買い替えで中古マンション購入時の固定資産税・都市計画税の基礎知識
買い替えで中古マンションを購入する際、固定資産税・都市計画税は重要なランニングコストです。本記事では、中古マンション特有の税額計算方法、新築との違い、買い替えパターン別の税負担、二重負担を回避する方法について詳しく解説します。
本記事のポイント
- 固定資産税は1月1日時点の所有者に課税(買い替えタイミングで二重負担の可能性)
- 中古マンションは築年数により評価額が減少し、固定資産税も低くなる
- 新築軽減措置は適用されないが、住宅用地の特例(1/6軽減)は適用される
- 年間5〜10万円が目安(築10年で6〜8万円、築20年で5〜7万円)
- 1月1日をまたぐ買い替えは二重負担のリスクがあるため引渡時期の調整が重要
(1) 固定資産税の仕組みと税率
固定資産税は、土地・家屋・償却資産に課される市町村税です。東京都主税局の資料によると、毎年1月1日時点の所有者が納税義務を負います。
固定資産税の基本
- 課税基準日: 毎年1月1日
- 納税義務者: 1月1日時点の所有者
- 税率: 標準税率1.4%(市町村により異なる場合あり)
- 納付時期: 年4回分割納付が一般的
買い替えの場合、旧居の売却と新居の購入のタイミングにより、納税義務が変わります。
(2) 都市計画税の仕組みと課税対象
総務省の資料によると、都市計画税は都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てるための目的税です。
都市計画税の基本
- 課税対象: 市街化区域内の土地・家屋
- 税率: 上限0.3%(自治体により異なる)
- 納付: 固定資産税と合算
買い替え先のマンションが市街化区域内にあれば、固定資産税に加えて都市計画税も課税されます。
(3) 課税標準額の計算方法
固定資産税の税額は、課税標準額に税率を乗じて算出されます。
計算式
- 固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
- 都市計画税 = 課税標準額 × 0.3%(上限)
課税標準額は固定資産税評価額に特例措置を適用した金額です。
中古マンションの固定資産税の計算方法
(1) 専有面積・築年数による評価額
中古マンションの固定資産税評価額は、専有面積と築年数により決まります。
評価額の決定要素
- 専有面積: 広いほど評価額が高い
- 築年数: 古いほど評価額が低い(経年減価補正率適用)
- 建物の構造: 鉄筋コンクリート造は木造より評価額が高い
- 所在地: 地価の高い地域ほど土地評価額が高い
(2) 経年減価補正による評価額の減少
HOME4Uの資料によると、中古マンションは築年数に応じて経年減価補正率が適用されます。
築年数別の経年減価補正率
- 築10年: 補正率約0.68(新築時の約68%)
- 築20年: 補正率約0.51(新築時の約51%)
- 築30年: 補正率約0.40(新築時の約40%)
築20年で評価額が新築時の約半分に下がるため、固定資産税も約半分になります。
(3) 実際の税額計算例
築10年・70㎡の中古マンションの例
- 建物評価額: 1,500万円(新築時3,000万円 × 補正率0.5)
- 土地評価額(専有部分): 1,000万円
- 小規模住宅用地特例適用: 1,000万円 × 1/6 = 167万円(課税標準額)
- 固定資産税: (1,500万円 + 167万円) × 1.4% = 約7.3万円
- 都市計画税: (1,000万円 × 1/3) × 0.3% = 約0.1万円
- 合計: 約7.4万円/年
中古マンションの軽減措置と新築との違い
(1) 住宅用地の特例(小規模住宅用地1/6)
東京都主税局の資料によると、住宅用地には課税標準額を軽減する特例があります。
住宅用地の特例
- 小規模住宅用地(200㎡以下): 固定資産税評価額の1/6、都市計画税評価額の1/3
- 一般住宅用地(200㎡超): 固定資産税評価額の1/3、都市計画税評価額の2/3
マンションの場合、専有面積に応じた敷地権割合で特例が適用されます。
(2) 新築減額措置は適用されない
中古マンションは新築軽減措置の対象外です。
新築軽減措置との違い
項目 | 新築マンション | 中古マンション |
---|---|---|
新築軽減措置 | 建物部分が5年間1/2軽減 | 適用なし |
住宅用地特例 | 適用あり | 適用あり |
初年度税額 | 低い(軽減措置適用) | 通常税率 |
新築マンションと比較すると、中古マンションは初年度から通常税率が適用されるため、税額が高く感じられることがあります。
(3) 中古マンションの税額目安(5〜10万円)
SUUMOの資料によると、中古マンションの固定資産税は年間5〜10万円程度が目安です。
築年数別の税額目安
- 築10年(70㎡): 約6〜8万円
- 築20年(70㎡): 約5〜7万円
- 築30年(70㎡): 約4〜6万円
築年数が経過するほど評価額が下がり、固定資産税も減少します。
買い替えパターン別の税負担比較
(1) 売り先行(旧居売却→新居購入)
旧居を先に売却し、その後新居を購入するパターンです。
税負担のタイミング
- 1月1日時点で旧居のみ所有: 旧居の固定資産税のみ
- 旧居売却後、年末までに新居購入: 翌年1月1日以降、新居の固定資産税が課税
- 1月1日時点で不動産を所有していない: その年の固定資産税負担なし
売り先行は、二重負担のリスクが低いパターンです。
(2) 買い先行(新居購入→旧居売却)
新居を先に購入し、その後旧居を売却するパターンです。
税負担のタイミング
- 1月1日時点で両方所有: 旧居・新居の両方に固定資産税が課税
- 二重ローン期間がある場合: 資金計画に注意
買い先行は、1月1日をまたぐと二重負担のリスクがあります。
(3) 同時決済
旧居の売却と新居の購入を同日に決済するパターンです。
税負担のタイミング
- 決済日が1月1日以外: 1月1日時点の所有状況で課税
- 年末に決済: 翌年1月1日から新居のみ課税
- 年始に決済: その年は旧居のみ課税
同時決済でも、1月1日時点の所有状況により税負担が変わります。
旧居売却との二重負担を回避する方法
(1) 1月1日をまたぐ買い替えのリスク
1月1日時点で旧居・新居の両方を所有していると、両方に固定資産税が課税されます。
二重負担の例
- 旧居の固定資産税: 10万円
- 新居の固定資産税: 8万円
- 合計: 18万円(1年間の二重負担)
資金計画では、この二重負担を考慮する必要があります。
(2) 引渡時期の調整
二重負担を避けるには、引渡時期を調整します。
調整パターン
- 年末までに旧居を売却し、新居を購入: 翌年1月1日から新居のみ課税
- 年始に旧居を売却し、新居を購入: その年は旧居のみ課税、翌年から新居のみ
- 12月中に売買契約、1月引渡し: 1月1日時点の所有状況で課税
不動産会社に相談し、引渡時期を調整することで二重負担を回避できます。
(3) 資金計画における税負担の組み込み
買い替えの資金計画では、固定資産税の負担を織り込みます。
資金計画の例
- 旧居売却代金: 3,000万円
- 新居購入費用: 3,500万円(頭金500万円、ローン3,000万円)
- 固定資産税(初年度): 8万円(新居分)
- 諸費用: 200万円
- 必要資金: 3,500万円 + 8万円 + 200万円 = 3,708万円
固定資産税を含めた総費用を把握し、資金計画を立てましょう。
住宅ローン控除との併用
(1) 中古住宅の住宅ローン控除(最大2,000万円)
ダイヤモンド不動産研究所の資料によると、中古マンションでも住宅ローン控除が受けられます。
住宅ローン控除の要件
- 築年数要件: 耐火建築物25年以内(マンションは一般的に該当)
- 借入限度額: 最大2,000万円
- 控除率: 年末残高の0.7%
- 控除期間: 10年間
- 最大控除額: 14万円/年(2,000万円 × 0.7%)
(2) 固定資産税との関係
住宅ローン控除と固定資産税は別の制度です。
併用時の税負担
- 住宅ローン控除: 所得税・住民税から控除(最大14万円/年)
- 固定資産税: 別途課税(年間5〜10万円)
住宅ローン控除により所得税が減少しますが、固定資産税は別途納付が必要です。
(3) 買い替え時の注意点
買い替えで新たにローンを組む場合、住宅ローン控除を受けられます。
買い替え時の要件
- 旧居のローンを完済してから新居のローンを組む
- 新居に居住すること(賃貸に出すと控除停止)
- 旧居の売却益に「譲渡所得の特別控除」を適用した場合、住宅ローン控除との併用不可
買い替え時は、税理士に相談し、最適な税制優遇を選択しましょう。
まとめ
買い替えで中古マンションを購入する際の固定資産税・都市計画税について、重要なポイントを整理します。
押さえるべきポイント
- 固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されるため、買い替えタイミングで二重負担のリスクがある
- 中古マンションは築年数により評価額が減少し、固定資産税も低くなる(築20年で約半分)
- 新築軽減措置は適用されないが、住宅用地の特例(小規模住宅用地1/6軽減)は適用される
- 年間5〜10万円が目安(築10年で6〜8万円、築20年で5〜7万円)
- 1月1日をまたぐ買い替えは二重負担のリスクがあるため、引渡時期の調整が重要
- 住宅ローン控除(最大14万円/年)と固定資産税(年間5〜10万円)は別の制度
買い替えの資金計画では、固定資産税の負担を正確に把握し、二重負担を回避するために引渡時期を調整することが重要です。不明点がある場合は、不動産会社や税理士に相談し、最適な買い替えプランを立てましょう。