相続資金で中古戸建てを購入する際の固定資産税の基本
相続により実家などの不動産を取得したり、相続資金を活用して新たに中古戸建てを購入する場合、固定資産税・都市計画税の仕組みを正しく理解しておくことが重要です。相続による不動産取得と新規購入では、税制が大きく異なります。
本記事では、相続資金で中古戸建てを購入する際の固定資産税・都市計画税の基本から、相続による取得と新規購入の税務の違い、軽減措置の適用、資金計画への組み込み方まで、実務上必要な情報を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 相続による取得は不動産取得税が非課税、新規購入は課税対象
- 固定資産税は相続・新規購入いずれも翌年1月1日から課税開始
- 住宅用地の特例(200㎡以下で評価額の1/6)は相続資金での購入でも適用
- 中古戸建ては新築軽減措置の対象外だが、築年数により建物評価額が下がる
- 相続戸建てを売却して新規購入する場合、譲渡所得税も考慮が必要
相続資金で中古戸建て購入時の固定資産税・都市計画税の基礎知識
固定資産税の仕組みと税率
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地・建物を所有している人に課される地方税です。標準税率は1.4%ですが、市町村により異なる場合があります(東京都主税局 固定資産税・都市計画税)。
相続資金で中古戸建てを購入した場合、購入翌年の1月1日時点で所有していれば納税義務が発生します。購入年は課税されず、翌年から課税される点に注意が必要です。
都市計画税の仕組みと課税対象
都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てるための目的税です(総務省 都市計画税)。税率は上限0.3%(自治体の条例で決定)で、市街化区域内の土地・建物のみに課税されます。
市街化調整区域や非線引き区域では課税されないため、購入予定の中古戸建ての所在地を事前に確認することが重要です。
納税義務者(1月1日時点の所有者)
固定資産税・都市計画税の納税義務者は、毎年1月1日時点で固定資産課税台帳に登録されている所有者です。
例えば、2025年7月に中古戸建てを購入した場合:
- 2025年分:課税なし(1月1日時点の所有者は前所有者)
- 2026年分以降:課税あり(1月1日時点で所有)
ただし、実務上は引渡日から年末までの固定資産税を日割り計算して、売主・買主間で精算する慣習があります。
相続による戸建て取得と新規購入の税務の違い
相続による取得(不動産取得税非課税、登録免許税0.4%)
相続により不動産を取得した場合、不動産取得税は非課税となります(東京都主税局 不動産取得税)。また、相続登記の登録免許税は固定資産税評価額の0.4%です。
相続による取得の税負担:
- 不動産取得税:非課税
- 登録免許税:評価額の0.4%
- 固定資産税:翌年1月1日から課税
新規購入(不動産取得税3〜4%、登録免許税0.3〜2%)
新規購入の場合、不動産取得税(税率4%、軽減措置で3%)と登録免許税(所有権移転登記:土地1.5%、建物2%)が課税されます。
新規購入の税負担:
- 不動産取得税:評価額の3〜4%(軽減措置あり)
- 登録免許税:土地1.5%、建物2%(軽減措置で0.3%)
- 固定資産税:翌年1月1日から課税
相続と新規購入では、取得時の税負担が大きく異なります。
固定資産税の負担開始タイミング
固定資産税・都市計画税の負担開始タイミングは、相続・新規購入いずれも同じです:
- 相続: 相続発生後の最初の1月1日から課税
- 新規購入: 購入後の最初の1月1日から課税
ただし、新規購入の場合は、引渡日から年末までの固定資産税を日割り精算するため、購入1年目から実質的な負担が発生します。
中古戸建ての軽減措置と相続後の適用
住宅用地の特例(小規模住宅用地1/6)
住宅用地については、固定資産税・都市計画税の課税標準額を大幅に軽減する特例があります:
小規模住宅用地(200㎡以下):
- 固定資産税:評価額の1/6
- 都市計画税:評価額の1/3
この特例は、相続資金での購入でも適用されます。新築・中古を問わず、住宅用地であれば適用対象です。
新築減額措置は適用されない
中古戸建ては、新築住宅の減額措置(3年間、建物部分の固定資産税が1/2)の対象外です。新築時に購入した場合のみ適用される特例のため、中古購入では適用されません。
ただし、築年数が経過すると建物評価額が経年減点補正率により下がるため、税負担は新築より低くなる傾向があります(中古住宅の固定資産税)。
相続資金での購入でも適用される軽減措置
以下の軽減措置は、相続資金で購入した場合でも適用されます:
- 住宅用地の特例: 200㎡以下で評価額の1/6(固定資産税)
- 不動産取得税の軽減: 床面積50㎡以上240㎡以下で最大1,200万円控除
- 登録免許税の軽減: 所有権移転登記が0.3%(本則2%)
相続資金での購入であることは、軽減措置の適用要件に影響しません。
相続税と固定資産税の関係
相続税は一度だけ、固定資産税は毎年
相続税と固定資産税は、以下の点で異なります:
- 相続税: 相続発生時に一度だけ課税(基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人数)
- 固定資産税: 毎年1月1日時点の所有者に課税(継続的な負担)
相続により実家を取得した場合、相続税は一度だけですが、固定資産税は毎年課税されます。
相続戸建ての評価方法
相続税の計算において、不動産は以下の方法で評価されます:
- 土地: 路線価方式または倍率方式
- 建物: 固定資産税評価額
固定資産税評価額は、相続税計算の基礎にもなるため、相続後の固定資産税負担を事前に把握できます。
相続不動産を売却して新規購入する場合の税務
相続した実家を売却して新規購入する場合、以下の税務処理が必要です:
- 譲渡所得税: 相続戸建ての売却益に課税(取得費は被相続人の取得費を引き継ぐ)
- 不動産取得税: 新規購入時に課税(評価額の3〜4%)
- 固定資産税: 新規購入物件に翌年から課税
相続不動産の売却益が大きい場合、居住用財産の3,000万円特別控除などの特例活用を検討する必要があります。
相続後の住宅購入予算と税負担
中古戸建ての固定資産税の目安(6〜12万円)
中古戸建ての固定資産税は、築年数・立地により異なりますが、以下が目安です(一戸建ての固定資産税):
- 築10年: 年間8〜12万円
- 築20年: 年間6〜8万円
- 築30年以上: 年間5〜7万円
新築(年間10〜15万円)と比較して、中古は経年減価により税負担が低くなります(新築と中古の違い)。
築年数による税額の違い
木造戸建ての場合、築年数により建物評価額が以下のように変化します:
- 新築: 再建築価格の100%
- 築10年: 再建築価格の約50%
- 築20年: 再建築価格の約25%
- 築25年以降: 再建築価格の約20%(下限)
土地の評価額は市場価格に連動するため、地価が上昇している地域では評価額が上がる場合もあります。
資金計画への組み込み
相続資金で中古戸建てを購入する際の資金計画には、以下のコストを組み込む必要があります:
購入時(一度だけ):
- 不動産取得税:評価額の3〜4%(軽減措置あり)
- 登録免許税:評価額の約2%(土地・建物合計、軽減措置あり)
- 固定資産税精算金:引渡日から年末までの日割り負担
購入後(毎年):
- 固定資産税・都市計画税:年間6〜12万円程度
購入時コストは現金で支払う必要があるため、住宅ローン以外の自己資金として確保しておくことが重要です。
住宅ローン控除との併用可否
相続資金での現金購入の場合(住宅ローン控除対象外)
相続資金で現金一括購入した場合、住宅ローン控除は適用されません。住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して購入した場合にのみ適用される制度です。
一部ローン利用の場合(中古住宅は最大2,000万円)
相続資金を頭金として、一部を住宅ローンで購入した場合、以下の要件を満たせば住宅ローン控除が適用可能です(国税庁 住宅ローン控除):
- 築年数要件: 昭和57年以降または耐震基準適合証明
- 床面積: 50㎡以上
- 借入期間: 10年以上
- 控除額: 年末ローン残高の0.7%(最大13年間、中古住宅は最大140万円)
固定資産税との関係
住宅ローン控除は所得税・住民税から控除されるため、固定資産税・都市計画税とは別の税制です。住宅ローン控除により所得税・住民税が減額されても、固定資産税・都市計画税は別途課税されます。
両方を考慮した総合的な資金計画が重要です。
まとめ
相続資金で中古戸建てを購入する場合、固定資産税・都市計画税は購入翌年の1月1日から課税されます。住宅用地の特例(200㎡以下で評価額の1/6)は相続資金での購入でも適用されるため、土地の税負担は大幅に軽減されます。
相続による不動産取得と新規購入では、取得時の税負担が大きく異なります。相続は不動産取得税が非課税、登録免許税は0.4%ですが、新規購入は不動産取得税3〜4%、登録免許税0.3〜2%が課税されます。
中古戸建ては新築軽減措置の対象外ですが、築年数により建物評価額が下がるため、税負担は新築より低くなる傾向があります。資金計画では、購入時の一時コスト(不動産取得税・登録免許税)と購入後の継続コスト(固定資産税・都市計画税)を考慮し、余裕を持った予算設定をすることをおすすめします。