、買主との負担調整について詳しく解説します。

本記事のポイント

  • 1月1日時点の所有者に納税義務があり、売却後も納税通知書が届く
  • 売却時は引渡日を基準に日割り計算で買主と清算するのが一般的
  • 起算日は関東(1月1日)と関西(4月1日)で異なり、清算金額に影響
  • 清算金は売却益の一部として扱われ、譲渡所得の計算に影響する場合がある
  • 買い替え特例との併用時は税理士への相談を推奨

固定資産税は1月1日時点の所有者に課税

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者が納税義務を負います。年の途中で売却しても、1月1日時点で所有していれば、その年の固定資産税を納付する義務があります。

売却年の納税義務

  • 1月2日に売却: その年の固定資産税は売主が負担(ただし精算が一般的)
  • 12月31日に売却: その年は売主が納税、翌年から買主
  • 納税通知書: 4〜6月頃に1月1日時点の所有者に送付

売却後に納税通知書が届いても驚かないよう、事前に理解しておきましょう。

売却後に届く納税通知書の対応方法

年の途中で売却した場合でも、売主宛てに納税通知書が届きます。

対応手順

  1. 納税通知書を確認(年税額を把握)
  2. 清算時の計算が正しいか確認
  3. 売主負担分を納付
  4. 買主から清算金を受領済みであれば、買主分の納付も売主が実施

清算金の授受が済んでいれば、売主が全額を納付しても実質的な損失はありません。

売却時の固定資産税清算の実務

日割り計算による買主との精算

中古マンション売却時、固定資産税を売主・買主間で日割り計算して精算するのが一般的です。

精算の流れ

  1. 売主が年税額を確認(納税通知書)
  2. 引渡日を基準に日割り計算
  3. 買主負担分を清算金として授受
  4. 売主が全額を納税

この精算は法的義務ではなく商慣行ですが、ほぼすべての取引で実施されています。

起算日による清算金額の違い

固定資産税精算の起算日は地域により異なります。

地域別の起算日

  • 関東(東京・神奈川など): 1月1日起算
  • 関西(大阪・京都など): 4月1日起算

精算金額の差異(年税額12万円、7月1日引渡しの例)

起算日 売主負担期間 売主負担額 買主清算金
1月1日(関東) 1/1~6/30(181日) 59,507円 60,493円
4月1日(関西) 4/1~6/30(91日) 29,918円 90,082円

起算日により清算金額が数万円変わるため、契約書に起算日を明記することが重要です。

清算金の税務上の取り扱い

固定資産税の清算金は、税務上の取り扱いに注意が必要です。

清算金の位置づけ

  • 原則: 売却代金の一部として扱われる
  • 譲渡所得の計算: 清算金を含めた金額で譲渡所得を計算
  • 3,000万円特別控除: 清算金を含めても適用可能

買い替え特例を適用する場合は、清算金の取り扱いについて税理士に相談することをお勧めします。

買い替えパターン別の税負担

売り先行の場合

旧居を先に売却し、その後新居を購入するパターンです。

税負担のタイミング

  • 1月1日時点で旧居のみ所有: 旧居の固定資産税のみ
  • 旧居売却後、年末までに新居購入: 翌年1月1日以降、新居の固定資産税が課税
  • 1月1日時点で不動産を所有していない: その年の固定資産税負担なし

売り先行は、二重負担のリスクが低いパターンです。

買い先行の場合

新居を先に購入し、その後旧居を売却するパターンです。

税負担のタイミング

  • 1月1日時点で両方所有: 旧居・新居の両方に固定資産税が課税
  • 二重負担期間の資金計画に注意

買い先行は、1月1日をまたぐと二重負担のリスクがあります。

同時決済の場合

旧居の売却と新居の購入を同日に決済するパターンです。

税負担のタイミング

  • 決済日が1月1日以外: 1月1日時点の所有状況で課税
  • 年末に決済: 翌年1月1日から新居のみ課税
  • 年始に決済: その年は旧居のみ課税

二重負担を回避する方法

引渡時期の調整

二重負担を避けるには、引渡時期を調整します。

調整パターン

  • 年末までに旧居を売却: 翌年1月1日から旧居の固定資産税負担なし
  • 年始に新居を購入: その年は旧居のみ課税、翌年から新居のみ

不動産会社に相談し、引渡時期を調整することで二重負担を回避できます。

資金計画への組み込み

買い替えの資金計画では、固定資産税の負担を織り込みます。

資金計画の例

  • 旧居売却代金: 3,000万円
  • 固定資産税清算金(受領): 6万円
  • 新居購入費用: 3,500万円
  • 新居固定資産税(初年度): 8万円

清算金と新居の固定資産税を含めた総費用を把握し、資金計画を立てましょう。

買い替え特例との関係

買い替え特例の適用要件

買い替え特例は、居住用財産を売却し、新たに居住用財産を購入した場合に適用できる特例です。

主な要件

  • 居住期間10年以上
  • 売却価格1億円以下
  • 買い替え物件の床面積50㎡以上
  • 買い替え物件の居住開始時期

固定資産税清算金の取り扱い

買い替え特例を適用する場合、固定資産税清算金の取り扱いに注意が必要です。

清算金の位置づけ

  • 清算金を含めた金額で譲渡所得を計算
  • 買い替え特例の適用判定(1億円以下)にも影響

税理士に相談し、最適な税制優遇を選択しましょう。

3,000万円特別控除との併用

買い替え特例と3,000万円特別控除は併用できません。

選択のポイント

  • 3,000万円特別控除: 譲渡益が3,000万円以下なら税額ゼロ
  • 買い替え特例: 譲渡益の課税を将来に繰り延べ

どちらを選択するかは、譲渡益の額や将来の売却予定により異なります。

まとめ

買い替えで中古マンションを売却する際の固定資産税について、重要なポイントを整理します。

押さえるべきポイント

  • 1月1日時点の所有者に納税義務があり、売却後も納税通知書が届く
  • 売却時は引渡日を基準に日割り計算で買主と清算するのが一般的
  • 起算日は関東(1月1日)と関西(4月1日)で異なり、清算金額に数万円の差が出る
  • 清算金は売却益の一部として扱われ、譲渡所得の計算に影響する
  • 買い替え特例との併用時は税理士への相談を推奨
  • 引渡時期を調整することで二重負担を回避できる

買い替えの資金計画では、固定資産税の清算を正確に把握し、引渡時期を調整することが重要です。不明点がある場合は、不動産会社や税理士に相談し、最適な買い替えプランを立てましょう。

よくある質問

Q1買い替えで中古マンションを売却した場合、固定資産税は誰が負担しますか?

A1法的には1月1日時点の所有者(売主)に納税義務があります。ただし、実務上は売主と買主が引渡日を基準に日割り計算で按分精算するのが一般的です。決済時に買主負担分を清算金として授受し、売主が全額を納付する形が多く見られます。

Q2売却後に届いた納税通知書はどうすればいいですか?

A21月1日時点の所有者として納税通知書が届くため、売主に納付義務があります。按分清算済みであれば、買主負担分は清算金として決済時に受領済みです。売主は自己負担分と買主負担分を合わせた全額を納付し、実質的な負担は自己の保有期間分のみとなります。

Q3起算日が関東と関西で違うとどう影響しますか?

A3関東は1月1日、関西は4月1日起算が一般的です。起算日により按分期間が変わり、清算金額に差が出ます。例えば7月引渡しの場合、関東方式では売主が約半年分、関西方式では売主が約3ヶ月分を負担します。契約前に起算日を確認し、契約書に明記しておくことが重要です。

Q4固定資産税の清算金は譲渡所得に影響しますか?

A4清算金は原則として売却代金の一部として扱われ、譲渡所得の計算に含まれます。買い替え特例や3,000万円特別控除を適用する場合、清算金を含めた金額で判定されます。税務上の取り扱いが複雑になる場合は、税理士への相談をお勧めします。

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