離婚売却中古戸建ての固定資産税・都市計画税|完全ガイド

公開日: 2025/10/16

離婚時の固定資産税の基本を理解する

離婚に伴う中古戸建ての売却では、固定資産税や都市計画税の負担をどう分けるかが重要な問題となります。特に共有名義で所有している場合、誰がいつ、いくら支払うのかを明確にしておかないと、後々トラブルの原因になりかねません。

この記事でわかること

  • 固定資産税の課税基準日と納税義務者
  • 共有名義での連帯納税義務の仕組み
  • 離婚年における税負担の配分方法
  • 売却時の日割り精算の具体的な計算方法
  • 財産分与時の固定資産税の取り扱い

1. 離婚時の中古戸建て売却と固定資産税の基本

(1) 固定資産税の課税基準日と納税義務者

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に納税義務が発生します(総務省)。これは地方税法で定められており、年の途中で所有権が移転しても、その年の納税義務者は変わりません。

例えば、2024年5月に離婚して戸建てを売却した場合でも、2024年1月1日時点で所有していた方が、2024年度の固定資産税全額を支払う義務があります。

固定資産税の基本情報

項目 内容
課税基準日 毎年1月1日
納税義務者 基準日時点の所有者
標準税率 1.4%(市町村により異なる場合あり)
納付回数 年4回(一括納付も可能)

(2) 都市計画税の課税対象

都市計画税は、市街化区域内の土地・建物に課される目的税です(総務省)。固定資産税と同様に1月1日時点の所有者が納税義務を負い、標準税率は0.3%です。

中古戸建てが市街化区域内にあれば、固定資産税に加えて都市計画税も負担することになります。一方、市街化調整区域や市街化区域外であれば、都市計画税は課税されません。

2. 共有名義の中古戸建てにおける納税義務

(1) 共有者の連帯納税義務

夫婦で共有名義の戸建てを所有している場合、共有者全員に連帯納税義務があります(東京都主税局)。これは、市町村が共有者のうち任意の一人に全額を請求できるという意味です。

実務上は、代表者1名に納税通知書が送付されることが一般的ですが、これは便宜的なものであり、法律上はすべての共有者が全額について連帯して責任を負います。

(2) 持分に応じた実質的な負担割合

連帯納税義務は市町村との関係での話であり、共有者同士の内部関係では、持分割合に応じて負担するのが原則です。

例えば、夫が2分の1、妻が2分の1の持分で所有している戸建ての固定資産税が年間20万円の場合、実質的な負担は夫10万円、妻10万円となります。

共有名義での負担例

  • 固定資産税額:20万円
  • 持分:夫2分の1、妻2分の1
  • 実質負担:夫10万円、妻10万円

3. 離婚年の固定資産税・都市計画税の負担区分

(1) 1月1日時点の所有者責任

離婚協議中であっても、1月1日時点で所有していれば、その年の固定資産税を全額納付する義務があります。離婚が成立した日や、実際に売却した日は関係ありません。

例えば、3月に離婚協議が成立し、6月に戸建てを売却した場合でも、1月1日時点の所有者(共有名義なら両者)に納税義務があります。

(2) 離婚協議における税負担の取り決め

1月1日時点での所有者に納税義務がある以上、離婚協議書で固定資産税の負担をどう分けるか明確に定めておくことが重要です。

離婚協議書での記載例

  • 1月1日から売却決済日までの固定資産税は、居住期間に応じて按分する
  • 売却時に買主から受け取る固定資産税の精算金は、上記按分割合で配分する
  • 納税通知書送付後に未払いがある場合、元配偶者に対して内部求償できる旨を明記

こうした取り決めを文書化しておけば、後々の紛争を防ぐことができます。

4. 売却時の固定資産税精算と日割り計算

(1) 起算日による清算方法の違い

不動産売却時には、売主と買主の間で固定資産税を日割り計算して精算するのが慣例です。ただし、起算日が地域によって異なります。

起算日 地域 特徴
1月1日 関東など 暦年で計算、売主負担が長くなる
4月1日 関西など 年度で計算、売主負担が短くなる

例えば、6月30日に引き渡しをする場合:

  • 1月1日起算:売主負担1月1日~6月30日(181日)、買主負担7月1日~12月31日(184日)
  • 4月1日起算:売主負担4月1日~6月30日(91日)、買主負担7月1日~翌年3月31日(274日)

起算日によって売主と買主の負担が大きく変わるため、契約前に不動産業者に確認しましょう。

(2) 売主と買主の按分計算の具体例

年間固定資産税20万円、6月30日引き渡し、1月1日起算で計算すると:

計算式

  • 売主負担:20万円 × 181日 ÷ 365日 = 約99,178円
  • 買主負担:20万円 × 184日 ÷ 365日 = 約100,822円

決済時に、買主から売主に対して買主負担分の約10万円が支払われます。離婚による売却の場合、この精算金を共有者間でどう配分するかを、離婚協議書で定めておく必要があります。

5. 財産分与における固定資産税の取り扱い

(1) 財産分与と固定資産税の関係

離婚に伴う財産分与では、戸建ての評価額から未払いの住宅ローンや、離婚後に発生する固定資産税の負担を考慮するケースがあります。

例えば、1月1日時点で夫名義だった戸建てを、3月に妻に財産分与する場合、その年の固定資産税の納税義務は法律上夫にあります。しかし、実質的には妻が所有することになるため、離婚協議で「財産分与後の固定資産税は妻が負担する」といった取り決めをすることが一般的です。

(2) 離婚協議書での税負担条項の記載

離婚協議書に固定資産税の負担を明記しておくことで、後々のトラブルを防げます。

記載例

  • 「令和○年度の固定資産税は、1月1日から離婚成立日までは夫が負担し、離婚成立日翌日から12月31日までは妻が負担する」
  • 「売却時の固定資産税精算金は、持分割合に応じて配分する」
  • 「一方が立て替えた固定資産税について、他方に対して求償できる」

こうした条項は、弁護士や行政書士に相談して作成することをおすすめします。

6. 離婚売却時の税制上の特例措置

(1) 居住用財産の3,000万円特別控除

自宅を売却した際の譲渡益に対しては、居住用財産の3,000万円特別控除が適用できます(国税庁)。

この特例は、離婚前でも離婚後でも、以下の要件を満たせば適用可能です:

  • 自己の居住用財産であること
  • 売却した年の1月1日時点で所有期間が問われない
  • 過去2年間にこの特例を受けていないこと

離婚前に共有名義で売却する場合、夫婦それぞれが3,000万円の控除を受けられるため、合計で最大6,000万円まで非課税となります。

(2) 財産分与による譲渡所得の課税

離婚による財産分与で不動産を譲渡した場合、譲渡した側に譲渡所得税が課税される可能性があります(国税庁)。

ただし、以下のケースでは課税されません:

  • 財産分与の額が、婚姻中に形成した財産の額として相当と認められる場合
  • 譲渡益が3,000万円特別控除の範囲内である場合

財産分与のタイミングや方法によって税負担が変わるため、税理士への相談が推奨されます。

まとめ

離婚時の中古戸建て売却では、固定資産税・都市計画税の負担を明確にすることが重要です。

重要ポイント

  • 固定資産税は1月1日時点の所有者に納税義務がある
  • 共有名義の場合、連帯納税義務があるが、内部では持分に応じて負担
  • 離婚協議書で税負担の配分を明記しておく
  • 売却時の日割り精算は起算日によって変わる(1月1日 or 4月1日)
  • 居住用財産の3,000万円控除は離婚前後で適用可能

固定資産税の取り扱いは、売却時期や財産分与の方法によって複雑になるため、弁護士・税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

よくある質問

Q1離婚で中古戸建てを売却した場合、固定資産税は誰が払いますか?

A1固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に納税義務があります。共有名義の場合は共有者全員に連帯納税義務がありますが、実質的には持分割合に応じて負担します。離婚協議で負担割合を明確に決め、売却時は買主と日割り精算を行います。

Q2離婚前と離婚後どちらで売却する方が税金面で有利ですか?

A2売却のタイミングによる税負担の大きな差はありません。居住用財産の3,000万円特別控除は離婚前後どちらでも適用可能です。離婚前に共有名義で売却すれば、夫婦それぞれが控除を受けられるため最大6,000万円まで非課税となります。財産分与による譲渡も一定の要件下で非課税です。具体的な状況は税理士に相談することをおすすめします。

Q3共有名義の戸建ての固定資産税は誰に請求されますか?

A3共有者全員に連帯納税義務がありますが、実務上は代表者1名に納税通知書が送付されるのが一般的です。これは市町村との関係での話であり、共有者同士の内部関係では持分比率に応じて負担します。例えば持分2分の1ずつなら、固定資産税も半分ずつ負担するのが原則です。

Q4離婚協議書に固定資産税の負担をどう書けばいいですか?

A4離婚協議書には、1月1日時点での所有期間に応じた按分方法、売却時の買主との清算金の配分方法、未払い分の負担者を明記することが重要です。具体的な文言は「1月1日から離婚成立日までは夫が負担し、離婚成立日翌日から12月31日までは妻が負担する」といった形で記載します。弁護士や行政書士に相談して作成することをおすすめします。

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